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経営セーフティ共済とは? 加入条件やメリット・デメリットをわかりやすく解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

経営セーフティ共済とは? 加入条件やメリット・デメリットをわかりやすく解説

取引先が倒産して売掛金などが回収できなくなった場合、経営へのダメージは避けられません。特に中小企業は多大な影響を受ける場合も多いでしょう。

回収不能となった金額が大きく、ダメージに耐えうる資金力がない場合は、連鎖的に倒産しなければならないケースも想定されます。

このような危機を乗り越えるために知っておきたいのが、「経営セーフティ共済」です。

経営セーフティ共済は、取引先の倒産リスクに備えるための共済制度です。制度の仕組みを把握しておけば、いざというタイミングでも慌てずに対処できます。

本記事では、制度の概要加入条件メリット・デメリットなどを解説するので参考にしてください。

目次

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは

「経営セーフティ共済」は正式名称ではなく、中小企業倒産防止共済制度の愛称です。

中小企業倒産防止共済制度は、その名の通り、取引先の倒産リスクに備える中小企業のための共済制度です。独立行政法人中小企業基盤整備機構により、中小企業倒産防止共済法に基づいて運営されています。

中小企業は、規模の大きな組織と比較して「取引先数が少ない場合が多い」「取引先の財務情報を入手するのが困難な場合が多い」などの理由で、取引先が倒産した場合の被害が大きくなりがちです。

そのため、中小企業間の相互救済を目的に、制度が創設されました。

経営セーフティ共済では、連鎖的な倒産や経営難に陥る事態を防ぐため、取引先が倒産した際に利用できる貸付制度が設けられています。

令和5年3月末時点での加入数は約62万件です。

経営セーフティ共済と似た名称の共済制度として「小規模企業共済」がありますが、小規模企業共済は、事業をやめた後の収入減に備える、経営者のための退職金共済制度です。

経営セーフティ共済と小規模企業共済はそれぞれ異なる制度であるため、加入要件を満たせば同時加入が可能です。

【関連記事】
小規模企業共済とは|5つのメリットと3つのデメリット

経営セーフティ共済の加入条件

経営セーフティ共済に加入できるのは、1年以上継続して事業活動を行っている中小企業者(または個人事業主)・組合です。

中小企業者の、業種ごとの「資本金または出資の総額」と「常時使用する従業員数」の要件は以下の通りです。

業種資本金または
出資の総額
常時使用する
従業員数
製造業・建設業・運輸業・その他の業種3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業と工業用ベルト製造業を除く)3億円以下900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業3億円以下300人以下
旅館業5,000万円以下200人以下
出典:共済サポートnavi「経営セーフティ共済の加入資格」

なお、上記の要件を満たす組織であっても、適切な経理業務を行っていない・税金を滞納しているなどの欠格事由に該当する場合は、加入が認められません。

加入のための詳細な条件は、中小企業基盤整備機構機構の「共済サポートnavi」で確認できます。

経営セーフティ共済の掛金

経営セーフティ共済の掛金は、月額5,000円から20万円の範囲で設定が可能で、5,000円単位で任意の金額を決められます。積立の限度額は800万円です。

掛金の納付方法は、金融機関の口座からの自動振替によります。引き落とし日は毎月27日です。加入者が希望すれば、1年分の掛金の前納も可能です。

経営セーフティ共済に加入するメリット

経営セーフティ共済に加入するメリットとしては以下の3点が挙げられます。

経営セーフティ共済に加入するメリット

  • 取引先の倒産時などに貸付制度を利用し資金の借入が可能
  • 掛金を損金算入(個人事業主であれば必要経費算入)できる
  • 解約した際に解約手当金を受け取れる

それぞれ詳しく解説します。

取引先の倒産時などに資金の借り入れが可能

経営セーフティ共済の加入者は、取引先が倒産した場合に、無担保・無保証人で貸付制度を利用できます。

回収困難となった売掛金債権などの金額か、納付済の掛金の10倍の金額のいずれか少ないほうの額を限度に借り入れ可能です。ただし、いずれの場合においても上限は8,000万円までです。

共済金の借り入れは、取引先の倒産が以下のケースの場合に認められます。

借り入れが認められる倒産のケース

  • 法的整理
  • 取引停止処分
  • でんさいネットの取引停止処分
  • 私的整理
  • 災害による不渡り
  • 災害によるでんさいの支払不能
  • 特定非常災害による支払不能

