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知的取引ガイドラインとは?規定内容や2024年の改正点を解説

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知的取引ガイドラインとは?規定内容や2024年の改正点を解説

知的財産取引に関するガイドライン(通称「知財取引ガイドライン」)とは、幅広い知的財産を対象に、取引の段階に応じたあるべき姿を記載し、注意すべき事項を整理したものです。具体的には、大企業と中小企業との間の対等な取引関係を実現する観点で記載されています。

本記事では知財取引ガイドラインの概要に加え、参考事例や知財取引ガイドラインに違反した場合の罰則についても解説します。

目次

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知財取引ガイドラインとは

知的財産取引に関するガイドライン(通称:知財取引ガイドライン)とは、知的財産に関する取引(知財取引)の段階に応じたあるべき姿を記載し、注意すべき事項を整理したものです。

出典:中小企業庁「知的財産取引に関するガイドライン・契約書のひな形について」

そもそも知的財産は、知的財産基本法第2条において以下のように定義されています。

発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(略)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報

出典:e-Gov法令検索「知的財産基本法第二条」

つまり、人間が知的活動によって生み出したものは、広く知的財産とみなされ、営業秘密やノウハウ、データなども含まれます。

知財取引において生じる問題として報告されているのは、以下のとおりです。

  • 大企業が秘密保持契約の締結なく、中小企業の情報を一方的に取得しようとする
  • 共同研究開発等の成果について、発明の寄与度に関係なくすべて大企業に帰属する

こうした問題を防止し、大企業と中小企業の対等な取引関係を実現するために、知財取引ガイドラインが策定されました。

また、知財取引ガイドラインに付随して、以下の4つの契約書ひな形も公表されています。

  • 秘密保持契約書
  • 共同開発契約書
  • 知的財産権の取扱いに関する契約書(開発委託契約)
  • 知的財産権の取扱いに関する契約書(製造委託契約)

知財取引ガイドラインの法律上の立ち位置

中小企業庁では、下請中小企業振興法第3条1項に基づき、親事業者と下請事業者の望ましい取引関係を定めた振興基準を策定しています。この振興基準において、以下のように知財取引ガイドラインの立ち位置が記載されています。

知的財産の保護及び取引の適正化
親事業者および下請事業者は、知的財産取引に関するガイドラインに掲げられている基本的な考え方に基づき、知的財産権等に係る取引を行うものとする。その際、知的財産権等の取扱いに係る取引条件の明確化のため、同通達附属資料「契約書ひな形」の活用を推奨する。

出典:中小企業庁「振興基準第八の五」

知財取引ガイドラインは振興下請中小企業振興法・振興基準に関連し、特に下請中小企業を保護するためのガイドラインといえるのです。

知財取引ガイドラインの内容

知財取引ガイドラインでは、知財取引において問題が発生する場面を以下の5つに分類しています。


  • 契約締結前(取引交渉段階・工場見学等)
  • 試作品製造・共同開発等
  • 製造委託・製造販売・請負販売等
  • 特許出願・知的財産権の無償譲渡・無償実施許諾
  • 第三者との間に生じる知財訴訟等のリスクの転嫁

そして、それぞれの場面における知財取引の基本的な考え方として、あるべき姿を提示しています。各場面のガイドラインの内容について、詳しく解説していきます。

契約締結前(取引交渉段階・工場見学等)

契約締結前(取引交渉段階・工場見学等)の段階において提示されているあるべき姿は、次の2つです。

  • 相手方の秘密情報を相手方の事前の承諾なく、取得、又は、開示を強要しない
  • 相手方の意思に反して、秘密保持契約締結無しに、相手方の秘密を知り得る行為をしない

相手方の秘密情報を不正に取得・開示する行為は、不競法上の不正競争行為にも該当します。

試作品製造・共同開発等

試作品製造・共同開発等の段階において提示されているあるべき姿は、次の3つです。

  • 無償の技術指導・試作品製造等の強制をしない
  • 承諾がない知的財産やノウハウ等の利用をしない
  • 共同開発の成果は、技術やアイディアの貢献度によって決められることが原則、これと異なる場合は相当の対価を支払う

