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ペーパーレス化(紙の電子化)が必要な理由とは?成功事例や推進のヒントを紹介

監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士

ペーパーレス化(紙の電子化)が必要な理由とは?成功事例や推進のヒントを紹介

ペーパーレス化とは、これまで紙で運用・保存していた書類や、紙の書類を前提とした業務プロセスに関して、紙の使用をなくす(減らしていく)取り組みのことです。ビジネスシーンでは主に、電子化を通して業務効率化やコスト削減を図る活動を指します。

ペーパーレス化の実施には、紙にかかるコストや手作業にかかる労力の削減に加え、データ活用やDXの推進につながるメリットがあります。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応という観点で「ペーパーレス化を検討している」という企業も少なくありません。

本記事では、ペーパーレス化の考え方やペーパーレス化を実現する方法、メリット・デメリット、成功事例などについて解説します。

目次

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ペーパーレス化とは?

ペーパーレス化とは、これまで紙で運用・管理してきた業務プロセスや取引記録の保存などを、紙を使わずに実施する業務改善プロセスです。

多くの場合、「ペーパーレス化=電子化」を意味しています。ビジネスシーンにおけるペーパーレス化の主な目的は、各ビジネス文書・資料・帳票などを電子データ化し、業務効率の改善やコストの削減を目指すことです。多くの企業が、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進める一環としてペーパーレス化を取り入れています。

ビジネスシーンでペーパーレス化できる主なもの

  • ビジネス文書(契約書、稟議書、帳票類など)
  • 会議資料
  • 営業資料・パンフレット
  • マニュアル
  • チラシ・ポスター など

中小企業基盤整備機構による2023年の調査では、ペーパーレス化やデータ活用などをはじめとするDXの取り組みが必要だと思う中小企業は、全体の7割を超えています。

しかし一方で、調査では「DXに取り組む企業」または「DXを検討している企業」は3割程度にとどまるという結果も出ています。ペーパーレス化などのDXの必要性が浸透している反面、現場との相性や予算面が原因となり、導入に苦戦する中小企業が多いことがうかがえます。

ペーパーレス化を進める際は、かかるコスト、電子化の方法の選択、メリット・デメリットなどを確認し、導入方法や規模を慎重に検討することが必要です。


出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査(2023 年)」

ビジネスにおけるペーパーレス化の方法

ビジネスにおけるペーパーレス化の方法としては、主に「紙で運用している業務プロセスのデジタル化」「紙の帳票の電子化」「紙の文書・資料の電子保存」の3点が挙げられます。

ペーパーレス化の方法具体的な内容
紙で運用している業務プロセスのデジタル化契約書締結、稟議関係の申請・承認、経費精算、データ集計・管理などといった業務プロセスのデジタル化
紙の帳票の電子化請求書、領収書、注文書、契約書、見積書といった商取引関係書類の電子化
紙の文書・資料の電子保存文書管理のシステム化、電子文書関係の操作・検索性の向上、スキャン作業の効率化、経理関係業務全般の電子化

それぞれ、以下で詳しく解説します。

紙で運用している業務プロセスをデジタル化する

紙で運用している業務プロセスをペーパーレス化することで、情報の閲覧・共有の簡略化や決裁・承認関係の高速化などが期待できます。ペーパーレス化しやすい業務とメリットは、以下のとおりです。

契約書締結フローのペーパーレス化

契約書締結フローの電子化によって、取引先との契約書締結フローをすべてWeb上で完結できます。PCやタブレットを通じていつでもどこでも契約書を閲覧・共有でき、電子サインを使って決裁者や担当者の合意をその場で得られるようになります。

稟議関係の申請・承認のペーパーレス化

ワークフローシステム(企業内の確認・申請・承認などの作業を電子化したもの)を使えば、稟議関係の手続きをすべてWeb上で完結できます。見積依頼書、予算案、受発注、採用など、申請や承認が必要なあらゆる業務の効率化が可能です。

経費精算のペーパーレス化

交通費申請や領収書処理などをペーパーレス化すれば、数値入力・精算作業の効率化、精算業務の簡略化、ヒューマンエラーの防止につながります。OCR機能があるシステム導入を行えば、手入力による手間を削減することが可能です。

