監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP
共同配送は、複数の企業の荷物の配送を共同化することで、配送を効率化する試みです。共同配送の概要、メリットやデメリット、導入事例を解説します。
ドライバーの人手不足や労働環境の改善を背景に、共同配送を含む物流の効率化が進められています。共同配送を導入するメリットとデメリットを把握して、自社の物流業務の改善に活かしましょう。
目次
共同配送とは
共同配送とは、複数の荷主の荷物を1台の車両で輸送するなどの工夫により、荷物を共同で配送する仕組みです。
通常、各企業は個別に物流業務を行っています。たとえば、食品問屋センターに商品を納品する食品メーカーが4社あるとき、4社はそれぞれに車両を用意して食品問屋センターへ納品します。
個別に配送する場合、企業ごとにトラックやドライバーを用意しなければなりません。メーカーが4社あると、少なくとも4台のトラックとドライバーが必要になり、食品問屋センターでの荷受け作業も納品されるごとに必要です。
共同配送を実現できれば、配送に必要なトラックやドライバー、荷受け作業の効率化が図れ、コストの削減が可能です。
近年では、同じカテゴリーの商品を取り扱う同業者間での輸配送の共同化が進んでいるほか、異業種間での共同配送も実施されています。
共同配送の導入が進む背景
共同配送の導入が進む背景には、深刻な人手不足が挙げられます。
2011年から日本の人口は減少に転じており、労働人口も減少しています。物流業界にもその影響は現れていて、トラックドライバー不足は深刻な状況です。労働人口の減少は今後さらに進むと予想されており、物流の労働力確保は喫緊の課題です。
特に、長時間労働となりやすい長距離幹線輸送は、必要なドライバーが確保できない問題が生じています。2024年4月からは自動車運転業務の時間外労働の上限規制が適用され、物流の「2024年問題」として注目を集めています。
共同配送が導入できれば、配送の効率化につながり、物流にかかる大きな負荷を軽減できるでしょう。頻発する災害時の物流維持、地球環境問題への対応、大規模イベントへの対応を考えても、共同配送の推進は多くの分野で求められています。
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共同配送を導入するメリット
共同配送を導入する主なメリットは次の通りです。
共同配送を導入するメリット
- 配送の効率化が図れる
- 人手不足の解消につながる
- 物流コストを削減できる
- CO2排出量の削減が期待できる
各メリットの詳しい内容を紹介します。
配送の効率化が図れる
共同配送の大きなメリットは、荷物を積み合わせた一括配送により、配送の効率化が図れる点です。
企業が個別に配送する場合、すべての車両で100%の積載率を実現できるわけではありません。たとえば、東京から大阪へ4つの食品企業がそれぞれ積載率50%で配送を行った場合、50%×4台分の積載スペースが無駄になってしまいます。
共同配送を導入すれば、商品を積み合わせた一括配送が可能です。積載率の向上が見込め、より少ない車両で効率よく商品を配送できます。
人手不足の解消につながる
共同配送の導入は、人手不足の解消につながる点がメリットです。輸送に必要な車両を減らすことができれば、当然ながらドライバーの数も減らせるからです。
近年、ECサイトの普及で、インターネットで購入した商品が自宅まで配送される便利な時代が到来しました。一方で、物流需要は大幅に拡大し、労働人口の減少とあわせてドライバー不足が加速しています。
人手不足は、ドライバーだけでなく荷受けする側でも生じています。共同配送の導入による配送の効率化は、長時間労働の是正や荷受作業の削減につながり、人手不足の解消が期待できるでしょう。
物流コストを削減できる
共同配送を実現できると、人件費や輸送費などの物流コストを削減できます。
物流では、輸送・運送費や荷役費、商品の保管費や管理費、人件費などさまざまなコストが必要です。近年は、燃料やユーティリティ費用、人件費など多くのコストが上昇しており、共同配送によるコスト削減は企業にとって大きなメリットです。
また、物流コストの削減は、商品価格にも影響を与えます。コスト圧縮を送料や商品価格へ反映できると、同業他社との競争力向上につながります。
CO2排出量の削減が期待できる
共同配送が普及して車両や船舶の稼働台数を削減できると、CO2(二酸化炭素)排出量の削減が期待できます。
