公開日:2023/06/17
監修 安田 亮 公認会計士・税理士・1級FP技能士
GビズIDとは、ひとつのID・パスワードで複数の行政サービスにログインできるサービスで、オンライン上で取得手続きが行えます。
GビズIDのアカウントを取得すれば、インターネット上で社会保険やものづくり補助金・IT補助金申請などの手続きも可能です。
本記事ではGビズIDの概要や背景、利用できる行政サービスを解説します。GビズIDのメリット・デメリットやアカウント取得の流れも説明するので、参考にしてください。
目次
- GビズIDとは
- GビズIDの種類
- 「GビズID」と「e-Gov」の違い
- GビズIDで利用できる主な行政サービス
- GビズIDの取得で利用できる主な手続き
- 社会保険・雇用保険の手続き
- ものづくり補助金やIT導入補助金の申請
- 飲食店の営業許可申請
- 経営力向上計画や事業継続力強化計画の認定申請
- GビズIDを取得するメリット
- 24時間365日どこでもさまざまな手続きができるようになる
- 申請手続きにかかる時間やコストを抑えられる
- アカウントの管理がしやすくなる
- 書類への押印が不要になる
- GビズIDを取得するデメリット
- GビズIDに対応していない行政サービスもある
- GビズIDを利用するまでに日数がかかる
- GビズIDのアカウント取得方法
- 必要なものを準備する
- gBizIDプライム申請書を作成する
- 申請書に押印して提出する
- 審査完了メールを受け取る
- まとめ
- よくある質問
- GビズIDとは?
- GビズIDでできることとは?
GビズIDとは
GビズIDとは、ひとつのアカウントでさまざまな行政サービスにログインできる法人・個人事業主向けの共通認証サービスです。
従来、法人向けオンライン行政サービスを利用するには、サービスごとにIDやパスワードを作成しなければならず、管理が複雑でした。
そこで管理を簡素化するために、GビズIDが発行されました。本人確認の手続きも簡単になるため、利用者の利便性向上やシステムの構築コスト削減が期待できるでしょう。
GビズIDの導入には、特定の法人が社会保険・労働保険・雇用保険に関する一部の手続きをする際の、電子申請の義務化が背景にあります。
2020年4月から特定法人(※)を対象に、電子申請が義務化されたのとあわせて、GビズIDが開始されました。
(※)資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人、相互会社、投資法人、特定目的会社
GビズIDの種類
GビズIDには3種類のアカウントがあり、それぞれ利用できる行政サービスが異なります。
アカウントの種類 | 対象者 | 書類審査 | 利用できる行政サービス |
gBizIDエントリー | 事業をしていれば誰でも利用できる | 不要 | 制限あり |
gBizIDプライム | 法人代表・個人事業主向け | 必要(約1週間) | 制限なし |
gBizIDメンバー | gBizIDプライム取得組織の従業員向け | 不要 | 制限あり |
GビズIDサイトの「行政サービス一覧」にて、行政サービスごとに利用可能なアカウントの種類が掲載されているのでご確認ください。
「GビズID」と「e-Gov」の違い
「e-Gov(電子政府の総合窓口)」は、以下のようなサービスを提供する行政のポータルサイトです。
e-Govが提供するサービス
● 行政機関の検索・案内サービスの提供● 各府省に対するオンライン申請手続きなどの窓口サービスの提供
両者の違いは、GビズIDが行政手続きをするための認証システムであるのに対し、e-Govは行政手続きをするためのポータルサイトである点です。
2020年11月から、e-Govで電子申請をする際にもGビズIDが利用できるようになっています。
GビズIDで利用できる主な行政サービス
出典:デジタル庁「GビズID」
GビズIDのアカウントで利用できる行政サービスは、順次拡大されています。
行政サービス | 概要 |
jGrants(経済産業省・補助金申請システム) | 経済産業省の補助金申請サービス |
IT導入補助金 | 中小企業や小規模事業者などがITツールを導入する際の経費の一部を補助する補助金 |
社会保険手続きの電子申請(日本年金機構) | インターネットを利用して社会保険に関する申請・届出できるシステム |
保安ネット(経済産業省) | 産業保安・製品安全関連法令に関する手続きをオンライン上でできるシステム |
DX推進ポータル(経済産業省 独立行政法人情報処理推進機構) | DX推進指標による自己診断やDX認定制度への各種申請手続きなどができる支援サイト |
GビズIDは上記以外にもさまざまな行政サービスに対応しています。利用可能な行政サービスは、GビズIDサイトでご確認ください。
GビズIDの取得で利用できる主な手続き
GビズIDのアカウントの取得を取得すると、主に以下のような手続きができます。
