バックオフィスのトレンド情報をまとめて解説!

年収の壁を一覧でわかりやすく解説!今後の見直しについても説明

監修 内山貴博 1級FP技能士・CFP

年収の壁を一覧でわかりやすく解説! 今後の見直しについても説明

年収の壁とは、その金額を超えると税金や社会保険料が変わる金額です。本記事では、さまざまな年収の壁の意味や、制度見直しの取り組みを解説します。

年収の壁を超えると、税金や社会保険料が変わって手取りが減る場合があります。年収の壁を超えそうな場合には、生活に影響が出ないか事前に確認しましょう。

またパートやアルバイトなどを雇用している企業も、年収の壁を把握しておくと勤怠管理やシフト調整に活かせます。

それぞれの年収の壁についてわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。

目次

人事労務のすべてをfreeeひとつでシンプルに

freee人事労務は、入社手続きで取得した従業員ごとの保険料・税金と、打刻情報とを紐づけて自動で給与計算し、給与明細も自動で発行します!

ぜひ一度ご覧ください!

年収の壁とは?

年収の壁とは、税金や社会保険料がかからないように、年収を抑えようと意識される金額のボーダーラインです。

年収がある金額を超えると、税金や社会保険料がかかり始めたり、給与から天引きされる金額が増えたりする場合があります。

基準額を超えないように年収を抑えれば、税金や社会保険料が増えず手取りが減りません。年収の壁には、税制上の壁と社会保険上の壁の2種類あります。

税制上の年収の壁は以下の4つです。

税制上の年収の壁

● 100万円
● 103万円
● 150万円
● 201万円
社会保険上の年収の壁は以下の2つです。

社会保険上の年収の壁

● 106万円
● 130万円

年収住民税所得税社会保険料配偶者控除配偶者特別控除
100万円以下かからない対象-
100万円かかるかからない
103万円かかるかからない-対象
106万円かかる場合あり
130万円かかる
150万円
201万円

それぞれの年収の壁について以降で詳しく解説します。

社会保険と扶養の関係は、「社会保険の扶養から外れるとどうなる?事業主・従業員が必要になる手続きまとめ」でも詳しくまとめています。

100万円の壁

パートやアルバイトをしていて給与収入がある人は、一般的に年収が100万円を超えると住民税がかかります。

年収が100万円以下で住民税がかからない場合は、収入が増えればその分だけ手取りが増えます。

一方で年収が100万円を超えて住民税がかかる場合は、手取り額は収入から住民税を引いた金額です。以下のケースで、具体的に解説します。

例:品川区在住・給与収入101万円(収入は給与収入のみ、控除は給与所得控除のみ)の場合

【所得割】
給与収入101万 - 給与所得控除55万円 = 給与所得46万円
給与所得46万円 - 基礎控除43万円 = 3万円
3 万円×税率10% = 3,000円

※そのほかの所得控除は考慮していません。

【均等割】
特別区民税3,500円 + 都民税1,500円 = 5,000円

【住民税合計】
所得割3,000円 + 均等割5,000円 = 8,000円
年収が101万円になると、住民税が年間8,000円かかるため、手取りは100万2,000円になります。

住民税が非課税である年収100万円と比べると、年収は1万円増えても年間で増える手取りは2,000円です。

税金がかかると手取りがあまり増えないため、年収100万円前後の場合は、住民税がかからないように年収を100万円以下に抑えようと意識する人もいます。

なお自治体によっては、住民税がかかり始める年収の基準額が100万円とは異なる場合があります。住民税を意識して働く場合は、住民税がかかり始める年収の基準額がいくらなのか、自治体のサイトなどで確認しましょう。

106万円の壁については、「106万の壁を超えたらどうなる?対象者や130万の壁との違いを解説」でより詳しく解説しています。

なお、2024年度税制改正大綱によると、所得税と住民税の定額減税が2024年6月より実施されることになりました。住民税の減税に関しては、2023年分の所得が対象となり、納税者本人と扶養家族を対象に1人あたり1万円が減税されます。

