監修 毎熊 典子 毎熊社会保険労務士事務所
レピュテーションリスクは、企業の悪評が広まり、企業ブランドが低下するリスクのことです。SNSの普及でリスク対策の重要性は高まっています。
品質の低下、不正業務、顧客対応の不備などさまざまな事柄が原因となって、レピュテーションリスクは発生します。リスクを抑えるためには、適切な対策方法を実行することが重要です。
本記事では、レピュテーションリスクとは何か、レピュテーションリスクの原因・対策、定量化する方法などを紹介します。
目次
- レピュテーションリスクとは
- レピュテーションリスクの対策が重要視されるようになった背景
- レピュテーションリスクが発生する原因
- 製品やサービスの品質が悪化した
- 顧客への対応・サポートが悪い
- 不正業務や不祥事が発覚した
- 根拠のないデマや風評が流れた
- レピュテーションリスクの顕在化による影響
- レピュテーションリスクの事例
- レピュテーションリスクへの対策
- 情報の監視と正しい情報の発信
- 労働環境の改善
- 社員への教育
- 商品・サービスの評判との乖離を避ける
- レピュテーションリスクを定量化する方法
- アンケート調査を実施する
- 報道調査やSNSを確認する
- まとめ
- 個人情報を適切に処理するなら管理ツールの使用を
- よくある質問
レピュテーションリスクとは
レピュテーションリスクは、メディアやSNSを通じて企業の悪い評判やデマが広まり、企業のブランド価値が低下するリスクのことです。
レピュテーションリスクが顕在化した場合、顧客や取引先、株主などからの信頼を失うだけでなく、商品・サービスの売上の低下などにつながる可能性があります。
その被害が大きくなると、企業の存続が危ぶまれるほどの経済的な損失を招くケースもあります。
レピュテーションリスクの対策が重要視されるようになった背景
レピュテーションリスクの対策が重要視されるようになった大きな要因は、インターネットやSNSの普及が挙げられます。
特にSNSで個人の発信が容易になったことで、口コミや批判が瞬時に社会全体に広がりやすくなりました。リスクを未然に防ぐこと、リスクが顕在化したときに早期に対応することの重要性は、以前に比べて高まっています。
また、企業のコンプライアンスについて、社会から向けられる目が厳しくなっていることも背景のひとつです。コンプライアンス違反への批判が以前に比べて厳しくなっていることから、悪い評判はより広まりやすくなっていると考えられます。
レピュテーションリスクが発生する原因
レピュテーションリスクが発生する原因としては、以下が挙げられます。
レピュテーションリスクが発生する原因
- 製品やサービスの品質が悪化した
- 顧客への対応・サポートが悪い
- 不正業務や不祥事が発覚した
- 根拠のないデマや風評が流れた
レピュテーションリスクの発生原因を知り、企業内にリスクが発生する要素がないか、常に確認しておくことが重要です。レピュテーションリスクが発生する原因を、以下で詳しく見ていきましょう。
製品やサービスの品質が悪化した
製品やサービスの品質が以前に比べて悪化すると、悪評が広がることがあります。
たとえば、食品や飲料であれば、コストカットのために安価な材料に置き換えると、味が変わって悪い口コミが広がってしまうケースがあるかもしれません。
また、従業員のサービス低下を招く長時間労働や劣悪な労働環境が、根本的なレピュテーションリスクの原因ともいえます。
顧客への対応・サポートが悪い
店頭でのスタッフの顧客対応、サポートセンターでの電話対応なども悪評が広がる要因です。
昨今は、SNSで店頭でのやり取りが写真・動画でシェアされることも増えています。また、レビューサイトを通じてクレームが共有され、大きな損失につながるケースもあります。
不正業務や不祥事が発覚した
内部監査や内部告発などを通じて、粉飾決算・贈収賄・データ改ざんなどの不正業務や、ハラスメントなどの不祥事が発覚すると、企業全体の信頼が揺らぐことがあります。
不正業務や不祥事についてメディアなどを通じて報道され、企業の評判が低下することで顧客からの信頼を失うだけでなく、株価の下落や取引の停止などにもつながります。
