【コラム】10%増税、予想される影響は?
消費税増税に伴い気になるのが、増税施行前に商品購入を急ぐ消費者の動き(駆け込み需要)や、施行後の消費の落ち込み(反動減)。過去の増税時には、その引き上げ幅や景気の状況によって、国民の心理的負担や実際の家計に与える影響が異なっていたようです。
1989年、消費税導入時の影響は?
初めて消費税が導入された1989年当時、日本国内は「バブル」と呼ばれる好景気。消費者の日頃の生活が消費傾向にあったため、増税直前に商品の需要が高まる「駆け込み需要」は、それほど大きくありませんでした。増税直後の消費支出の落ち込み(反動減)も、すぐに回復したのが特徴です。かえって事業者からすると、売り上げを伸ばすきっかけになったとも言われています。一方で、消費税の導入自体には反発が大きく、直後の参院選では当時の与党である自民党が大敗しました。
1997年、消費税3%→5%引き上げ時の影響は?
前回の導入時とは対照的に、バブル崩壊後の不景気の中で行われた税率引き上げ。駆け込み需要を見込んで在庫を確保した事業者は、前回ほど売れない状況に頭を抱えたようです。そこで、増税後に多くの事業者が行なったのが「増税分をお客さまに還元する」と謳う還元セール。売れ残った商品を値下げしたため、事業者への負担は大きかったことでしょう。こうした一連の動きが、景気低迷(デフレ)の長期化に繋がったと言われています。
2014年、消費税5%→8%引き上げ時の影響は?
17年の月日を経て行われた、消費税率8%への引き上げ。当時は、アベノミクスにより賃金が増加する一方で、円安による物価上昇率が賃金増加率を上回り、実質賃金は下がっているという状況でした。消費者の感覚としては、商品購入時に8%の消費税を「およそ1割」と捉えて計算するようになった人も多く、物価が実際の数字以上に上がったような印象を受ける人も少なくなかったようです。この時の反動減の回復には、なんと3年半もの期間を要しました。
2019年、消費税8%→10%引き上げ時の影響はどうなる?
前回の反動減からの回復を待つように2度の増税延期を経て、ついに10%への税率引き上げが行われる2019年。勤労世代は収入の増加に伴い消費も増加する可能性がありますが、収入増加が見込めない高齢世代では節約意識が高まると言われています。高齢化が進む日本では、今回の増税による反動減からの回復も長引く可能性もあります。
ただ、今回の増税については、上げ幅が2%と小さいこと、改元と東京五輪の開催で世の中が明るいムードであることから、消費者の心理的負担は小さいとも予測されています。同じタイミングで施行となる幼児教育無償化やプレミアム付き商品券の発行など、家計への負担を軽減したり、消費意欲の落ち込みを抑えたりするための政策が行われることもポイントです。また、キャッシュレス決済による5%のポイント還元は、小銭の計算に戸惑うことなく商品が購入できるため、高齢世代との相性が良いとも言われています。とはいえ、新たに導入される軽減税率の複雑さには、混乱が見られる可能性も。事業者側が制度を正しく理解し、消費者の購買を促す必要がありそうです。