103万円の壁

パートやアルバイトで給与収入がある人は、一般的に年収が103万円を超えると所得税がかかります。

給与所得者の場合、基礎控除に加えて給与所得控除を最低55万円は受けられるため、年収103万円までは所得税が0円です。

年収103万円 – 給与所得控除55万円 – 基礎控除 = 所得税0円

年収が110万円の場合、103万円を超える7万円に対して所得税がかかります。

年収110万円であれば所得税率は5%なので、3,500円(7万円×5%)の所得税が発生し、この金額だけ手取りが減る計算です。

ただし医療費控除など、各種控除の適用を受けられれば、年収が103万円を超えても所得税がかからない場合があります。

なお、2024年度税制改正により、所得税と住民税の定額減税が実施されることになりました。2024年分の所得税に関しては、納税者本人と扶養家族を対象に1人あたり所得税3万円が減税されます。

2024年の年収が103万円を超えて、所得税がかかるとしても減税により手取りが増えるため把握しておきましょう。給与所得者の場合、2024年6月の源泉徴収税額から控除されます。

106万円の壁

106万円の壁とは、社会保険料がかからずに済む金額のボーダーラインのひとつです。厳密には月額賃金8万8,000円が基準ですが、一般的に年収106万円の壁と呼ばれます。

パートやアルバイトなどの短時間労働者は、以下の要件に該当すると社会保険加入の対象となり社会保険料がかかります。

社会保険の加入条件(短時間労働者)

● 勤務先の従業員数が101名以上
● 週の所定労働時間が20時間以上
● 月額賃金が8万8,000円以上(年間約106万円)
● 2ヶ月を超える勤務の見込みがある
● 学生ではない
なお、法律の改正により2024年10月以降、社会保険の加入条件に関して、お勤め先の従業員数が101人以上から51人以上に拡充されます。現在、社会保険の加入条件を満たしていない人でも、2024年10月から加入しなければならない可能性もあるため注意しましょう。

所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書などで定められた勤務時間であり、実際の勤務時間ではありません。

また月額8万8,000円以上かどうかは、通勤手当・交通費や残業代などを含めない金額で判定します。年収の壁のうち、同じく社会保険上の壁である130万円の壁では通勤手当・交通費を含めて考えます。

通勤交通費の取り扱いを、混同しないように注意しましょう。

130万円の壁

130万円の壁とは、社会保険に関するボーダーラインのひとつで、家族の扶養に入れるかどうかの基準です。

年収が130万円以上だと一般的に家族の扶養から外れ、自分で社会保険に入らなければならないため社会保険料がかかります。

平均的には月々の収入が10万8,333円までであれば、年収130万円未満に収まります。そのため130万円の壁を意識して働く場合は、月収10万8,333円がひとつの目安です。

家族の扶養に入れる条件は、健康保険組合によって異なる場合があります。臨時的に1ヶ月だけ10万8,333円を超えただけであれば、扶養認定は取り消されないケースもあります。

家族の扶養に入る場合は、扶養認定の条件が具体的にどのようになっているのか、家族のお勤め先の規定をよく確認しましょう。

個人事業主の方は、あわせて「個人事業主は扶養に入れる?扶養に入るメリットと要件を解説」も読んでおくとわかりやすいです。

150万円の壁

150万円の壁とは、税金に関するボーダーラインのひとつで、税金を計算する際の配偶者特別控除額が減り始める基準です。

自分の年収が150万円を超え、配偶者の税金を計算する際に配偶者特別控除額が減ると家族の税負担が増えます。

自分の年収が150万円以下であれば、配偶者の所得税の計算で38万円、住民税の計算で33万円、それぞれ所得額から控除できます。

一方で150万円を超えた場合は、控除できる金額が減る仕組みです。

控除額を最大71万円(所得税38万円・住民税33万円)にするためには、年収を150万円以下に抑えなければなりません。

なお配偶者の所得が900万円以上の場合、そもそも配偶者控除・配偶者特別控除が受けられない、または金額が減額されてしまうため注意しましょう。

配偶者控除に関しては、「確定申告で配偶者控除を申請する方法!控除が受けられる所得なども解説」でより詳しく解説しています。

201万円の壁

201万円の壁とは、税金に関するボーダーラインのひとつで、税金を計算する際の配偶者特別控除額がゼロになる基準です。

年収が201万円を超えると、配偶者特別控除額を利用できなくなり税負担が増えます。

年収が150万円を超えると、それ以降年収が増えるほど配偶者の税金の計算で引ける配偶者特別控除額が小さくなっていきます。201万円に達すると、配偶者特別控除額がゼロになる仕組みです。

