公開日:2023/06/17
監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
SDGsとは持続可能な開発目標であり、国際的な取り組みです。日本でも、SDGsの達成に向けたさまざまな取り組みが行われています。
SDGsが具体的にどのような取り組みなのか、なぜ目標に掲げられているのか知らない方も多いでしょう。
本記事では、SDGsの意味や内容、SDGs17の目標を解説し、日本や世界の取り組みも紹介します。
目次
- SDGsとは
- SDGsが目標としてかかげられた背景
- SDGs17の目標
- ① 貧困をなくそう
- ② 飢餓をゼロに
- ③ すべての人に健康と福祉を
- ④ 質の高い教育をみんなに
- ⑤ ジェンダー平等を実現しよう
- ⑥ 安全な水とトイレを世界中に
- ⑦ エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- ⑧ 働きがいも経済成長も
- ⑨ 産業と技術革新の基盤をつくろう
- ⑩ 人や国の不平等をなくそう
- ⑪ 住み続けられるまちづくりを
- ⑫ つくる責任 つかう責任
- ⑬ 気候変動に具体的な対策を
- ⑭ 海の豊かさを守ろう
- ⑮ 陸の豊かさも守ろう
- ⑯ 平和と公正をすべての人に
- ⑰ パートナーシップで目標を達成しよう
- SDGsにおける世界の取り組み
- SDGsにおける日本の取り組み
- SDGs私たちにできること
- スモールビジネスを、世界の主役に。
- まとめ
- よくある質問
- SDGsとは?
- SDGs17の目標とは?
SDGsとは
SDGsは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で2015年9月に行われた国際サミットで採択されました。これは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標です。
SDGsは、国際社会のさまざまな問題の解決に取り組み、地球上のすべての人々が安全かつ安心して暮らせる世界の実現を目指しています。具体的には、貧困や飢餓の撲滅、地球環境の保全などが重要なテーマです。
2030アジェンダには、17の目標と169のターゲットが掲げられており、国連加盟193ヶ国が、2030年までの目標達成に向けたさまざまな取り組みを行っています。
SDGsが目標としてかかげられた背景
SDGsは、2000年9月の「国際ミレニアム宣言」を基にまとめられたMDGsの後継として誕生しました。MDGsでは貧困や飢餓などの開発途上国の問題解決を目指し、一定の成果をあげています。
たとえば、MDGsでは極度の貧困に苦しむ人口の割合を、2015年までに半減する目標を掲げていました。その結果1990年に世界人口の約36%だった割合が、2015年には約12%と目標を上回る成果を出しています。
また、感染症対策の領域でも、新規HIV感染者数は2000年から2014年までに約35%の減少を達成しています。
しかし、教育や母子保健、衛生関連の領域では目標の達成が難しく、まだ課題が残されている状態です。MDGsで残された課題はSDGsに引き継がれ、国際社会全体で解決を目指しています。
SDGs17の目標
SDGsには達成するべき17の目標が設定されており、大きく次の5つのカテゴリーに分かれています。
17の目標の5つのカテゴリ
● People(人間)● Planet(地球)
● Prosperity(豊かさ)
● Peace(平和)
● Partnership(パートナーシップ)
カテゴリー | 含まれる目標 |
People(人間) | 1. 貧困をなくそう 2. 飢餓をゼロに 3. すべての人に健康と福祉を 4. 質の高い教育をみんなに 5. ジェンダー平等を実現しよう 6. 安全な水とトイレを世界中に |
Prosperity(豊かさ) | 7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに 8. 働きがいも経済成長も 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう 10. 人や国の不平等をなくそう 11. 住み続けられるまちづくりを |
Planet(地球) | 12. つくる責任 つかう責任 13. 気候変動に具体的な対策を 14. 海の豊かさを守ろう 15. 陸の豊かさも守ろう |
Peace(平和) | 16. 平和と公正をすべての人に |
Partnership(パートナーシップ) | 17. パートナーシップで目標を達成しよう |
SDGs17の目標を具体的に見ていきましょう。
1 貧困をなくそう
