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「定年退職届」は必要?退職時に行う手続き内容や書類の書き方・例文を解説

公開日:2023/10/19

監修 大柴 良史 社会保険労務士・CFP

「定年退職届」は必要?退職時に行う手続き内容や書類の書き方・例文を解説

「定年退職」とは、会社が定めた年齢に達したときに退職することです。自己都合退職とは違い退職届の提出が不要な場合もあります。

本記事では、定年退職届の要否書き方・例文を解説します。定年退職時に行う手続き再雇用や勤務延長の退職届についても説明するので、定年退職が近付いている人はぜひ参考にしてください。

目次

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定年退職とは

定年退職とは、会社の定める一定の年齢に達したときに退職することです。自己都合退職や会社都合退職ではなく、自然退職に該当します。

高年齢者雇用安定法では、事業者に対して65歳までの雇用確保として以下の2つが義務付けられています。

65歳までの雇用確保

1 定年を定める場合は60歳以上としなければならない
2 定年を65歳未満に定めている場合は以下のいずれかの措置を講じなければならない
  1. 65歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法について」

さらに、2021年4月1日に施行された改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会の確保が努力義務とされました。

少子高齢化が急速に進むなかで、定年年齢は徐々に60歳から65歳へと移行し、多くの会社が継続雇用制度(再雇用制度や勤務延長制度)を導入しています。

定年退職時に必要な届出や手続き

定年退職の際には、さまざまな手続きをしなくてはいけません。退職届を含め、主に以下の手続きが必要です。

定年退職の際に必要となる主な手続き

● 定年退職届の提出
● 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の喪失手続き
● 定年退職後の健康保険の手続き
● 定年退職後の年金保険の手続き
● 雇用保険の喪失手続き
● 住民税の手続き
● 会社への返却物の準備

定年退職届の提出

定年退職の際に退職届の提出が必要かどうかは、会社の規定によって異なります。

定年退職は、会社が定めた一定の年齢に達したタイミングで退職することです。一定の年齢に達すると自然に退職となるため、退職届が不要な場合もあります。

民法第627条では、2週間前までに申し入れをすれば退職できると規定されています。しかし法律上、書面で定年退職届を提出しなければならないという決まりはありません。

ただし、就業規則などで定められている場合は、会社の定めにしたがって提出が必要です。定年退職届を提出するタイミングなども会社によって異なるので、事前に確認しましょう。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の喪失手続き

出典:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」

定年退職をすると、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を喪失します。

退職日の翌日から5日以内に、手続きをすすめましょう。

お勤め先の保険者が協会けんぽの場合、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を管轄の年金事務所へ提出します。提出の際に、健康保険証の添付が必要となるため、お勤め先の案内にしたがって速やかに返却しましょう。

なお、保険者が健康保険組合の場合は、お勤め先が健康保険組合へ所定の手続きを行います。

定年退職後の健康保険の手続き

定年退職後の健康保険は、以下3つの方法から選択して退職者本人が手続きします。

定年退職後の健康保険概要
国民健康保険に加入するほかの公的医療保険に加入していない人やその被扶養者を対象とする医療保険制度
家族の健康保険に被扶養者として加入する収入基準などを満たす場合に被扶養者として加入でき、病気やけがなどをしたときに保険給付が行われる制度
任意継続健康保険に加入する退職前に加入していた協会けんぽまたは健康保険組合に継続して加入できる制度

国民健康保険に加入する場合は、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口で手続きが必要です。詳しくは、お住まいの市区町村のホームページなどで確認しましょう。

家族の健康保険に被扶養者として加入する場合は、退職日の翌日から5日以内に、扶養者のお勤め先を通じて書類を提出します。被扶養者となる要件や添付書類を確認したうえで手続きしましょう。

任意継続健康保険に加入するのも手段のひとつです。この場合は、退職日の翌日から20日以内に協会けんぽまたは勤めていた会社を通じて健康保険組合に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出します。

任意継続健康保険の加入期間は、2年間です。また、退職前に会社との折半で支払っていた保険料は、全額自己負担となるため注意してください。

なお、定年退職後に別の会社で勤務する場合は、健康保険の被保険者となるケースもあります。

定年退職後の年金保険の手続き

定年退職後、年金の受給要件を満たしている場合は、請求手続きをしましょう。年金請求書に必要事項を記入し、添付書類とあわせて年金事務所に提出します。

年金は、10年以上の受給資格期間がある人が、原則として65歳から受給できる決まりです。受給権をもっている人に対し、受給開始年齢に達する3ヶ月前に年金請求書が郵送されます。

また、定年に達する年齢や家計の状況などにあわせて、年金の繰上げ受給・繰下げ受給も検討しましょう。年金の受給を繰り下げれば、その月数に応じて年金額を増やせます。

区分内容年金額の増額・減額
繰上げ受給受給開始年齢を60~65歳に繰り上げて受給する減額(繰り上げた月数×0.4%)
繰下げ受給受給開始年齢を66~75歳に繰り下げて受給する増額(繰り下げた月数×0.7%)

定年退職時に年金の受給要件を満たさない場合や老齢基礎年金を満額受給できない場合、満60歳でも国民年金に加入できます。これを「任意加入制度」といいます。以下のものを持参し、市区町村の窓口または年金事務所で手続きしましょう。

任意加入制度の手続きに必要なもの

● 基礎年金番号がわかる書類
● 通帳
● 金融機関への届出印
なお、定年退職後に別の会社で勤務する場合は、厚生年金保険に加入するケースもあります。

雇用保険の喪失手続き


出典:厚生労働省「雇用保険被保険者資格喪失届」

定年退職すると、雇用保険の被保険者資格がなくなります。退職日の翌日から10日以内に、お勤め先がハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。

