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戦略分野国内生産促進税制とは? 国内生産を促進する新たな税制度案を解説

監修 北田悠策 公認会計士・税理士

戦略分野国内生産促進税制とは? 国内生産を促進する新たな税制度案を解説

戦略分野国内生産促進税制は、戦略分野のうち、特に生産段階でのコストが高い事業に関して、生産・販売量に応じた税額控除を行う制度です。

新たな投資促進策として、令和6年度税制改正の大綱に盛り込まれたことで注目を集めています。

対象となる事業者は、制度が創設される背景や対象商品の控除額などを確認しておきましょう。

本記事では戦略分野国内生産促進税制の概要適用条件(2024年2月9日時点)、控除内容などを解説します。

目次

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戦略分野国内生産促進税制とは?

戦略分野国内生産促進税制は、令和6年度税制改正の大綱に盛り込まれた新たに創設予定の制度です。

戦略分野のうち、特に生産段階でのコストが高い事業の国内投資を強力に促進するため、新たな投資促進策として創設される見通しです。

具体的には、以下のような事業を対象として、10年間の適用期間で生産・販売量に応じた税額控除を行うこととしています。

戦略分野国内生産促進税制の対象事業

  • 電気自動車
  • グリーンスチール(鉄鋼)
  • グリーンケミカル(基礎化学品)
  • 持続可能な航空燃料(SAF)
  • 半導体(マイコン・アナログ)

現状(2024年2月9日時点)では、上記の事業以外に明確な記載はありませんが、今後増える可能性もあるため、動向に注目したいところです。

戦略分野国内生産促進税制が創設される背景

近年、戦略分野に関する投資を自国内に誘導するための国際的な産業政策競争(米国のIRA法・CHIPS法や欧州のグリーンディール産業計画など)が活発化しています。

日本も中長期的な経済成長を牽引する戦略分野で、世界と同等に競争できる投資促進策が必要不可欠です。

しかし、戦略分野のなかには、総事業費が大きく生産段階で高コストのものもあり、初期投資促進策だけでは日本国内の投資判断が容易でない事業も存在しています。

そのため、日本もそのコスト構造を踏まえた生産・販売量に応じた投資促進策を講じることが求められています。

この背景を踏まえ、企業に生産・販売の拡大を促すインセンティブを提供するために、新たな投資促進策として戦略分野の国内生産を促進する税制が導入される予定です。

戦略分野国内生産促進税制の創設により、対象とする革新性の高い製品の市場創出を加速できることが期待されています。

戦略分野国内生産促進税制の適用要件

戦略分野国内生産促進税制の適用要件(2024年2月9日時点)は以下です。(参考)

戦略分野国内生産促進税制の適用要件

  1. 青色申告書を提出する法人
  2. 産業競争力強化法の事業適応計画の認定を受ける
  3. 産業競争力基盤強化商品生産用資産を取得し、国内にある事業の用に供する

それぞれ現状判明している内容を解説します。

①青色申告書を提出する法人

戦略分野国内生産促進税制の適用を受けるためには、産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人でなければいけません。

青色申告は個人事業主のイメージが強いかもしれませんが、法人でも青色申告の申請が可能です。

なお、青色申告では、欠損金の繰越控除・繰り戻し還付を受けられます。中小企業者などであれば、新品の機械や装置などを購入した場合に受けられる法人税額控除制度や、少額減価償却資産の特例が適用されるなどのメリットもあります。

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②産業競争力強化法の事業適応計画の認定を受ける

戦略分野国内生産促進税制の適用を受けるためには、産業競争力強化法の改正法施行日から2027年3月31日までの間に産業競争力強化法の事業適応計画の認定を受けなければいけません。

事業適応計画とは、事業再構築やデジタルトランスフォーメーション、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みに果敢にチャレンジする事業者に対して、必要な支援措置を講じて産業競争力の強化を図る取り組みです。

事業適応には、以下の3つの類型が存在します。

事業適応の3つの類型

  • 成長発展事業適応
  • 情報技術事業適応
  • エネルギー利用環境負荷低減事業適応

戦略分野国内生産促進税制の適用を受けるためには、上記のうち、エネルギー利用環境負荷低減事業適応のための措置として、産業競争力基盤強化商品の生産および販売を行う旨の記載が必要です。

