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生理休暇は誰でも取得できる?制度の概要や課題、スムーズな運用方法を解説

監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP

生理休暇は誰でも取得できる?制度の概要や課題、スムーズな運用方法を解説

生理休暇は労働基準法で定められた制度です。しかし、厚生労働省の令和2年度雇用均等基本調査によると、取得状況はわずか0.9%と低い水準です。

出典:「令和2年度雇用均等基本調査-28P-(2) 生理休暇の請求」

生理の不快症状を我慢し体調が悪いまま仕事を続けると、従業員の心身の健康を損なう恐れがあり、組織自体の生産性も低下してしまいます。

生理休暇をとりづらい背景には、制度利用者の少なさや周囲の無理解などの課題が考えられ、企業・事業者は改善が必要です。

本記事では、生理休暇制度の概要規定内容取得するメリットなどを解説します。

目次

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生理休暇とは

生理休暇は、法律で定められている休暇制度です。企業が独自に定める特別休暇とは異なり、就業規則での規定の有無は関係ありません。

生理日に下腹痛・腰痛・頭痛などの不調があり就業が著しく困難な従業員は、誰でも休暇を請求できます。

企業側に拒否権はなく、生理休暇を請求した社員には必ず休暇を付与しなければなりません。

生理休暇の目的

生理休暇は、生理の不快症状が辛く、就業できない女性を保護するための制度です。

生理の不快な症状が業務への悪影響を及ぼすと感じる女性労働者は多くいます。しかし、生理休暇の取得は、生理が辛い個人だけの問題ではありません。

パフォーマンスの低下は結果として組織全体の生産性低下を招く恐れがあるため、企業側には包括的な取り組みが求められます。

生理休暇に関する労働基準法の規定内容

生理休暇は、労働基準法の第68条に定められています。本章では生理休暇の規定内容を解説します。

生理休暇の取得条件

生理休暇は法律で定められている休暇制度であり、条件に該当する従業員全員に、請求する権利が認められています。

請求する従業員は必ずしも正社員である必要はありません。契約社員・パート・アルバイトなど雇用形態や従事している業務に関わらず、誰でも請求・取得ができます。

生理休暇を取得する条件は、「生理が原因の症状により就業が著しく困難な状態」です。条件に該当する状態であれば基本的に自己申告でよく、医師による診断書は必要ありません。

生理休暇を利用した場合の給与の扱い

法律上、生理休暇を利用して休んだ場合の賃金の定めはありません。

有給または無給のいずれでもよく、支給の有無や金額の判断は各企業に委ねられます。

労使間のトラブルを避ける観点からも、明確に規定して就業規則に盛り込んでおくとよいでしょう。

取得できる日数

生理休暇を取得できる日数に上限はありません。また、企業側による日数の限定もできません。

生理休暇を取得する場合は1日単位の休暇である必要はなく、半日や時間単位でも請求できます。

条件に該当すれば請求でき、企業は拒否できない

生理休暇は企業が独自に設定する特別休暇ではなく、労働基準法で定められている法定休暇制度です。

所定の条件を満たす従業員は誰でも請求ができ、請求された企業側は生理休暇を希望する従業員に就業の強要はできません。

従業員が生理休暇を希望したにも関わらず、請求を拒否して無理やり勤務させるなどの違反行為を行った企業は、三十万円以下の罰金の対象です。

PMS(月経前症候群)で生理休暇を取得できるかは企業による

PMS(月経前症候群)は、生理前に現れる症状の総称です。生理と同じように就業が困難なほど辛い症状の人もいますが、労働基準法上、生理休暇でのPMSの扱いに関する言及はありません。

PMSの具体的な例としては、情緒の不安定・抑うつ・イライラ感・睡眠障害・集中力低下などの精神的症状や、腰痛・頭痛・食欲低下や過食・めまい・倦怠感・むくみ・腹部や乳房の張りなどの身体的症状です。

PMSは多くの場合、生理前3~10日前に症状が出ます。症状の出方や程度は個人差によるところが大きく、人によっては仕事への悪影響を及ぼす可能性がある点は生理の不快症状と同様です。

法律による明確な定めはありませんが、企業によっては独自に休暇を認めている場合もあり、規定がないからといって一概に休めないとは限りません。もし該当する症状があり、生理休暇の取得を検討しているのであれば、企業側へ確認してみるとよいでしょう。

生理休暇のメリット

生理休暇制度のメリットを解説します。

従業員の健康が守られ職場全体のウェルビーイングを高める

生理による不快な症状があっても、現代社会では人手不足や収入面の理由などから我慢して働く女性もいます。

体調の不良を我慢したままの就業を続けていると、従業員の健康を損なう恐れがあるだけでなく、メンタルヘルスにも悪影響を及ぼす可能性が考えられます。

心身の面や社会的な面など、多角的な幸福を「ウェルビーイング」といいます。職場のウェルビーイング向上が、組織全体の生産性を高める結果にもつながります。

仕事の生産性の向上が図れる

生理の不快症状と仕事の生産性には関連性があると考えられています。

日本医療政策機構の調査「働く女性の健康増進調査 2018」によると「生理に伴う不快な症状により仕事のパフォーマンスが半分以下まで低下する」と回答した女性は、全体の約半数でした。

