公開日:2023/09/13
監修 寺島 有紀 社会保険労務士
休み方改革とは、休暇取得状況の見直しや有給休暇取得を推進する取り組みです。本記事では、休み方改革が推進される背景やメリットなどを解説します。
休み方改革の推進で生産性の向上や人材確保、企業のイメージアップ効果を期待できるでしょう。しかし、現体制の見直しや従業員の意識改革、休暇時期の平準化などに課題があり、簡単ではありません。
企業は課題と向き合い、休み方改革を推進し働きやすい職場を作りましょう。
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目次
- 休み方改革とは
- 休み方改革と働き方改革の違い
- 休み方改革と働き方改革は相互に関係する
- 政府が休み方改革を推進する背景
- 低水準の有給取得率からの脱却
- 休日を活用した消費行動の促進
- 企業が休み方改革を推進するメリット
- 業務効率化を図り生産性を高められる
- 離職リスクを下げて人材を確保できる
- 企業のイメージアップに役立つ
- 企業が休み方改革を推進する際の課題
- 休み方改革を推進する体制が整っていない
- 休暇取得への抵抗感がある従業員がいる
- 取得時期や日数に偏りが出る
- 企業が休み方改革を推進する際のポイント
- 現状を把握して現場に即した目標設定や方法を策定
- 休み方改革へのトップメッセージ発信や継続的な周知を実施
- 休み方改革をサポートするツール導入も検討
- 勤怠管理を効率化する方法
- まとめ
- よくある質問
- 休み方改革とは?
- 休み方改革を推進するポイントは?
休み方改革とは
休み方改革は特定期間の休暇集中を見直したり、有給取得を推進したりする取り組み全般を指します。
ただ体を休めるための休暇ではなく、仕事と休日のバランスを取るために必要な取り組みです。プライベートの充実や意欲の高まり、業務効率化にもつながります。
休み方改革と働き方改革の違い
休み方改革と働き方改革は、最適化する対象が違います。
休み方改革は、休暇取得の推進や休みの取り方の見直し、ライフワークバランスの最適化が主な目的です。休暇は平日の疲れを取る以外にも、地域活動への参加や家族との時間作り、能力開発にも欠かせません。プライベートが充実すれば、消費活動にもつながります。
一方、働き方改革では、業務内容や就労条件を見直して、働き方の最適化が主な目的です。業務の効率化や在宅勤務、フレックスタイム制度の導入などで、働きやすい体制を整えます。
また就業機会を拡大し、さまざまなニーズに合った働き方の実現も働き方改革の一環です。多様な働き方が認められれば、労働力の確保にもつながります。
休み方改革と働き方改革は相互に関係する
働き方改革と休み方改革は無関係ではなく、相互に関係します。休みを取りやすい職場環境作りには、働き方改革の推進も必要です。
休暇取得を奨励しても、業務負荷が集中していると簡単に休めません。休み方改革の推進で十分なリフレッシュができれば生産性も高まり、柔軟な働き方が増えます。
このように両者は関連性があり、企業は平行して取り組みましょう。
政府が休み方改革を推進する背景
政府が休み方改革を推進する背景には、以下の2点が挙げられます。
政府が休み方改革を推進する背景
● 低水準の有給取得率からの脱却● 休日を活用した消費活動の促進
低水準の有給取得率からの脱却
2022年の就労条件総合調査(厚生労働省)では、労働者の有給取得率は58.3%でした。取得率は有給取得日数を付与日数で除して求める数値です。
出典:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」
2019年4月より企業には、年次有給休暇が10日以上付与される労働者について、付与日から1年以内に5日を消化させる義務が生じています。
そのため過去と比較すれば向上していますが、産業別で見た場合の差は大きく、諸外国と比較すれば低い水準が続いています。有給取得率を2020年までに70%にする目標に掲げていましたが、現状で到達できていません。
長時間労働や休暇が十分に取れない環境下では、心身に不調をきたし生産性を低下させます。有給取得率を上げてリフレッシュできる日を増やせば、生産性の向上にもつながるでしょう。
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休日を活用した消費行動の促進
休暇が取りやすくなれば自由な時間も増え、個人の消費行動も活性化します。
休暇を利用した外出や趣味の活動で、お金を使う機会が増えるでしょう。まとまった休暇を取りやすくなれば旅行もしやすく、消費行動の促進から経済効果が見込めます。消費行動が促進されれば雇用創出効果も期待でき、新しい働き方にもつながるでしょう。
また休暇時期が分散されれば、旅行業やサービス産業の繁忙期・閑散期の差を平準化できます。交通機関の利用集中や渋滞緩和にも役立ち、社会問題の解決策にも休み方改革は有効です。
企業が休み方改革を推進するメリット
企業が休み方改革を推進する主なメリットは、以下の通りです。
企業が休み方改革を推進する主なメリット
● 業務効率化を図り生産性を高める● 離職リスクを下げて人材確保できる
● 企業のイメージアップに役立つ
業務効率化を図り生産性を高められる
休みやすい環境作りには、業務の効率化が欠かせません。効率化して生産性が高まれば、休暇を取得しても業務に影響を与えない体制を作れます。結果的に、経費削減の効果も得られるでしょう。
休暇が増えれば従業員もリフレッシュでき、労働意欲の向上も期待できます。
離職リスクを下げて人材を確保できる
有給取得率の低い職場では、一般的に離職率が高くなる傾向があります。抜本的な改革が難しい業種もありますが、対策しなければ人材不足に陥り、業績悪化の原因にもなり得るでしょう。
休み方改革で働きやすい環境になれば、既存従業員の離職リスクを抑えられます。人材を確保し、人材不足も解決できる点はメリットです。
企業のイメージアップに役立つ