マーケティングやそのほかデータの集計・管理のデジタル化

マーケティングデータ、社内・社外アンケートデータ、そのほかビジネス関係の情報をペーパーレス化することで、集計・管理作業の一元化、情報の検索性の向上、集計作業の効率化などが期待できます。集計結果をもとにした意思決定のスピードも上げられるでしょう。

紙の帳票を電子化する

企業活動では、契約書、領収書、注文書、契約書、見積書といったさまざまな帳票を取り扱います。紙の帳票を電子データ化することで、経理関係の業務プロセスや帳簿付け・確定申告作業の効率化が可能です。

契約書の電子化

契約書を電子化できれば、電子契約システムや電子サインの活用によって契約締結フローをすべてWeb上で完結できます。また、電子契約書は収入印紙が必要ないので、印紙税がかからないというメリットもあります。

見積書の電子化

見積書の電子化によって、見積書の有効期限の管理、過去の見積金額との比較・見直し、迅速な発行による顧客の契約意欲促進などにつながるメリットがあります。

注文書の電子化

FAXでの送付機会も多い注文書は、ペーパーレスFAXを活用することで、FAX文書を印刷することなく電子データとして保存できます。FAXの印刷代削減、受信したFAXの原紙の各担当者への振り分けなどが可能です。

また、複合機と組み合わせることで社内外での閲覧・追記・送信の実施や注文書のやり取りに関するプロセスの一元管理にも対応できます。

請求書の電子化

電子メールやビジネスチャットを通じた請求書の送付、クラウド会計ソフトの活用によるWeb上での請求書の発行が可能になります。

領収書の電子化

領収書のペーパーレス化は経費申請作業の電子化とともに実施することで、業務効率化やヒューマンエラーの防止などが期待できます。

紙の文書・資料を電子保存する

ビジネス関係の各種文書・資料を電子保存できれば、各部門の事務作業の大幅な効率化が見込めます。

文書管理システムのシステム化

電子化されたさまざまな文書の作成、取得、保存、廃棄などの一連のサイクルを管理できるのが文書管理システムです。過去の文書情報の検索やアクセス権限、セキュリティなどの機能も利用できます。

また、電子データとして適切に保存できるので、電子帳簿保存法の対応策としても有効です。

電子文書の操作性の向上

文書データにスタンプを押したり、文字を書き込んだり、線を引いたりできるドキュメントハンドリングソフトウェアを活用すれば、紙文書を扱うのに近い感覚でPC上の電子文書を操作できるようになります。

スキャン作業の効率化

AI-OCR(AI技術と光学文字認識技術を組み合わせた先端技術)のようなスキャン機能を効率化するツールなら、高精度での文字認識と文脈読み取りによる修正、データベースとの連携による情報取得、読み取りミスに対する学習精度向上などによる大幅な業務効率化が期待できます。文書の手書きや情報の手入力といった作業に有効です。

経理業務関係の文書全般の電子化

経理業務関係の文書全般を電子化できれば、バックオフィス業務の業務効率化に加え、電子帳簿保存法への対応、財務・資産状況の可視化による経営戦略見直しなどができるメリットがあります。

ペーパーレス化に取り組むメリット

企業がペーパーレス化に取り組むメリットは、業務効率の改善だけではありません。企業の利益やブランドイメージの向上など、以下の7つのメリットが挙げられます。

ペーパーレス化に取り組むメリット

①業務効率および生産性の向上
②コスト削減
③データ活用やDXの推進
④セキュリティやガバナンスの強化
⑤多様な働き方への対応
⑥企業イメージの向上
⑦BCP対策

ここではそれぞれの詳細を解説します。

①業務効率および生産性の向上

ビジネスにおけるペーパーレス化の大きなメリットは、業務効率や生産性の向上です。ビジネスシーンでは多くの文書・帳票などを取り扱います。しかし、紙だと手作業かつ物理的な管理となるため、業務効率や生産性の面で多くの課題がありました。