出典:「働く女性の健康増進調査 2018」

また同調査では、ヘルスリテラシーの向上が仕事のパフォーマンスにも影響するとしています。生理休暇の取得で従業員の心身の健康を守る取り組みは、結果として組織全体の生産性の向上につながるでしょう。

生理休暇の取得状況と課題

厚生労働省が公表する「令和2年度雇用均等基本調査」によると、生理休暇の取得状況は僅か0.9%と低い水準に留まっています。

出典:「令和2年度雇用均等基本調査-28P-(2) 生理休暇の請求 」

また、生理休暇が取得しづらいため、代わりに通常の有給休暇を利用して休む場合もあり、従業員の不利益につながっています。

生理休暇の取得率が低い理由として、下記のような原因が挙げられます。

生理休暇の取得率が低い理由

● 男性上司に申請しにくい
● 利用している人が少ない
● 休んで迷惑をかけたくない
● 利用するほど症状がひどくないため申請しにくい
● 男性の同僚の目が気になる
● 申請しても認められない
出典:「働く女性と生理休暇について」

特に人手不足の職場は、生理休暇を取得しにくい状況になってしまっている可能性が考えられます。

「生理休暇の取得率」「請求しやすい環境かどうか」などのポイントを中心に、まずは自社の現状を把握するところから始めましょう。

課題が見つかった場合は、職場全体で生理休暇への理解を深め、早急な改善が必要です。

生理休暇の導入と利用しやすい環境作りのポイント

企業が生理休暇を導入する際のポイントや、利用しやすい職場環境を整えるための要点を解説します。

生理休暇の伝え方や取得手順を整備する

企業によっては、生理休暇を取得する際の方法が明確に決められていない場合もあるでしょう。

取得希望が請求しづらく、かつ突発的になりがちな生理休暇の特性を考慮し、メールや専用フォームなど、請求のしやすさに配慮した取得手順を整備しましょう。

会社所定のフローがはっきりと決まっていれば、従業員側も心理的に請求しやすいです。

また、定めた手順は従業員に広く周知しましょう。限られた従業員のみが把握するだけでは取得率の向上は望めません。

生理休暇を請求できる条件は、「生理の不快症状により就業が著しく困難な状態」ですが、症状の程度は自己申告で問題ありません。

なお、症状の程度は各々の感じ方によって異なるため、明確に基準を設けることは不可能です。少し安静にして症状の回復が見込める場合は半休を請求できるようにするなど、企業側の配慮が必要です。

また、必要以上に症状を詳しく聞き出そうとする行為は、ハラスメントにもつながる恐れがあるので注意しましょう。

職場全体で生理休暇への理解を深め意識を共有する

健康的な社内風土を育むためには、性別・生理の症状の程度にかかわらず、生理休暇促進の取り組みを職場全体の課題として捉える意識が必要不可欠です。

女性でも生理症状がない・少ない場合は理解が浅いままの人もいます。生理に対する理解を深めるための研修や、場合によってはテレワークの環境を整えるなど、働きやすい職場を整備しましょう。

たとえば環境整備の一環として、生理休暇という枠を超えて、生理以外でも使用できるように新たな休暇制度を検討してもよいでしょう。最近では、取得要件を拡大し「エフ休」や「ウェルネス休暇」などの名称に変更する企業も増えています。

柔軟なシフト調整など、生理休暇で休んでも周囲がカバーでき、問題なく業務が進む組織づくりが大切です。

また、相談できる窓口を用意するのもワークライフバランス支援策のひとつです。産業医や婦人科医、カウンセラーなどの専門家にサポートを依頼できる体制があれば、従業員も安心して働けるでしょう。

また、社内に相談窓口を設ける場合、可能であれば担当者を人事部でかつ女性にするとより相談しやすくなります。

就業規則に記載する

生理休暇は労働基準法で定められた法定休暇です。就業規則への記載がない場合でも、従業員は請求し休暇を取得できます。

しかし、生理休暇で休んだ場合の賃金規定や休暇の請求方法など、取得に関するルールを就業規則に明示しておけば、従業員側もより安心感を持って請求できるでしょう。

また、生理の不快症状の程度は個人差があり、生理休暇の請求時には自己申告で済みます。医師による診断書は原則必要ありませんが、自己申告である以上、不正取得される可能性も考えられす。

不正取得を防止する観点からも、企業側の対策として、生理休暇の不正取得に対する懲戒の規定をあらかじめ盛り込んでおくとよいでしょう。

まとめ

生理休暇は、生理による体調不良で就業が著しく困難な場合、請求すればすべての従業員が取得できます。雇用形態や業種を問わず、条件に該当する従業員は誰でも請求できます。

生理休暇の取得率は0.9%と低い水準にあり、企業・事業者は改善が必要です。職場全体の生産性やウェルビーイング向上のため、生理休暇を取得しやすい環境整備をしましょう。

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よくある質問

生理休暇とは?

生理休暇は、労働基準法で定められた休暇制度です。生理の不快症状が辛く就業が著しく困難な場合、請求すれば休暇を取得でき、企業は拒否できません。

生理休暇の概要を詳しく知りたい方は「生理休暇とは」をご覧ください。

生理休暇は無給になる?

生理休暇で休んだ期間の賃金の扱いは、労働基準法で決められていません。有給か無給は企業の判断に委ねられます。

生理休暇の賃金を詳しく知りたい方は「生理休暇を利用した場合の給与の扱い」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史