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【2024年】診療報酬改定でどう変わる?方向性や主な改定内容を解説

公開日:2024/06/28

監修 牧崎 茂 株式会社プロアクティブコンサルティング代表取締役

【2024年】診療報酬改定でどう変わる? 方向性や主な改定内容を解説

2024年6月1日、2年に一度の診療報酬改定が施行されました。本記事では、診療報酬改定が行われる時期主な改定内容をわかりやすく解説します。

今回の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げや感染症対策のための初診料・再診料引き上げなどが行われました。また、2024年度は介護報酬・障害福祉サービス等報酬の改定も同時に進行します。

診療報酬改定の方針・具体的な方向性も説明しているので、ぜひ診療報酬改定内容への理解に役立ててください。

目次

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2024年診療報酬改定とは

診療報酬とは、医療行為の対価として医療機関に支払われる費用です。医療の進歩、経済状況などを踏まえ、2年に一度見直しが行われます。

医療行為に対する見直し内容を決めるのは、厚生労働大臣の諮問機関である「中央社会保険医療協議会(中医協)」です(※1)。中医協は、政府が決定した診療報酬全体の「改定率」をもとに、医療行為一つひとつの具体的な点数を審議します。

診療報酬は2年ごとに見直されるのに対し、介護報酬・障害福祉サービス等報酬は3年ごとに見直されます(※2)。つまり、2024年は3つの報酬が同時に改定される6年に一度の年です。

(※1)厚生労働大臣の諮問機関とは、厚生労働大臣の諮問(見解を求めること)に応じて審議や調査を行う機関です。
(※2)介護報酬とは、介護サービスを提供した対価として事業者に支払われる報酬を指します。また、障害福祉サービス等報酬は障害者総合支援法および児童福祉法に基づく障害福祉サービス等に支払われる報酬です。

2024年診療報酬改定が行われる時期

2024年診療報酬改定の施行日は、6月1日です。

例年、診療報酬改定は4月1日に施行されます。しかし、中医協は2023年8月2日、施行日を2024年度から2ヶ月後ろ倒しにする提案を受け入れました。

なお、薬価改定(医薬品の公定価格の見直し)の施行日は例年通り4月1日です。

時期国の動きなど
2月上旬中医協による答申(※1)
3月上旬厚生労働大臣の告示・通知
3月下旬電子点数表の公布(※2)
4月1日薬価改定の施行
6月1日診療報酬の施行
7月10日初回請求

(※1)答申とは、改定案を厚生労働大臣に申し述べることです。
(※2)電子点数表は、診療報酬点数表の算定ルールを電子化したものです。

従来のスケジュールでは、中医協の答申や告示から施行までの期間が短く、短期間でソフトウェアの改修や国による解釈通知への対応などが必要でした。

そこで、業務が短期間に集中するのを避け、システム開発業者や医療機関の負担を減らすために改定時期が見直されました。

2024年診療報酬改定の方針・具体的な方向性

厚生労働省は、2024年診療報酬改定の基本的な方針として以下の4つを定めています。

2024年診療報酬改定の基本方針

  • 物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応
  • 全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、新興感染症等への対応など医療を取り巻く課題への対応
  • 医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現
  • 社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の基本方針の概要」

以下では、2024年診療報酬改定の具体的な方向性を詳しく解説します。

1 人材確保・働き方改革の推進

高齢化率が上昇し続け、医療の需要が高まる一方で、医療業界では離職が入職を上回っており、人手不足への懸念が高まっています。長期的にみても、生産年齢人口の減少によって医療の担い手はさらに不足する見込みです。

こうしたなか、処遇改善や働きやすい環境の整備によって人材確保を図ることは喫緊の問題となっています。

具体的方向性の例

  • 医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組
  • 各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための勤務環境の改善、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進
  • 地域医療の確保及び機能分化を図る観点から、労働時間短縮の実効性担保に向けた見直しを含め、必要な救急医療体制等の確保
  • 様な働き方を踏まえた評価の拡充
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の基本方針の概要」

2 地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進

団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年に向け、患者一人ひとりが必要な医療を受けられるような医療体制の確保が求められます。

そこで、2024年診療報酬改定では、医療DX推進による地域ごとの医療の役割分担や強化が必要だと示しました(※)。

具体的方向性の例

  • 医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進
  • 患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価
  • 新興感染症等に対応できる地域における医療提供体制の構築に向けた取組
  • かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価
  • 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の基本方針の概要」

