監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所
総務省が郵便料金の値上げを検討しています。早ければ2024年秋ごろに料金が改定される見込みで、実際に郵便料金が値上げされれば実に30年ぶりの値上げです。
定形封書・はがき・定型外郵便・レターパック・速達など、郵便物の料金が改定されれば家計や企業の費用負担に影響が出る可能性があります。
郵便料金の値上げはいつから・いくら行われる見込みなのか、本記事では総務省審議会で議論されている内容や値上げが必要な理由を紹介します。
目次
- 郵便料金の値上げが実施されれば30年ぶり! 過去の料金改定の状況
- 郵便料金の値上げが検討されている理由
- 郵便事業の営業損益は2022年度に民営化後初の赤字
- 郵便物数は2001年度をピークに毎年減少
- 郵便料金の値上げの内容
- 第一種郵便物(封書等)
- 第二種郵便物(はがき)
- 第三種郵便物・第四種郵便物・書留
- 定型外・特殊取扱
- レターパック・速達
- 郵便料金の改定が行われる時期はいつ?
- 2023年12月に総務省が省令の改正案を審議会に諮問
- 値上げを適当とする答申を審議会が2024年3月に発表
- 早ければ2024年10月に郵便料金が値上げされる見通し
- 郵便料金の値上げが家計や企業に与える影響
- まとめ
- よくある質問
郵便料金の値上げが実施されれば30年ぶり! 過去の料金改定の状況
2024年3月現在、総務省が中心となって郵便料金の値上げに関する議論が行われています。いつから値上げされるのか、具体的な時期はまだ発表されていませんが、早ければ2024年10月ごろに郵便料金が改定される見込みです。
郵便物の料金は過去にも値上げされたことはありましたが、消費税率の引き上げに伴う値上げを除くと、主な郵便物では1994年を最後に料金改定は行われていません。2024年秋に郵便料金の値上げが実施された場合、実に30年ぶりの値上げとなります。
第一種 (封書・定形25gまで) | 第二種 (はがき) | 備考 | |
---|---|---|---|
1981年1月20日~ | 60円 | 30円 | |
1981年4月1日~ | ↓ | 40円 | |
1989年4月1日~ | 62円 | 41円 | 消費税3%導入 |
1994年1月24日~ | 80円 | 50円 | |
1997年4月1日~ | ↓ | ↓ | 消費税5%に引き上げ |
2014年4月1日~ | 82円 | 52円 | 消費税8%に引き上げ |
2017年6月1日~ | ↓ | 62円 | 年賀はがきの値上げは2018年2月 |
2019年10月1日~ | 84円 | 63円 | 消費税10%に引き上げ |
郵便料金の値上げが検討されている理由
郵便料金の値上げが検討されている背景にあるのは郵便事業の苦境です。
郵便事業の現状
- 2022年度に民営化後初めて営業損益が赤字を記録
- 郵便物数の減少に伴う収益の減少
以下では、郵便料金の値上げの背景にある郵便事業の現状について解説します。
郵便事業の営業損益は2022年度に民営化後初の赤字
日本郵便(株)の営業損益は近年黒字額が減少傾向にあり、2022年度に民営化後初の赤字となりました。
営業損益とは、企業の主たる営業活動による損益のことです。営業損益がマイナスということは、企業として主たる事業では利益を積み上げることができておらず、事業内容や収益構造の改善が必要な状態にあるといえます。
日本郵便(株)では業務の効率化や人件費などの営業費用の削減が行われてきましたが、燃料費をはじめとした物価高騰の影響などにより、2022年度の営業損益は▲211億円の赤字です。
以下のグラフで示されているように、郵便料金の値上げをしないと今後も赤字額が拡大することが予想されています。そのため郵便料金を値上げして収益改善を図る必要があるといえます。
郵便物数は2001年度をピークに毎年減少
郵便物数は近年大幅に減少しており、内国郵便は2022年度までの21年間で45.0%減少しています。年平均では2.8%の減少が続いている状況です。
郵便物数の減少の主な要因
- インターネットやSNSの普及
- 各種請求書等のデジタル化の進展
- 各企業の通信費や販促費の削減の動き
- 個人間通信の減少 など
料金を据え置いたまま郵便物数が減り続ければ収益はさらに減ることが予想されます。一方で、コスト削減等をこれまで実施してきたものの、これ以上の大幅な営業費用の削減は直近では見込めない状況です。
郵便事業の営業損益の見通しは厳しく、郵便事業の安定的な提供を継続するためには郵便料金を見直して値上げする必要があります。
郵便料金の値上げの内容
総務省審議会を中心に進められている郵便料金改定の議論では、郵便物の種類ごとに値上げ額の検討が行われています。
定形封書・はがき・定型外郵便・レターパック・速達など、以下では郵便物の種類ごとの具体的な値上げ額を紹介します。
第一種郵便物(封書等)
第一種郵便物のうち25g以下の定形郵便物の料金は84円から110円(+31.0%)に、50g以下の定形郵便物の料金は94円から110円(+17.0%)に、それぞれ郵便料金が値上げされる予定です。
郵便物の種類 | 値上げの内容 |
---|---|
25g以下の定形郵便物 | 84円→110円 |
50g以下の定形郵便物 | 94→110円 |
現在は25g以下と50g以下で料金が異なり84円と94円に分かれていますが、改定後は110円に料金を統一する方向で検討が進められています。
第二種郵便物(はがき)
現在はがきの料金は全国一律で1通63円、往復はがきは126円です。料金改定後は現行の63円から85円に値上げされ、34.9%の値上げ率になる見込みです。