目標1では「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」ことを目指しています。
改善傾向とはいえ、世界では人口の約10%(2015年時点)がまだ貧困状態です。1日1.9ドル未満で生活する「極度に貧しい」暮らしをしている人もいます。
極度の貧困をなくすために国際社会全体で寄附や資金援助を行い、生活の保全やサービスの利用ができる環境作りが必要です。
2 飢餓をゼロに
目標2では「飢餓を終わらせ、食糧安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」ことを目指しています。
世界人口の約11%(2011年時点)が、その日または明日以降も食べていけるかわからない状態です。すべての人が常に十分な食料を手に入れられる社会や、食料の生産性・生産量を増やす持続的な仕組みの構築が求められます。
3 すべての人に健康と福祉を
目標3では、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」ことを目指しています。
世界では、数万人に対して医者が1人しかいない国も珍しくなく、十分な治療を受けられない人がいます。
すべての人が基本的な保健サービスや医療、治療薬・ワクチンを受けられるように、開発途上国を中心に援助が必要でしょう。
4 質の高い教育をみんなに
目標4では、「すべての人々への包括的かつ公平な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」ことを目指しています。
サハラ以南のアフリカ地域では5人に1人が小学校に通えないなど、世界では教育を満足に受けられない人が多くいます。
教育人材の増加は、国際協力を通じて、差別なく一定の教育を受けられる環境や必要な技術、知識の提供を促進する重要な課題です。
5 ジェンダー平等を実現しよう
目標5では、「ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女子のエンパワーメントを行う」ことを目指しています。
南アジア一部では、女性や女の子の人権が守られず、18歳を迎える前に結婚させられる慣習が根強く、いまだになくなりません。世界には女性(または女の子)の立場が弱い国がいくつもあります。
女性に対する差別や暴力をなくし、男性と同じ権利を持てるような仕組みを国際社会全体で考えていく必要があるでしょう。
6 安全な水とトイレを世界中に
目標6では、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」ことを目指しています。
世界には約20憶人もの人々が水道設備のない状況で生活しており、安全な水の確保やトイレの利用ができない状態です。
水道設備の整備には多額の資金と技術が必要であり、さらに設備の維持や管理を行う人材や制度も必要です。
国際協力を強化し、開発途上国の対応力を向上させるために、水やトイレに関する知識を活用できるような取り組みが求められます。
7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
目標7では、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な現代的エネルギーへのアクセスを確保する」ことを目指しています。
世界では7億人以上が電力を使えていない状態です。すべての人がエネルギー技術を利用できるよう、国際的な協力により投資を促進させなくてはいけません。
8 働きがいも経済成長も
目標8では、「包括的かつ持続可能な経済成長、およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用とディーセント・ワーク(適切な雇用)を促進する」ことを目指しています。
後発開発途上国と呼ばれる世界でも貧しい国々では、5~17歳までの子どもの5人に1人が強制労働を強いられています。
さらに世界の15~24歳の若者の5人に1人が教育も受けられず、仕事にもつけず、職業訓練を受けることもできない状況です。
開発が遅れている国に対し、貿易によって援助を増やす「拡大統合フレームワーク(EIF)」などを活用して持続可能な政策を実施することが重要です。
働きがいのある仕事を増やし、技術の向上を通じて生産性を高めて、環境に配慮した経済成長を促進する必要があるでしょう。
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
目標9では、「レジリエントなインフラ構築、包括的かつ持続可能な産業化の促進、およびイノベーションの拡大を図る」ことを目指しています。
