監修 内山 貴博 1級FP技能士・CFP
令和時代のシニアは、従来のシニアとはイメージが異なります。スマートフォンをはじめとしたさまざまなデジタルツールを使いこなし、アクティブなライフスタイルをおくっている点が特徴です。
平均寿命と健康寿命の延びに伴い、ここ数年は就業率も上昇しています。「自分の時間を楽しみつつも、心身ともに元気なうちは働きたい」という思考のシニアが多い傾向です。
本記事では、令和シニアの意味や特徴的なライフスタイルについて解説します。
目次
令和シニアとは
日本では、2023年時点で高齢者比率が29.1%と過去最高となっており、今後も少子高齢化に伴って高齢者比率は上昇すると考えられています。そんな現代において、高齢者が従来と異なる特徴やライフスタイルを持つようになってきています。
出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書」
「令和シニア」とは、令和時代におけるシニア世代の人たちのことです。「シニア」の定義は明確ではありませんが、一般的に類義語の「高齢者」は65歳以上の年齢層の人を指します。「令和シニア」とは令和時代を生きるおよそ65歳以上の人、とイメージしてください。
一般的には加齢とともに活動量が減るため、シニアは自宅でのんびりと過ごす人が多い、というイメージを持たれやすいです。しかし、令和時代におけるシニアは従来のイメージとは異なり、デジタルツールを使いこなしたり、高い健康意識を持っていたりします。
好奇心旺盛かつ活動的で、自分の自由な時間を楽しんでいる人が多い傾向にあります。
令和シニアのライフスタイルの特徴
令和シニアは、デジタルツールやインターネットを使いこなして時代の変化に適応したり、積極的に健康維持に取り組んだりしており、アクティブな傾向にあります。
自分の自由な時間を楽しむだけではなく、就労意欲が高く自分の知識や経験を社会へ還元する意識が高い点も、令和シニアの特徴です。
具体的なライフスタイルについて解説していきます。
デジタルツールやインターネットを使いこなす
令和シニアは、デジタルツールやインターネットを積極的に使いこなしています。
「令和6年版高齢社会白書」によると、65歳以上の人が参加している学習活動(複数回答)で「パソコンなどの情報処理」と回答した人の割合が10.4%でした。料理・裁縫などの12.0%、芸術・文化の10.6%に続く回答の多さです。
近年は飲食店のモバイルオーダーやネットスーパーのように、サービスを提供する際に、デジタル技術を取り入れる店舗が増えています。スマートフォンが普及し、世の中が便利になる中で、シニアにもデジタルツールを使いこなせる人が増えているという傾向があります。
なお、総務省の「令和4年通信利用動向調査」によると、年代別のインターネット利用者の割合は以下の通りでした。
インターネット利用者の年代 | インターネット利用者の割合 |
---|---|
60~69歳 | 86.8% |
70~79歳 | 65.5% |
80歳以上 | 33.2% |
80歳以上の人も、約3人に1人以上がインターネットを利用していることがわかります。
また、自治体によっては行政手続きの一部をデジタル化しており、高齢者に向けた、スマートフォンやパソコンの使い方を教える講座を開催していることもあります。
以上のように、社会状況の変化や自治体のサポートなどもあり、デジタルツールやインターネットを使いこなすシニアが多い傾向です。
出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書」
健康志向が強い
令和シニアは健康に対する意識が高く、積極的に健康維持に取り組む傾向にあります。実際に、「令和6年版高齢社会白書」によると、65歳以上の新体力テストの合計点は上昇傾向でした。
また、健康寿命(健康上の問題で日常生活に制限のない期間)も延び、平成13年から上昇傾向の結果が出ています。
シニア世代の中でも特に75歳以上の世代は運動意識が高く、「運動習慣のある者の割合」は男性で46.9%、女性で37.8%でした。
充実した生活を送るためには、心身の健康が欠かせません。健康的なライフスタイルを実現するために、食生活を意識したり、ウォーキングやジムなどの運動系を始めたりするシニアが増えている傾向にあります。
出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書」
旅行を楽しむ人が多い
旅行を楽しむ人が多い点も、令和シニアの特徴です。
観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によると、2023年の60代以上の国内旅行者数は1,817万6,000人でした。全世代の旅行者数が7,018万5,000人のため、全体の約26%をシニア世代が占めています。
