監修 大柴 良史 社会保険労務士・CFP
ゼブラ企業は、利益追求だけでなく、社会的貢献や持続可能性を重視し、社会性と経済性の両立を目指す企業のことです。
急成長を目指すユニコーン企業で、社会的価値が軽視されることがあった反省から、社会課題の解決や持続可能な事業を目指すゼブラ企業が注目されつつあります。
本記事では、ゼブラ企業とは何か、ユニコーン企業との違いなどを解説し、日本や海外におけるゼブラ企業の具体的な事例も紹介します。
目次
ゼブラ企業とは
ゼブラ企業とは、社会的貢献や持続可能性を重視し、社会性と経済性の両立を目指す企業のことです。企業としての利益の追求だけでなく、社会的な課題解決や地域社会への貢献といった責任も果たそうとする姿勢をもつことが特徴です。
「ゼブラ」という名前は、白と黒のコントラストがあるシマウマに由来していて、社会的な貢献と企業の利益というように、一見相反する要素が共存していることを表しています。
ゼブラ企業とユニコーン企業の違い
ゼブラ企業と対照的な存在として、「ユニコーン企業」があります。
ユニコーン企業は、競争を勝ち抜いて急成長や株式市場への上場などを目指すベンチャー企業のことで、具体的には評価額が10億ドル以上、かつ設立10年以内の未上場ベンチャー企業のことを指します。
ゼブラ企業とユニコーン企業を比較すると、以下の違いがあります。
ゼブラ企業 | ユニコーン企業 | |
---|---|---|
事業をする目的 |
持続的な成長・繁栄 社会への貢献 |
急成長 上場・売却 |
事業の方法 | 協力 | 競争 |
他企業との関係 | Win-Win | 勝者・敗者 |
事業が生み出す結果 | 共存 | 独占・寡占 |
受益者 | コミュニティ | 株主、一部の個人 |
ゼブラ企業は、他社と協力してWin-Winの関係を築きながら、持続的な成長を目指して、着実に事業を成長させることが特徴です。地域社会や自然環境と調和しながら共存し、コミュニティ全体が利益を享受できる仕組みを作ることを重視しています。
一方、ユニコーン企業は、他社と競争して指数関数的な急成長や上場・売却を目指すことが特徴です。事業によって利益を得るのは主に株主や一部の個人であり、事業の結果として独占・寡占が生まれる構造にあります。
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ゼブラ企業が注目される背景
ゼブラ企業が注目される背景には、ユニコーン企業で社会的責任や社会的価値が軽視されることがあった反省が一因としてあります。
ユニコーン企業では、急成長や利益追求を優先するあまり、社会的な課題解決や地域社会への貢献が後回しにされてきました。この結果、企業が社会や環境に与える影響を軽視することへの疑問も大きくなり、企業のあり方を見直す動きが強まっています。
また、SDGs(持続可能な開発目標)が昨今注目され、持続可能性や社会貢献が世界的に重視される時代背景も、ゼブラ企業への関心が高まっている要因として挙げられるでしょう。
ゼブラ企業の特徴
ゼブラ企業の具体的な特徴としては、以下が通りです。
ゼブラ企業の特徴
- 社会的な課題に取り組んでいる
- ステークホルダー全体への貢献を重視している
- 長期的視点での成長を目指している
- 新しい価値や仕組みを提供する
社会課題の解決、ステークホルダー全体への貢献など、企業の利益以外の部分も重視する点がゼブラ企業の特徴です。それぞれの特徴を、以下で詳しく解説します。
社会的な課題に取り組んでいる
ゼブラ企業は、企業として利益を生み出すことにとどまらず、社会的な課題の解決にも積極的に取り組んでいます。環境保全や平等な社会の実現・貧困解消・地域活性化など、取り組む課題は企業によってさまざまです。
社会的課題の解決に取り組む姿勢は、消費者や投資家からの共感を呼び、持続的な事業活動につながります。
ステークホルダー全体への貢献を重視している
ゼブラ企業は、株主や経営層だけでなく、顧客や地域社会、従業員など幅広いステークホルダーへの貢献を目指しています。企業活動の利益が一部の利害関係者に偏ることなく、すべての関係者が恩恵を享受できるよう配慮されていることが特徴です。
また、ゼブラ企業は事業の透明性を担保して、意思決定や事業活動に対してステークホルダーから理解が得られるように努めています。