配偶者特別控除の適用を受けるためには、年収を201万円に抑えなければならないので、201万円も年収の壁のひとつとして呼ばれています。

配偶者の合計所得金額【参考】配偶者の収入が給与所得だけの場合の配偶者の給与等の収入金額控除額
納税者本人の合計所得額
900万円以下900万円超950万円以下950万円超1,000万円以下1,000万円超
配偶者控除48万円以下配偶者が70歳未満103万円以下38万円26万円13万円0円
配偶者が70歳以上48万円32万円16万円0円
配偶者特別控除48万円超
95万円以下
103万円超
150万円以下
38万円26万円13万円0円
95万円超
100万円以下
150万円超
155万円以下
36万円24万円12万円0円
100万円超
105万円以下
155万円超
160万円以下
31万円21万円11万円0円
105万円超
110万円以下
160万円超
1,667,999円以下
26万円18万円9万円0円
110万円超
115万円以下
1,667,999円超
1,751,999円以下
21万円14万円7万円0円
115万円超
120万円以下
1,751,999円超
1,831,999円以下
16万円11万円6万円0円
120万円超
125万円以下
1,831,999円超
1,903,999円以下
11万円8万円4万円0円
125万円超
130万円以下
1,903,999円超
1,971,999円以下
6万円4万円2万円0円
130万円超
133万円以下
1,971,999円超
2,015,999円以下
3万円2万円1万円0円
133万円超2,015,999円超0円0円0円0円
出典:国税庁「No.2672 年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるとき」

制度見直しの取り組み「年収の壁・支援強化パッケージ」とは?

パートやアルバイトなど、短時間労働者が年収の壁を意識せずに働ける環境づくりを支援するため、2023年9月27日に厚生労働省が「年収の壁・支援強化パッケージ」を公表しました。

支援が強化される背景にあるのは、人手不足への対応です。年収の壁を意識して就業時間を調整せずに働ける環境の整備が、人手不足解消に役立つと考えられます。

「年収の壁・支援強化パッケージ」では、当面の施策として、以下の3つへの対応が挙げられています。

年収の壁・支援強化パッケージの対応

1. 106万円の壁への対応
2. 130万円の壁への対応
3. 配偶者手当への対応
各対応の内容を以下で詳しく解説します。

①106万円の壁への対応

106万円の壁は、社会保険料がかかるかどうかのボーダーラインです。

年収が106万円以上になると、厚生年金・健康保険に加入して保険料がかかるため、保険料負担が生じないように労働時間を調整して、年収を106万円(厳密には月収8.8万円)未満に抑えるケースが見られます。

「年収の壁・支援強化パッケージ」で挙げられている106万円の壁への対応は以下の2つです。

106万円の壁への対応

● キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の新設
● 社会保険適応促進手当を支給した場合の標準報酬月額・標準賞与額の算定基礎への不算入
キャリアアップ助成金に新設された社会保険適用時処遇改善コースには、3種類のコースがあり、それぞれ一定の要件を満たすと助成金が受け取れます。

社会保険適用時処遇改善コースのメニュー

● 手当等支給メニュー
● 労働時間延長メニュー
● 併用メニュー
それぞれの要件や助成額は、以下の通りです。

【手当等支給メニュー】
事業主が労働者に社会保険を適用させる際、「社会保険適用促進手当」の支給等により労働者の収入を増加させる場合に助成する

【手当等支給メニュー】
出典:厚生労働省「雇用・労働キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」

【労働時間延長メニュー】
● 所定労働時間の延長により社会保険を適用させる場合(または社会保険を適用させる際に所定労働時間を延長させる場合)に事業主に対して助成する
● 以下の表の①~④のいずれかの取り組みを行った場合、労働者1人あたり中小企業で30万円(大企業の場合は22.5万円)を支給する

【労働時間延長メニュー】
出典:厚生労働省「雇用・労働キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」

【併用メニュー】
1年目に「手当等支給メニュー」の取り組みを行い、2年目に「労働時間延長メニュー」の取り組みを行った場合に助成する

【併用メニュー】
出典:厚生労働省「雇用・労働キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」

また社会保険適応促進手当とは、労働者が社会保険に加入する際、事業主が労働者の社会保険料負担を軽減するために支給する手当です。

社会保険料分の手当を受け取れば、従業員は手取りが減らずに済みます。そのため手取りが減ることを気にして、年収を106万円未満に抑えようと就業時間を調整する必要はなくなります。

各種手当には、受け取ると社会保険料が上がるものがありますが、社会保険適応促進手当は社会保険料の算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定には含まれません。

標準報酬月額・標準賞与額を算定する際、不算入となる社会保険適応促進手当の上限額は、社会保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額です。