試作品の製造や共同開発においては、知的財産やノウハウの利用に関する合意を得ることがポイントです。無償での技術指導や試作品製造を強制されることがないよう、注意が必要になります。

製造委託・製造販売・請負販売等

製造委託・製造販売・請負販売等の段階において提示されているあるべき姿は、次の3つです。

  • 製造委託本来の目的に照らして、合理的に必要と考えられる範囲を超えて、相手方の技術情報等の提供を求めない。これを求める場合には相当の対価を支払う
  • 製造委託の目的物とされていない、金型の設計図面、CADデータその他技術データの提供を当事者の意に反して強制しない
  • 監査や品質保証等の観点から秘密情報の開示を受ける必要がある場合には、あらかじめ監査等を必要とする箇所を明確にし、その目的を超えた秘密情報の取得をしない

この段階での懸念事例として、中小企業に業務を委託した際に、委託本来の目的に照らして必要と考えられる範囲を超えたノウハウ等の提供要請が行われたケースがあります。

そのため、中小企業が不利な条件を押し付けられないようにするための指針が示されています。

特許出願・知的財産権の無償譲渡・無償実施許諾

特許出願・知的財産権の無償譲渡・無償実施許諾の段階において提示されているあるべき姿は、次の2つです。

  • 取引と直接関係のない、又は、独自に開発した成果について、出願等に干渉しない
  • 相手方に帰属する知的財産権について、無償譲渡の強要や自社への単独帰属を強要しない。また相手方の知的財産権の無償実施を強制しない

第三者との間に生じる知財訴訟等のリスクの転嫁

第三者との間に生じる知財訴訟等のリスクの転嫁は、2024年10月の知財取引ガイドライン改正で追加された項目です。

これは主に紛争解決責任と非侵害保証等について言及するもので、以下があるべき姿として提示されています。

  • 発注者の指示に基づく業務について、第三者との間に生じる知的財産権上の責任や負担を、受注者に例外なく一方的に転嫁し、又はその旨を契約に定めてはならない

特に、大企業が中小企業に対して一方的に責任を転嫁することがないよう、契約内容の見直しを求めています。

知財取引ガイドラインの参考事例

前項で説明した、知財取引において問題が発生する5つの段階におけるそれぞれの事例を紹介します。

契約締結前(取引交渉段階・工場見学等)に関する事例

契約締結前(取引交渉段階・工場見学等)に関する問題例

A社はB社から取引の交渉を受け、交渉を進めるうえで通常は社外に開示できない情報の提供を促されたため、秘密保持契約の締結を依頼したが、B社側が拒否した。

この問題に対するあるべき姿は、以下のようなものが想定されます。

取引交渉を行う際には秘密保持契約の締結が必要であることを双方の了解とし、B社はA社の営業秘密を適切に管理する必要がある。また、開示する情報の内容等は双方の了解のもとに定められ、B社はA社の情報開示を強要してはらない。

試作品製造・共同開発等に関する事例

試作品製造・共同開発等に関する問題例

A社はB社から試作品の製造を依頼された。その際、無償での技術指導や制作技術の譲渡を強要された。

この問題に対するあるべき姿は、以下のようなものが想定されます。

B社がA社に試作品の製造を依頼する場合、その依頼範囲を明確にしたうえ、範囲を超えた役務提供などを求めてはならない。万が一、依頼内容とは別で当初想定していなかったことを頼みたい場合は、別途要件を定め、それに対する適切な対価を設定し、双方の了解のもとで取引を実施する。

製造委託・製造販売・請負販売等に関する事例

製造委託・製造販売・請負販売等に関する問題例

製造委託契約において、受託者であるA社は発注者であるB社から、契約にはない製造のノウハウの提供や追加工程の管理を求められ、経営的負担が生じた。

この問題に対するあるべき姿は、以下のようなものが想定されます。

発注者であるB社は、製造委託契約に定められた業務以外を別の有効な契約なしにA社に依頼してはならない。また、発注者であるB社は自社の依頼によってA社に負荷をかける行為をしてはならない。