物流企業と家電メーカーが取り組んだ事例では、大規模な共同配送の実現により、22.9トンのCO2排出量の削減を実現しました。共同配送導入前と比較して、40.6%のCO2排出削減率です。
カーボンニュートラルの実現に向け、CO2削減は社会全体で取り組まれています。共同配送の導入は、企業が社会的責任を果たすうえでも重要な施策です。
共同配送を導入するデメリット
共同配送の導入は複数のメリットがある一方、いくつかのデメリットやクリアすべき課題を抱えています。主なデメリットは次の通りです。
共同配送を導入するデメリット
- 共同配送のシステムづくりが必要となる
- 柔軟な対応が難しくなる
- 配送料金の統一が必要となる
各デメリットの詳細を解説します。
共同配送のシステムづくりが必要となる
共同配送を導入するときには、複数の荷主企業間での荷姿・納品条件・伝票などに関するシステムづくりが必要です。
共同配送は、異なる企業の商品を一括して配送します。企業間で荷姿や納品条件が統一されていないと、物流業者は商品ごとに異なる対応を行わなければなりません。共同配送で効率化を図るはずが、かえって作業量の増加につながる場合もあります。
柔軟な対応が難しくなる
共同配送は、急な荷物の追加などへの柔軟な対応が難しくなる点がデメリットです。
自社単独で配送を行う場合、イレギュラーな状況が起きても比較的柔軟に対応できます。共同配送の場合、配送を利用する企業は自社だけではないため、配送する商品の量や出発の時間、配送のルートを自社の都合のみで変更できません。
したがって、共同配送で円滑な配送を行うためには、トラックの配送状況や積載率のデータを可視化し、適切なルート選定を行える環境づくりが求められます。
配送料金の統一が必要となる
共同配送を導入する場合、各企業間で異なる配送料金の調整が課題です。通常、配送料金は輸送距離や時間、輸送物の重量や内容など企業ごとに独自に設定されています。
ひとつの配送のなかで複数の料金算出方法があると、企業側で不公平感が生じる可能性や、物流業者の事務作業増加につながる可能性もあります。
共同配送の導入事例
共同配送は、すでに多くの業界・業種で導入されている仕組みです。以下では、コンビニ業界や医薬品業界の導入事例、異業種間での事例を紹介します。
コンビニ業界の導入事例
コンビニエンスストアは約58,000店舗が全国に展開されており、多くの物流コストがかかる業種です。災害時には食料や飲料を供給する社会インフラともなることから、共同配送の導入が行われています。
たとえば大手コンビニ3社は、基幹センターからサテライトセンターまでの配送、サテライトセンターから各店舗までの配送の2つの共同配送の実証実験を実施しています。今後も配送の効率化のため、社会実装を進めていく予定です。
医薬品業界の導入事例
医薬品は地震や台風などの災害時にも安定して製品を供給する必要があり、業界では配送や保管体制の共同化を進めています。
医薬品メーカー4社と3PL(サードパーティ・ロジスティクス)業者が北海道に設立した共同物流センターはその一例です。受注曜日の統一などにより、トラックの積載率向上などを達成しています。
異業種間の導入事例
共同配送は、異業種間の企業でも取り組まれています。ある大手新聞社と家電メーカーでは、空車であった新聞社の朝刊帰り便に家電メーカーの荷物を積み込む共同配送を実施しています。
従来、家電メーカーは同区間をディーゼル車で輸送していました。新聞社のバイオ燃料を使ったトラックを利用することにより、輸送コストの削減と同時にCO2排出量の削減を実現しています。
まとめ
持続可能な物流システムの構築に向けて、共同配送は有効な手段のひとつです。ドライバーの人手不足は今後も継続すると予想されており、災害や地球環境問題への対応の面からも、配送の効率化は欠かせません。
共同配送の実現は物流コストの削減にもつながることから、多くの企業で導入が進められています。新しい仕組みを導入するための課題を意識しつつ、前向きに取り組みましょう。
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よくある質問
共同配送とはどのような仕組み?
複数の荷主の荷物を1台のトラックに積み込み、共同で配送する仕組みです。
共同配送を詳しく知りたい方は「共同配送とは」をご覧ください。
共同配送のメリットは?
配送の効率化、人手不足の解消、物流コストの削減などが挙げられます。
メリットを詳しく知りたい方は「共同配送を導入するメリット」をご覧ください。
監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。