監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

2024年12月、制度改正によってiDeCoと企業型確定拠出年金(DC)の拠出限度額が見直されました。
iDeCoは税制上の優遇措置があり、老後に向けた資産形成のために有効な手段のひとつです。政府はiDeCoへの加入を促進しており、2022年10月以降は企業型DCに加入している会社員も利用できるようになりました。
企業型DCやDBとの併用を考えている人は、拠出限度額のルールを把握し、賢く活用しましょう。
本記事では、iDeCo改正による変更点や注意点を解説します。
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目次
- iDeCo・企業型確定拠出年金(DC)・確定給付企業年金(DB)の仕組み
- 【2024年12月改正】iDeCoの掛金拠出限度額の見直し
- 改正前のiDeCoの掛金拠出限度額
- 2024年12月以降のiDeCoの掛金拠出限度額
- 【2024年12月改正】企業型確定拠出年金(DC)の掛金拠出限度額の見直し
- 改正前の企業型確定拠出年金(DC)の掛金拠出限度額
- 2024年12月以降の企業型確定拠出年金(DC)の掛金拠出限度額
- 【2024年12月改正】iDeCo掛金拠出限度額の変更に伴う注意点
- iDeCoの拠出限度額の上限が引き上げられる背景
- 【2025年度改正】iDeCo・企業型確定拠出年金(DC)の見直し内容
- 掛金拠出限度額の引上げ
- iDeCoに加入できる年齢が65歳未満から70歳未満に
- マッチング拠出の制限を撤廃
- まとめ
- 確定申告を簡単に終わらせる方法
- よくある質問
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iDeCo・企業型確定拠出年金(DC)・確定給付企業年金(DB)の仕組み
年金制度を大きく分けると「公的年金」と「私的年金」の2種類があります。
国民年金や厚生年金は「公的年金」として加入が義務付けられている一方、「私的年金」は公的年金に上乗せで保障する制度のため、任意加入です。
私的年金は「企業年金」と「個人年金」に分かれ、それぞれ以下のような種類があります。
種類 | 内容 |
---|---|
企業年金 |
・企業型確定拠出年金(DC) ・確定給付企業年金(DB) ・厚生年金基金 |
個人年金 |
・個人型確定拠出年金(iDeCo) ・国民年金基金 ・個人年金保険 |
上記のうち、企業型確定拠出年金(DC)・確定給付企業年金(DB)・個人型確定拠出年金(iDeCo)の特徴をそれぞれ見てみましょう。
企業型確定拠出年金 (DC) | 確定給付企業年金 (DB) | 個人型確定拠出年金 (iDeCo) | |
---|---|---|---|
加入対象 | 実施企業に勤める従業員 | 実施企業に勤める従業員 | 所属企業を問わない個人 |
掛金・運用リスク |
・掛金は事業主が拠出する(定めがある場合、加入者が拠出するマッチング拠出制度もある) ・拠出額と運用益の合計によって、将来の給付額が決まる |
・運用リスクは事業主側が負う ・給付額があらかじめ決定している企業年金制度 | ・加入の申し込みから掛金の拠出・運用まで全て個人で行う |
大きく異なる点は、企業型DCやiDeCoは運用成績によって受け取れる金額が変動する一方、DBはあらかじめ給付額が決まっていることです。
なお、各制度で拠出・運用・給付時に税制上の優遇措置を受けられます。
【2024年12月改正】iDeCoの掛金拠出限度額の見直し
iDeCoの掛金拠出限度額は、2024年12月に変更されています。以下では、iDeCoの掛金拠出限度額に関して、改正前と改正後に分けて解説します。
改正前のiDeCoの掛金拠出限度額
iDeCoの掛金拠出限度額は、下図の通り国民年金の加入区分などによって異なります。もっとも掛金を拠出できるのは、自営業者などの国民年金の第1号被保険者および任意加入被保険者です。

