2024年10月より郵便料金が改定されます。これまで請求書を紙で発行し、郵送していた企業にとってはコストが増加することになるため、この機会に請求書の電子化を検討するケースも多いでしょう。
本記事では、電子請求書を導入したい場合に取引先から了承を得るためのポイントや、取引先へ送る案内文の例などを解説します。
目次
郵便料金値上げに対する企業の意識
2024年10月に予定している郵便料金の値上げは、消費増税に伴う措置を除くとおよそ30年ぶりの改定となります。
郵便物を送付する頻度が高い企業、特に請求書などを郵送している場合は、この改定による影響度合いが高いと考えられます。
フリーでは、企業の請求業務に関わる経理・総務担当を対象に、請求業務の現状と郵便料金値上げへの対策に関するアンケート調査を実施しました。
<調査概要>
調査期間:2024年4月9日〜4月12日
調査方法:Webアンケート方式
調査対象:従業員数11名〜1000名の企業で請求業務に関わる経理・総務担当社員
有効回答:1,000件(本調査)
https://corp.freee.co.jp/news/freee20240517.html
手作業での郵送割合は4割を超える
郵送をメインの請求書送付方法としている企業は、全体の46.9%でした。メールやクラウド請求書を利用している企業の割合のほうが若干大きいですが、手作業での郵送方法をとっている企業も少なくありません。
また、メインの請求書発行が郵送の企業のうち、「請求書全体のうち7割以上を紙で発行している」という企業が8割近くになっています。
一方で、メールやクラウド請求書経由での発行が主な企業においても、「請求書の半分以上を郵送している」と答えた企業は3割を超えました。メインの請求書送付方法がメールやクラウドの場合でも、郵送を利用している企業が多いという現状も読み取れます。
郵便料金値上げの認知度と対策状況
前項のアンケート結果では、「郵便料金値上げ」を認知している企業は全体で8割を超えるものの、メインの請求書送付方法が郵送およびメールの企業のうち、それぞれ5割以上が値上げの詳細を把握していないという現状が浮き彫りになりました。
郵便料金値上げへの対策状況は、現在のメインの請求書送付方法がクラウドという企業の7割が、「現在具体的に対策を進めている」もしくは「今後対策を行う予定がある」と回答しています。
しかし、メインの請求書送付方法がメールおよび郵送と回答した企業の「現在具体的に対策を進めている」「今後対策を行う予定がある」の回答率は低くなっています。メインの請求書送付方法が郵送の企業においては、「対策未定」および「対策予定なし」と回答した割合が7割を超えます。つまり、「請求書を郵送している企業ほど郵便料金改定への対策ができていない」ということがわかります。
郵便料金値上げについては、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
【2024年】郵便料金の値上げはいつから? はがき・定形封書・定形外の料金改定動向
請求書の電子化を妨げるボトルネック
メインの請求書送付方法として、メールやクラウドを選択している企業は、請求書の電子化に積極的な傾向があることがわかりました。
一方で、メインの請求書送付方法として郵送を選択している企業のうち、電子化に対して消極的な企業が4割を超えています。
「請求書を郵送発行することで負担になっていること」についてのアンケートでは、すでにメインの請求書送付方法でクラウドを選択している企業からも、電子化のボトルネックの中心として以下のような取引先に関する課題があることがわかりました。
請求書の電子化を躊躇する原因の課題感
- 取引先から請求書電子化の理解、合意を得ること
- 取引先ごとに電子希望と紙希望があるため、要望ごとに対応すること
- 取引先ごとに存在する個別の請求書フォーマットへの対応を行うこと
つまり、電子化を妨げているのは社内のシステムでなく、取引先に関する課題が大きいのです。
請求書を電子化する際は記録に残る方法で取引先へ案内する
取引先の中にも、郵便料金改定によって請求書の電子化を検討している企業があるでしょう。「すでに電子経理システムが導入されている」「システム導入を進めている最中」「システム導入の検討段階」といったように、企業によって状況はさまざまであることが考えられます。
また、自社の対応が電子化へ移行しても、何らかの理由で取引先に対応してもらえないケースもあり得ます。
請求書の電子化をスムーズに進めるためには、あらかじめ電子化を行う旨を取引先に伝えることが重要です。取引先への案内方法としては、文書やメールなど記録に残る方法をとることをおすすめします。口頭で伝えるだけでは関係者に正しい情報が伝わらず、認識に齟齬が生じトラブルに発展する恐れもあるためです。
請求書の郵送による企業への負担
メールやクラウドなどを活用した請求書の電子化が進む一方で、前項で紹介したアンケート結果から、郵送している企業も多い状況がわかりました。
しかし、請求書を郵送することは、企業にさまざまな負担がかかります。具体的な負担として、主なものを紹介します。
請求書のプリントアウト・郵送作業
請求書を郵送するには、請求書をプリントアウトして封入し、切手を貼り郵送するという手順を踏まなければなりません。この一連の作業を行うためには、物理的な作業コストだけでなく封筒代や印刷代など、郵送の形を取るための費用がかかります。
