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中途採用比率とは? 公表が義務化された背景や公表時期、計算方法をくわしく解説

公開日:2023/07/31

監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

中途採用比率とは? 公表が義務化された背景や公表時期、計算方法をくわしく解説

一定以上の労働者を雇う企業には、中途採用比率を公表する義務が生じます。本記事では、中途採用比率の公表方法や計算方法などを解説します。

中途採用比率の公表義務が生じる企業は、公表時期や方法を理解して正しく公表しなければなりません。

中途採用比率を公表する際のポイントも解説するので、ぜひ業務に役立ててください。

目次

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中途採用比率とは?

中途採用比率とは、正規雇用労働者のなかに中途採用者が含まれる割合です。2021年4月から一部企業に、直近3事業年度の各年度の採用人数に占める中途採用者の割合を、公表することが義務づけられました。

正規雇用労働者とは、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第2条の「通常の労働者」を指します。また中途採用者は、新卒採用以外で採用した労働者です。

出典:e-Gov「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」

中途採用比率の公表は義務化されている

一定以上の労働者を常時雇う企業には、中途採用比率の公表が義務化されました。ただし義務違反への罰則は、現状ではありません。

中途採用比率の公表が必要な企業

中途採用比率の公表が必要な企業は、常時雇用する労働者が301人以上いる企業です。

常時雇用する労働者とは、次のいずれかに該当する人を指します。

常時雇用する労働者の要件

● 雇用契約の形態を問わず期間の定めなく雇用されている
● 過去1年以上引き続き雇用されている
● 雇入れの時から1年以上の継続した雇用が見込まれる
対象企業は採用者数のなかに含まれる新卒以外の労働者数を正確に把握し、比率を計算・公表しましょう。

中途採用比率を公表しない場合の罰則

現時点で公表義務に反した場合の罰則は、定められていません。

ただし罰則はなくても、公表していない状態をネガティブに受け取られ、求職者からの印象が悪化する可能性はあります。

中途採用比率の公表は、中途採用に関する会社のスタンスを示せるため 、対象企業は積極的に対応しましょう。

中途採用比率の公表が義務化された背景

中途採用比率の公表は、新卒採用以外の採用を増やす環境整備が目的です。中途採用が活発になれば、労働者の主体的なキャリア形成を促進し、仕事の充実や再チャレンジできる状態を作れます。

平均寿命が延び、人生100年時代を迎えました。長寿化と同時に、就労期間の長期化が予想されます。

就労期間が長くなれば、転職や離職後の再就職など、さまざまなキャリア形成が必要になるでしょう。企業は労働者の選択肢を広げるため、積極的な中途採用の取り組みも必要です。

また労働人口が減少している少子高齢社会では、新卒採用だけで必要な人材を確保できるとは限りません。企業の競争力を高める意味でも、中途採用によって人材の多様性を高めることは重要になるでしょう。

中途採用比率が公表されていれば、求職者が仕事を探す際に、中途採用に積極的な企業を見つけやすくなります。義務化された背景やメリットを知り、対象企業は中途採用比率を公表しましょう。

中途採用比率の公表時期と方法

公表はおおむね年1回、インターネットやそのほか の方法を使い、求職者が容易に閲覧しやすい方法で行いましょう。

「おおむね年1回」の考え方や、公表方法をくわしく解説します。

公表時期

公表はおおむね年1回、公表した日を明らかにして実施します。

公表の義務化は2021年4月からであったため、初回の公表時期は2021年4月1日以降の最初の事業年度内の2022年3月31日まででした。

たとえば9月から翌年8月までが事業年度の企業なら、2023年9月から2024年8月までに初回の公表をしましょう。

次回以降は、前回公表からおおむね1年以内かつ、可能な限り速やかに公表します。

公表方法

公表方法は、求職者が容易に閲覧しやすい方法を採用しましょう。

具体的にはインターネット上での掲載や、事業所での掲示や書類の備え付けなどが挙げられます。インターネット上での掲載は自社ホームページへ記載するほか、「しょくばらぼ」の活用も可能です。