GビズIDで利用できる主な手続き
● 社会保険・雇用保険の手続き● ものづくり補助金やIT導入補助金の申請
● 飲食店の営業許可申請
● 経営力向上計画や事業継続力強化計画の認定申請
社会保険・雇用保険の手続き
社会保険の一部の手続きを電子申請する際に、従来の電子証明書に加えてGビズIDによる本人確認が利用できるようになりました。
GビズIDが利用できる社会保険の手続き
● 資格取得届● 資格喪失届
● 算定基礎届
● 月額変更届
● 賞与支払届
● 被扶養者(異動)届
● 国民年金第3号被保険者関係届
● 転勤届
● 個人番号登録届
また、労働保険や雇用保険に関する以下のような手続きの際も、GビズIDを利用した電子申請が可能です。
GビズIDが利用できる労働保険・雇用保険の主な手続き
● 雇用保険被保険者資格取得届● 雇用保険被保険者資格喪失届
● 高年齢雇用継続基本給付の申請
● 労働保険保険関係消滅
小規模事業者持続化補助金やものづくり補助金、IT導入補助金の申請
GビズIDを取得すれば、「持続化補助金」や「ものづくり補助金」、「IT導入補助金」の申請手続きをインターネットで行えます。いずれも、中小企業の生産性向上を支援するための制度です。
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者のインボイス導入や賃金引上げなどの制度変更への対応を支援する補助制度 |
ものづくり補助金 | 中小企業や小規模事業者などが取り組む開発や生産プロセスの改善などの設備投資を支援する経済産業省の制度 |
IT導入補助金 | 中小企業や小規模事業者などがITツールを導入する経費の一部を補助する制度 |
飲食店の営業許可申請
GビズIDは、飲食店の営業許可申請にも対応しています。「食品衛生申請等システム」にアクセスしてGビズIDでログインすれば、オンライン上で各種申請が可能です。
GビズIDが利用できる主な手続き
● 営業許可申請● 営業の届出
● 食品等自主回収報告
なお、従来どおり紙ベースでの申請にも対応しています。
経営力向上計画や事業継続力強化計画の認定申請
「経営力向上計画」や「事業継続力強化計画」の認定申請にも、GビズIDが利用できます。
経営力向上計画 | 中小企業・小規模事業者などが人材育成や財務管理、設備投資などの取組を記載した「経営力向上計画」を申請して認定されると、税制や金融支援を受けられる制度 |
事業継続力強化計画認定制度 | 防災・減災に取り組む中小企業が取組をまとめた「事業継続力強化計画」を申請して認定されると、税制や金融支援を受けられる制度 |
経営力向上計画・事業継続力強化計画は基本的に電子申請で行うため、GビズIDが必要です。
GビズIDを取得するメリット
GビズIDの導入によって、行政サービスを利用する際の利便性が向上します。具体的なメリットは以下の通りです。
GビズIDを取得するメリット
● 24時間365日どこでもさまざまな手続きができるようになる● 申請手続きにかかる時間やコストを抑えられる
● アカウントの管理がしやすくなる
● 書類への押印が不要になる
24時間365日どこでもさまざまな手続きができるようになる
GビズIDを取得すれば、インターネット上で補助金の申請や社会保険の手続きなどの行政サービスを利用できます。原則として24時間365日、自宅や職場から手続きが可能です(※)。
(※)メンテナンスなどによっては休止する場合もあります。
申請手続きにかかる時間やコストを抑えられる
場所を問わず行政サービスが利用できるようになるので、申請手続きなどで役所に行く時間が省けます。役所での待ち時間も発生しないため、手続きにかかる時間の短縮が可能です。
また、交通費や書類を送る切手代がかからないため、コストも抑えられます。さらに、GビズIDの取得にも手数料はかかりません。
アカウントの管理がしやすくなる
GビズIDを取得すれば、行政サービスごとにID・パスワードを取得する必要がありません。ひとつのID・パスワードで複数の行政サービスを利用できるので、アカウントの管理がしやすくなります。
また、アカウントには有効期限がないため、最初にひとつ取得すれば年度更新の必要もありません(2021年8月時点)。
書類への押印が不要になる
GビズID・パスワードでログインした際の認証機能で申請者を確認するため、書類への押印が不要になります。また、電子申請の際にGビズIDで認証すれば、電子証明書の取得(有料)も不要です。
GビズIDを取得するデメリット・注意点
GビズIDには、手続きにかかる時間やコストを抑えられるなどのメリットがある一方で、注意点もあります。
GビズIDのデメリット
● GビズIDに対応していない行政サービスもある● GビズIDを利用するまでに日数がかかる
GビズIDに対応していない行政サービスもある
GビズIDは、すべての行政サービスに対応しているわけではありません(2023年6月時点)。事前に、利用する行政サービスがGビズIDに対応しているかどうかを確認しておきましょう。