根拠のないデマや風評が流れた
SNSやインターネットは拡散力の高さゆえに、根拠のないデマや悪評も急速に広がってしまうことがあります。SNSやインターネットでは、情報を精査せずに鵜呑みにされてしまうことも多く、そのこともデマが広がる理由のひとつです。
企業にとってマイナスとなるデマや風評が流れた際には、被害を最小限に留めるためにも、すみやかに正しい情報を企業側から発信して訂正をすることが必要となります。
レピュテーションリスクの顕在化による影響
レピュテーションリスクが顕在化して、企業の悪い評判が本格的に広まった場合に考えられるのは以下のような影響です。
レピュテーションリスクの顕在化による影響
- 商品・サービスが売れなくなる
- 株価が下落する
- 人材採用が困難になる
- 賠償金やリコールに発展する
企業への信頼が失われることで商品・サービスのイメージが損なわれて、結果として売上の低下や株価の下落につながることがあります。
また、顧客や株主だけでなく、新卒や中途で就職活動をする人材の間での企業イメージの低下にもつながり、人材採用が困難になることもあるでしょう。
そのほか、個人情報の流出や製品の致命的な欠陥について悪評が拡散されることで不満が大きくなり、結果として賠償金の請求やリコールに発展する可能性も考えられます。
レピュテーションリスクの事例
レピュテーションリスクの事例としては、具体的には以下のようなものが挙げられます。
レピュテーションリスクの事例
- アルバイトの悪ふざけの動画がSNSで拡散
- 個人情報の流出が発端で悪評が流布
- 製品の欠陥や不具合が発覚してブランド価値が損なわれる
- 幹部の不正行為やスキャンダルが発覚する
- 労働環境などへの従業員による内部告発が広がる
近年はアルバイトが悪ふざけの動画・写真をSNSで拡散するいわゆる「バイトテロ」と呼ばれる行為もコンビニや飲食店で発生していて、企業の評判を下げるリスクのひとつです。
また、個人情報の流出、製品の不具合の発覚やそれによるリコール問題、幹部の不正行為・スキャンダルなど、企業内部での不祥事の事例も数多くあります。
そのほか、過剰な残業、残業代の未払いなどの違法な労働環境が内部告発され、問題として大きくなるケースもあります。
レピュテーションリスクへの対策
レピュテーションリスクへの具体的な対策は、主に以下です。
レピュテーションリスクへの対策
- 情報の監視と正しい情報の発信
- 労働環境の改善
- 社員への教育
- 商品・サービスの評判との乖離を避ける
SNS上の情報の監視や企業からの情報発信などインターネット上での対策のほか、労働環境の改善や社員の教育など企業内部での対策も重要です。レピュテーションリスクへの対策をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
情報の監視と正しい情報の発信
SNSやネットニュースでの口コミやコメントなどを監視することで、事実と異なる情報が拡散されそうになったときに、迅速に正しい情報を発信して訂正することができます。初期段階で対応できれば、被害を最小限に留めることが可能です。
また、企業側から日常的にSNSやウェブサイトを通じて商品・サービスについて積極的に情報発信することで、ユーザーが正しい情報を取得しやすくなり、事実と異なる情報が拡散されることの予防にもなります。
労働環境の改善
社員にとって働きやすい職場環境をつくることは、従業員の離職を減らすだけでなく、レピュテーションリスクへの対策としても重要です。
働きやすい職場環境がつくられることで、従業員の企業への信頼が高まり、SNS上での内部告発の防止につながることが期待できます。
職場環境の改善としては、過度な残業をなくす、有給休暇の取得を推奨するなどの取り組みが挙げられます。そのほか、上司との定期的な面談を設けて、職場や業務上の悩みなどについてコミュニケーションを取れる機会をつくることも効果的です。
社員への教育
