石屋製菓株式会社は、北海道札幌市に本社を置く1947年創業の製菓メーカーです。「しあわせをつくるお菓子」という企業理念のもと、国内での知名度9割を超える銘菓「白い恋人」をはじめとする数多くの商品を製造・販売しています。
同社では、2020年の民法改正によって、450店もの特約店との契約を一斉に結び直す必要に迫られていました。この再締結を紙の契約書で行うと、書類準備の作業量が膨大になるだけでなく、収入印紙や郵送のコストも大きくかかってしまいます。
この状況を改善するとともに、これを機に社内の契約関連の業務フローを見直すべく、freeeサインを導入しました。導入前のお悩みや運用状況、導入による効果などについて、経営管理部の近藤亜実さん、福井谷咲希さんに話を聞きました。
民法改正によって、450店もの特約店と契約を結び直すことに
――石屋製菓様の事業概要と、近藤さん、福井谷さんの業務について教えてください。
近藤 亜実 さん(以下、近藤): 当社は、北海道を代表する銘菓「白い恋人」をはじめとする菓子の製造・販売をしているほか、テーマパーク「白い恋人パーク」の運営やカフェも手がけています。私は経営管理部に所属し、株主総会や取締役会の運営、コンプライアンスの啓蒙活動などを担当した後、法務機能の立ち上げに携わり、現在は部門の責任者を務めています。
福井谷 咲希 さん(以下、福井谷): 私は、2020年1月に経営管理部に異動し、法務担当者として、契約書の審査や法務相談対応を行いながら、コンプライアンス担当窓口の役割も担っています。
――freeeサインを導入したきっかけをお聞かせいただけますか。
近藤: 2020年の民法改正に伴い、当社の菓子を販売する特約店と結んでいた契約書を大幅改訂する必要が生じたことがきっかけです。
それまでは、紙媒体で契約書を作成・締結していましたが、450店舗ある特約店と再締結するとなると、契約書 の準備をする負担がかなりかかりますし、収入印紙代や郵送費も相当な金額になってしまいます。そこで、電子契約サービスを導入することにしました。
また、この時期はコロナ禍の真っ只中でした。観光客が激減し、当社の売上も大きく落ち込んでしまっており、別のチャネルで売上をつくるために新しい取引先が増え始めていたタイミングでもあったのです。こうした取引先との契約でも、電子契約サービスを使いたいと考えました。
福井谷: コロナ禍で、当社でもテレワークを導入し始めて働き方が変わりつつある時期だったので、業務フローを進化させたいという思いもありました。
それまで、契約管理は部門ごとに行っていたため、経営管理部では全社の契約状況を把握できていなかったのです。電子契約サービスによって契約書類を可視化し、全社でルールと業務フローを統一できればと考えました。
会社が設立されて歴は長いですが、各現場で習慣化している業務フローがあったものの、統一化されていなかったため、技術が進展し法律も変わる中、当社も世の中の流れに沿って変化していかなければならないと思っていました。
――freeeサインはどのようにして知りましたか? また、最終的にfreeeサインに決めた理由も教えてください。
近藤: freeeサインを知ったのは、他社の法務部の方に話を伺ったことがきっかけでした。この会社はITツールの導入を先進的にされており、電子契約においてはfreeeサインを使っていたのです。
その方からは、freeeサインは必要な機能が十分にそろっているという感想を聞いていましたし、他社サービスと比較しても、費用対効果が良いと判断し、導入を決めました。
業務が効率化するとともに、契約に対する社員の意識が変化
――freeeサインを導入し、どのようなことから運用の準備を始めましたか。
福井谷: 当社の法務機能において、システム化するのはfreeeサインが初めてであり、全社で業務フローを大きく変える必要がありました。どのように運用を進め、社内へ浸透させていくかを考えるのは、手探りの状態でしたね。
多くの部門で活用してもらうために、まずは私たち経営管理部で使いこなさなければと考え、トライアルアンドエラーを繰り返して操作を習得していった形です。freeeのカスタマーサポートにチャットなどで問い合わせをしながら、1年ほどかけて運用を軌道に乗せていきました。