有給取得率が高まれば、働きやすい職場のイメージがつき、採用現場でも求職者へアピール材料に使えます。
対外的にもホワイト企業・ホワイトな職場と認識され、求職者にとっての魅力が高まるでしょう。
企業が休み方改革を推進する際の課題
企業が休み方改革を推進する際の主な課題は、以下の通りです。
企業が休み方改革を推進する際の主な課題
● 休み方改革を推進する体制が整っていない● 休暇取得への抵抗感がある従業員がいる
● 取得時期や日数に偏りが出る
休み方改革を推進する体制が整っていない
休み方改革は、体制が整っていないと思うように進みません。担当者が通常業務と兼務していたり、従業員の意見を取り入れる機会がなかったりすると進めにくいでしょう。
事業主側と労働者側とで協力して進めなければ、効果的な休み方改革を実現できません。休み方改革に取り組む際は、体制作りから始めましょう。
専門家が無料で相談やアドバイスしてくれる、「働き方・休み方改善コンサルタント制度」もあります。働き方や休み方の改善方法が分からない場合は、活用して見ましょう。
出典:厚生労働省「働き方・休み方改善コンサルタント」
休暇取得への抵抗感がある従業員がいる
休暇を取ると「周りに負担をかける」「人事評価に影響する」と考える従業員も存在します。または「休み明けの仕事が増える」と不安を感じ、取得をためらうケースもあるでしょう。
休暇取得に抵抗感がある従業員が多いと、休み方改革は進みません。従業員の意識を変えるには、休暇を取った人へのフォロー体制や、公平に休む企業風土の醸成が必要です。
社内研修やメッセージ発信などで、くり返し休暇取得の必要性を従業員へ伝えましょう。
取得時期や日数に偏りが出る
年末年始やGW、お盆休みなど大型連休の前後は、休暇を取りたい人が多い時期です。また業務の都合や個人の性格から、同一企業内でも取得日数の差が生じる場合もあるでしょう。
有給取得の平準化を図るには、取得日数をチェックする体制や、計画的に有給取得するルール整備も必要です。
労使協定を結べば、計画的付与制度で有給休暇の一部を計画的に割り振れます。有給取得の平準化に役立つため、導入を検討しましょう。
企業が休み方改革を推進する際のポイント
企業が休み方改革を推進する際の主なポイントは、以下の通りです。
企業が休み方改革を推進する際の主なポイント
● 現状を把握して現場に即した目標設定や方法を策定● 休み方改革へのトップメッセージ発信や継続的な周知を実施
● 休み方改革をサポートするツール導入も検討
現状を把握して現場に即した目標設定や方法を策定
まずは自社の休暇取得状況を把握し、他社と比較して休めているか、休みやすい職場かを検証しましょう。
何の検証もないまま目標設定や制度導入しても、効果に繋がりにくく、現場からの反発も起きかねません。目標設定や方法の策定には、従業員からの意見や要望を確認しながら取り組みましょう。
業種・職種ごとに、休みを取るうえでの課題は異なるため、状況にあった目標設定や取り組みが必要です。
休み方改革へのトップメッセージ発信や継続的な周知を実施
休み方改革を推進する目的や休暇取得の必要性を社内に周知し、休暇を取りやすい企業風土を作りましょう。社内研修やトップからの発信などで、従業員に休み方改革の必要性を浸透させます。
従業員のなかには休暇取得に対し、抵抗感がある人もいるでしょう。意識を変えるには、継続的な周知が必要です。
トップメッセージは一度発信して終わりではなく、折に触れてくり返し伝えます。社内掲示や社内報でも、休暇取得を意識させる取り組みを継続的に実施しましょう。
休み方改革をサポートするツール導入も検討
休み方改革の推進には、サポートツールの導入も検討しましょう。
スケジュール共有ツールは、休暇を取る人の業務調整やフォローをしやすい体制作りに役立ちます。
付与された休暇の存在を知らず、取得できていないケースもあるため、休暇日数の確認ツールもおすすめです。休暇の管理を各自で行えれば、取得忘れを防げます。
さらに取得状況を確認できる労務管理ツールがあれば、休み方改革の進捗状況も確認できるでしょう。取得率を改善できたか定期的に確認し、PDCAサイクルを回すため、管理ツールでのチェックが重要です。
休暇を取れていない従業員がいる場合、アラートやチェック機能を備えたツールも存在します。労務担当者の業務にも役立つツールです。
勤怠管理を効率化する方法
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まとめ
休み方改革は休暇取得の奨励や休暇時期の見直し、仕事と休日のバランス改善が目的の取り組みです。働き方改革とも関連し、休み方改革の推進には課題もありますが、生産性の向上や人材確保にも役立ちます。
休み方改革への取り組みは現状を把握し、適切な目標や効果的な方法を検討して実施しましょう。従業員に周知し、必要に応じてサポートツールの導入もおすすめです。
休み方改革の推進で、企業の成長につなげましょう。
よくある質問
休み方改革とは?
休み方改革は、休暇取得の推進や休暇時期を見直し、仕事と休日のバランスを見直す取り組みです。
休み方改革を詳しく知りたい方は、「休み方改革とは」をご覧ください。
休み方改革を推進するポイントは?
休み方改革を推進するポイントは、現状を把握して社内への浸透が大切です。社内への浸透には、トップからのメッセージの発信と継続的な周知活動を行います。また、適宜サポートツールの導入も検討しましょう。
休み方改革を推進するポイントを詳しく知りたい方は、「企業が休み方改革を推進する際のポイント」をご覧ください。
監修 寺島有紀(てらしま ゆき) 社会保険労務士
一橋大学商学部卒業後、新卒で楽天株式会社に入社、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。その後社会保険労務士事務所に勤務を経て現在は、中小・ベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。