以下は、紙媒体での取り扱いによる問題点と、ペーパーレス化によって考えられる変化です。

紙での管理による問題点ペーパーレス化による変化
印刷コピーや印刷に時間がかかるデータのダウンロードや一斉送付などによって、印刷作業が不要になる
情報共有人数分の印刷と手渡しの作業や、回覧が必要になる従業員がアクセス可能なクラウドへの保存や一斉送信、通知などによって迅速に共有できる
各種業務のミス手作業による時間・労力がかかり、集中力低下による転記ミスや確認ミスなどのリスクがあるPC上での迅速な文章・レイアウトの修正、チェックツールの活用によるミスの早期発見、効率化による作業労力の削減につながる
取引先への送付封入・封緘作業や郵送料の発生、宛先ミスなどのリスクがある封入・封緘作業が必要なく、電子メールやビジネスチャットなどで簡単に共有できる
保管・保存発行・受領した証憑書類や文書などのファイリング作業、紛失・破損のリスク、保管スペースの確保にかかる手間などが発生するファイリング作業、物理的な紛失・破損のリスク、物理的な保管スペースなどが必要なくなる
検索性保管場所がわからなくなると、書類を1枚ずつ手作業で確認しなければならないファイル名や文書名による検索、文字列検索などで簡単に探せる
業務時間各種手作業による時間がかかるPC上での作業完結や共同編集などができるので、業務効率化と品質維持につながる
労力各種手作業による負担増やヒューマンエラーのリスクがある業務効率化によって付加価値の高い業務へリソースを割けるので、企業全体の生産性向上につながる
拡張性人員増員や作業方法変更などによって対応しなければならないPA連携による定型作業の自動化や、他の業務システムとの連携ができる

②コスト削減

ペーパーレス化によって、文書・資料・帳票などの印刷や保管に使っている紙代、インク代、複合機の維持費、複数の複合機の購入代、郵送料などです。紙媒体の保管スペースにかかる管理費、賃料、備品(書類棚や鍵付き倉庫など)代の節約も可能です。

またペーパーレス化によって業務の効率化ができれば、印刷や保管のコストだけでなく人的コストも抑えられます。

たとえば、中小企業がフリー株式会社の「クラウド会計ソフトfreee」を導入することで、ワークフローや経理関係の電子化によって年間作業時間は78%減らすことができ、(2,959時間→666時間)、年間コストは65%もの削減(632万5,968円→222万4,888円)が見込めるという試算データもあります。
freee独自シミュレーションによる

③データ活用やDXの推進

ペーパーレス化は、データ活用やDX推進の基盤となる施策です。

これまで紙で保管していたあらゆる情報をデジタル化できることから、データの検索性が高まるだけでなく、データドリブンな事業運営も可能にします。また、ペーパーレス化を足がかりに各業務プロセスでIT技術の活用ができれば、自社のITスキル・ノウハウの蓄積、IT人材の採用・育成といった中長期的な効果も得られます。

経済産業省が公表している「DXレポート」には、DXが進まないことによるリスクとして、「デジタル競争での敗北」「システムの維持管理費高騰によるIT予算の負担増」「脆弱なセキュリティによるサイバーリスク」などが挙げられています。ペーパーレス化を基盤としたDX推進は、将来考えられるリスクへの対策としても有効です。


出典:経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」

④セキュリティやガバナンスの強化

ペーパーレス化によって電子データにした書類は、紙に比べて紛失・破損・改ざんといった物理的なリスクも低くなります。また、外部からの脅威や内部不正に対してシステムが防御してくれるため、紙よりもセキュリティ・ガバナンス面を強化できます。

セキュリティ・ガバナンスの強化

  • アクセス制限・閲覧制限・編集制限などによって、不正持ち出しや改ざんなどを防止
  • タイムスタンプや電子署名によって、はんこの押印と同じように真実性を担保
  • データの別媒体への記録やクラウド環境での保存によって、バックアップを作成
  • システムによるアクセス履歴・編集履歴の確認や異常検知によって、異常の発生を早期に確認
  • 経年劣化、物理的な破れ、災害による紛失などのリスク低減
  • 検索性の向上によって、監査などで必要な調査・書類提出に速やか対応できる