――業務フローが変わることへの社員の反応はいかがでしたか。
福井谷: IT活用を積極的に行っている会社なので、運用がしっかりできれば多くの部門で根付いていくだろうと 期待していました。しかし、その一方で、習慣化している業務フローを変えることに心理的なハードルを感じた社員がいたことも事実です。
そこで、私たちからは、契約にまつわる作業負担が減ることや、郵送・収入印紙代のコスト削減になることなど、freeeサインを導入するメリットを丁寧に伝え続けました。
さらに、操作のレクチャーもして、いつでも質問を受ける姿勢を積み重ねることで、徐々に業務フローが変わっていくことについて納得してもらえたように思います。
近藤: メリットを感じてもらうために、導入間もない頃、各部門で保管していた紙の契約書をすべてPDF化し、freeeサインの部門別フォルダに格納したんです。
freeeの画面上で取引先名を入力して検索するだけで、紙のデータをいつでも参照できることを体感してもらいました。体験して初めて実感するメリットがあるのだと、私たちもあらためて認識しましたね。
――業務効率化の効果は感じていますか。
福井谷: 業務は大幅に効率化されています。それまでは契約書を印刷し、押印の決済をもらってから会社の代表印を押し、収入印紙を貼って……と、1通の契約書を送付するにも多くの作業が発生していました。
freeeサインであれば、システム内のワークフローで稟議も押印も完結するので、業務時間が大きく短縮されています。感覚としては、50%は時間短縮できていると感じるほどですね。また、テレワークの日であっても、契約関連の業務を進められることも大きな変 化です。
今では、多くの社員が電子契約のメリットを感じてくれており、営業部や人事総務部、ロジスティクス部など社内の幅広い部門でfreeeサインを活用しています。
近藤: 営業部では、お客様向けのfreeeサインのマニュアルを経営管理部と一緒に作成し、各取引先へ案内してくれています。また、お客様の入力箇所をできる限り少なくするなどの工夫もしました。
その結果、長年にわたって紙媒体で契約をしていた特約店も、電子契約への移行に快く応じていただいており、とても感謝しています。
――その他のメリットや変化はありますでしょうか。
近藤: 全社の契約書類が可視化され、他部門の契約内容も閲覧できるようになったので、契約関係のナレッジを共有できる環境が整いましたし、更新の必要がない契約も把握できました。
また、今回のシステム導入によって、契約書の内容を理解したうえで契約を締結しないといけないという認識が社内に浸透し、ガバナンスの面で進歩できたと感じています。
freeeサインの活用は、電子契約だけに留まらず、取締役会の議事録の運用もワークフローを活用しています。この議事録は会社法上、役員全員の押印が必要な書類で、写しを10年間本店で保管することが定められているものです。以前は、各役員に押印を依頼する手前がかかっていましたが、freeeから一斉送信できるようになり、とても助かっています。
人間にしかできない業務に注力するため、これからもITツールを積極活用していきたい
――今後の展望をお聞かせください。
福井谷: せっかくシステムを導入したので、私が現在担っている業務をできるメンバーを増やし、属人化しない体制を作っていきたいです。
また、ビジネスにおいて契約を締結する重要性や契約書の内容を理解すること、目的をもって契約を締結する姿勢など、法務面の社員教育も充実させていきたいと考えているところです。
近藤: 今はITツールの進化が著しいので、これからも積極的に導入しつつ、社員は人間にしかできない業務に注力できる環境づくりを進めていきたいです。契約関連の業務であれば、契約締結や契約書の管理はfreeeサインで行い、社員は取引先との個別事情を踏まえた契約内容の調整などに注力するといったことです。
システムに頼りすぎることなく、バランスを大切にしながら今後もツールを活用していきたいと考えています。
(執筆:御代貴子 撮影:小牧寿里 編集:ノオト)