公開日:2023/10/26
監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP
助成金の申請がポータル上でできる、いわゆる電子申請が、令和5年6月よりすべての雇用関係助成金でも可能になっています。
従来の助成金の申請方法は窓口まで足をはこび、何枚も紙に手書きで必要な情報を記載するため、時間や手間がかかっていました。
しかし、電子申請が利用できるようになり、企業の経営者や事業者は、より助成金を活用しやすくなりました。
ただ急にすべての手続きがオンライン上で完結することに、戸惑う人もいるかもしれません。
本記事では、電子申請が可能な助成金の種類や利用方法を解説し、利用時の注意点も紹介します。
目次
助成金の電子申請とは?
助成金の電子申請は、多くの事業者が助成金の手続きをより円滑に進められるよう運用が開始されました。
従来、窓口に出向き行っていた紙での申請手続きが、自宅やお勤め先のパソコンでも行えます。
令和5年6月からはすべての雇用関係助成金が、手続きから申請状況の確認までポータル上で可能になりました。
ただし、雇用関係助成金の電子申請は「GビズID」から行うため、専用のID取得が必要です。
またGビズIDは利用するサービスによって必要なアカウントが異なるので、注意してください。
GビズIDとは
ひとつのID・パスワードで複数の行政サービスにログインできる、法人・個人事業主向け共通認証システムなお、アカウントにはプライム・メンバー・エントリーの3種類があります。申請までに猶予があるのであれば、プライムアカウントの作成がおすすめです。
プライムアカウントは発行までに約1週間かかるものの、現在提供しているすべての行政サービスで利用できます。
雇用関係助成金以外でも、「特定求職者雇用開発助成金」や「産業雇用安定助成金」も電子申請の受付が可能です。
電子申請が可能な助成金
電子申請が利用可能な雇用関係助成金は、取り組み内容によって6つに大別されます。
取り組み内容 | 助成金の種類 |
1. 再就職関係 | ● 労働移動支援助成金 |
2. 転職・再就職拡大支援関係 | ● 中途採用等支援助成金 |
3. 雇入れ関係 | ● トライアル雇用助成金 ● 地域雇用開発助成金 |
4. 雇用環境の整備関係など | ● 人材確保等支援助成金 ● 通年雇用助成金 ● キャリアアップ助成金 |
5. 仕事と家庭の両立支援関係など | ● 両立支援等助成金 |
6. 人材開発関係 | ● 人材開発支援助成金 |
事業主または団体が雇用関係助成金を受給するには、各助成金の固有要件とすべての助成金で共通する要件を満たす必要があります。
すべての助成金で共通する要件は以下です。
助成金の共通要件
● 雇用保険適用事業所の事業主である● 支給のための審査に協力する
● 申請期間内に申請を行う
助成金を受給できない条件
● 平成31年4月1日以降に、雇用関係助成金の不正受給による不支給決定または支給決定の取り消しを受けた● 当該不支給決定日または支給決定取消日から5年を経過していない
● 5年を経過した場合であっても、当該不正受給にかかる請求金額を、全額納付していない
したがって、社会保険労務士やハローワークの職員などに確認または厚生労働省のホームページを参照してください。
助成金を電子申請するメリット
助成金を電子申請する主なメリットは以下です。
助成金を電子申請するメリット
● 申請時間の短縮と効率化● 手続きのシンプルさ
● 利便性の向上
● 人為的エラーや環境への負荷削減
一度入力した情報の一部自動反映や、場所・時間を気にせずにできる手続きで、利便性が格段に向上している点もメリットです。
さらに、電子申請はデジタルフォーマットで情報を提供するため、人為的なエラーや情報の不整合を減少させられます。
また、紙の使用を削減し環境に対する負荷を軽減することで、持続可能性の観点からもプラスとなるでしょう。
助成金を電子申請する際のポイント
助成金を電子申請する際の、おおまかな流れとポイントを確認していきます。
助成金を電子申請する流れ
1. 「GビズID」を取得する2. 助成金を探す
3. 申請する
GビズIDの登録が完了後、ログインして事業所情報を登録しますが、アカウント登録は「法人代表者本人」または「個人事業主本人」なので注意してください。
つぎに、申請する助成金コースを選択します。
申請する助成金コースによっては、計画届等が必要な場合があるため、必要に応じて提出してください。
最後に、助成金の支給を申請して完了です。
なお、代理人に申請手続きを依頼する場合は「代理先設定」が必要なので、注意しましょう。
助成金を電子申請する際の注意点
助成金を電子申請する際の注意点を確認しておきます。
助成金を電子申請する際の注意点
● 計画届等を紙で提出している場合、ポータルからは同一の取組内容に対する支給申請ができない● 初回の電子申請では、支払方法・受取人住所届の提出が必要になる
● 入力内容を間違わないように留意する
● インターネット利用時はセキュリティにも留意する
紙で申請した場合、申請状況はポータルで確認できない点に注意してください。ただし、同一の取組内容以外で新たに計画書等を提出する場合は、電子申請が可能です。
なお、過去に紙で申請していても、電子申請が初回であれば、ポータル上での提出が必要になります。
電子申請で手続きがシンプルになったといっても、事業者情報や計画書等は必要なので、正確に入力するように留意してください。
また、入力情報は会社の重要な内容なので、誰でも利用できるセキュリティの弱いオープンネットワークの利用は推奨しません。
まとめ
多くの事業者の手続きがより円滑に進められるように、令和5年6月から雇用関係助成金のすべてが電子申請可能になりました。
電子申請が利用できるようになり、審査期間の短縮や利便性が向上されましたが、助成金の申請は複雑であることに変わりません。きちんと申請方法や提出書類の把握をしておく必要があります。
電子申請の利用は、厚生労働省のホームページでも詳細を確認できます。わからない場合は、社会保険労務士やハローワークの職員などに相談するようにしてください。
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よくある質問
助成金の電子申請とは?
令和5年6月から雇用関係助成金のすべてが、自宅やお勤め先からポータル上で申請できるようになっています。審査期間の短縮や利便性の向上が期待できます。
助成金の電子申請を詳しく知りたい方は「助成金の電子申請とは?」をご覧ください。
助成金を電子申請する際に注意するべき点は?
紙からの切り替え時の注意点は以下の通りです。
助成金を電子申請する際に注意するべき点
● 同一取り組み内容の場合電子申請ができない● 初回は支払方法・受取人住所届の提出が必要である
● 必要情報を正確に入力する
監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。