郵便物の種類 | 値上げ前の内容 |
---|---|
はがき | 63円→85円 |
なお、はがきは所定の規格内において私製することができますが、その規格を超えるものは第一種郵便物の扱いとなります。
第三種郵便物・第四種郵便物・書留
雑誌などの定期刊行物で第三種郵便物にあたる郵便物や、通信教育用郵便物や点字郵便物など第四種郵便物にあたる郵便物では、値上げは行われず料金は据え置かれる見通しです。
また書留は2023年10月に料金が値上げされたばかりであるため、2024年秋ごろに実施される可能性がある郵便料金の値上げでは対象外となる見込みです。対象外となれば料金は現行のままとなるため値上げは行われません。
定型外・特殊取扱
定形外や特殊取扱等の郵便物は+約30%の値上げ率を基本として検討が進められています。
具体的な金額は現時点では発表されていませんが、たとえば定形外郵便物で250g以内・規格内の料金は現在250円です。仮に30%値上げされた場合、郵便料金は325円になります。
レターパック・速達
レターパックや速達などの一部郵便物では、定型外・特殊取扱などに比べて低い値上げ率で値上げが行われる見通しです。そのため値上げ率は30%より低くなると考えられます。
現在の郵便料金はレターパックライトが370円、レターパックプラスが520円、速達の料金は以下の通りです。2024年秋に値上げが実施されればこの料金よりも高くなります。
速達料金 | 重量 | 料金(基本料金に加算) |
---|---|---|
郵便物(手紙・はがき) | 250gまで | +260円 |
1kgまで | +350円 | |
4kgまで | +600円 | |
ゆうメール | 1kgまで | +330円 |
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郵便料金の改定が行われる時期はいつ?
郵便料金の改定を行うためには省令の改正などが必要です。いつから郵便料金が値上げされるのか、具体的な時期は今後の議論や手続きの状況によって変わる可能性がありますが、早ければ2024年10月に値上げされる見通しです。
以下では、2024年秋に実施される可能性がある郵便料金改定について、これまでの経緯や今後の見通しを紹介します。
2023年12月に総務省が省令の改正案を審議会に諮問
2023年12月、郵便料金を改定するための省令の改正案について、総務大臣から情報通信行政・郵政行政審議会が諮問を受けました。前述の通り郵便事業は厳しい状況にあるため、今後も郵便事業を安定的に継続していけるよう、総務省の審議会で検討が始まりました。
諮問を受け、2023年12月19日から2024年1月22日までの間、料金の値上げに関して意見の公募が行われました。
値上げを適当とする答申を審議会が2024年3月に発表
2024年3月7日、情報通信行政・郵政行政審議会は総務省に対して、諮問の通り改正することが適当である旨の答申を行いました。その際、総務省に対して以下の措置を講じるように審議会から要望が出されました。
審議会から総務省に出された要望
- 必要に応じて郵便料金に係る制度の見直しも視野に入れて検討を行う
- 必要な郵便料金の改定に加え、抜本的な DX や利便性・付加価値の高いサービスの開発・提供などを適切に実施する
早ければ2024年10月に郵便料金が値上げされる見通し
審議会への諮問に対する同審議会の答申を踏まえて省令の改正が行われる予定で、改正にあたっては物価問題に関する関係閣僚会議にも付議される予定です。早ければ2024年10月には郵便料金の値上げが実施されます。
郵便料金の値上げが家計や企業に与える影響
総務省統計局の家計調査結果によると、令和4年の1世帯(2人以上の世帯)当たりの郵便料の消費支出額は3,593円です。世帯全体の年間消費支出額(約349万円)に占める割合は約0.1%にすぎません。
仮に郵便料金が30%値上げされた場合、年間の費用負担は3,593円の30%にあたる1,078円増える計算です。
実際に値上げされれば「郵便料金が高くなった」と感じる人はいるかもしれません。
一方で、郵便物を大量に発送する企業の場合は、郵便料金が値上げされると大きな影響を受ける可能性があります。経費削減を進めたい場合は、これまで郵送していた書類をメールに添付してデータで送るなどの対策を考えましょう。
まとめ
現在総務省で検討が進められている郵便料金の値上げは、早ければ2024年10月に実施される見込みです。第一種郵便物のうち25g以下の定形郵便物と50g以下の定形郵便物の料金は、現在の84円・94円から110円に改定する方向で議論が進められています。
郵便物数の減少などにより郵便事業の収支は苦しい状況にあることが、今回郵便料金の値上げが検討されている理由です。実際に値上げが実施されれば、消費税増税に伴う料金改定を除くと実に30年ぶりの改定です。
普段から郵便物を多く送っている人や企業は値上げによる影響が大きくなる可能性があります。総務省HPやニュースなどを確認して、値上げに関する最新の状況をチェックしましょう。
よくある質問
郵便料金はいつから値上げされる?
総務省で検討が進められている郵便料金の値上げは、早ければ2024年10月に実施される見込みです。
いつから郵便料金の値上げが行われる見込みなのか、詳しく知りたい方は「郵便料金の改定が行われる時期はいつ?」をご覧ください。
郵便料金が値上げされる理由は?
郵便料金の値上げが検討されている理由は、郵便物数の減少などにより郵便事業の収支が苦しい状況にあることです。
郵便料金が値上げされる理由を詳しく知りたい方は、「郵便料金の値上げが検討されている理由」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。