公開日:2023/08/29
監修 安田 亮 公認会計士・税理士・1級FP技能士
ZEDIとは、支払通知番号や請求書番号などをデジタル情報として添付できるシステムです。本記事では、概要やメリット・デメリットなどを解説します。
経理部門の業務効率化などのメリットから普及が進むZEDIですが、2023年10月開始予定のインボイス制度に向けて新たなサービスを実施予定です。インボイス制度による負担をZEDIでどれほど軽減できるのか、注目されている方も多いでしょう。
ZEDIの導入の手順、インボイス制度への対応なども解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
- ZEDI(全銀EDIシステム)とは?
- ZEDI(全銀EDIシステム)のメリット
- 受取企業の売掛金の消込作業が効率化される
- 受取企業からの問い合わせが減る
- XML形式により異なるソフトウェア間でも運用できる
- ZEDI(全銀EDIシステム)のデメリット
- 取引先企業もZEDI(全銀EDIシステム)の導入が必要
- 導入費用や利用手数料がかかる
- 取引先企業が少ないと十分な費用対効果を得られない
- ZEDI(全銀EDIシステム)はインボイス制度にも対応予定
- ZEDI(全銀EDIシステム)の導入方法・手順
- ①導入検討と取引先金融機関への相談
- ②取引先企業との打ち合わせ
- ③金融機関のEBサービスと会計ソフトとの連携確認
- ④取引先企業への周知
- スモールビジネスを、世界の主役に。
- まとめ
- よくある質問
- ZEDI(全銀EDIシステム)とは?
- ZEDI(全銀EDIシステム)を導入するメリットは?
ZEDI(全銀EDIシステム)とは?
ZEDI(ゼディ、全銀EDIシステム)とは、企業間の振込電文に支払通知番号や請求書番号などのデジタル情報(EDI情報)を添付できるシステムです。2018年12月から全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)により運営されています。
従来の振込方法では、送信できるデジタル情報(EDI情報)は区切りのない20桁のデータまでに限られていました。そのため、まとまった振り込みがあった場合などに、内容の確認が大きな負担でした。
国際標準のXML形式を採用したZEDIであれば、より多くの情報を添付できます。1件の振り込みごとに受発注・請求・支払いなど、取引に関するさまざまな情報を紐づけられ、内容をひと目で確認できます。
2021年までの時点で1,000を超える金融機関がZEDIに対応しており、システムを提供する環境はほぼ整っている状態です。
ZEDI(全銀EDIシステム)のメリット
ZEDIの主なメリットは、以下の通りです。
ZEDIの主なメリット
● 受取企業の売掛金の消込作業が効率化される● 受取企業からの問い合わせが減る
● XML形式により異なるソフトウェア間でも運用できる
受取企業の売掛金の消込作業が効率化される
従来の振り込みでは、半角カナ・半角数字・半角アルファベットなど限られた文字の20桁までを組み合わせた電文しか添付できません。
一方で、ZEDIは以下のデジタル情報(EDI情報)を自由に使って添付できます。
ZEDIで添付できるデジタル情報(EDI情報)
● 漢字● ひらがな
● カナ
● 数字
● アルファベット
デジタル情報(EDI情報)を添付できるZEDIであれば、添付データを見るだけで確認が完了するなど、受取企業の消込作業が効率化されます。
受取企業からの問い合わせが減る
受取企業が消込作業をしていると、取引先企業や金額などに相違点がみつかり、確認が必要になる場面がよくあります。確認が必要になれば、多くの場合、社内の営業担当や支払企業の担当者に電話やメールで問い合わせることになります。
ZEDIは支払通知番号や請求書番号、支払金額や担当者の連絡先など、多くのデジタル情報(EDI情報)を添付した振り込みが可能です。
内容が一目瞭然なため、受取企業の確認はスムーズに進みます。結果として支払企業への問い合わせも減り、双方の経理部門で振り込みにかかる負担を軽減できます。
XML形式により異なるソフトウェア間でも運用できる
ZEDIでは国際標準であるXML形式でファイルデータの作成が可能です。従来の固定長形式による20桁の文字の羅列では、わかりやすく多くの情報を送信できません。しかしXML形式だと日本語にも英語による幅広い表現が可能で、またデータの追加や削除も簡単に行えます。
さらにXML形式を採用するZEDIは、異なるシステムやソフトウェア間での互換性にも優れています。振込電文の作成やZEDIで送信された振込入金通知の読み込みなどで、XML形式に対応する既存のソフトウェアやシステムでの運用も容易でしょう。
ZEDI(全銀EDIシステム)のデメリット
ZEDIの主なデメリットは、以下の通りです。
ZEDIの主なデメリット
● 取引先企業もZEDI(全銀EDIシステム)の導入が必要● 導入費用や利用手数料がかかる
● 取引先企業が少ないと十分な費用対効果を得られない
取引先企業もZEDI(全銀EDIシステム)の導入が必要
ZEDIを導入しているかどうかにかかわらず、企業間の振り込みや送金はこれまでと変わらず行えます。しかし、ZEDIに対応しない企業では、ZEDIによるデジタル情報を確認できません。
そのため自社だけでZEDIを導入しても、システムの恩恵を十分に受けられない恐れがあります。
導入費用や利用手数料がかかる
金融機関によって異なりますが、ZEDIを利用する際は利用手数料が発生する場合があります。ほかにも、銀行のホストコンピューターと接続して取引口座の資金移動などのサービスを提供する、EB(エレクトロニック・バンキング)の利用料が必要です。
金融機関ごとに料金や対応は異なるので、詳しくは取引先の金融機関に確認しましょう。