キャリアアップ助成金の詳しい内容は「キャリアアップ助成金とは?対象者や申請手順、注意点を最新動向とともに解説!」をご覧ください。

②130万円の壁への対応

130万円の壁は、家族の扶養に入れるかどうかのボーダーラインです。

130万円の壁への対応として、事業主の証明による被扶養者認定が従来に比べて円滑化されました。

年収が130万円以上になると、家族の扶養から外れるため自身で社会保険料を支払う必要があります。そのため保険料負担が生じないように労働時間を調整し、年収を130万円未満に抑えるケースが見られます。

そこで政府は、短時間労働者である被扶養者が一時的に年収130万円以上になる場合、一時的な上昇である旨を事業主が証明すれば、引き続き扶養に入り続けることが可能になる仕組みを設けました。

被扶養者認定の際には過去の課税証明書・給与証明書・雇用契約書などの確認が必要です。本認定を受ける場合には、一時的な収入の変動である旨の事業主の証明も添付します。

一時的に年収130万円以上になる場合であれば社会保険料はかからずに済むため、繁忙期の残業を見込んで、事前に労働時間を少なくするなどの調整が必要なくなります。

③配偶者手当への対応

配偶者手当は、民間企業で配偶者がいる従業員に支給される手当です。一般的に配偶者手当は、配偶者の収入が一定額以下の場合に支給されます。

配偶者手当の支給対象になるように労働時間を調整して年収を抑えるケースが見られるため、「年収の壁・支援強化パッケージ」では対応すべき事項のひとつとして挙げられています。

配偶者手当の支給基準額が年収の壁として意識され、就業調整の原因となっている状況を改善するためには、配偶者手当の見直しが必要です。

厚生労働省では、賃金制度の円滑な見直しを行う際のフローチャートとして、以下の4ステップを公表しています。

配偶者手当への対応

出典:厚生労働省「配偶者手当見直し検討のフローチャート」

配偶者手当の見直しは、労働者にとって不利益変更となる場合があるため、企業は慎重に対応する必要があります。しかし短時間労働者がより働きやすい環境を整えるためにも、配偶者手当を支給している企業では、手当の在り方を今一度検討することが求められます。

まとめ

年収の壁には、以下のような種類があります。

年収の壁の種類

● 100万円の壁
● 103万円の壁
● 106万円の壁
● 130万円の壁
● 150万円の壁
● 201万円の壁
年収の壁を超えると、税金や社会保険料が変わって手取りが減ってしまいます。

また年収が一定額を超えると、自分の手取りが減るだけでなく、家族の手取りが減る場合もあります。

年収や手取りを考える際には、自分だけでなく家族を含めた世帯全体で考えることも大切です。

年収によって、税金や社会保険料がどのように変わるのか、正しく理解したうえで年収や手取り額の計算・家計管理を行いましょう。

社会保険に関する業務を円滑にする方法

社会保険に関する業務は、加入手続きや保険料の計算など多岐にわたります。それらの業務を効率化したいとお考えの方には、freee人事労務がおすすめです。

freee人事労務には、以下のような機能があります。

  • 社会保険の加入手続きに必要な書類を自動で作成
  • ペーパーレスでの従業員情報の収集
  • 入社時の被保険者資格取得届の作成
  • 社会保険料の計算含む、給与計算事務
従業員・労務担当者双方の対応を簡略化し、効率化とペーパーレス化を同時に実現できるサービスです。

上記のほかにも年末調整・労働保険の年度更新・算定基礎届の作成・住民税の更新など、人事労務関連のさまざまな業務をサポートします。

企業の労務担当者のみなさん、freee人事労務をぜひお試しください。

よくある質問

年収の壁とは?

年収の壁とは、税金や社会保険料がかかり始めたり高くなったりする基準額です。

年収の壁を詳しく知りたい方は、「年収の壁とは?」をご覧ください。

1ヶ月だけ扶養限度額をオーバーしてしまったら?

年収の壁のうち130万円の壁に関しては、臨時的に1ヶ月だけ超えてしまった場合は扶養取り消しにならないケースが多いです。

しかし多くの場合、2ヶ月以上月10万8,333円を超えると扶養から外れます。

1ヶ月だけ扶養限度額をオーバーした場合に関して詳しく知りたい方は「130万円の壁」をご覧ください。

監修 内山貴博(うちやま たかひろ) 1級FP技能士・CFP

大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。

監修者 内山貴博