ただし、コンピュータウイルス感染やそのほかサイバー攻撃に対する適切なセキュリティ体制を構築しなければ、データ破損や情報漏洩などにつながるリスクが発生します。デジタル化に伴うリスクへの対策も欠かさないようにしましょう。

⑤多様な働き方への対応

ペーパーレス化によって業務プロセス・書類の電子化や業務効率化が進めば、これまでになかったさまざまな働き方にも対応できます。

たとえば業務プロセス・書類の電子化やクラウド環境の活用によって、オフィス外でもファイルを閲覧・編集・共有できるようになります。クラウド会計ソフトを活用すれば、請求書・見積書の発行や帳簿作成なども自宅で対応できます。ペーパーレス化は、テレワークの推進にも有効です。

また、ペーパーレス化により業務効率化が実現できれば、従業員の時間外労働や業務負担なども削減できる可能性があります。労力・時間の余裕ができる分、働き方改革の推進や従業員が希望する部門・業務への配置なども検討できるでしょう。

⑥企業イメージの向上

ペーパーレス化に取り組む企業は、ステークホルダーからの企業イメージ向上が期待できます。近年では環境・社会・ガバナンス(企業統治)の観点から投資先の価値を測る「ESG投資」の考え方が注目されていますが、ペーパーレス化による紙の使用量・廃棄量の削減、テレワーク導入をはじめとする働き方変革などを推進していれば、社会や環境に配慮できるサステナブル(持続可能)な企業として評価されやすいでしょう。

二酸化炭素削減や森林保護など環境保護の観点からも、ペーパーレス化は効果的な手段であり、環境問題に取り組む企業としての認知も広がります。

そのほか、電子インボイスや電子帳簿保存法への適切な対応をしている企業として、取引先からの信頼獲得にもつながるでしょう。

⑦BCP対策

BCPとは「Business Continuity Plan」の略称で、「事業継続計画」のことです。自然災害、火災、テロ攻撃、パンデミック(感染爆発)などの緊急事態に遭遇した際の事業継続・早期復旧のために、平常時・緊急時にすべき準備・行動などを決めておく計画を意味します。

ペーパーレス化は、企業のBCP対策にも有効です。たとえば紙から電子データに変換してクラウド環境などへアップロードしておけば、災害によるオフィス倒壊やハードウェア破損・水没などが発生しても、物理的に使えなくなるリスクを低減できます。

また、ペーパーレス化によってテレワークに対応しておけば、オフィスに出勤することなく事業を継続できます。電子文書へのアクセス権限付与などの内部統制強化に取り組むことで、緊急事態に乗じた不正の発生も抑えられるでしょう。

【関連記事】
BCP(事業継続計画)とは?対策のメリットや流れを分かりやすく解説

ペーパーレス化に取り組むデメリット

ペーパーレス化にも以下のようなデメリットが存在し、ペーパーレス化を妨げている原因となっています。

ペーパーレス化によるデメリット

  • 操作に慣れるまでは不便
  • 紙よりも見づらい・メモを書き込めない
  • 環境整備に手間とコストがかかる
  • システム障害や機器の故障に影響を受ける

操作に慣れるまでは不便

これまで紙で管理・運用してきたものをペーパーレス化する場合、電子文書の取り扱いや新システム・機器の操作など、これまでにない業務対応が求められます。

ペーパーレス化に伴ってシステムやツール、端末などを導入したときは、取り扱いや操作に関する説明会や研修会を開き、全員が問題なく操作できるようにしましょう。

紙よりも見づらい・メモを書き込めない

PCやタブレット端末で電子文書を確認・作成する場合、慣れていないと紙の文書よりも不便さを感じるケースがあります。PCやタブレットの画面の広さは決まっているため、読みやすくするには拡大表示や電子文書を前提としたレイアウト設定などが必要です。

大きな表や複数枚の資料を確認する際は、紙と比べると電子文書はどうしても読みづらくなります。また、電子文書は資料への書き込みが難しい点もデメリットです。メモを取るための別ソフト(アプリ)やタッチペンも導入するなど、相応の準備が必要になります。

