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労働基準法を守るには?雇用者が知っておきたい違反のリスクや対策をわかりやすく解説

監修 岡崎 壮史 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

労働基準法を守るには?雇用者が知っておきたい違反のリスクや対策をわかりやすく解説

労働基準法に違反した際のリスクや、違反となる事例、取るべき対策を解説します。故意ではなくても、労働基準法違反になってしまう事例もあります。

労働基準法に定められたルールを遵守できるよう、理解を深めましょう。

目次

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労働基準法は労働条件の基準を定めた法律

労働基準法は労働者の権利を守り、労働条件の最低基準を定めた法律です。賃金の支払や労働時間、解雇時などに企業が守るべき基準が細かく定められています。労働基準法に違反すれば、内容に応じた罰則もあります。

また、労働基準法は労働問題や労働環境の変化、働き方の多様化などにあわせて改正されてきました。

最近では、2019年4月からの時間外労働の上限規制や、年10日以上の年次有給休暇を取得できる者について、最低5日以上の年次有給休暇の取得を義務づけるなどの改正がされています。さらに2023年4月からは、月60時間を超える時間外労働に対し、残業代値上げ義務も加わり、医師や運送業界も時間外労働の上限規制の適用が義務化されます。

労働基準法に違反した場合のリスク

労働基準法に違反した場合、その企業には調査や指導が入るほか、悪質な場合は懲罰を受ける可能性もあります。

具体的にどのようなリスクがあるのか詳しく解説します。

労働基準監督署の調査・指導を受ける

全国各地にある労働基準監督署は、労働基準法を始めとする法律に基づき、労働条件の調査や改善指導などを行なっています。

労働基準監督署への通報があれば、必要に応じて立ち入り調査が実施されます。調査により労働基準法への違反が確認されれば、是正勧告や改善指導が行なわれます。

なお、労働基準監督署は予告なしに立ち入れる権限があり、調査を拒否・妨害した場合は処罰される場合もあります。

経営者・責任者が逮捕や書類送検される可能性がある

労働基準法では、違反した場合の罰則も定めています。罰則の内容はケースごとに懲役刑や罰金刑があり、経営者や責任者が逮捕、または書類送検された事例もあります。

たとえば2015年3月、居酒屋経営者が所定の支払期日までに賃金を支払わず、逮捕・送検されました。この事例では、労働基準監督署が労働者からの賃金不払い申告を受け、行政指導が行なわれたにもかかわらず、経営者が対応していませんでした。

ほかにも、最低賃金を下回っていたり、違法な長時間労働をさせていたりなどの事例で書類送検されているケースがあります。

企業としてのイメージダウンになる

労働基準監督署の調査・指導を受けたり、経営者の逮捕や書類送検があったりすると、労働基準法に違反した企業として悪いイメージを持たれてしまいます。

従業員からは信頼を失い、不信感から転職や退職を考える人が増える可能性があります。離職者が増えれば人員補填のため、採用活動をしなければなりません。しかし、イメージダウンにより求職者が集まりにくくなるという悪循環に陥る恐れもあるでしょう。

必要な人材を雇えなくなると経営にも影響を及ぼし、企業の存続が危ぶまれる事態になりかねません。

労働基準法違反となる事例

労働基準法違反となる事例は、賃金の未払いや不当解雇、法定労働時間を超えた勤務など、わかりやすい事柄ばかりではありません。

「手続きを忘れていて」「うっかり間違えていた」などのケースでも違反に該当する場合があるため、注意が必要です。

採用にあたって労働条件の提示をしていなかった

労働基準法では「労働条件の明示」が定められています。原則として書面で、契約期間や就業場所、業務内容、賃金、退職に関する内容などを提示しなければなりません。条件明示をせずに労働契約を結ぶのは、労働基準法違反です。

親族や知人でも、労働条件を明示にしないまま雇ってしまうと労働基準法違反となってしまうため、注意しなければなりません。

休憩時間中に電話対応や来客対応をさせていた

労働基準法では、労働時間が6時間を超えるなら45分以上、8時間を超えるなら1時間以上の休憩を与えるようにとされています。そして、休憩時間は労働者の自由に利用させなければなりません。

そのため、休憩時間中に電話対応や来客対応をさせていると、労働基準法違反に該当します。

もし休憩時間中に電話や来客の対応が必要であれば、対応に使われた時間は労働時間として扱い、別途休憩を与える必要があります。

1時間に満たない労働時間を切り捨てて残業代を計算した

残業代の計算は、従業員ごとに時間数が異なり、時間帯によっては割増賃金も発生する煩雑な作業です。しかし、計算を簡略化するためであっても、日々の残業時間数をすべて切り捨ててはいけません。

労働基準法では、労働した時間分の賃金は原則として全額支払うと定められています。ただし、1ヶ月の残業時間を合計したうえで、30分未満を切り捨て・30分以上を1時間に切り上げる処理は認められています。

