1円を恵んでもらった、1日10回レジに並んだ……
1989年の消費税導入をマンガで振り返る

ライターのうないいちどうです。

消費税がはじめて日本に導入されたのが、1989年のこと。今から30年前です。

僕は今年で36歳なので、子どもの頃に消費税導入の空気をリアルタイムで感じているはずなのですが、まったく記憶にありません。

当時の世の中は、どんな感じだったのでしょうか?

気になったので、消費税導入時のエピソードを募集してみました。

【超募集】
消費税について記事を書くのですが、みなさんの

・消費税が導入された当時のエピソード
・増税当時のエピソード

を教えていただけませんでしょうか! 簡単なアンケートになってますので、ぜひご協力よろしくお願いいたします!!

▼アンケートフォームはこちらhttps://t.co/NvqZz5BgPx pic.twitter.com/qldLUXDAW8

— うないいちどう@本日の地味なハイライト (@EinsWappa) 2019年2月26日

導入時のエピソードとあわせて、過去2回行われた「増税時」のエピソードも聞いてみました。

今回の記事では、集まったエピソードをマンガと一緒に紹介していきます。

消費税よりも後に生まれた20代以下の人や、30代だけど当時を覚えていない人には「驚き」が、そして導入当時の記憶がある40代以上の人には「懐かしみ」が得られるかもしれません。

それでは、さっそく見ていきましょう!

あるある? 消費税導入エピソード

救世主

消費税が導入されたことを知らずに買い物に行ったら、お金が足りなくなったというエピソードが多数寄せられました。

50円握りしめてスーパーにアイス買いにいったら、レジで1円足りないと言われて、なんのことやらと大混乱。後ろのおばさんに1円恵んでもらって無事買えた。(36歳・男性)

レジでアイスと100円を出すと「あらっ!もう100円で買えなくなったのよ…」とレジにいたお姉さんが。焦って動揺してしまいました。そのとき、レジのお姉さんが「わたしが消費税分は払っておいてあげるから、今日はもういいよ。今度は気をつけてね」と言ってくれました。未だに覚えていて、感謝しています。(40歳・女性)

100円のシャープペンを買うのに、100円もらって買いに行ったら、103円です。と言われ途方にくれたけど、お店の方が貸してくれました。(41歳・女性)

知らないおばさんに恵んでもらったり、店員さんが肩代わりしてくれたり貸してくれたり……。なんて温かくてキレイな世界なのでしょうか。涙が止まりません。

1円玉と五円玉

消費税導入前はキリのいい価格の商品が多かったのでしょうか。1円玉と5円玉を使う機会が増えたという声が集まりました。

1円玉や5円玉を初めて使う機会ができた。(39歳・男性)

それまでほとんど見なかった1円玉と5円玉をよく見かけるようになった。8歳でした。(38歳・女性)

1円玉を使う機会があまり無かったので存在の大きさにびっくりした。100円玉ひとつでジュースが買えなくなり子供の自分には衝撃的だった(39歳・女性)

100円の商品が103円になったので、100円玉1枚で購入できたものが、100円玉と1円玉あわせて硬貨が4枚も必要になりました。

1円玉と5円玉は「ほとんど見かけない」から「見ない日はない」くらいイメージが激変したことでしょう。

こどもの節税

子どもの必死さが伝わる節税エピソードが寄せられました。こういうときに算数が役に立つんですね。

遠足のおやつは消費税分上乗せされず200円据え置き。税金のかからない30円以下の駄菓子を何回もレジに行って買うという涙ぐましい努力をした記憶…迷惑すぎるが、切実だったのよね(笑)(39歳・女性)

当時30円のビックリマンチョコを買う際に、消費税のかからないよう1個ずつレジに持って行きました。また、駄菓子屋は消費税を取っていませんでした。(38歳・男性)

なかには、お小遣いの値上げ交渉をした人も。

当時は小3。小遣いが300円だったので「消費税付けてくれ」と親に訴え、309円になったので喜んでいた…(38歳・女性)

子どもの場合はまだかわいいものですが、仕事で大金が絡むこともある、大人の世界。深刻な事態に陥っていた人もいるようです。

当時は営業職でした。取引先に消費税分の値上げについて説明しても納得してもらえなくてつらかったです。同僚は取引先に怒鳴られてノイローゼになってました。(55歳・男性)

そのほかにも「導入当時は消費税に対応したレジがなく、レジ前に長蛇の列をつくってしまった」というエピソードも。職種によって程度の差はあれど、仕事にも影響を及ぼしていたようですね。

たいやきくんと物品税のお話

50代の方を中心に「消費税の導入に伴って廃止された税を思い出す」という声が集まりました。

消費税導入に伴って物品税が廃止された。物品税といえば、「およげ!たいやきくん」のエピソードがなつかしい。(58歳・男性)

消費税が始まる前は、電気税とかガス税がありましたね。(59歳・男性)

物品税のほかにも、電気税やガス税、娯楽施設利用税、トランプ類税などが廃止されました。これらの税金が廃止されずに今も残っていたら、日本は今ごろどうなっていたんでしょうか。

さて、次は増税にまつわるエピソードを紹介していきます!