郵便代の発生
請求書を郵送するには、1通ごとに郵便料金が必要になります。郵便料金は2024年10月1日に値上げするため、請求書の発行数に変化はなくても、郵送コストが上がってしまいます。
発送から受け取りにタイムラグが発生
2021年の郵便法改正により、普通郵便は土曜日の配達が休止されています。そのため、発送のタイミングによっては配送にかかる日数が1日程度繰り下げられました。とくに連休前などに請求書を発送する場合は、発送先に届くまでかなりのタイムラグが発生することになります。
レターパックや速達、簡易書留・書留などは土日祝日も配達されますが、普通郵便よりも1通あたりの郵便料金が高くなります。また、簡易書留や特定記録などを利用する場合は郵便局で発送手続きが必要です。
取引先に請求書の電子化の了承を得るポイント
請求書の電子化を検討する場合に、取引先に請求書の電子化の了承を得るためのポイントを紹介します。
請求書を電子化する理由を明確に説明する
取引先に請求書の電子化を予定している旨の案内文を送る際には、電子化する理由を明確に記載します。
取引先により納得感を与える理由として、「2024年1月からの電子帳簿保存法改正によって電子保存が義務化したこと」「2023年10月施行のインボイス制度によって請求書の電子化が課題となったこと」などの「社会状況を鑑みた決定事項」として伝えると角が立ちにくいでしょう。
請求書を電子化するメリットを説明する
請求書を電子化する理由とあわせて、取引先にもメリットがあることを説明すると、より積極的に導入を検討してもらえるでしょう。
たとえば、以下のようなメリットを説明します。
取引先にとっての主な請求書電子化メリット
- 請求書の開封作業や、システムへの転記作業が不要になる
- 担当部署への共有が容易になる
- 発行から受領までのタイムラグがなくなる
- 保管コストが削減される
- 過去の請求書を探しやすい
電子化までの具体的なスケジュールを記載する
取引先に請求書の電子化に対応してもらうためには、社内の電子化までの具体的なスケジュールを決め、電子化開始日や電子化移行の期限などを早めに伝えておくことで、取引先も準備を進めやすくなります。
請求書を電子化するための案内文例
「freee請求書」を導入する場合の具体的な案内文の一例を紹介します。
請求書の電子化に関するご案内
2024年10月吉日
お取引先様各位
東京都品川区大崎1-2-2
アートヴィレッジ大崎セントラルタワー 21階
フリー株式会社 経理部
拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
この度、弊社では電子帳簿保存法改正への対応やお客様への請求内容案内迅速化のため、これまで郵送にてお送りしていた請求書をインターネット上で確認できるサービスへ切り替えさせていただくこととなりました。
今後の請求書の送付は、請求書発行・送付サービス○○○○でお届けいたします。
これまで送付していた請求書と同様、弊社の社印が押印された請求書をインターネット上からダウンロードしていただけます。
お手数をお掛けして大変恐縮ですが、ご理解とご協力をいただけますようお願い申し上げます。
敬具
記
【運用開始予定日】
2024年10月度請求分より、電子請求書を運用予定です。
【概要】
請求書発行・送付サービス○○○○でお届けいたします。
従来の郵送での送付と比較した場合、請求書が従来よりも早く届きます。また、請求書の保存を電子化していただくことで、ファイリングなどの保存コストの削減が可能です。
【ご依頼】
電子請求書導入に際しまして、本案内にございます内容にご理解いただき、今後のご案内の送付先のメールアドレス、貴社企業名、ご担当者名を○月○日までに以下のメールアドレスまでお送りいただけますよう、お願い申し上げます。
また、ご不明な点やご質問がある場合も弊社担当者までご連絡お願いいたします。
・メールアドレス:○○○○@○○○.com
・電話番号 ○○○○○
・ご担当者:○○○○
請求書電子化の案内文の無料Wordテンプレートも配布しておりますので、ぜひご活用くださいませ。ダウンロードはこちら
まとめ
請求書の送付は経理における主要業務です。取引先が多いほど、請求書発行にかかるコスト負担は大きくなるため、電子請求書の導入がおすすめです。
とくに郵便料金の値上げに伴い請求書の電子化を検討するなら、取引先へ請求書の電子化を予定している案内文を送ることが大切です。案内文には、取引先が電子請求書に移行するのに納得できるように、電子化する理由や取引先へのメリット、電子化までのスケジュールなどを記載しましょう。
よくある質問
請求書電子化の案内文の例は?
請求書を電子化する理由を明確に説明し、請求書を電子化することによる取引先へのメリットや、電子化までの具体的なスケジュールや問い合わせ先などを明記したうえで案内文を送付します。
詳しくは記事内「請求書を電子化するための案内文例」をご覧ください。
請求書の電子化は必須?
郵便料金の値上げにともない、これまで請求書を郵送していた企業にとっては負担が大きくなってしまいます。
インボイス制度への対応や電子帳簿法改正、バックオフィスの作業オフィスコスト削減という観点から見ても、この機会に請求書の電子化を行うことは長期的なメリットは大きいといえるでしょう。
詳しくは記事内「取引先に請求書の電子化の了承を得るポイント」をご覧ください。