また、会社は被保険者が59歳以上なら、本人が希望せずとも「雇用保険被保険者離職証明書(離職票)」を発行しなければなりません。

定年退職後に求職活動をする場合は、失業手当を受給する際にお勤め先が交付する離職票の提出が必要です。

失業手当(雇用保険の基本手当)とは、離職した人が失業中の生活の安定と1日でも早く再就職できるよう支援するために支給される手当です。手続きは以下の流れで行います。

失業手当給付の手続き

1 ハローワークで求職の申込みをする(離職票の提出)
2 受給説明会に参加する
3 求職活動をする
4 4週間に一度失業認定を受ける
5 失業手当が給付される
出典:厚生労働省「雇用保険手続きのご案内」

なお、65歳以上の高年齢被保険者が定年退職後に求職活動をする場合、失業手当ではなく「高年齢求職者給付金」が給付されます。

住民税の手続き

定年退職する際、住民税の手続きも必要です。給与の支払いを受けなくなった月の翌月10日までに、お勤め先が市区町村へ「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出します。

会社にお勤めの場合、住民税は毎月の給与から天引きされる「特別徴収」で納める仕組みです。12回に分けて、毎年6月~翌年5月の給与から差し引かれます。

定年退職する場合、退職月によって残りの住民税の納付方法が異なるので注意してください。

退職日住民税の納付方法
1月1日~4月30日● 一括徴収
6月1日~12月31日● 普通徴収
● 一括徴収
出典:大阪市「退職・転勤などがあった場合(給与所得者異動届出書の提出)」

退職日が1月1日~4月30日の場合、「一括徴収」が義務付けられているため、最後の給与または退職金などから天引きされます。

一方、退職日が6月1日~12月31日の場合は「普通徴収」となる場合もあります。普通徴収とは、納付書が送付され、納税者本人(退職者)が直接納める方法です。

なお、退職日が5月1日~5月31日の場合は、5月の給与から今までとおり特別徴収されます。

会社への返却物の準備

定年退職日までに、会社に返却しなければならないものをそろえておきましょう。

会社への主な返却物

● 社員証
● 健康保険証
● 制服・作業着
● 貸与されていた携帯電話やパソコン
● ロッカーの鍵
● 社外秘の資料
● 通勤定期券
● 会社の備品
なお、定年退職後は健康保険証を利用できません。被扶養者となっていた家族の健康保険証もあわせて速やかに返却しましょう。

定年退職届の書き方・例文

定年退職届を書く際は、会社所定の様式があるかどうかを確認しましょう。所定の様式がない場合は、主に以下の事項を記載します。

定年退職届の記載事項

● 宛先
● 退職理由
● 定年退職となる日
● 届出日
● 所属部署
● 氏名
● 連絡先
本文は、以下のように簡潔に記載しましょう。
定年退職届

株式会社○○
代表取締役社長○○殿

このたび、○年○月○日をもって満○歳となります。
つきましては、会社の規定により定年退職いたしますのでここにお届けします。
退職後の連絡先は下記の通りです。

所属○○部○○課
氏名       印

〒○○○―○○○○
○○県○○市○丁目○番○号
電話○○○―○○○○―○○○○

定年退職届を提出する際の注意点

定年退職届を提出する際に注意するべきポイントはいくつかあります。

定年退職届を提出する際の注意点

● 再雇用される場合も退職届が必要なケースがある
● 勤務延長で引き続き働く場合は退職には該当しない
以下の点に注意しましょう。

再雇用される場合も退職届が必要なケースがある

定年退職後に再雇用される場合、一度退職してから新たな条件で雇用契約を結ぶ流れになります。そのため、会社によっては定年退職届の提出が必要となる可能性があります。

再雇用制度とは、継続雇用制度のひとつで、定年後に再び雇用する制度です。

一般的に、再雇用後は労働条件が変わるため、トラブルを防ぐためにも定年退職届の提出を求められる場合があります。再雇用を選択する人は事前に確認しておきましょう。

勤務延長で引き続き働く場合は退職には該当しない

勤務延長制度で引き続き雇用される場合は、退職にはあたらないため退職届の提出は不要です。

勤務延長制度も継続雇用制度のひとつで、定年に到達した従業員を退職させることなく引き続き雇用する制度を指します。

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まとめ

定年退職の際に退職届が必要かどうかは、会社によって異なります。就業規則などで定められている場合は、様式や期限などを確認しましょう。

定年退職の際には、退職届のほかに社会保険や雇用保険、住民税の手続きなどが必要です。退職後に必要な手続きも多いため、スムーズに進められるよう事前に期限や手続き方法を確認しておきましょう。

よくある質問

定年退職時に必要な届出や手続きは?

会社によっては、定年退職届が必要な場合があります。そのほか、定年退職時に必要となる主な手続きは以下の通りです。

定年退職時に必要となる主な手続き

● 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の喪失手続き
● 定年退職後の健康保険の手続き
● 定年退職後の年金保険の手続
● 雇用保険の喪失手続き
● 住民税の手続き
● 会社への返却物の準備
定年退職の際に必要となる手続きを詳しく知りたい方は「定年退職時に必要な届出や手続き」をご覧ください。

定年退職届を提出する際の注意点は?

定年退職届を提出する際、以下の点に注意しましょう。

定年退職届を提出する際の注意点

● 再雇用される場合も退職届が必要なケースがある
● 勤務延長で引き続き働く場合は退職には該当しない
定年退職届を提出するときの注意点を詳しく知りたい方は「定年退職届を提出する際の注意点」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史