上記理由に含まれない「夜逃げ」の場合は認められません。

なお、加入者が何らかの理由で事業資金が必要になった場合は、取引先が倒産していなくても「一時貸付金制度」を利用して借り入れができます。一時的にお金に困った場合は制度の活用を計画的に検討するとよいでしょう。


出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「共済制度」

掛金を損金算入(または必要経費算入)できる

法人の場合、経営セーフティ共済の掛金を損金として算入できます。また、個人事業主も必要経費として算入できます。

損金として計上する場合、法人は確定申告の際に別表十(七)「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」および、損金に算入する金額(法人税関係特別措置の適用を受ける額)を記載した「適用額明細書」の添付が必要です。

個人事業主が必要経費として計上し確定申告する際は、「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を添付してください。

ただし、制度の仕組みが不適切に利用されるケースが確認されたため、短期間で加入・脱退を繰り返す行為を是正する措置が講じられています。

令和6年10月1日以降に解約して再度加入する場合は、解約から2年経過するまでは損金・必要経費算入ができないため注意しましょう。

解約した際に解約手当金を受け取れる

経営セーフティ共済の契約を解約した場合、理由が自己都合であっても解約手当金を受け取れます。

解約手当金の金額は、解約までに掛金を納めた月数や、掛金の総額により異なり、12ヶ月以上納付した場合は掛金総額の8割以上、40ヶ月以上納付した場合は掛金全額が戻ります。

経営セーフティ共済のデメリット

経営セーフティ共済に加入するデメリットは以下の2点が考えられます。

経営セーフティ共済のデメリット

  • 事業を1年以上継続していなければ加入できない
  • 12ヶ月未満での解約は掛け捨てとなる
  • 解約手当金は益金(個人事業主の場合は事業収入)となり課税される

次項で詳しく見ていきましょう。

事業を1年以上継続していなければ加入できない

経営セーフティ共済の加入には、「引き続き1年以上事業を継続している」という要件が定められています。起業してすぐの事業者は、仮に多額の資金が必要であっても加入は認められません。

ただし、個人事業主が法人化して1年未満の場合は、以下の要件を満たす場合に限り加入が可能です。

個人事業主が法人成りした場合の加入要件

  • 個人事業主が個人事業のすべてを新設した法人に譲渡していること(事業の全部譲渡)
  • 個人事業主が設立した法人の役員になっていること(役員登記)
  • 個人事業の開業時から申込時まで通算して1年以上事業を継続していること
  • 業種ごとの資本金額、従業員数が条件以下であること

出典:共済サポートnavi「経営セーフティ共済FAQ」

12ヶ月未満での解約は掛け捨てとなる

経営セーフティ共済の解約手当金は、掛金を納付した月数に応じた支給率で計算されます。12ヶ月未満の場合は0%のため、結果として掛け捨てとなります。

11ヶ月と12ヶ月以上では大きな差が生じるため、解約のタイミングには注意しましょう。

解約手当金は益金(個人事業主の場合は事業収入)となり課税される

経営セーフティ共済の掛金を支払った際は損金算入(または必要経費算入)できる反面、解約手当金は益金(個人事業主の場合は事業収入)となり、課税されます。

限度額の800万円まで積み立てていた場合、それが解約時の一時の益金になるため、累進税率等の関係から税額が大きく増加する可能性があります。

何か大きな損金または必要経費の支出がある年度に解約するなど、解約のタイミングには注意しましょう。

まとめ

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先の倒産リスクに備える共済制度です。事業資金が必要になった場合は、取引先が倒産していなくても貸付制度を利用できます。

1年以上継続して事業活動を行っている中小企業者(または個人事業主)・組合が加入要件を満たす場合に加入できます。

解約の際は、掛金を納付した月数に応じて解約手当金が受け取れますが、12ヶ月未満の場合は掛け捨てとなるため注意しましょう。

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よくある質問

経営セーフティ共済とは?

経営セーフティ共済は、取引先が倒産した際などに事業資金の借入ができる共済制度です。

経営セーフティ共済を詳しく知りたい方は、「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは」をご覧ください。

掛金は経費にできる?

法人は損金として、個人事業主は必要経費として算入できますが、確定申告の際に所定の書類を添付しなければなりません。

掛金の計上を詳しく知りたい方は、「掛金を損金算入(または必要経費算入)できる」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