出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査 2023年年間 集計表(確報)」
年金に関する不安が指摘されていますが、比較的時間的にも経済的にも余裕があるシニアは、自分の趣味を楽しんでいるといえます。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」によると、60代と70代の貯蓄状況は以下の通りでした。
年代 | 貯蓄状況 |
---|---|
60代 |
平均:2,026万円 中央値:700万円 |
70代 | 平均:1,757万円 中央値:700万円 |
退職金を受け取ったり、これまで計画的に資産形成してきたりしたシニアは、自分の時間を楽しめる資産を保有していると考えられます。
就労意欲が高い
内閣府の資料によると、高齢者の就業率は上昇傾向にあります。2023年度における、高齢者の就業率は以下の通りでした。
年代 | 就業率 |
---|---|
60〜64歳 | 74.0% |
65〜69歳 | 52.0% |
70〜74歳 | 34.0% |
75歳以上 | 11.4% |
なお、同資料によると労働⼒⼈⼝に占める65歳以上の⽐率は13.4%でした。長期的に見ると右肩上がりで上昇しており、「心身ともに健康なら働く」というシニアが増えている傾向です。
ほかにも、年金の上乗せとなる収入が欲しい、という経済的な理由で働くシニアがいることも想定されています。
厚生労働省は、生涯現役社会の実現を目指し、定年退職後のキャリア再構築を後押ししたり、地域へ貢献する機会を提供したりする取り組みを行っており、今後も働くシニアが増える傾向です。
健康寿命の延びが令和シニアのアクティブな背景と考えられる
厚生労働省によると、2019年における健康寿命は男性で72.68歳、女性で75.38歳でした。それぞれ2010年と比べて延びており、健康的な生活を送れる年数が伸びているとわかります。
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」です。健康上の問題により、日常生活に支障がない状態といえます。
男女ともに健康寿命が伸びており、元気に過ごせる期間が長期化していることが、好奇心旺盛でアクティブなシニアが増えている背景として考えられます。
なお、平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に何らかの不都合や制限のある「不健康な期間」です。「不健康な期間」に関して、2022年では男性で8.73年、女性で12.06年でした。
2010年における「不健康な期間」は、男性で9.13年、女性で12.68年でした。2010年と比較して、男女ともに「不健康な期間」は縮小傾向にあることがわかります。
健康に過ごすシニアが増えている要因は、健康意識の向上や医療の発達など、さまざまな背景が考えられます。
出典:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」
まとめ
令和シニアは、デジタルツールを使いこなし、健康志向が強くアクティブな高齢者を指します。自分の時間を十分に楽しみつつ、自分の都合にあわせて働き、自由なライフスタイルを実現している人が多い傾向です。
また、健康寿命と平均寿命がともに延びており、アクティブに活動できる期間が長期化しています。厚生労働省も生涯現役社会の実現を目指しており、今後ますます元気に働き、自分の時間を楽しむシニアが増えると考えられるでしょう。
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よくある質問
令和シニアとはどのような人?
令和シニアとは、令和時代における65歳以上の高齢者を指します。令和時代におけるシニアは、従来のシニアのイメージとは異なり、活動的です。
背景として、平均寿命と健康寿命の延びが考えられます。
詳しくは「令和シニアとは」をご覧ください。
令和シニアのライフスタイルの特徴は?
令和シニアは、デジタルツールやインターネットを使いこなす人が多くいます。また、健康志向と就労意欲が高く、近年は働くシニアが増加傾向です。
旅行をはじめ自分の趣味や時間を楽しむシニアも多く、活動的なライフスタイルを送っています。
詳しくは「令和シニアのライフスタイルの特徴」をご覧ください。
監修 内山貴博(うちやま たかひろ) 1級FP技能士・CFP
大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。