世界では、約29億人がインターネットにアクセスできず、インフラの面でも格差が広がっています。情報通信技術を誰もが安くて公平に利用できるように、質・信頼性が高く、災害に強いインフラの整備や、新しい技術の開発と安定した産業化を進めなくてはいけません。
10 人や国の不平等をなくそう
目標10では、「各国内および各国間の不平等を是正する」ことを目指しています。
世界ではかつてないほど富・所得の格差が広がっています。たとえば2017年には、世界でもっとも豊かな1%の人々が世界全体の約33%の資産を保有していました。
格差是正のためには、特に開発が遅れている国に対しての貿易を優遇や政府開発援助などで資金が流れるようにする必要があるでしょう。
11 住み続けられるまちづくりを
目標11では、「包括的で安全かつレジリエントで持続可能な都市および人間居住を実現する」ことを目指しています。
近年は干ばつや砂漠化、スーパー台風、豪雨などの自然災害で、移住を余儀なくされる人や食糧危機にさらされる人が増えています。開発途上国への資金や建築技術の支援などを行って、開発途上国にある資源を使い、持続可能な災害に強い建物作りが必要です。
12 つくる責任 つかう責任
目標12では、「持続可能な生産消費形態を確保する」ことを目指しています。
飢餓に苦しむ人がいる一方で、世界で生産されている食品の約3分の1(13億トン)が、生産から消費のなかで捨てられています。一人ひとりが食料問題を考え、捨てられる食料を減らせるように努める必要があるでしょう。
13 気候変動に具体的な対策を
目標13では、「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」ことを目指しています。
世界中で気候変動が起こっており、たとえば日本でも熱帯夜の平均日数が100年前の約2.6倍に増えています。
人々が気候変動に伴う環境変化への適応やその影響の軽減に向けて、大気中の温室効果ガスの削減などの取り組みが必要です。
そのためには知識を深め、能力を高めることや制度の整備、教育の指導の充実が不可欠です。
また、効果的な計画立案や管理能力の向上も重要な要素でしょう。
14 海の豊かさを守ろう
目標14では、「持続可能な開発のために海洋資源を保全し、持続的に利用する」ことを目指しています。
海には日常で使用されているプラスチックごみが、年間900万~1400万トン(2016年時点)流出しています。また、生物学的に持続可能な水準にある魚類資源の割合は、1974年の90%から2015年には67%へと減少傾向です。
海の恵みを守るためには、漁獲量の管理調整が大切です。世界は海でつながっているため、国家間での条約をもとに国際社会が協力し、海と海洋資源を保全できれば、海の豊かさが守られるでしょう。
15 陸の豊かさも守ろう
目標15では、「陸域生態系の保護・回復・持続可能な利用の促進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・防止及び生物多様性の損失の阻止を促進する」ことを目指しています。
哺乳類で25%、針葉樹で34%が木の伐採や砂漠化など、自然破壊が原因で絶滅の危機にさらされていると推定される割合です。土地や土壌を回復させて、植林を大きく増やすなど、資金の確保や国際支援を実施し、自然を維持・回復させる必要があるでしょう。
16 平和と公正をすべての人に
目標16では、「持続可能な開発のための平和で包括的な社会の促進、すべての人々への司法へのアクセス提供、およびあらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包括的な制度の構築を図る」ことを目指しています。
世界では、差別や暴力、紛争などにより多くの人々が苦しんでいます。特に子どもたちは、5分にひとりが暴力によって命を落としているなど、深刻な状況です。
すべての人が平等で平和に暮らすためにも、基本的な自由が守られる社会の構築や差別のない法律・政策への取り組みが求められるでしょう。
開発途上国では、テロや犯罪の防止などにも取り組める機関を国単位で育む必要があります。
17 パートナーシップで目標を達成しよう
目標17では、「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」ことを目指しています。
SDGsの達成には、開発途上国の開発・発展が必要不可欠です。開発途上国への開発・資金の援助および、能力を高めるための支援を強化するなど国際協力のもと実施する必要があります。
SDGsにおける世界の取り組み
世界のSDGs達成率ランキングの上位は、ヨーロッパ諸国が多くランクインしています。特に最重要課題である、気候変動対策への取り組みに力を入れている国が多いです。
