最終更新日:2023/08/28
監修 宮川 真一 税理士、1級FP技能士・CFP
インボイス制度により、事業者には多くの対応が必要です。本記事では、インボイス制度の負担軽減につながるシステムを解説します。
多くのシステムが販売されていますが、機能はさまざまです。インボイス制度に対応しているかだけでなく、複数の視点から導入するシステムを選ぶのが重要です。
インボイス制度に対応したシステムの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
インボイス制度の詳しい内容は、「2023年10月から始まるインボイス制度とは?図解でわかりやすく解説!」をご覧ください。
目次
- インボイス制度にはどのような対応が必要?
- 売り手(インボイス発行者)に必要な対応
- 買い手(インボイス受領者)に必要な対応
- 売り手と買い手の両方に必要な対応
- インボイス制度に対応したシステムが必要な理由
- インボイスであるか否かの区分管理機能が必要になる
- インボイスは記載事項が増える
- 改正電子帳簿保存法により紙での保存ができなくなる
- インボイス制度に対応したシステムの5つの選び方
- 1.国税庁のインボイス制度APIに連携できるか
- 2.請求書の仕訳支援機能があるか
- 3.会計ソフトや販売管理システムとの連携ができるか
- 4.セキュリティ対策がされているか
- 5.改正電帳法に対応しているか
- インボイス制度のシステム対応にはIT補助金を活用しよう
- IT導入補助金の概要
- 申請手続きとスケジュール
- まとめ
- インボイス制度の理解から実務対応までfreeeで解決!
- よくある質問
- インボイス制度対応のシステム導入が必要な理由は?
- インボイス制度に対応したシステムの選び方は?
インボイス制度にはどのような対応が必要?
インボイス制度にはどのような対応が必要なのか、以下の3つに分けて解説します。
インボイス制度に必要な対応
● 売り手(インボイス発行者)に必要な対応● 買い手(インボイス受領者)に必要な対応
● 売り手と買い手の両方に必要な対応
売り手(インボイス発行者)に必要な対応
売り手(インボイス発行者)には、主に以下の対応が求められます。
売り手(インボイス発行者)に必要な対応
● 適格請求書発行事業者の登録● 請求書の様式変更(登録番号欄の追加、消費税の適用区分ごとの記載)
また請求書の様式も忘れずに変更しましょう。必要な項目が記載されていない場合は、適格請求書発行事業者が発行していても適格請求書として扱われません。
適格請求書に記載が必要になる項目は、以下です。
適格請求書に記載が必要になる項目
● 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号● 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
● 税率ごとに区分した消費税額等
適格請求書を発行する際は、適格請求書に記載が必要な項目が記載してあるかしっかり確認しましょう。
買い手(インボイス受領者)に必要な対応
買い手(インボイス受領者)には、主に以下の対応が求められます。
売り手(インボイス発行者)に必要な対応
● 取引先の申請状況を確認する● 取引先が適格請求書発行事業者に該当するかを受領のつど確認する
● 帳簿へ記載する
● 仕入れ税額を計算する
売り手側が適格請求書発行事業者でない場合、仕入・経費の支払いに対する仕入税額控除が受けられません。
実際に制度が開始したら、請求書受領のつど、請求書発行者が適格請求書発行事業者に該当しているか確認しなければなりません。さまざまな事情から、途中で登録を取り消す可能性もあります。番号が間違って記載されていることも考えられるため、可能な限り毎回確認したほうがいいでしょう。
売り手と買い手の両方に必要な対応
売り手と買い手の両方に必要な対応は、以下の通りです。
売り手と買い手の双方に必要な対応
● 適格請求書の発行や受領の際の手順確認や保存フローの整備● 請求書の保存
仕訳や保存は、手作業やエクセルなどの汎用ソフトウェアで対応すると間違いが起こりやすいため、専用システムの導入を検討するといいでしょう。
また売り手側には発行した請求書の保存義務が、買い手側には受け取った請求書の保存義務があります。
特に受け取った側は、適格請求書とそうでない請求書を区別して保存が必要なため、注意しましょう。
適格請求書については、「適格請求書とは?書き方や保存期間、簡単に作成する方法について解説」でより詳しく解説しています。
インボイス制度に対応したシステムが必要な理由
インボイス制度に対応したシステムが必要な理由は、主に以下の3つです。
インボイス制度でシステム対応が必要な理由
● インボイスであるか否かの区分管理機能が必要になる● インボイスは記載事項が増える
● 改正電子帳簿保存法により紙での保存ができなくなる