「しょくばらぼ」は勤務実態や採用状況を検索・比較できる職場情報総合サイトで、厚生労働省が開設しています。

中途採用比率の計算方法

中途採用比率の計算式は以下の通りです。

【中途採用比率の計算式】
中途採用比率(%)=正規雇用の中途採用数÷正規雇用の採用数×100
算出された比率は、小数点以下第1位を四捨五入した整数値で公表します。ただし、事業主の判断で小数点以下の値も公表可能です。
【28人採用したうち中途採用数が15人だった場合】
15人÷28人×100=53.571…%
上の例の場合、公表する中途採用比率は小数点以下第1位を四捨五入した「54%」です。または、事業主側の判断で「53.6%」や「53.57%」と、小数点以下の値を公表しても構いません。

なお中途採用数は、公表年度終了時点で雇用を開始していた、新卒採用以外の労働者の数を使います。

年度終了時点で雇用が始まり、試用期間に入っている中途採用者は含まれますが、雇用が始まっていない内定者は含みません。次年度から雇用する内定者は、含まずに計算しましょう。

また雇用契約の変更で加わった労働者は、変更内容によって中途採用者として扱うかが変わります。定年後の再雇用やグループ会社からの転籍・出向者は中途採用に含みません。

中途採用に含む中途採用に含まない
・雇用が始まり試用期間に入っている人
・雇用契約を変更して正規雇用労働者になった人
・公表時点ですでに退職済みの中途採用者
・雇用が始まっていない内定者
・定年後の継続雇用制度で再雇用した人
・グループ会社から転籍・出向した人


正しく計算するために、中途採用者には誰が含まれるか理解しましょう。

中途採用比率を公表する際のポイント

中途採用比率を公表する際は、次のポイントにも注意しましょう。

中途採用比率を公表する際のポイント

● グループ企業は会社ごとに計算
● 採用が終了した直近3事業年度の中途採用比率を公表
● 採用がなかった年度はその旨を公表
順番にくわしく解説します。

グループ企業は会社ごとに計算し公表

グループ企業でも会社ごとに労働者を募集採用しているなら、グループ企業全体ではなく、会社ごとに比率を公表するのが望ましいです。

ただし、グループ全体で一括採用していて会社別での計算が難しい場合は、全体の比率で公表しても構いません。

採用が終了した直近3事業年度の中途採用比率を公表

公表は1年分の比率ではなく、採用が終了した直近3事業年度の比率で実施します。

直近の3事業年度とは、正規雇用した中途採用者数が「見える化」した、最新の事業年度を含む3事業年度です。

公表時点で事業年度の正規雇用労働者の採用が終了していなければ、中途採用者の人数も見える化できません。

たとえば、4月から翌年3月を事業年度にしている企業が、2023年8月に中途採用比率を公表する場合を考えてみましょう。

公表を実施する8月時点で2023年度の採用活動が継続中なら、2023年度の中途採用比率はまだ見える化できません。したがって、2020年度・2021年度・2022年度の3事業年度分を公表します。



出典:厚生労働省「中途採用比率の公表における解釈事項等について 」

なお3年間の採用人数を通算して比率を求めず、年度別に計算しましょう。事業年度ごとに比率を求め、3事業年度分を公表します。

採用がなかった年度はその旨を公表

採用自体がなかった年度は、正規雇用の採用数も中途採用数も「0人」です。

中途採用比率を0%にせず、採用自体がなかった旨を記載し、公表します。

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まとめ

中途採用比率は採用した正規雇用労働者のうち、中途で採用した人がどれだけいるかを求めた比率です。

常時雇用する労働者が301人以上いる企業は、2021年4月から中途採用比率の公表が義務化されています。対象企業は、直近の3事業年度の中途採用比率を年1回、公表しなければなりません。

公表しなかった場合の罰則は定められていませんが、求職者へのネガティブイメージに影響する可能性はあります。

公表が義務化された目的は、中途採用の活発化や多様なキャリア形成、再チャレンジしやすい環境作りです。中途採用は、多様な労働力や高度なスキルをもつ即戦力の確保にもつながります。企業は中途採用での人材活用にも積極的に取り組みましょう。

よくある質問

中途採用比率とは?

中途採用比率とは、1年間に採用した正規雇用労働者のなかに、中途採用者がどれだけいるかを求めた比率です。

中途採用比率に関して詳しく知りたい方は、「中途採用比率とは?」をご覧ください。

中途採用比率の公表は義務化とは?

2021年4月から、常時雇用する労働者が301人以上の企業は中途採用比率の公表が義務化されました。

中途採用比率公表の義務化に関して詳しく知りたい方は、「中途採用比率の公表は義務化されている」をご覧ください。

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修者 羽場康高