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トラックGメンとは?創設と監視体制強化の背景や事業者が取り組む事柄を解説

監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP

トラックGメンとは? 創設と監視体制強化の背景や事業者が取り組む事柄を解説

2023年7月に国土交通省がトラックGメンを創設し、物流業界の監視体制を強化しました。物流の問題解決に向けて発荷主や着荷主も協力が必要です。

創設と監視体制を強化した背景は、物流業界の2024年問題を解決するためです。

本記事ではトラックGメン創設と監視体制強化の背景物流業界をより良くするために各事業者が取り組むべき事柄を解説します。

目次

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トラックGメンとは

トラックGメンは、荷主企業や元請事業者の事情で、トラック事業者などの物流事業者に負担や不利益が生じていないかを調査、または監視する組織です。

トラックGメンとは

出典:国土交通省「トラックGメン躍動!」

具体的には、長時間の荷待ち、運賃・料金などの不当な据え置きが発生していないかを調査または監視します。

物流業界が抱える「2024年問題」の解決に向けては、荷主企業や元請事業者の監視を強化する体制が必要です。体制強化のため、2023年7月21日に国土交通省がトラックGメンを創設しました。

トラック事業者から積極的に情報収集し、悪質な荷主企業や元請事業者へはトラック法に基づいて「働きかけ」「要請」「勧告・公表」を実施します。

トラックGメンは現在、162名体制で業務を遂行する組織です。国土交通省の既定定員82人に加えて80人を緊急増員し、現在の人数となりました。

トラックGメンの創設と監視体制強化の背景

トラックドライバーはほかの職業と比較して労働時間が長く、低賃金な状況であるため、深刻な人手不足が課題です。

トラックGメンの創設と監視体制強化の背景

出典:厚生労働省「統計からみるトラック運転者の仕事」

2024年4月からトラックドライバーの時間外労働は、原則月45時間・年360時間、臨時的特別な事情がある場合でも年960時間を上限とし、加えて改善基準告示の見直しが行われました。

改正基準告知の詳細は、厚生労働省「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」をご覧ください。

人手不足に加えて労働時間の制限から輸送能力の不足が懸念され、「物流の2024年問題」と呼ばれています。

物流業界の労働環境を改善し、2024年問題を解決するため、国土交通省はトラックGメンを創設しました。より効率的な輸送を実現するため、荷主企業や元請事業者へ以下の働きかけを実施しています。

トラックGメンが働きかける内容

● トラックドライバーの荷待ち時間・待機時間を短縮
● 作業削減で労働環境の改善
しかし、2024年が間近に迫り、解決に向けてはさらなる強化が必要です。2023年に創設したトラックGメンは、既定定員82人に80人を緊急増員し、162名体制で業務を遂行しています。

2024年問題を詳しく知りたい方は「2024年問題とは?物流・運送業界が働き方改革関連法によって受ける影響と対策を解説」をご覧ください。

荷主事業者が共通で実施すべき、または推奨される取り組み

以下の3点は、荷物を発送する側と受け取る側両方の事業者に対して、共通して求められる取り組みです。

荷主事業者が共通で実施すべき、または推奨される取り組み

● 物流業務の効率化や合理化を図る
● 輸送契約を見直して適正な内容・方法で契約締結する
● 輸送・荷役作業時の安全確保に努める
順番に詳しく解説します。

物流業務の効率化や合理化を図る

物流業務の効率化や合理化を図るため、荷主事業者は以下の内容を見直しましょう。

物流業務の効率化・合理化を図るため見直す事柄

● 荷待ちや荷役作業にかかる時間を把握して2時間以内に収める
● 効率化を図るシステムや機材を導入する
● 検品作業や輸送方法、輸送場所を見直して作業時間や輸送時間を短縮する
効率化・合理化を図る取り組みを総合的に実施するため、物流管理統括者を選定して社内の足並みを揃えます。物流管理統括者は取り組みの責任者を務め、各部門との調整や交渉を行います。