インボイスであるか否かの区分管理機能が必要になる
インボイス制度の開始以降に発行された請求書は、「インボイス」と「インボイスでない請求書」に分けて管理しなければなりません。
正確な消費税額と税率の把握のためであり、またインボイス以外の請求書は原則として、仕入税額控除が受けられないためです。特に正確な消費税率と税率把握は、インボイス制度導入自体の目的でもあります。
目視で分けるとミスにつながりやすいため、システムでの対応が有用です。
インボイスは記載事項が増える
インボイスには従来の請求書の内容に、主に以下の項目が追加されます。
インボイスの追加記載事項
● 登録番号● 税率区分ごとの課税対象額と税額
改正電子帳簿保存法により紙での保存ができなくなる
改正電子帳簿保存法(以下「改正電帳法」)により、インボイスを含め電子データで受け取った請求書を紙で保存できなくなります。
2023年12月31日までは紙での保存が猶予されていますが、2024年以降は電子データのままで分類、保管しなければなりません。
システムを選ぶ際は、インボイス制度だけでなく改正電帳法も考慮する必要があります。
電子帳簿保存法については、「電子帳簿保存法はいつから実施?2024年までに必要な対応を解説」をご覧ください。
インボイス制度に対応したシステムの5つの選び方
インボイス制度に対応したシステムの選び方のポイントは、以下の5つです。
インボイス制度に対応したシステムの選び方
● 国税庁のインボイス制度APIに連携できるか● 請求書の仕訳支援機能があるか
● 会計ソフトウェアや販売管理システムとの連携ができるか
● セキュリティ対策がされているか
● 改正電帳法に対応しているか
1.国税庁のインボイス制度APIに連携できるか
国税庁のWeb-APIに連携できるシステムを導入すれば、登録番号を自動でチェックできます。
請求書の発行元が適格請求書発行事業者かどうかをチェックする際は、適格請求書発行事業者公表サイトで登録番号を入力して検索します。しかし手動で入力するのは手間がかかり、担当者の負担増は避けられません。
インボイス制度のWeb-APIを利用すれば、時間をかけずにチェックが可能です。
2.請求書の仕訳支援機能があるか
システムにOCR(自動読み取り機能)があると、請求書の仕訳がぐっとラクになります。
請求書は支払い先などに応じて仕訳を行いますが、紙で受け取った場合は請求元や金額を手動でシステムに入力しなければなりません。手間がかかるだけでなく、転記ミスなども発生しやすくなります。
そのような場合に活用できるのが、OCR機能です。
OCRとは、画像データから自動で文字を読み取る機能です。OCR機能が付いたシステムであれば、請求書をスキャンするだけで自動的に請求書の記載情報を読み取れるため、手動入力の手間が軽減されます。
3.会計ソフトや販売管理システムとの連携ができるか
すでに会計ソフトや販売管理システムを導入している場合は、それらのシステムと連携できるかをチェックしましょう。
販売管理システムと連携できれば、自社側がインボイスを発行する際にも、営業部門の売上データをそのまま使えます。
また会計ソフトと連携できれば、経費計算でも活用できます。
自動連携がベストですが、自動連携機能がなくともCSVデータ連携が最低限備わっているシステムを選ぶといいでしょう。
4.セキュリティ対策がされているか
システムを選ぶ際には、セキュリティ対策がしっかり行われているかも重要です。セキュリティ対策として、確認しておきたいポイントは以下です。
インボイス対応のシステムに必要なセキュリティ対策例
● データの暗号化がされているか● 担当者別にアクセス権限が付与できるか
● 自動バックアップがあるか
自動バックアップ機能があると、突然の停電やシステムトラブルなどの際でもデータの破損を防げます。通常時でも作業者が保存を失念してしまうケースも考えられるため、自動バックアップは入れておきましょう。
どんなに担当者が優秀でも、ミスをなくすことは不可能です。人間とシステムの双方でミスを最小限に防ぎ、万が一のときも被害を軽減できるような体制の整備が重要です。
5.改正電帳法に対応しているか
改正電帳法により、電子データで受け取った請求書の紙での保存が禁止されます。
また改正電帳法では、「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できるようデータ整理ができることも求められます。
電子データを紙で保存しなくても、電子データのまま分類できるような仕組みになっているシステムを選びましょう。
インボイス制度のシステム対応にはIT補助金を活用しよう
インボイス制度に対応したシステム導入では、IT導入補助金を利用できます。
以前は50万円を超えるシステムが対象でしたが、2023年に50万円以下のシステム購入でも利用できるようになりました。
ただしシステムを購入する前に申請手続きを行わないと、助成金が利用できません。