③産業競争力基盤強化商品生産用資産を取得し、国内にある事業の用に供する

産業競争力基盤強化商品生産用資産とは、事業適応計画に記載された産業競争力基盤強化商品の生産をするための設備の新設または増設にかかわる機械、そのほかの減価償却資産のことです。

戦略分野国内生産促進税制は、産業競争力基盤強化商品の生産用資産を取得し、国内にある事業の用に供した場合に対象となる見込みとなっています。

戦略分野国内生産促進税制の対象商品と控除内容

戦略分野国内生産促進税制の減税対象商品と控除内容は、以下です。

対象商品控除内容
マイコン半導体テクノロジーノード28~45nm相当16,000円/1枚
テクノロジーノード45~65nm相当13,000円/1枚
テクノロジーノード65~90nm相当11,000円/1枚
テクノロジーノード90nm以上7,000円/1枚
パワー半導体ウエハーの主体がけい素6,000円/1枚
ウエハーの主体が炭化けい素または窒化ガリウム29,000円/1枚
アナログ半導体イメージセンサー18,000円/枚
その他4,000円/1枚
電動車軽自動車ではない電気自動車および燃料電池自動車400,000円/1台
上記以外200,000円/1台
グリーンスチール-20,000円/1トン
グリーンケミカル-50,000円/1トン
航空燃料(SAF)-30円/1リットル

※2024年2月9日時点


出典:総務省「令和6年度税制改正の大綱」

戦略分野国内生産促進税制に関する注意点

戦略分野国内生産促進税制は、基本的に適用されればメリットになる点がほとんどですが、いくつか注意点もあります。

戦略分野国内生産促進税制に関する注意点

  • 控除額は段階的に引き下げられる
  • 税額から控除されないケースもある

控除額は段階的に引き下げられる

控除額に関しては、産業競争力基盤強化商品生産用資産を事業の用に供した日以後7年を経過する日の翌日から段階的に引き下げとなる点に注意が必要です。

具体的には、以下のようになります。

引き下げ後の控除割合

  • 8年目:75%相当額
  • 9年目は50%相当額
  • 10年目は25%相当額

現状(2024年2月9日時点)は予定であるため、法改正後の内容を確認する必要があるでしょう。

税額から控除されないケースもある

所得金額が前期の所得金額を超える一定の事業年度であり、以下のいずれにも該当しない事業年度に関しては、税額控除(繰越税額控除制度を除く)が適用されない点に注意が必要です。

控除されないケース

  • 継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が1%以上である
  • 国内設備投資額が当期償却費総額の40%を超える

また、半導体生産用資産にかかわる控除税額を除いて、地方法人税の課税標準となる法人税額からも控除されないので、覚えておきましょう。

まとめ

戦略分野国内生産促進税制は、戦略分野のうち、特に生産段階でのコストが高い事業の国内投資を強力に促進するため、新たな投資促進策として創設予定の制度です。

本制度に適用されれば半導体・自動車・グリーンスチール・グリーンケミカル・航空燃料など、該当商品の生産・販売量に応じて10年間を適用期間として税額控除を受けられます。

ただし、適用要件や控除内容などはまだ見込みであるため、今後の動向を随時確認する必要があるでしょう。

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よくある質問

戦略分野国内生産促進税制とは?

戦略分野国内生産促進税制は、半導体・自動車・グリーンスチール・グリーンケミカル・航空燃料など該当商品の生産・販売量に応じて、10年間を適用期間として税額控除を受けられる制度です。

戦略分野国内生産促進税制を詳しく知りたい方は「戦略分野国内生産促進税制とは?」をご覧ください。

戦略分野国内生産促進税制の適用要件は?

戦略分野国内生産促進税制の適用要件は、以下の3つが挙げられます(2024年2月9日時点)。

戦略分野国内生産促進税制の適用要件

  • 青色申告書を提出する法人
  • 産業競争力強化法の事業適応計画の認定を受ける
  • 産業競争力基盤強化商品生産用資産を取得し、国内にある事業の用に供する

戦略分野国内生産促進税制の適用要件を詳しく知りたい方は「戦略分野国内生産促進税制の適用要件」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく) 公認会計士・税理士

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

監修者 北田悠策