公開日:2024/06/04
監修 涌井 好文 社会保険労務士
自主行動計画とは、業界団体や企業が持続可能な社会の実現に向け自主的に策定する行動計画です。本記事では、物流業界の自主行動計画を解説します。
物流業界は、輸送力が低下する「2024年問題」に直面しています。2024年問題は、自動車運転業務に対する時間外労働の上限規制適用によって、物流業界で発生する問題です。
2024年問題への対策として、物流業界でも自主行動計画を作成・公表するよう政府から要請がありました。
物流の自主行動計画の作成・公表が要請される背景に関しても解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
自主行動計画とは
たとえば中小企業庁では、「取引適正化」と「付加価値向上」の2点にサプライチェーン全体で取り組むべきとして、自主行動計画の策定および着実な実行を業界団体に要請しています。
また日本経団連は、環境保全に向けた「経団連環境自主行動計画」を1997年に発表しました。経団連の発表を受け、各業界団体もCO2排出の削減目標などを自主的に設定し始めました。
経団連環境自主行動計画は2013年に「低炭素社会実行計画」に移行され、地球温暖化対策の効果をより高めるための継続的な取り組み・フォローアップが現在もなされています。
物流の自主行動計画
「物流革新に向けた政策パッケージ」は、物流の停滞が懸念される「2024年問題」への対策として、政府によって策定されました。
「物流革新に向けた政策パッケージ」の施策の内容は、以下の通りです。
物流革新に向けた政策パッケージ」の施策の内容
- 商慣行の見直し
- 物流の効率化
- 荷主・消費者の行動変容
商慣行の見直し
具体的には、以下の施策が想定されています。
商慣行の見直し
- 荷待ち、荷役時間の削減
- 納品期限や物流コスト込みの取引価格の見直し
- 多重下請構造の是正
- 荷主・元請の監視の強化、結果の公表、継続的なフォロー及びそのための体制強化(トラックGメンの創設)
- 賃金水準向上に向けた適正運賃収受・価格転嫁円滑化の取り組み
- トラックの「標準的な運賃」制度の拡充・徹底
物流の効率化
具体的には以下の施策が想定されています。
物流の効率化
- 即効性のある設備投資(バース予約システム、フォークリフト導入、自動化・機械化など)
- 物流GX(グリーントランスフォーメーション)の推進(鉄道・内航海運の輸送力増強等によるモーダルシフト、車両・船舶・ 物流施設・港湾などの脱炭素化)
- 物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進(自動運転、ドローン物流、自動配送ロボット、港湾AIターミナル、サイバーポート、フィジカルインターネット等)
- 「物流標準化」の推進(パレットやコンテナの規格統一化など)
- 物流拠点の機能強化・土地利用最適化や物流ネットワークの形成
- 高速道路のトラック速度規制(80km/h)の引上げ
- 労働生産性向上に向けた利用しやすい高速道路料金の実現
- 特殊車両通行制度に関する見直し・利便性向上
- ダブル連結トラックの導入
- 貨物集配中の車両にかかる駐車規制の見直し
- 地域物流における共同輸配送の促進
- 軽トラック事業の適正運営や輸送の安全確保に向けた荷主・元請事業者などを通じた取り組み
- 女性や若者等の多様な人材の活用・育成
荷主・消費者の行動変容
具体的には以下の施策が想定されています。
荷主・消費者の行動変容
- 荷主の経営者層の意識改革・行動変容
- 荷主・物流事業者の物流改善を評価・公表する仕組みの創設
- 消費者の意識改革・行動変容を促す取り組み
- 再配達削減に向けた取り組み
- 広報の推進
物流の自主行動計画要請の背景である2024年問題とは?
2024年問題とは、2024年4月からの自動車運転業務に対する時間外労働の上限規制適用を受けて、物流業界で発生するさまざまな問題をいいます。
トラック運送はほかの業態よりも労働時間が長い傾向にあり、上限規制の適用による規制強化で是正が見込まれています。具体的には、「ドライバーの時間外労働の上限が年960時間に設定される」ことです。
上限規制の適用によってトラックドライバーの待遇改善につながる側面はあるものの、物流コスト・物流時間の増加や、ドライバー不足などの問題も同時に発生するとされています。
2024年問題は、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
【関連記事】2024年問題で物流・運送業界はどう変わる?分かりやすく解説 >>
荷主事業者・物流事業者が取り組むべきこと
ガイドラインには、立場別に取り組み事項が策定されています。
荷主事業者・着荷主事業者の取り組み事項
- 物流業務の効率化・合理化
- 運送契約の適正化
- 輸送・荷役作業等の安全の確保
【物流業者の取り組み事項】
- 物流業務の効率化・合理化
- 労働環境改善に資する措置
- 運賃の適正収受に資する措置
- 効率化に資する措置
日本の物流を支えるため、荷主事業者・物流事業者・一般消費者が協力しあっての取り組み求められていれます。
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まとめ
物流業界の自主行動計画は、時間外労働の上限規制適用により輸送力が低下する「2024年問題」を背景に、政府が取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」で業界・分野別の作成・公表が要請されました。
「物流革新に向けた政策パッケージ」の施策は「商慣習の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」の3点が軸となっています。
日本の物流業界を支えるためには、国・荷主企業・物流事業者だけでなく一般消費者も協力し合い、2024年問題に取り組んでいかなければなりません。
よくある質問
自主行動計画とは?
自主行動計画を詳しく知りたい方は、「自主行動計画とは」をご覧ください。
自主行動計画の策定が要請される背景は?
自主行動計画の背景を詳しく知りたい方は、「物流の自主行動計画要請の背景である2024年問題とは?」をご覧ください。
監修 涌井好文(わくい よしふみ) 社会保険労務士
涌井社会保険労務士事務所代表。平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。また、近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行う。