環境整備に手間とコストがかかる

ペーパーレス化を進めるには、書類のスキャン機器、電子文書の作成システムやツール、IT関係の環境整備、人数分の端末などの準備も必要です。そのため、機器類の導入や環境構築、メンテナンスなどにかかる各種コストと手間が発生します。また、保存している紙の帳票などが膨大になる場合は、それらをデータ化するコストも大きくなります。

システム障害や機器の故障に影響を受ける

ペーパーレス化は、システム障害、機器の故障、電波障害などのIT関連トラブルによるデータ消失・業務停止に弱いというデメリットがあります。また他社のクラウドサービスを使っていると、利用先の企業のトラブルやメンテナンス時に、サービスが利用できなくなるケースもあります。

ペーパーレス化の推進の際は、並行してトラブル発生時の対処法やバックアップ体制を整備しておきましょう。

ビジネスにおけるペーパーレス化の主な成功事例

ビジネスにおけるペーパーレス化の成功事例には、システム・ツールの導入によるものを中心に多数存在します。主な成功事例について、詳細を見ていきましょう。

事例1:グループウェア導入によるコミュニケーション促進

グループウェア(企業内の意思疎通を円滑にするためのソフトウェア)を導入し、Web上での社内決裁や個人カレンダーの閲覧を可能とした企業の成功事例です。

オフィスに出勤して紙の資料を閲覧したり印刷して保存したりする必要がなくなったことで、紙代や印刷コストが減少しました。また、グループウェア上で決裁関係のやり取りや個人カレンダーを閲覧できるようになったことから、決裁者・経営者による承認待ち時間が大幅に短縮されました。

グループウェア導入によるペーパーレス化は、グループウェアそのものの機能による企業内コミュニケーションの活発化や、テレワーク環境の整備にも寄与します。ワークフローシステムなどほかのシステムを組み合わせれば、さらなる業務効率化が見込めるでしょう。

事例2:電子契約システム導入による契約関連業務の効率化

電子契約システムの導入によって、契約書のペーパーレス化と契約締結のワークフローの業務効率化を達成した企業の成功事例です。

電子契約システムを導入する前は、契約書の作成を管理部門、送付と回収が取引先と直接やり取りする担当編集者で分かれており、業務効率に課題がありました。また、決裁者が多忙だと契約書の確認が後回しになり、業務が滞るケースも散見される状況でした。

電子契約システムの導入により、編集担当者を挟まず契約担当者との直接的なやり取りが可能に。決裁者もWeb上での電子サインで契約関係の対応ができるようになったので、決裁者が近くにいなくても契約を進められるようになりました。

さらにこの企業は、経理システム導入による証憑書類のペーパーレス化も実施しています。

事例3:タブレット配布による報告書・会議資料のデジタル化

営業担当者にタブレットPCを配布し、報告書や会議資料の作成をデジタル化した企業は、リアルタイムな情報共有と、ペーパーレス会議を実現しました。

会議資料の印刷作業や会議用の消耗品にかかる経費削減、会議資料の修正作業の容易化、会議資料の保管および紛失・劣化防止、会議資料の検索向上など、会議に関するさまざまなコスト削減と効率化を達成しています。

ペーパーレス会議は、厚生労働省をはじめとする政府組織でも取り入れられています。

ペーパーレス化を成功させるヒント

企業内でペーパーレス化をするには、ペーパーレス化の考え方の浸透や推進の仕方などを工夫し、自社に合う方法を検討することが大切です。

ペーパーレス化を成功させるヒント

  • 社内外の理解を得る
  • 部分的・段階的に推進する
  • 紙の使用状況を洗い出す
  • 目的に合ったITシステム・ツールを導入する

社内外の理解を得る

ペーパーレス化実現のための体制変更やシステム導入は、現行の業務プロセスを大きく変化させます。

ペーパーレス化のメリットが現場に伝わっていなければ現場の混乱や反発を招く可能性が高く、経営者や部門長といった決裁者を説得できなければペーパーレス化が進むことはありません。そのため、ペーパーレス化をスムーズに進めるには、まず以下のように社内全体の理解を得ることが重要です。