(※)医療DXとは、医療分野でデジタル技術を活用し、社会や生活の形を変えることです。

3 安心・安全で質の高い医療の推進

食料品や光熱費などの物価高騰を踏まえ、患者にとって必要な質の高い医療を確保するための取り組みが求められます。

具体的には、重点分野(小児医療や救急医療など)への適切な評価や、生活習慣病の管理・重症化予防の取り組み推進などを示しました。

具体的方向性の例

  • 食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応
  • 患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価
  • アウトカムにも着目した評価の推進
  • 口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進
  • 薬局の経営状況等も踏まえ、地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価を推進
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の基本方針の概要」

4 医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

高齢化や医療の進歩によって医療費の増大が予測されるなか、医療資源を適正に配分し、医療保険制度を安定・持続的に維持するための取り組みが求められます。

たとえば、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、費用対効果評価制度を活用した適正な価格設定、市場実勢価格を踏まえた適正な評価などを具体的な方向性として示しました。

具体的方向性の例

  • 後発医薬品やバイオ後続品の使用促進、長期収載品の保険給付の在り方の見直し等
  • 費用対効果評価制度の活用
  • 市場実勢価格を踏まえた適正な評価
  • 医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の基本方針の概要」

2024年診療報酬改定の主な内容

医療・介護・障害福祉サービスの3つの報酬が同時に見直される2024年は、大規模な診療報酬改定となります。主な改定内容を解説します。

2024年診療報酬改定の項目

  • 初・再診料、入院基本料の引き上げ
  • 医療DXの推進
  • 感染症対策の推進
  • 医療・介護の連携促進
  • 外来の機能分化・強化
  • 入院の機能分化・強化
  • 質の高い在宅医療の確保
  • 重点分野への適切な評価

初・再診料、入院基本料の引き上げ

感染対策防止にかかる費用や医療従事者の賃上げのため、初診料3点、再診料2点の引き上げが決定しました。

項目点数
初診料291点
再診料75点
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定【全体概要版】」

賃上げを実施した場合は、新設された「ベースアップ評価料」によって加算が受けられます。外来医療・在宅医療を実施している医療機関や、有床診療所で賃金の改善を実施している場合に評価されます。

また、病棟の種類などに応じて入院基本料の引き上げも決定しました。急性期一般入院料1の点数は38点増の1,688点となります。

医療DXの推進

医療DXを推進するための評価見直しも行われました。

項目点数
医療情報取得加算● 初診時3点(マイナ保険証を利用する場合は1点)
● 再診時2点(マイナ保険証を利用する場合は1点)(※)3ヶ月に1回
医療DX推進体制整備加算8点(月1回)
在宅医療DX情報活用加算10点(月1回)
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】」

「医療情報取得加算」は、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の名称が変更されたものです。オンライン資格確認等システムの導入が原則義務化されたのを受け、患者に対して十分な情報を取得したうえで初診・再診を行った場合の評価に見直されます。

また「医療DX推進体制整備加算」「在宅医療DX情報活用加算」は、マイナ保険証を活用している、電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスを整備しているなどの要件を満たす場合の評価です。

感染症対策の推進

新型コロナウイルス感染症に関する診療報酬上の臨時的な取り扱いが廃止され、2024年6月からは新型コロナウイルス感染症に限らない恒常的な感染症対策へと見直されます。

感染症対策への対応として、「発熱患者等対応加算」「特定感染症入院医療管理加算」が新設されました。

加算措置点数
発熱患者等対応加算(外来)20点(月1回)
特定感染症入院医療管理加算(入院)治療室の場合:200点
それ以外の場合:100点
(1入院に限り7日まで)
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【ポストコロナにおける感染症対策】」

「発熱患者等対応加算」とは、適切な感染防止対策を行ったうえで実際に発熱患者などに対応した場合の加算です。月に1回に限り、20点を加算できます。

「特定感染症入院医療管理加算」は、新型コロナを含め、特に感染対策が必要な感染症の患者に対して適切な対策を行ったうえで入院させた場合の加算です。1入院に限り7日を限度として、100~200点/日加算されます。

医療・介護の連携促進

2024年の診療報酬改定は介護報酬との同時改定となったため、医療と介護サービスの連携を促進するための見直しも行われました。

たとえば、介護保険施設などに入所している高齢者が施設内で生活を維持できるよう支援するため、以下の加算が新設されます。

加算措置点数
介護保険施設等連携往診加算200点
協力対象施設入所者入院加算往診が行われた場合:入院初日に600点
それ以外の場合:入院初日に200点
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定【全体概要版】」

平時から介護保険施設と連携している医療機関が入所者の症状が急変したときに往診を行った場合は「介護保険施設等連携往診加算」、診察のうえ入院させた場合は「協力対象施設入所者入院加算」が加算されます。