長期的視点での成長を目指している
ゼブラ企業は、一時的な急成長を目指すユニコーン企業とは異なり、長期にわたり企業と社会がともに利益を享受できる仕組みを作り上げることを目標としています。
短期的な利益追求に偏らずに、時間をかけて事業を進めることが特徴です。事業の基盤を固めて、地域社会や環境と調和しながら安定した発展を目指す価値観をもっています。
新しい価値や仕組みを提供する
ゼブラ企業は、社会的課題の解決や持続可能性を視野に入れた事業に取り組むために、従来の枠組みに縛られない新たな価値や仕組みを提供することが必要です。
ゼブラ企業がもたらす新たな価値や革新性は、ステークホルダー全体の協調を重視する「相利共生」を目指すものであり、自社だけでなく社会全体の利益を考慮しています。
【日本・海外】ゼブラ企業の例
「ゼブラ企業」と呼ばれる企業も、事業内容や取り組む社会課題は、個別の企業ごとにさまざまです。ここからは国内・海外のゼブラ企業の例をいくつか解説します。
株式会社陽と人
株式会社陽と人は、福島県の農産物や地域資源を最大限に活用し、地域とともに成長するためのさまざまな事業を展開するゼブラ企業です。
市場の規格外品も含め、生産者から直接買い取った農産物を都市部に「新たな規格」で流通させる事業を展開し、ブランド価値向上や生産者の所得向上を目指しています。
そのほか、規格外や廃棄される農産物を活用した化粧品・加工食品の企画・販売、地方事業者への販売促進・マーケティング支援など、地域に根差した事業を行っています。
株式会社ボーダレス・ジャパン
株式会社ボーダレス・ジャパンは、社会課題解決に取り組む起業家を支援し、その活動を広げるためのプラットフォームを提供するゼブラ企業です。
気候変動・貧困・ホームレス・人権・就労支援・子育て・地域課題・ダイバーシティなど、多様な社会課題に取り組む起業家の育成・支援を行っています。国内外で積極的に事業展開を行い、13ヶ国で50以上のソーシャルビジネスを運営しています。
グループ内の各社が売上の1%を拠出し合い、新たな起業家の創業資金として託す「恩送りのエコシステム」は、2019年グッドデザイン賞を受賞しました。次々と社会課題に取り組む事業が生まれる仕組みが採用されています。
Peerby
Peerbyは、活用されていない日用品を近隣の住民同士でシェアできるプラットフォームを提供するオランダのスタートアップです。もともとはユニコーン企業として急成長を遂げましたが、現在ではゼブラ企業として事業が行われています。
過去には事業の急成長に伴い収益性を求められるなかで、貸し借りの際に手数料を得る課金型のレンタルモデルに取り組むこともありました。
そのなかで、助け合いのコミュニティの提供が本質的な価値であることが再認識され、現在ではメンバーシップフィーに課金するコミュニティモデルへ転換してサービスが提供されています。
まとめ
ゼブラ企業とは、社会的貢献や持続可能性を重視し、社会性と経済性の両立を目指す企業です。社会的な課題の解決やコミュニティ全体への貢献を重視し、長期的視点での成長を目指しています。
急成長や利益追求を重視するユニコーン企業で社会的な責任・価値が軽視されることがあった反省から、近年ゼブラ企業への関心は高まっています。ぜひ、ゼブラ企業のような新たな企業のあり方に今後も注目してください。
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よくある質問
ゼブラ企業とはどのような企業?
ゼブラ企業とは、社会的貢献や持続可能性を重視し、社会性と経済性の両立を目指す企業のことです。社会的な課題に取り組んでいること、ステークホルダー全体への貢献を重視していること、新しい価値や仕組みを提供することなどが大きな特徴です。
ゼブラ企業について詳しくは、「ゼブラ企業とは」「ゼブラ企業の特徴」をご覧ください。
ゼブラ企業は具体的にどんな企業がある?
ゼブラ企業としては、たとえば、株式会社陽と人、Peerby、株式会社ボーダレス・ジャパンなどが挙げられます。
ゼブラ企業の具体例について詳しくは、「【日本・海外】ゼブラ企業の例」をご覧ください。
監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。