ただし、利用できる行政サービスは順次拡大されており、今後も増える予定です。
GビズIDを利用するまでに日数がかかる
GビズIDのアカウントのうち、補助金申請などができる「gBizIDプライム」のアカウント発行には、書類審査を含めて通常2週間程度の日数を要します。
また、アカウントを発行する際には印鑑(登録)証明書の用意も必要です。早めに書類を用意し、余裕をもって申請しましょう。
GビズIDのアカウント取得方法
「gBizIDプライム」のアカウントを取得するには、書類審査(約1週間)が必要です。以下の流れで申請しましょう。
GビズIDのアカウント取得方法
1. 必要なものを準備する2. gBizIDプライム申請書を作成する
3. 申請書を印刷して押印する
4. 申請書と印鑑(登録)証明書を郵送する
5. 審査完了メールを受け取る
6. ID登録完了
アカウント作成の詳しい手順は、GビズIDの「ID作成ガイド(新規作成者向け)」でも確認できます。
1 必要なものを準備する
アカウントの取得には、アカウントIDとなるメールアドレス・SMS受信用のスマホ(携帯電話)・印鑑(登録)証明書・登録印が必要です。
ただし、gBizIDエントリー、gBizIDメンバーのアカウントを作成する場合、印鑑(登録)証明書を用意する必要はありません。アカウントごとに必要なものが異なるため、ご注意ください。
アカウントの種類 | メールアドレス(アカウントID) | 印鑑(登録)証明書、登録印 | スマートフォンまたは携帯電話 |
gBizIDエントリー | ○ | × | × |
gBizIDプライム | ○ | ○ | ○ |
gBizIDメンバー | ○ | × | ○ |
なお、印鑑証明書(法人)は「登記・供託オンライン申請システム」、印鑑登録証明書(個人事業主)は「コンビニ交付」を利用すれば、非対面で入手できます。発行日より3ヶ月以内の原本を用意しましょう。
2 gBizIDプライム申請書を作成する
次に、申請に必要な「gBizIDプライム申請書」を以下の手順で作成します。
gBizIDプライム申請書の作成手順
1. GビズIDサイトのTOPページで「gBizIDプライム作成」をクリックする2. メールアドレスを登録するとワンタイムパスワードが届く
3. ワンタイムパスワードを入力して必要事項の入力画面に進む
4. 必要事項を入力する
5. 作成された「gBizIDプライム申請書」をダウンロードする
申請書に押印して提出する
ダウンロードした申請書を印刷し、作成日を記入・代表者印(個人事業主の場合は実印)を押印します。押印した「gBizIDプライム申請書」と「印鑑(登録)証明書」をGビズID運用センターあてに提出しましょう。
運用センターによって審査が行われ、不備がなければ1週間程度で承認されます。書類に問題がある場合、内容確認で日数がかかる場合もあるため注意してください。
審査状況は、GビズIDのホームページにて以下の手順で照会できます。
審査状況の確認方法
1. GビズIDのTOPページ画面上部の「アカウント作成」を選択する2. 「登録・申請状況確認」を選択する
3. 「申請状況を知りたい」ボタンを押下する
4. アカウントID(メールアドレス)と代表者の生年月日またはSMS受信用電話番号を入力して検索する
5. 申請状況が表示される
3 審査完了メールを受け取る
審査が完了すると、原則2週間以内に審査完了メールが届きます。SMS番号に届くワンタイムパスワードで認証し、これから使用するパスワードを設定すれば、GビズIDの登録が完了です。
まとめ
GビズIDは、法人・個人事業主向けの共通認証サービスです。ひとつのID・パスワードでさまざまな行政サービスにログインでき、オンライン上で補助金申請や社会保険などの手続きができます。
GビズID(gBizIDプライム)のアカウント登録が完了するまで、2週間程度の日数が必要です。あらかじめ印鑑(登録)証明書を用意しておき、余裕をもって登録を済ませましょう。
よくある質問
GビズIDとは?
GビズIDは、ひとつのID・パスワードでさまざまな行政サービスにログインできる法人・個人事業主向けの共通認証サービスです。
GビズIDの概要を詳しく知りたい方は「GビズIDとは」をご覧ください。
GビズIDでできることとは?
GビズIDのアカウントを取得すれば、インターネット上で主に以下のような手続きができます。
● 社会保険・雇用保険の手続き
● 小規模事業者持続化補助金やものづくり補助金、IT導入補助金の申請
● 飲食店の営業許可申請
● 経営力向上計画や事業継続力強化計画の認定申請
GビズIDの取得によって利用できる手続きを詳しく知りたい方は「GビズIDの取得で利用できる主な手続き」をご覧ください。
監修 安田亮(やすだ りょう) 公認会計士・税理士・1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。