荷主業者は、物流事業者から業務の効率化や合理化に向けての提案があれば協力し、連携して取り組んでいくことが大切です。

運送契約を見直して適正な内容・方法で契約締結する

運送契約は書面で結び、必要に応じて物流事業者と協議の場を用意しましょう。また、必要な対価を確実に支払うため、以下の点に注意します。

適正な対価を支払うためのポイント

● トラックドライバーが荷役作業をしているなら、荷役作業にかかる対価を支払う
● 運賃と料金は別建てで契約する
● 燃料サーチャージを導入し、燃料費上昇分は価格に反映する
● 高速料金の負担が必要な場合は荷主事業者が支払う
多重下請は適正な運賃や料金の収受を妨げるため、避けるべきです。下請に出す際は、下請事業者との契約も適切に結び、運賃や料金の適正化を図ります。

さらに、法令遵守や働き方改革、安全向上への取り組みに積極的な物流事業者を選んで契約しましょう。

輸送・荷役作業時の安全確保に努める

荷主事業者は、物流事業者の安全確保にも努めましょう。

台風や豪雨、豪雪発生時、または発生が見込まれる際、物流事業者が運行中止や中断を判断する可能性があります。安全上の理由から運行中止や中断の申し出があった場合は、拒否せず受け入れましょう。

また、トラックドライバーに荷役作業を依頼する場合は、労働災害を防止する施策も必要です。必要に応じて、安全対策を講じましょう。

発荷主事業者が実施すべき、または推奨される取り組み

発荷主事業者が実施すべき、または推奨される取り組みは、大きく分けて以下の3点です。

発荷主事業者が実施すべき、または推奨される取り組み

● 出荷作業の効率化を図る
● 輸送にかかる時間を考慮する
● 物流コストは着荷主事業者との取引に反映させる
順番に詳しく解説します。

出荷作業の効率化を図る

発荷主の事業者は出荷時の作業効率を、生産や荷造りの段階から考慮し、出荷情報は物流事業者へ事前提供しましょう。必要ならば施設の改善も実施します。

また、発送する量が集中する時期または少ない時期がある場合は、平準化を図る取り組みも大切です。

輸送にかかる時間を考慮する

出荷時刻は、輸送にかかる時間を考慮して設定しましょう。無理な時刻設定では、物流事業者に過度な負担がかかります。

また、物流が混雑する時間帯の出荷を避けられないか、社内の業務を見直して検討しましょう。

物流コストは着荷主事業者との取引に反映させる

物流にかかるコストは可視化し、着荷主事業者との取引への反映も必要です。着荷主事業者と有利に取引するために、物流コストを物流事業者側へ負担させてはなりません。

物流の量やサービスレベルに応じて価格を上下する、メニュープライシングの活用も有効です。着荷主事業者に、物流効率を考えた発注を促しましょう。

着荷主事業者が実施すべき、または推奨される取り組み

着荷主事業者が実施すべき、または推奨される取り組みは、大きく分けて以下の2点です。

着荷主事業者が実施すべき、または推奨される取り組み

● 納品まで時間の余裕を持たせて発注する
● 納品時に発生する作業の効率化を図る
順番に詳しく解説します。

納品まで時間の余裕を持たせて発注する

発注時は、納品までのリードタイムを十分に確保しましょう。やむを得ず納期短縮する場合は、着荷主側が納品物を引き取りに行くなど、物流事業者の負担を減らす対策を講じます。

また、納品時刻は道路が渋滞・混雑する時間帯を避けられないかも考え、時間を分散させましょう。

納品時に発生する作業の効率化を図る

納品時の作業効率化を図るため、以下の事柄を検討しましょう。

効率化を図る際の検討事項

● 倉庫の集約や新設・増設、レイアウト変更で環境を整える
● 繁閑差の平準化を図る
● 適正量の在庫をもつ
● 発注を大ロット化する
● 必要に応じて巡回集荷(ミルクラン方式)を導入する
倉庫の新設や増設は高額な費用がかかりますが、在庫量や発注量の見直しは多額の費用をかけずに取り組める内容です。

取引先まで納品物を取りに行く巡回集荷が適しているなら、発荷主事業者と相談のうえ、合意を得て導入を検討してみてもよいでしょう。

物流事業者が実施すべき、または推奨される取り組み

物流事業者が実施すべき、または推奨される取り組みは、大きく分けて以下の4点です。

物流事業者が実施すべき、または推奨される取り組み

● 状況を把握して効率化を図る
● トラックドライバーの労働環境を改善する
● 適正な運賃や料金を受け取り、賃金水準の向上を図る
● 下請取引の適正化や多重下請構造を是正する
順番に詳しく解説します。