IT導入補助金の概要
業種を問わず、一定以下の規模の事業主であればIT導入補助金を利用できます。
中小事業主に該当する従業員数などの条件は、業種によって異なります。自社がIT導入補助金の対象になっているかは、IT導入補助金の公式ページで確認しましょう。
IT導入補助金2023「補助対象について」
IT導入補助金では、枠によって対象となる経費や補助率などが異なります。インボイス制度に対応したシステムを導入する際は、ソフトウェア購入費が対象となる通常枠かデジタル化基盤導入枠を利用しましょう。
通常枠 | セキュリティ対策推進枠 | デジタル化基盤導入枠 | |||
A類型 | B類型 | デジタル化基盤導入類型 | |||
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | サービス利用料(最大2年分) | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | ||
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 | 3/4以内 | 2/3以内 | |
上限額・下限額 | 5万円~150万円未満 | 150万円~450万円以下 | 5万円~100万円 | (下限なし)~50万円以下 | 50万円超~350万円 |
また通常枠とデジタル化基盤導入枠では、クラウド利用料も対象です。ランニングコストの負担も軽減できます。
なおデジタル化基盤導入類型では、上記に加えハードウェア購入費用も対象です。
ハードウェア購入費 | PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機:補助率1/2以内、補助上限額10万円 |
レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円 | |
IT補助金を利用してインボイスに対応する方法は、「IT導入補助金を活用してインボイス制度に対応する方法とは?」で詳しく解説しています。
申請手続きとスケジュール
具体的な申請手順と交付されるまでのスケジュールは、以下の通りです。
IT導入補助金の最新スケジュールや申請方法はこちらをご覧ください。
1.IT導入支援事業者を選定する
2.「gBizIDプライム」アカウントを取得し、プログラムを実施する
3.補助金を申請する
4.交付が決定される
5.システムを購入する
6.事業実績報告をする
7.補助金が交付される
まず、補助金の利用をサポートしてくれるIT導入支援事業者を選びましょう。
IT導入補助金を受けるためには、IT導入支援事業者と共同で申請をしなければなりません。
IT導入支援事業者は、IT導入補助金の公式ページで検索できます。
IT導入補助金2023「IT導入支援事業者及びITツールの検索」
次に「gBizIDプライム」アカウントを取得します。「gBizIDプライム」アカウントとは、補助金申請などの電子申請を行うためのアカウントです。
IT導入補助金の申請も「gBizIDプライム」アカウントで行います。アカウントの取得には、2週間程度時間がかかるため、早めに取得の申し込みをしておきましょう。
BizIDについては、「GビズIDとは? できることやメリット・デメリット、アカウントの取得方法を解説」で詳しく解説しています。
「gBizIDプライム」アカウントを取得したら、以下のプログラムに参加します。
IT導入補助金の申請前に行うプログラム
● SECURITY ACTION● 「みらデジ」の「経営チェック」
続いてIT導入支援事業者と共同し、IT導入補助金を申請します。申請すると審査が行われ、審査に通過すれば交付が決定されます。
交付が決定したらシステムを購入しましょう。交付決定前に購入すると、補助金が受けられないため、交付が決定してからの購入が必須です。
システムを購入したら、事業実績報告を行います。申請マイページで購入したことがわかる証拠を添付し、事業実績報告書を作成します。事業実績報告書の作成後、IT導入支援事業者による内容の確認と情報の入力が必要です。
IT導入支援事業者による確認と入力が済んだら、事務局に提出することで事業実績報告が完了します。
その後、補助金額が確定し補助金が交付されます。手続きを開始して支給されるまでは最短で2ヶ月以上かかるため、早めに準備に取り掛かりましょう。
まとめ
インボイス制度が導入されると、インボイスであるか否かの区分管理機能が必要になるうえ、適格請求書に記載する事項が増えます。そのため、インボイス制度に対応したシステムの導入が有用です。
インボイス制度に対応したシステムを導入するためには、周辺ソフトとの連携などポイントをおさえて選ぶことが重要です。
人力での対応は担当者の負荷も高く、ミスの発生にもつながります。補助金を活用しながら、早めに準備に取り掛かりましょう。
インボイス制度の理解から実務対応までfreeeで解決!