たとえば、デンマークのコペンハーゲンでは「UN17 Village」と呼ばれるエコ・ビレッジの建築プロジェクトが進行しています。このプロジェクトは、雨水やリサイクルされた建材を活用して持続可能な建物を建設する取り組みです。
ほかにも、フランスでは情報発信サイト「Agenda2030」の開設やスウェーデン、フィンランドではCO2削減に向けた取り組みが進んでいます。
一方で、ランキング下位はアフリカを中心とする開発途上国が多く含まれています。先進国は財政的な支援や技術移転などを通じて、開発途上国の持続可能な発展を支える役割を果たす必要があるでしょう。
なお、2022年の日本の達成率ランキングは19位で、前年2021年の18位よりワンランクダウンする結果となりました。
SDGsにおける日本の取り組み
SDGsにおける日本政府の取り組みは以下の通りです。
SDGsにおける日本の取り組み
● 実施体制の構築● ジャパンSDGsアワード
● SDGs未来都市
カテゴリー | 優先課題 |
People(人間) | 1.あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現 2.健康・長寿の達成 |
Prosperity(繁栄) | 3.成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション 4.持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備 |
Planet(地球) | 5.省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会 6.生物多様性、森林、海洋等の環境の保全 |
Peace(平和) | 7.平和と安全・安心社会の実現 |
Partnership(パートナーシップ) | 8.SDGs 実施推進の体制と手段 |
政府は「SDGs実施指針」をもとに、計画を策定し、国内外から協力できるようにSDGsを推進しています。
ほかにも、国内の企業や機関、団体の取り組みを「見える化」した「ジャパンSDGsアワード」での表彰や、「SDGs未来都市」の選定を実施し、都市や地域への資金支援を行っています。
また政府だけでなく、企業でもSDGsの達成に向けた取り組みを実施しているケースは珍しくありません。
たとえば、「SMBC日興証券株式会社」のエコファンド設立や、「株式会社リコー」のサスティナビリティへの取り組みなどが挙げられます。
SDGs私たちにできること
SDGsの達成には、個人や企業が意識してできることから取り組む必要があります。比較的取り組みやすい活動と、該当する目標を紹介するので参考にしてください。
取り組み例 | 該当目標 |
募金箱や募金ができる自動販売機の設置(寄附) | 1.貧困をなくそう 4.質の高い教育をみんなに |
紙媒体からペーパーレス化への移行 | 13.気候変動に具体的な対策を 15.陸の豊かさを守ろう |
育児休暇の男性適用 | 5.ジェンダー平等を実現しよう |
節電 | 13.気候変動に具体的な対策を |
徒歩や自転車での移動の推奨 | 3.すべての人に健康と福祉を 13.気候変動に具体的な対策を |
SDGsの取り組みや考え方は企業によって異なります。まずは募金箱の設置や節電など、自社ですぐにできる小さなことから取り組んでみましょう。
スモールビジネスを、世界の主役に。
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まとめ
SDGsは持続可能な開発目標であり、世界中の人々が安心・安全に暮らせる社会を目標として、MDGsの後継として誕生しました。
SDGsには世界共通の17の目標が設定されており、2030年までの達成を目指して各国でさまざまな取り組みが行われています。
しかし、開発途上国などSDGsの進捗がおもわしくない国もあります。そのため、SDGsの達成には、開発途上国などへの支援や投資を行い、全体的な底上げが必要です。
よくある質問
SDGsとは?
SDGsとは、持続可能な開発目標のことです。世界共通の17の目標が設定されており、2030年まで達成を目指しています。
詳しくは「SDGsとは」をご覧ください。
SDGs17の目標とは?
SDGs17とは、SDGs達成のために示された17の目標は5つのカテゴリーに準じた目標が示されています。5つのカテゴリーは以下の通りです。
17の目標の5つのカテゴリ
● People(人間)● Planet(地球)
● Prosperity(豊かさ)
● Peace(平和)
● Partnership(パートナーシップ)
監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。