導入時には、ZEDIに対応する会計ソフトや通信ソフトにかかる費用が発生します。ただし、すでに経理部門のデジタル化が進んでいるようなら、導入費用はそれほどかからないでしょう。
なお専用ソフトや会計システムを導入しなくても、ZEDIに対応するデジタル情報の作成を行えるシステム「S-ZEDI」が無料で利用できます。導入費用の負担が心配な場合は、利用してみましょう。
取引先企業が少ないと十分な費用対効果を得られない
ZEDIは、企業間取引における経理部門の業務効率化を目的としたシステムです。そのため企業間での取引や、取引先企業が少数に限られている場合には、ZEDIを導入しても十分な費用対効果を得られません。
ただし取引先企業がZEDIを導入していればメリットとなる可能性もあるので、状況に応じて導入を判断しましょう。
ZEDI(全銀EDIシステム)はインボイス制度にも対応予定
ZEDI(全銀EDIシステム)は、2023年10月から始まるインボイス制度に対応するサービス「DI-ZEDI(ディー・アイ・ゼディ)」を同年4月24日から制定しています。
DI-ZEDIを使うと、電子請求書、いわゆるデジタルインボイスの情報を振り込み電文に添付が可能です。請求書データとZEDIによる決済データの連携が可能となり、消込処理などを自動化できます。
DI-ZEDIの利用環境を整えるべく、拡張規格はソフトウェアのベンダーや企業に広く公開されています。対応する会計ソフトなどは今後さらなる充実が見込まれるでしょう。
インボイス制度が始まると企業の経理部門では扱う請求書が増えるため、確認や仕訳などによる負担増が懸念されています。しかしZEDIやDI-ZEDIを活用することで、経理業務全体の自動化や負担軽減が期待できます。
インボイス制度についても、「2023年10月から始まるインボイス制度とは?図解でわかりやすく解説!」で理解を深めておきましょう。
ZEDI(全銀EDIシステム)の導入方法・手順
ZEDIの導入方法・手順は、以下の通りです。
ZEDIの導入手順
1. 導入検討と取引先金融機関への相談2. 取引先企業との打ち合わせ
3. 金融機関のEBサービスと会計ソフトとの連携確認
4. 取引先企業への周知
①導入検討と取引先金融機関への相談
ZEDIの導入にあたって、導入費用・ランニングコスト・業務効率化により削減される時間・人件費などを割り出し、費用対効果を見極めることから始めましょう。ZEDIの利用で新たに必要となるEB料金、ZEDIに対応する会計ソフトなどにかかるコストも確認します。
ZEDIの導入を決定したら、取引先の金融機関に相談しておきましょう。
②取引先企業との打ち合わせ
ZEDIは企業間取引における経理業務の効率化を目的としているため、取引先企業との打ち合わせや相談も重要です。実際にZEDIを利用するにあたり、振込電文に添付すべき情報は何かを決めます。消込作業に必要となる情報なので、実務に即して決定しましょう。
支払通知番号や請求書番号、支払金額などが考えられますが、金融EDI情報標準(ZEDIを利用する事業者から登録申請を受けた情報)を参考にするのがおすすめです。
出典:全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット):「金融EDI情報標準「DI-ZEDI(ディーアイゼディ)」について」
③金融機関のEBサービスと会計ソフトとの連携確認
取引先金融機関の提供するEBサービスを導入して、会社の会計ソフトとの連携を確認します。実務で必要とされる、以下のような業務への対応状況を一つひとつ確認しましょう。
EBサービスと会計ソフトとの主な連携確認事項
● ZEDIに対応したXML形式の振込電文の作成● ZEDIで送信されたXML形式の振込入金の通知
● 入出金取引明細の読み込み など
④取引先企業への周知
取引先企業へZEDIの利用開始を周知します。
支払企業の立場であれば、ZEDIに対応した振り込みでの支払いの開始を連絡します。受取企業の立場であれば、ZEDIに対応した振り込みの希望を連絡しましょう。
スモールビジネスを、世界の主役に。
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まとめ
ZEDIとは、企業間の振込電文に多くのデジタル情報(EDI情報)を添付できるシステムです。ZEDIを導入すれば、企業間取引で生じる消込作業の負担が軽減されます。受取企業・支払企業の双方で、経理部門の業務効率化を狙えるとあって、大手企業を中心に普及が進んでいます。
また2023年10月に開始されるインボイス制度に向けて、ZEDIはデジタルインボイスにも対応を開始しました。インボイス制度による経理業務の負担増を心配されるなら、この機会にZEDIの導入を検討するとよいでしょう。
導入にあたっては、コスト面とともに、ZEDIのメリットを十分に活用できるソフトウェアなどの準備が不可欠です。
よくある質問
ZEDI(全銀EDIシステム)とは?
ZEDI(全銀EDIシステム)とは、企業間の振込電文に支払通知番号などのデジタル情報(EDI情報)を添付できるシステムです。XML形式により、自由にたくさんの情報を添付できます。
ZEDIの仕組みを詳しく知りたい方は「ZEDI(全銀EDIシステム)とは?」をご覧ください。
ZEDI(全銀EDIシステム)を導入するメリットは?
ZEDI(全銀EDIシステム)を導入すると、売掛金の消込作業の効率化による経理部門の生産性向上、国際標準であるXML形式によって異なる製品間でも運用可能などのメリットがあります。
ZEDIの導入メリットを詳しく知りたい方は「ZEDI(全銀EDIシステム)のメリット」をご覧ください。
監修 安田亮(やすだ りょう) 公認会計士・税理士・1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。