2023年10月1日からインボイス制度が導入されます。すべての事業者はインボイス制度導入までに制度を理解し、対応するための準備をしなければなりません。
インボイス制度は、売り手・買い手双方の事業者に影響があり、それぞれの立場で対応・検討すべきことが異なります。
freeeではインボイス制度の理解から実務対応方法まで、ステップに沿ってサポートします。個人事業主から上場企業まで幅広く対応しているので、ぜひご活用ください。
インボイス制度の理解から実務対応までfreeeで解決!
ここからは、ステップ別にfreeeが提供しているコンテンツ・サービスについて紹介します。
STEP1. インボイス制度について理解する
freeeでは正しくインボイス制度を理解していただくために、さまざまなコンテンツを用意しています。
事業者の立場別に解説したセミナーを開催
インボイス制度は事業者の職種や企業規模によっても対応すべきことが異なります。freeeでは毎週セミナーを実施し、事業者の立場や悩みに合わせてわかりやすく解説しています。
freeeのインボイス制度セミナーの例
- インボイス制度の概要
- インボイス制度の実務解説
- インボイス制度対応に向けて押さえるべき全体像やスケジュール
- インボイスの受領を効率化する方法
消費税の仕組みから実務対応まで網羅したインボイス制度ガイドブック
インボイス制度はまず、消費税の仕組みを理解する必要があります。freeeのインボイス制度完全ガイドブックは、消費税の仕組みからインボイス制度による変更点、実務対応のポイントまでをまとめています。
このガイドブックは無料でダウンロードが可能です。ぜひご利用ください。
STEP2. インボイスの登録申請&取引先の登録状況チェック
インボイス制度導入後、適格請求書が発行・保存された取引のみ仕入税額控除の対象となります。
適格請求書を発行するためには、適格請求書発行事業者になる登録をしなければなりません。取引先に請求書を発行している側(売り手)は、この手続きが必要です。
一方、取引先から請求書を交付される側(買い手)は、取引先が適格請求書発行事業者であるかどうかを事前に確認しておく必要があります。
freeeのサービスを利用することで、売り手・買い手双方がすべき対応を効率良く解消できます。
売り手:適格請求書発行事業者への登録申請
インボイス制度導入のタイミングで適格請求書発行事業者であるためには、2023年9月30日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出し、登録を受ける必要があります。
freeeを活用すれば、フォームに沿って入力するだけで登録申請書を簡単に作成することができます。
買い手:取引先の登録状況を把握
インボイス制度に対応している適格請求書と、従来の請求書では扱いが異なるので、取引先がインボイス制度に対応しているのか把握しておかなければなりません。
freeeでは、取引先のインボイス制度への対応状況や登録番号の回収を一括で管理できます。無料で利用できるので、コストをかけずに効率化が可能です。
STEP3. 実務対応
インボイス制度導入後、実務対応の方法は企業規模や立場によって異なります。freeeでは、すべての事業者のバックオフィスをサポートできるよう、さまざまなサービスを提供しています。
【立場別】freeeのおすすめコンテンツ
<適格請求書の発行が必要な事業者(売り手)向け>
- freee請求書
- freee債権
<適格請求書の受領が必要な事業者(買い手)向け>
- freee債務
- freee経理アウトソース
- freee会計
- freee経理
<売り手・買い手双方におすすめ>
- freee会計
freeeのサービスはすべて電子帳簿保存法に対応しているので、電子保存も可能です。
インボイス制度導入後もスムーズに実務を行うためにも、早めの準備・対応が求められます。freeeのコンテンツを活用して、制度理解を高めて必要な対応について検討していきましょう。
よくある質問
インボイス制度対応のシステム導入が必要な理由は?
インボイス制度に対応した請求書は記載事項が多く、分類や保管も細かくなるため人力で行うと事務負担が重くなるためです。
インボイス制度対応にシステム導入の必要性を詳しく知りたい方は、「インボイス制度に対応したシステムが必要な理由」をご覧ください。
インボイス制度に対応したシステムの選び方は?
機能面のほか、セキュリティなど複数のチェックポイントがあります。またインボイス制度だけでなく、改正電張法の対応も見据えて選ぶことが重要です。
システムの選び方を詳しく知りたい方は、「インボイス制度に対応したシステムの5つの選び方」をご覧ください。
監修 宮川真一(みやがわ しんいち) 税理士、1級FP技能士・CFP
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。