【コラム】増税スタート時は戸惑いも? 
日本の増税ハプニング集

日本では、1989年の消費税法の施行以来、3度の増税を行なっています。事前の準備や周知を進めていても、いざ増税がスタートすると、さまざまなハプニングが起こるもの。これまでの増税時、消費の現場では一体どんな出来事が起こっていたのか、時系列で振り返ってみました。

1989年 消費税3%を施行

消費税3%を施行

1989年4月1日、3%の消費税がスタートしました。初めての税制導入をアピールしようと、当時の国税庁が事前に作成したPRポスターは500万枚。当時の新聞記事には「一種類のポスターの発行枚数としては世界最多なのでは」という広告業界関係者の声も掲載されています。それでも十分な周知には至らなかったのか、全国各地で混乱が見られました。

当時の経済企画庁が設置した相談窓口「物価ダイヤル」には、約2週間で3000件超の問い合わせが殺到し、これまで年間1000件程度だった相談件数を大幅に超えました。うち3分の1は「ワイシャツのクリーニング代が消費税分より値上げしていた」など個別事業者や業界全体の「便乗値上げ」に対する指摘だったそう。

今まで使う機会の少なかった1円玉や5円玉が大量に流通するようになったのもこの日から。携帯電話が普及していない当時は郵便の需要も高く、当日届いた郵便物のうち3割が料金不足だったという支店では、料金不足の通知書を貼る作業が夜遅くまで続きました。

また、小売店ではレジのシステムトラブルや対応ミスが全国的に見られる事態に。百貨店では、売り場の従業員があえて電卓を携帯。レジに向かう前のお客さんに税込の商品価格を計算して見せ、納得してもらう接客スタイルを取り入れました。

1997年 消費税5%に引き上げ

消費税5%に引き上げ

バブル景気だった前回と異なり、不景気に直面していた1997年4月1日。消費増税に関する物価ダイヤルの相談件数は前回の1割程度に留まり、税率5%は国民のあきらめムードによって受け入れられていたようです。

前回のような混乱を防ごうと、小売店では事前のスタッフ講習やマニュアル配布などで対応を強化。書籍や酒類をはじめ、価格表示を内税式から外税式に変更する店舗も。事業者の中からは、「増税を周知させたい反面、あまり告知をするとお客さんの財布の紐が固くなるのでは」という不安の声も聞こえました。

また、影響は意外なところにもありました。当時、建設計画の途中だった中部国際空港は、増税のあおりを受けて総面積を約100ヘクタール減少することに。事業費総額を抑えるため、緊急性のない部分をコストカットして増税に対応したそうです。

2014年 消費税8%に引き上げ

消費税8%に引き上げ

3度目の消費税率引き上げとなった、2014年4月1日。既に消費税が導入されてから20年以上が経過し、全体的に「実感がわかない」「もう驚かない」という感想を持った人も少なくなかったよう。増税初日も、大きな混乱は見られませんでした。

これまでの増税時は、レジのシステムトラブルなどが大きく取り沙汰されましたが、デジタル化が進んだ2010年代では、全体的に比較的スムーズな移行が行なわれたよう。一方で、前回の引き上げ時にはなかった新しいサービスに変化が見られました。鉄道各社は、値上げ後の運賃が切符とICカードで異なる「二重運賃」を導入。切符は10円単位、ICカードは1円単位で切り上げたため、その仕組みに戸惑う利用客もいたようです。そのほか、商品の表示価格の変更作業は、小売店だけでなくネット通販サイトも対応に追われることに。定期的に購入する日用品については、ネット通販による事前の駆け込み需要も見られました。

2019年 消費税10%に引き上げ

消費税10%に引き上げ

2019年10月1日にスタートが予定されている、10%への消費税率引き上げ。今回の増税時には、どんなハプニングが予想されるでしょうか?

注目したいのは、キャッシュレス決済によるポイント還元です。暫定的な措置ではありますが、中小の小売店やネット通販では5%、大手フランチャイズ系列店では2%のポイント還元が行われる方針です。軽減税率の制度と相まって、増税後の商品価格は一層複雑に。テイクアウトとイートインで税率が変化するなど、商品自体のみならず消費者の行動により税負担額が変化します。当日を迎えてから混乱しないよう、事前に正しい知識を身につけておきましょう。