外来の機能分化・強化

外来の主要な見直し内容は、生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧)が「特定疾患療養管理料」の対象疾患から除外されたことです。

現行の「生活習慣病管理料」は、検査などを包括する「生活習慣病管理料(Ⅰ)」、検査などを包括しない「生活習慣病管理料(Ⅱ)」に再編されます。

項目点数
生活習慣病管理料(Ⅰ)(名称変更)● 糖尿病:760点
● 脂質異常症:610点
● 高血圧:660点
生活習慣病管理料(Ⅱ)(新設)333点(月1回)
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【外来】」

「生活習慣病管理料(Ⅰ)」は「生活習慣病管理料」の名称が変更されたもので、40点の引き上げが決定しました。月1回以上の診療を行う要件を廃止するなどの見直しも行われています。新設された「生活習慣病管理料(Ⅱ)」は、検査などを出来高で算定できます。

その他、リフィル処方を推進するための評価や、かかりつけ医と介護支援専門員との連携を強化するための評価の見直しも実施されました(※)。

(※)リフィル処方とは、症状が安定している患者が同じ処方箋3回まで繰り返し使用できるものです。

入院の機能分化・強化

入院の評価見直しでは、高齢化の軽症・中等症疾患のニーズの高まりを受け、高齢者の早期復帰を支援するための「地域包括医療病棟入院料」が新設されました。

救急患者などを受け入れる体制を整備するとともに、リハビリや栄養管理、入退院支援、在宅復帰などの機能を担う病棟に対する評価で、1日につき3,050点を算定できます。

また、2024年4月以降、医師に時間外労働の上限規制が適用される法改正を踏まえ、働き方改革を推進するための評価見直しも行われました。

質の高い在宅医療の確保

在宅医療の分野では、地域包括ケアシステムの推進が焦点となっています(※1)。

「在宅医療情報連携加算」は、そのひとつとして新設された評価です。医師が患者に計画的な医学管理を行う際、関係職種がICTを用いて記録した診療情報などを活用した場合に100点を加算できます(月1回)。

また、患者の状態に応じた往診を推進するため、単発の往診に関して「緊急往診加算」「夜間・休日往診加算」「深夜往診加算」の引き下げが決定しました(※2)。

項目点数
緊急往診加算325点
夜間・休日往診加算405点
深夜往診加算485点
出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定【全体概要版】」

(※1)地域包括ケアシステムとは、地域が一体となって医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する体制を指します。
(※2)過去60日以内に訪問診療をしていない患者や、外来で継続的に診療を受けていない患者などの往診が該当します。

重点分野への適切な評価

質の高い医療を推進するため、重点的な対応が求められる分野への評価が見直されました。

重点分野

  • 救急医療
  • 小児医療・周産期医療
  • がん医療および緩和ケア
  • 認知症
  • 精神医療
  • 難病患者に対する医療
救急医療では、連携する医療機関に転院搬送する場合の評価「救急患者連携搬送料」が新設されました。入院後3日目までの患者が対象で、600~1,800点を算定できます。

また、小児医療では、高度な医療が必要な重傷新生児への手厚い看護体制を評価する「新生児特定集中治療室重症児対応体制強化管理料」が新設されました。7日を限度に、1日14,539点を算定できます。

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まとめ

2024年は、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の3つが改定される6年に1回の年度です。今回の診療報酬改定では、医療従事者の人材確保のための賃上げが焦点のひとつです。

2024年診療報酬改定は例年の2ヶ月後ろ倒しとなり、6月1日に施行されました。改定に関する資料は、厚生労働省ホームページにて随時確認しましょう。

よくある質問

2024年の診療報酬改定はいつ実施された?

2024年診療報酬改定の施行日は、6月1日(薬価改定は4月1日)です。

2024年診療報酬改定時期を詳しく知りたい方は「2024年診療報酬改定が行われる時期」をご覧ください。

2024年診療報酬改定の改定内容は?

2024年診療報酬改定では、医療従事者の賃上げのための初・再診料引き上げなどが実施されました。

2024年診療報酬改定の改定内容を詳しく知りたい方は「2024年診療報酬改定の主な内容」をご覧ください。

監修 牧崎 茂(まきざき しげる) 株式会社プロアクティブコンサルティング代表取締役

2009年4月に中小企業診断士としてまた、久光製薬㈱での薬事監査業務の経験を活かし、GXP QAコンサルタントとして独立。GMP工場のコンサルティング、監査業務を含む、GXP(GLP, GCP, GVP等)に関連した幅広いエリアでのGXP及びQMSの構築に関する専門家として活動を行っている。

監修者 牧崎茂