特許出願・知的財産権の無償譲渡・無償実施許諾に関する事例

特許出願・知的財産権の無償譲渡・無償実施許諾に関する問題例

A社が特許出願を行おうとしていたところ、知的財産の内容を知るB社から無償譲渡を強要された。

この問題に対するあるべき姿は、以下のようなものが想定されます。

B社は、A社から知的財産権に関する合意を得たい場合、その内容を明確に文書化し、合意を得なくてはならない。

第三者との間に生じる知財訴訟等のリスクの転嫁に関する事例

第三者との間に生じる知財訴訟等のリスクの転嫁に関する問題例

A社はB社が運営する事業に必要な製品に関連する業務を受託しているが、B社の事業に関連するC社からのクレームおよび消費者からのクレームに対応するよう求められた。

この問題に対するあるべき姿は、以下のようなものが想定されます。

発注事業者であるB社は、A社へ業務を委託する際にその内容を明確にしなくてはならない。また、自社とA社双方の責任の範囲を明確にしておかなくてはならない。B社は、正当な理由なくA社に自社の事業の責任を転嫁してはならない。

知財取引ガイドラインに違反した場合の罰則や処分

前述した知財取引ガイドラインの内容(知財取引ガイドラインの基本的な考え方)に違反する行為があった場合、下請中小企業振興法4条に基づく指導・助言の対象となる可能性があります。その場合、行政処分や罰則の対象となるケースがあることに注意が必要です。

詳しくは、下請中小企業振興法に基づく振興基準から確認できますので、中小企業庁の「振興基準に関するよくある質問−Q7」を確認してください。

また、知財取引ガイドラインの基本的な考え方に反する行為のうち、一部の行為については、公正取引委員会策定の報告書等においても「優越的地位の濫用行為に該当しうる行為等」として取り上げられています。この場合、知財取引ガイドラインの内容に反した行為が見られたら、下請法や独占禁止法なども関連することになります。

下請法や独占禁止法については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
下請法とは?対象となる取引条件や発注者のNG行為、罰則などをわかりやすく解説
下請法の対象取引は?親事業者・下請事業者の定義や禁止事項を解説
知らなかったでは困る!下請法の違反行為と事例集を紹介
値下げ要求は下請法や独占禁止法に違反する?インボイス制度開始後の注意点を解説

まとめ

知的財産は対象範囲が広く、事業者間の取引に応じて扱われる際はどちらかが優越的地位を奮ったり、他方に負担をかけたりすることも起こりかねません。

知財取引ガイドラインを理解し、知財取引の各場面におけるあるべき姿を意識することが重要です。

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よくある質問

知財取引ガイドラインとは?

知財取引ガイドラインとは、知的財産取引に関するガイドラインの通称です。知的財産を対象に、取引の段階に応じたあるべき姿を記載し、大企業と中小企業との間の対等な取引関係を実現する観点から、注意すべき事項を整理するものです。

詳しくは、記事内の「知財取引ガイドラインとは」で解説しています。

知財取引ガイドラインの内容は?

知財取引ガイドラインでは、次の5つの場面とそれぞれの取引におけるあるべき姿をまとめています。


  • 契約締結前(取引交渉段階・工場見学等)
  • 試作品製造・共同開発等
  • 製造委託・製造販売・請負販売等
  • 特許出願・知的財産権の無償譲渡・無償実施許諾
  • 第三者との間に生じる知財訴訟等のリスクの転嫁

詳細は、記事内「知財取引ガイドラインの内容」で解説しています。

知財取引ガイドラインの改正点は?

2024年10月の知財取引ガイドライン改正において、「第三者との間に生じる知財訴訟等のリスクの転嫁」の項目が追加されました。

内容について詳しくは、記事内「第三者との間に生じる知財訴訟等のリスクの転嫁」をご覧ください。