現状を把握して効率化を図る

まずは物流業務の現状を把握・分析し、必要に応じて効率化を図りましょう。

そのためには効率化に資するシステムや設備導入が効果的です。たとえば物流システムや資機材の標準化、トラック予約受付システムの導入などを検討してみるとよいでしょう。

また、システムや設備導入以外でも、業務や輸送方法の見直しで効率化を図れる場合もあります。

業務や輸送方法の見直し例

● 共同輸配送の促進や帰り荷の確保
● 倉庫内作業の効率化
● 入出庫ロットの大口化や平準化、受注時間の前倒し
以上の見直しは、荷主事業者や物流事業者同士での協力も必要です。自社の取り組みだけで改善を進めず、他社とも連携して効率化を推進しましょう。

トラックドライバーの労働環境を改善する

トラックドライバーの労働環境を改善するため、輸送方法や取引内容の見直しだけでなく以下の事柄にも取り組みましょう。

労働環境の改善に必要な事柄

● 長時間労働を抑制し、労働環境を改善する
● 荷待ち時間・荷役作業の実態を把握する
● 輸送方法の見直しや効率化を図る
● 働きやすい職場認証制度やGマーク制度の取得も検討する
輸送方法の見直しや効率化には、以下の事柄が有効です。

輸送方法の見直し・効率化に有効な事柄

● モーダルシフト、モーダルコンビネーションの促進
● 中継輸送の促進
● 高速道路の積極利用
2024年問題を解決するには、トラックドライバーの労働環境を改善する取り組みも欠かせません。荷主事業者との取引内容だけでなく、自社のトラックドライバーが働きやすい労働環境を整えましょう。

適正な運賃や料金を受け取り、賃金水準の向上を図る

適正な運賃・料金を荷主事業者から受け取り、トラックドライバーの賃金水準を向上させましょう。出来高払いや残業代ありきの給与体系では、トラックドライバーの賃金が安定しません。基本給の引き上げが重要です。

また、荷主事業者との契約内容は見直しを行うとともに、輸送契約は必ず書面で締結するようにしましょう。なお、運送の対価は運賃、運送以外の対価は料金と、別建てで契約しましょう。

輸送コストに対する対価は運賃・送料へ反映させ、荷主事業者との交渉時は各種コストを計算した「標準的な運賃」を提示します。

下請取引の適正化や多重下請構造を是正する

下請取引をする場合は、下請に出す相手との契約も適切な内容で結び、多重下請は避けましょう。下請事業者がさらに下請に出していないかを確認し、下請構造の把握が必要です。

また、取引する下請事業者は法令遵守や働き方改革、安全向上に積極的な事業者を選びましょう。

下請法とは?守るために発注者側がやらないといけないこととは」の記事で、下請法について詳しく解説しています。

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まとめ

トラックGメンは物流業界が抱える2024年問題の解決に向けて、監視体制を強化するために国土交通省が創設した組織です。

荷主企業や元請事業者の問題でトラック事業者をはじめ、物流事業者に負担や不利益が生じていないかをトラックGメンが調査・監視します。

2024年問題は、物流事業者の努力だけで解決できる問題ではありません。荷物を送る・受け取る荷主事業者が改善すべき事柄も数多く存在しています。

物流関連の事業を営んでいない企業も自社で取り組むべき事柄がないかを考え、2024年問題解決に向けた対策を取りましょう。

よくある質問

トラックGメンとは?

トラックGメンは、荷主企業や元請事業者の問題でトラック事業者が不利益を被っていないかを調査・監視する組織です。

トラックGメンを詳しく知りたい方は、「トラックGメンとは」をご覧ください。

トラックGメンの創設と監視体制強化の背景

監視体制強化の背景には、物流業界の2024年問題を解決するため荷主企業や元請事業者への働きかけを強める必要がありました。

トラックGメンによる監視体制強化の背景を詳しく知りたい方は「トラックGメンの創設と監視体制強化の背景」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史