SNSの使い方、情報管理、ハラスメントへの意識などに関わる事項について社員教育を徹底することは、レピュテーションリスクを抑えることにつながります。
研修カリキュラムに組み込む、定期的な教育を設けるなど、レピュテーションリスクについての社内教育の機会を積極的に設けていきましょう。
商品・サービスの評判との乖離を避ける
過度な広告によって、ユーザーの間での評判が実際の商品・サービスの品質・機能と乖離しないように、広告・マーケティングの方法には注意が必要です。広告と実際の商品・サービスの差が大きいと、ユーザーの期待を裏切ってしまうことになります。
広告を見て商品・サービスを利用したときに、落胆するような要素が含まれていないか、消費者目線で十分にチェックすることが重要です。
レピュテーションリスクを定量化する方法
レピュテーションリスクは、アンケート調査や報道調査・SNSから定量的に確認することが可能です。リスクの度合いを把握しておくことで対策が立てやすくなります。
レピュテーションリスクを定量化する方法を、以下で詳しく見ていきましょう。
アンケート調査を実施する
商品・サービスへのアンケートを実施することで、ユーザー目線での満足度などを定量化できます。
たとえば、商品・サービスへの満足度を10段階で採点してもらうことで客観的な数値として定量化が可能です。あわせてインタビュー形式の質問なども用意すると、企業側で把握しきれていないユーザーの不満が抽出することができます。
そのほか、従業員や株主などに対して商品・サービスや企業イメージへの意見を求めるアンケート調査を実施すれば、レピュテーションリスクの要因を探れるでしょう。
報道調査やSNSを確認する
報道調査における定量化されたデータは、参考の一つになります。たとえば「働きたい企業ランキング」「ブラック企業・ホワイト企業ランキング」などを確認すれば自社のレピュテーションが見えるかもしれません。
また、SNSの口コミ・評判からもレピュテーションリスクが汲み取れることがあるので、悪評に早期に対応するためだけでなく、リスクの度合いを把握する意味でも日常的にモニタリングを行いましょう。
まとめ
レピュテーションリスクは、企業に対する悪評が広まり、ブランド価値や信頼性が低下するリスクのことです。
品質の低下・顧客対応の不備・不祥事の発生・デマの拡散などが原因となり、レピュテーションリスクが発生します。
レピュテーションリスクを防ぐ対策としては、情報の監視、労働環境の改善、社員への教育、過度な表現の広告を避けることなどが挙げられます。
レピュテーションリスクも正しい知識を持って適切な対策をすることで、リスクを最小限に抑えることが可能です。ぜひ企業全体でリスク意識を共有して、できる対策をひとつずつ進めていきましょう。
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よくある質問
レピュテーションリスクの原因は?
レピュテーションリスクの原因としては、製品・サービスの品質低下、顧客への対応・サポートの不備、不正業務・不祥事の発覚、根拠のないデマや風評などが挙げられます。
レピュテーションリスクの原因を詳しく知りたい方は「レピュテーションリスクが発生する原因」をご覧ください。
レピュテーションリスクの対策は?
レピュテーションリスクへの対策としては、情報の監視と正しい情報の発信、労働環境の改善、社員への教育、商品・サービスの評判との乖離を避けるなどが挙げられます。
レピュテーションリスクの対策を詳しく知りたい方は「レピュテーションリスクへの対策」をご覧ください。
監修 毎熊 典子(まいくま のりこ)
特定社会保険労務士・上級リスクコンサルタント・プライバシーコンサルタント・健康経営エキスパートアドバイザー
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手電機メーカーの法務担当として勤務。その後、法律事務所勤務を経て、2016年に社会保険労務士事務所を開設。ダイバーシティ時代の労務管理に関する講演・執筆多数。主な著書に『これからはじめる在宅勤務制度』、『テレワーク制度のブラッシュアップ』(中央経済社)他がある。