みんな納得!? 消費増税エピソード

たいやきくんと物品税のお話

世間的には、増税反対の声が多いでしょう。しかし意外にも「計算しやすい税率なら助かる」という声が多数集まりました。

5%→8%になった時、計算が面倒になるからいっそ10%でいいよと思った。(30歳・女性)

3%から5%は計算しやすくなったからまあ、仕方ないかなと。5%から8%はめんどくさい気持ち。もうどうせ上げるならとっとと10%にして全て税込表示にして欲しい。税別表示は本当に嫌い。(36歳・女性)

3%から5%になったとき、母親が「計算しやすいので嬉しい」と言っていた。5%から8%になったときは、「計算しづらくなる」と怒っていた。今は「10%になるとかなり計算しやすいので、はやく10%になってほしい」と言っている。(31歳・女性)

いくら10%が計算しやすいとはいえ、20%はさすがに嫌だと思うんでしょうか。境界線が気になりますね。

便乗値上げ?

メーカーそれぞれに値上げの理由があるのだと思いますが、消費者の目には「便乗」にうつりがちのようです。

缶ジュースが増税のたびに10円ずつ値上がりしてずるいと思った。元々100円だったんだから10%になるまでは110円でいいだろと。(42歳・男性)

郵便の値段が変わるのが混乱しました。便乗値上げという言葉が流行ってました。(38歳・女性)

電車賃の値上げは完全に便乗だろうと感じました。(21歳・男性)

なかには「増税されてから、いつも買っていたウインナーの内容量が目に見えて減っていた」という声もありました。価格を上げるのか、量を減らすのか。メーカーの苦渋の決断が垣間見えますね。

価格表記の変遷

増税による価格修正のエピソードが寄せられました。

書店員です。消費税導入前に発行された書籍はカバーに「定価500円」のように印刷されていました。しかし3%が導入されて税込表示になったので、価格修正のシールを貼ったりカバーごと交換したりしなければなりませんでした。5%になってからは税別表記が認められ「定価:本体500円(税別)」という表示が可能になりました。3%になった頃は、5%の時代がくるとは予想できなかったんだと思います(54歳・男性)

5%から8%のとき大型家電量販店で働いていましたが、値札の付け替えが本当に大変でした。計画を立てて増税前から少しずつ付け替えていましたが、最終日は夜通しの作業になったところもあると聞いています。(29歳・女性)

現在の日本は、めちゃくちゃ長い名前の「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」により税別表記が認められています。そのため、お店によって税込だったり税別だったり表記の仕方が混在しています。

「すべて税込で統一してほしい!」という意見もたくさん集まりました。たしかにそれが一番わかりやすいのですが、書籍のように価格変更のたびに大変な作業が発生するケースもあるので、すべての商品を税込表記にするのは現実的ではないのかもしれません。

10%への増税は、庶民にどんな影響を与える?

3%→5%、5%→8%と、これまで2回の増税がありました。

次は3回目の増税だし、混乱することもないだろうと思いきや、「わかりにくい!」とすでに混乱を招いている軽減税率が、我々の目の前に立ちはだかります。

軽減税率の煩雑さによって生まれるのは、混乱や悲しみ、争い、クレームといったネガティブなエピソードばかりでしょうか。足りない1円をおばちゃんに恵んでもらうような、ほっこりエピソードがたくさん生まれてほしいと願うばかりです。

軽減税率についてざっくり学びたい方は、「桃太郎〜軽減税率バージョン〜」を読んでみてください。それでは!

【参考文献】
長田暁二『昭和の童謡アラカルト―戦後編』
長田暁二『あの歌この歌 こぼれ話』
1976年2月12日付 朝日新聞東京本社版朝刊

【イラスト】
マキゾウ

【編集】
ノオト

プロフィール

うないいちどう
うないいちどう
有限会社ノオトの編集者・ライター。地味な日常のワンシーンをバラエティー番組風に紹介する「#本日の地味なハイライト」を、Twitterで平日毎日更新中。
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