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ジョブ型人事指針とは?人事制度の内容や導入のポイントとともに解説

監修 大柴 良史 社会保険労務士・CFP

ジョブ型人事指針とは?人事制度の内容や導入のポイントとともに解説

2024年8月28日、政府はジョブ型人事指針を公表しました。

働き方の多様化や労働環境の変化を受け、近年、多くの企業でジョブ型人事制度が検討され、いくつかの企業で導入され始めています。

ただし、人事制度の変更は、採用や職務、賃金など多くの分野に影響を与えます。個々の企業の経営戦略や文化にも違いがあり、導入には困難が伴うでしょう。

本記事では、ジョブ型人事指針の概要、ジョブ型人事制度の内容やメリット・デメリットを解説します。先行する企業の事例を参考に、ジョブ型人事制度の導入を検討しましょう。

目次

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ジョブ型人事指針とは

ジョブ型人事指針は、ジョブ型人事制度を導入した各企業の事例をもとに、2024年8月28日に政府が公表した指針です。

ジョブ型人事指針では、すでにジョブ型人事制度を導入している20社の事例が紹介されています。

日本では、これまで新卒一括採用が中心で、異動は会社が主導する人事制度が一般的でした。従来の人事制度にもメリットはあるものの、従業員の自律的なキャリア形成は難しい状況です。

今後、日本企業が競争力を維持するために、政府はジョブ型人事制度の導入が必要と考えています。

しかし、日本の各企業が持つ経営戦略や人事制度、歴史はさまざまであり、各企業に適したジョブ型人事制度の導入が必要です。

そこで、政府はすでにジョブ型制度を導入している企業の事例を「ジョブ型人事指針」として取りまとめ、各企業の参考となるように公表しています。

なお、ジョブ型人事指針の公表は、2024年6月21日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」のうち、三位一体の労働市場改革を早期実現する施策のひとつとして実施されています。


出典:内閣官房・経済産業省・厚生労働省「ジョブ型人事方針」

ジョブ型人事指針に盛り込まれた事例の項目

ジョブ型人事指針の事例は、各企業の特徴をできるだけ把握するため、次の項目に基づいて情報提供が行われています。

事例の項目

  • 制度の導入目的、経営戦略上の位置づけ
  • 導入範囲、等級制度、報酬制度、評価制度などの制度の骨格
  • 採用、人事異動、キャリア自律支援、等級の変更などの雇用管理制度
  • 人事部と各部署の権限分担の内容
  • 労使コミュニケーションなどの導入プロセス

ジョブ型人事指針では、上記の項目のもと、各企業の特徴的な内容や図を用いながら、どのようなジョブ型人事制度が導入されているかが紹介されています。


出典:内閣官房・経済産業省・厚生労働省「ジョブ型人事方針」

三位一体の労働市場改革とは

三位一体の労働市場改革は、経済財政運営と改革の基本方針2023で示された労働市場改革の指針です。三位一体の労働市場改革では、次の3つの視点を踏まえた改革の方向性を示します。

三位一体の労働改革の3つの柱

  1. リスキリングによる能力向上支援
  2. 個々の企業の実態に応じたジョブ型人事(職務給)の導入
  3. 成長分野への労働移動の円滑化

ジョブ型人事指針は、日本企業と日本経済の更なる成長のため、従業員の自発的なキャリア形成を推し進めるための施策です。全10回にわたる三位一体労働市場改革分科会での討論を経て、取りまとめられています。

そもそもジョブ型人事制度とは?

ジョブ型人事制度とは、職務(ジョブ)を中心に設計された人事制度です。

職務内容や責任の範囲、勤務地や待遇などの労働条件が記載されたジョブディスクリプション(職務記述書)をもとに、人事制度を運用します。

ジョブ型人事制度は、欧米では広く採用されている制度です。日本でもグローバルな競争力維持やビジネス環境の変化を受けて、導入する企業が増えています。

また、ジョブ型人事制度は職務ごとに賃金制度を設計することから、昨今話題となっている「同一労働同一賃金」と親和性が高い制度です。

【関連記事】
同一労働同一賃金とは? 見直しが必要な待遇や取り組むメリットをわかりやすく解説

ジョブ型人事制度とメンバーシップ型人事制度の違い

ジョブ型人事制度と従来のメンバーシップ型人事制度は、主に次の点で異なります。

項目ジョブ型人事制度メンバーシップ型人事制度
基本的な考え方仕事に人をつける人に仕事をつける
人材の流動性高い低い
賃金形態職務給職能給
教育社外教育・自己啓発社内教育・OJT
人事異動原則配置転換なし配置転換あり
人事採用欠員補充・経験者採用新卒一括採用

ジョブ型人事制度の基本的な考え方は、「仕事に人をつける」です。企業が職務内容を明確に定めて雇用し、職務に応じた賃金が支払われます。人材の流動性が高い点も特徴です。