  • 現場の従業員には、ペーパーレス化による変更点・メリット・スケジュールの共有や現場の課題についてヒアリングを行い、一体となって進めてもらえるようにする
  • 決裁者側には、プレゼンなどでペーパーレス化具体的なメリット、導入後に見込まれる効果、予算やスケジュールを伝える

ペーパーレス化によって請求書や契約書を電子化する場合は、取引先の業務にも影響が出ます。社内だけでなく取引先にも、ペーパーレス化に伴う業務変更点や電子化による先方のメリットをあらかじめ伝えておきましょう。

部分的・段階的に推進する

はじめから企業内すべての書類のペーパーレス化を目指すと、導入にかかる時間や関わる従業員の負担が大きくなり、現場が混乱する可能性があります。また、導入がうまく行かなかったときに業務の一斉遅延や一時停止が発生するリスクも考えられるでしょう。

そのため、ペーパーレス化は部分的・段階的に少しずつ推進していくことを推奨します。部署単位、プロジェクト単位、業務単位などでテストを兼ねてスモールスタートで始め、問題点の抽出・改善や成功体験を積み重ねつつ徐々に範囲を広げます。

部分的・段階的に進めていくうちに「これは便利だ」といった評価を現場から得られれば、その後のペーパーレス化の取り組みもスムーズになるはずです。

紙の使用状況を洗い出す

ペーパーレス化の導入時には、ペーパーレス化すべき紙をどの程度使用しているのか状況を把握しましょう。

証憑書類、会議資料、報告書、そのほかビジネス関係の書類など、用途や使用量をすべて洗い出します。そこから特に紙の使用が多いところ、電子化の恩恵が大きいところを抽出してペーパーレス化に取り組めば、業務効率化やコスト削減を効果的に進められるでしょう。

目的に合ったITシステム・ツールを導入する

「どの文章をペーパーレス化すべきか」、「どの業務プロセスの電子化を進めるか」などの目的の違いによって、導入すべきシステム・ツールは変わります。事前にペーパーレス化前の自社の課題やニーズを現場へのヒアリングなどで洗い出しておき、「どういった機能を持つシステム・ツールなら解決できるのか」を分析しておくことが大切です。

たとえば帳票類や経理関係のペーパーレス化なら経理システムあるいは会計ソフト、社内文書や契約関係ならワークフローシステムや電子契約システム、タイムカードなら勤怠管理システムなどが挙げられるでしょう。

まとめ

ビジネスシーンでペーパーレス化できるものには、請求書や契約書などの取引関係の書類、報告書や会議資料などのビジネス文書などがあります。紙での運用・管理を電子化することには、業務効率化や生産性向上、データ活用やDXの推進、企業イメージの向上など、さまざまなメリットが期待できます。

ペーパーレス化には、システムの導入などの相応の対応コストを見込まなければなりません。また、社内外の理解や部分的・段階的な推進も不可欠です。本記事で紹介した成功事例などを参考に、システムを導入する際には自社の課題やニーズを十分に把握したうえで選定しましょう。

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よくある質問

ペーパーレス化する方法にはどんなものがある?

ペーパーレス化する方法は、大きく「紙で運用している業務プロセスのデジタル化」「紙の帳票書類の電子化」「紙の文書・書類の電子保管」に分けられます。

詳細は記事内の「ビジネスにおけるペーパーレス化の方法」をご覧ください。

ペーパーレス化に取り組むメリットは?

ビジネスシーンでペーパーレス化を推進すると、作業の効率化やコスト削減が見込めます。またデータ活用・DX推進の基盤作り、セキュリティおよびガバナンスの強化、多様な働き方への対応、企業イメージの向上、BCP対策などにもプラスに働くでしょう。

詳細は記事内の「ペーパーレス化に取り組むメリット」をご覧ください。

ペーパーレス化の具体例は?

ペーパーレスの具体的な事例としては、グループウェアの導入による情報共有やワークフローの改善、電子契約システム導入による契約関連の業務効率化、報告書や会議資料のデジタル化によるペーパーレス会議の実現などがあります。

詳細は記事内の「ビジネスにおけるペーパーレス化の主な成功事例」をご覧ください。

監修 前田 昂平(まえだ こうへい)

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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