これは、必ずしも労働者の不利益にならず、残業代の支払処理を簡略化できるためとされています。

しかし、1時間未満の残業時間をすべて切り捨ててしまうと労働基準法違反になるので注意が必要です。

休日出勤や深夜残業での割増賃金を与えていなかった

休日出勤や深夜残業となった場合、割増賃金を支払わなければなりません。賃金の割増しを適用する部分を見落として、給与を計算しないよう注意が必要です。

割増賃金の計算を誤り、支払うべき賃金が未払いの状態となれば、労働基準法違反です。

また、賃金は決められた期日までに支払わなければならず、未払いであれば労働者の請求により裁判所から未払い分の支払いを事業主に対して命じられるとされています。

有給休暇の付与日数が少なかった

労働基準法では、従業員に与える年次有給休暇の日数を定めています。有給休暇の日数は、勤続年数や出勤した割合に応じて最低日数が定められており、付与日数が下回ると労働基準法違反です。

入社日の記録間違いから付与日数を誤る可能性もあります。通年採用をしていて、従業員の入社日が一律でないなら、特に注意が必要です。

有給休暇を取らない従業員がいた

労働基準法の定めでは年次有給休暇が10日以上の労働者に対し、毎年5日有給休暇を取得させる義務があります。有給休暇を取らない従業員がいるなら、取得を促さなければなりません。

事業主や企業側は、従業員がなぜ休みを取らないのかを考えて対処が大切です。業務量が多くて休むに休めない、休みを取りにくい社内風土があるなど、本人の意識や行動だけで解決できないなら、雇用者側が改善する必要があります。

退職者が必要とする離職票を発行しなかった

次の仕事が決まっていない退職者は、雇用保険の失業給付金を受け取るために離職票が必要です。

次の仕事が決まっていて、失業給付金を受け取らずに職に就く場合なら離職票は不要ですが、退職者が必要とするなら退職を証明する書類として請求した事項のみを記載した証明書を交付しなければなりません。

退職時の手続きで交付を忘れないよう、注意が必要です。

就業規則を作成・届出していなかった

常時10人以上を雇う事業者は、就業規則を作成して行政に届け出なければなりません。事業規模が拡大し、従業員が増えて10人以上になったにもかかわらず、就業規則の作成・届出を忘れていると労働基準法違反になります。

先々を考え、従業員の人数増が見込まれるなら、就業規則の作成・届出が必要となる前から準備を済ませておくと安心です。

従業員の名簿や賃金台帳を作っていなかった

従業員の名簿や賃金台帳の作成など、各種書類の作成も労働基準法で定められています。従業員を雇うようになったなら、各種名簿や台帳などの書類も、忘れずに作成しましょう。

また、各種名簿や台帳などの書類は5年間保存しなければならないとされており、保管を怠った場合も労働基準法違反に該当します。

労働基準法に違反しないために企業がとるべき対策

労働基準法に違反しないため、企業側は法律への理解を深め、作業を効率化する取り組みが必要です。

労働基準法について理解を深める

経営者や労務・人事の担当者などが労働基準法に定められている内容を理解し、何が違反になるかを知る必要があります。理解を深めれば、社内の問題点に気付けるようになり、知らずに違反してしまう事態を防げます。

労働基準法の内容や解釈で不明点や判断に迷うのであれば、各種相談窓口で相談できます。

労働基準監督署や総合労働相談コーナーでは、労働者からの相談だけでなく、雇用者からの相談も受け付けています。従業員の労働条件や労災保険、安全衛生などで不明点があれば、こうした相談窓口を利用しましょう。

作業を効率化するツールを導入する

労働基準法にも関わる人事や労務の手続き・作業は、煩雑でミスが起こりやすい部分もあります。

入社日の違う従業員への有給付与時期、残業した時間帯による残業代の変化などは、一律に処理できません。義務づけられている各種記録の保管も、手間のかかる作業です。

人的な間違いから労働基準法違反につながりかねない作業は、労務管理ツールや給与計算ツールを活用し、ミスを防ぎましょう。

業務改善にもなり、ツール導入にかかる費用は、「業務改善助成金」などの助成金を利用できる場合もあります。

勤怠管理を効率化する方法

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企業の労務担当者のみなさん、freee人事労務をぜひお試しください。

まとめ

労働者の権利を守るため、従業員を雇う企業や事業者は、労働基準法を守らなければなりません。

もしも違反があれば労働基準監督署の調査が入り、悪質な場合は経営者や責任者の逮捕・書類送検などもありえます。

場合によっては意図せず違反している可能性もあるため、経営者や人事・労務の担当者は労働基準法への理解を深めなければなりません。

また、給与計算や有給休暇、労働時間の管理など、人事・労務の手続きには煩雑な作業があります。こうした作業を効率化するツールを活用し、労働基準法違反を防ぐ工夫も必要です。

よくある質問

労働基準法とは?

労働基準法は労働者の権利を守り、労働条件の最低基準を定めた法律です。賃金の支払や労働時間などに企業が守るべき基準が定められています。

労働基準法を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

労働基準法に違反するとどうなる?

労働基準法に違反した場合、その企業には調査や指導が入るほか、悪質な場合は懲罰を受ける可能性もあります。

労働基準法に違反した場合のリスクを詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

監修 岡崎 壮史 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

マネーライフワークス代表。現在は、助成金申請代行・活用コンサルとして、企業様の助成金の申請代行や活用に向けたサポート業務、金融系サイトへ多くの記事を執筆・記事監修を担当し、社労士試験の受験指導講師としての活躍の場を全国に展開している。

監修者 岡崎 壮史氏