一方、日本でこれまで採用されてきたメンバーシップ型人事制度は、「人に仕事をつける」ことを基本にしています。新卒一括採用などで最初に人材を確保し、配置転換や社内教育を経て、従業員を育成する方法です。

ジョブ型人事制度のメリット

ジョブ型人事制度の導入は、企業にいくつかのメリットをもたらします。主なメリットは次の通りです。

ジョブ型人事制度のメリット

  • 職務内容と賃金の関係がわかりやすい
  • 即戦力の人材を採用しやすい
  • 主体的なキャリア形成を行いやすい

ジョブ型人事制度は、事前に企業が定めた職務内容をもとに雇用契約を結びます。職務内容と賃金の関係が明確にされているため、賃金制度が分かりやすい点がメリットです。

職務内容の明確化は、必要なスキルや能力の把握につながります。採用時点でどのような人材が必要かを把握できるため、専門的なスキルを持った即戦力の人材の採用がしやすいでしょう。

ジョブ型人事制度は、数年ごとにジョブローテーションが行われるメンバーシップ型人事制度と異なり、職務遂行に必要な能力やスキルが明確化されます。

従業員が自身に必要な能力開発やスキルアップの目標を把握しやすくなり、主体的なキャリア形成を行いやすいのもメリットです。

ジョブ型人事制度のデメリット・注意点

ジョブ型人事制度には複数のメリットがある一方で、いくつかのデメリット・注意点があります。主なデメリット・注意点は次の通りです。

ジョブ型人事制度のデメリット・注意点

  • ジョブの詳細な定義や改定の業務負担が必要になる
  • ゼネラリストを育成しにくい
  • 臨機応変な人材配置に対応しにくい

ジョブ型人事制度は、企業内の各職務の詳細な定義が必要です。経営方針やビジネス環境の変化に応じて改定しなければならず、その作業の負担がかかります。

また、ジョブ型人事制度では専門性の高い人材を育成しやすい反面、職務をまたいだ業務が必要なゼネラリストの育成が困難です。

職務内容や就業場所を定めて雇用するため、臨機応変な人材配置に対応しにくい点に注意が必要です。

ジョブ型人事制度を導入するポイント

ジョブ型人事制度は、多くの企業の関心を集める制度であり、すでに複数の企業で導入されています。以下では、ジョブ型人事制度を導入するポイントを解説します。

自社にあったジョブ型人事制度を構築する

ジョブ型人事制度は複数のメリットがある一方、従来の日本企業の人事制度にも、日本ならではの企業風土や文化にあったメリットが存在します。

メンバーシップ型人事制度のメリットは残しつつ、各社に最適な人事制度の構築が理想です。

ジョブ型人事指針では、業種の異なる20社のジョブ型人事制度の導入事例が紹介されています。各社の導入目的や経営戦略上の位置づけ、導入範囲や等級制度を参考にしながら、自社にあったジョブ型人事制度を検討しましょう。

業務内容や評価制度を明確にする

ジョブ型人事制度では、職種ごとに求められる業務内容の明確化が大切です。職務内容や責任、能力や期待される行動を具体的に記載したジョブディスクリプションを作成して、全社で共有しましょう。

また、人事制度の構築では、従業員が納得できる公正な評価制度が求められます。ジョブ型人事制度で求められる評価基準を明確にし、従業員の主体的な行動につながる制度設計を行いましょう。

ジョブディスクリプションを定期的に見直す

従業員の職務は、企業を取り巻く経済環境や市場にあわせて変化します。作成したジョブディスクリプションは、定期的に見直し、状況にあわせた最適化が必要です。

各部門に対するヒアリングおよび同業他社からの情報収集を十分に行い、適切にメンテナンスするプロセスが重要です。

まとめ

日本企業の競争力維持や持続的な賃上げに向け、政府はジョブ型人事制度の導入に前向きな方針を示しています。2024年8月28日には「ジョブ型人事指針」を公表し、周知徹底を図っています。

ジョブ型人事制度は、職務と賃金の関係を把握しやすく、即戦力の人材獲得に役立つ制度です。従業員の主体的なキャリア形成を後押しします。

自社のこれまでの人事制度とのバランスを考慮し、ジョブ型人事制度の導入を検討しましょう。

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よくある質問

ジョブ型人事指針の内容とは?

ジョブ型人事制度を導入済みの企業事例を参考に、導入プロセスなどをまとめた指針です。

ジョブ型人事指針を詳しく知りたい方は「ジョブ型人事指針とは」をご覧ください。

ジョブ型人事制度のメリットは?

主体的なキャリア形成、即戦力の人材獲得などに役立ちます。

メリットを詳しく知りたい方は「ジョブ型人事制度のメリット」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史