どんな準備をしておけばいいの?
軽減税率制度が導入されると、日々の業務の中で、取り扱う商品に適用する税率の把握、適用税率ごとに区分した記帳といった、さまざまな対応が必要になります。事業者ごとに必要な作業は異なりますが、飲食料品小売業を営む事業者を例に、準備すべき内容を確認しましょう。
影響が生じる事務の洗い出し、業務手順の見直し
毎日の業務の流れを確認し、各段階で発生する新たな作業を洗い出しましょう。また、自社内だけでなく、取引先とも軽減税率適用商品の確認や認識の統一などが必要です。
資金繰り対策
一般的に資金の流れは、「先払い、後回収」「先回収、後払い」のいずれかに該当します。特に注意が必要なのは前者です。消費税率の引き上げにより、仕入れ時などに運転資金の支出が増えます。また、新しいシステムの導入や改修による経費も増えることが見込まれます。資金の回収や支払いの条件面での交渉、金融機関の担当者とのコミュニケーションなど、資金繰りに注意する必要があります。
価格表示の見直し
採用している価格表示の方法(総額表示、外税表示、税抜価格の強調表示)によって、変更が必要かどうかが異なります。同じ商品であっても店内飲食かテイクアウトかで適用される消費税率が異なる場面や、軽減税率対象と対象外の商品が混在しているかなどを考慮し、わかりやすい表示を心がけましょう。
(1)持ち帰りと店内飲食の2つの税込価格を表示する
(2)店内掲示等を行うことを前提にどちらか一方のみの価格を表示する
(3)持ち帰りと店内飲食を同一の税込価格に設定し、表示する
導入・改修をしたレジ・会計システム・受発注システムの準備
軽減税率導入後は、すべての商品において、軽減税率の対象かそうでないかを区別しなければなりません。現在使用しているレジや受発注システムが複数税率に対応していない場合、改修や入替が必須です。事業者間でのデータ内容や形式の統一・調整、システムの連携テストなどの期間も考慮して進めましょう。
納品書や請求書などの帳票の見直し(取引先との連絡・調整)
2つの消費税率を把握するために、インボイス(適格請求書等保存方式)と呼ばれる伝票の発行が必要になります。現行の請求書には「発行者名」「取引年月日」「取引の内容」「取引額」「受領者名」を書くのが一般的です。インボイスは、それに「軽減税率の対象品目である旨」「税率ごとに合計した対価の額」「税率ごとの消費税額」「事業者登録番号(取得は2021年10月〜)」の項目を追加します。2023年10月1日からは、課税事業者の仕入税額控除にはインボイスが必要です。
ただし、2019年10月1日〜2023年9月30日までは、現行の請求書に「軽減税率の対象品目である旨」と「税率ごとに合計した対価の額」を追記する「区分記載請求書等保存方式」と呼ばれる簡易方式の使用が認められています。
区分記載請求書等保存方式
適格請求書等保存方式(インボイス制度)
従業員への研修
税率問い合わせへの対応をはじめ、正しい記帳や経理処理の方法、クレーム対応や返品処理など、各担当者に理解すべきことを整理し、周知していきましょう。