出典:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の仕組み」
また、企業型DCやDBなどに加入している場合、拠出できる金額は次のように算出します。
加入パターン | iDeCoで拠出できる金額 |
---|---|
企業型DCのみに加入している場合 |
月額55,000円(上限) − 各月の企業型DCの事業主掛金額 (拠出金額の上限は2万円) |
企業型DCとDBなど他制度に加入している場合 |
月額27,500円(上限) − 各月の企業型DCの事業主掛金額 (拠出金額の上限は1万2,000円) |
企業型DCやDBなど他制度の加入状況によって、掛金拠出上限額が異なる点に注意が必要です。
2024年12月以降のiDeCoの掛金拠出限度額
2024年12月1日より変更されたのは、「確定給付型など他制度に加入している場合のiDeCoの拠出限度額」です※。
従来の掛金拠出限度額1万2,000円から、2万円へ引き上げられました。また、各月の企業型DCの掛金額と他制度の掛金相当額を合算して、5万5,000円が上限です。
iDeCoの拠出限度額(月額)
- iDeCoの拠出限度額(月額)= 月額55,000円 −(各月の企業型DCの事業主掛金額 + DBなどの他制度掛金相当額)
たとえば、企業型DCと確定給付型の他制度への掛金相当額の合計が4万円の場合、「月額55,000円 − 40,000円 = 15,000円」です。2万円を超えていないため、1万5,000円が拠出額となります。
(※)確定給付年金には、確定給付企業年金(DB)・厚生年金基金・石炭鉱業年金基金・私立学校教職員共済などが含まれます。
【2024年12月改正】企業型確定拠出年金(DC)の掛金拠出限度額の見直し
2024年12月からは、企業型DCの掛金拠出限度額も変更されています。以下では、企業型DCの掛金拠出限度額に関して、改正前と改正後に分けて解説します。
改正前の企業型確定拠出年金(DC)の掛金拠出限度額
改正前の企業型DCの掛金拠出限度額は以下の通りです。
実施パターン | 掛金の上限額(iDeCo併用時) |
---|---|
企業型DCのみを実施する場合 | 月額5万5,000円 |
DBをあわせて実施する場合 | 月額2万7,500円 |
iDeCoと同様に、DBの加入状況によって掛金拠出上限額が異なります。
2024年12月以降の企業型確定拠出年金(DC)の掛金拠出限度額
2024年12月1日以降は、月額5万5,000円から他制度掛金相当額を控除した額が掛金拠出限度額となりました。企業型DCのみを実施する場合も、DBをあわせて実施する場合も同様です。
DC拠出限度額(月額)の計算
- DC拠出限度額(月額)= 月額55,000円 − DBなどの他制度掛金相当額
たとえば、DBなどの他制度掛金相当額が3万円だった場合、「月額55,000円 − 30,000円= 25,000円」が掛金拠出限度額です。
なお、経過措置が設けられており、従来の拠出限度額である2万7,500円を拠出することもできます。
【2024年12月改正】iDeCo掛金拠出限度額の変更に伴う注意点
2024年12月の改正が行われる前までは、下図の通りDBなど他制度の掛金相当額は一律2万7,500円とされていました。

改正後は、企業型DCとDBなど他制度への掛金相当額の合計額を控除した額の上限を2万円に統一し、企業年金に加入しているiDeCo利用者間の公平化を目指します。
掛金拠出限度額にDBなど制度ごとの掛金相当額が反映されるため、iDeCo加入者が確定給付型など他制度に加入している場合、次のような影響が生じます。
iDeCo加入者への影響
- DBなど他制度の掛金が少ない場合、企業型DCで拠出できる額が大きくなる
- DBなど他制度の掛金が多い場合、企業型DCで拠出できる額が小さくなる
つまり、企業型DCやDBなど企業年金の掛金割合が大きいと、iDeCoの最低掛金額5,000円を下回るケースがあります。最低掛金額を下回った場合、iDeCoの掛金を拠出できなくなるので注意しましょう。
iDeCoの拠出限度額の上限が引き上げられた背景
今回、iDeCoの拠出限度額が引き上げられた背景には、iDeCo加入対象者の拡大があります。これまで政府は、より多くの人がiDeCoを利用できるように加入要件などを見直してきました。
2022年5月以降は、会社員や公務員などで60歳以上65歳未満の人、また国民年金に任意加入している海外在住の人もiDeCoの加入対象者となりました。
2022年10月以降にも、対象外だった企業DC加入者がiDeCoを利用できるようになっています。ただし、企業型DCのマッチング拠出(加入者掛金拠出)を利用していないなど加入要件があります。
iDeCo加入対象者の範囲拡大に伴い、企業型DCやDBなど企業年金制度に加入している会社員の間の公平を図る必要性が高まりました。これにより、新たに掛金拠出限度額のルールが設けられることとなりました。
【2025年度改正】iDeCo・企業型確定拠出年金(DC)の見直し内容
2024年12月27日、2025年度の税制改正大綱が閣議決定されました。
税制改正大綱とは、翌年度以降の税制改正の方針をまとめたものです。税制改正大綱の内容をもとに税制改正法律案が国会に提出され、可決されると改正法案が成立となり、改正法に定められた日より施行されます。
2025年度の税制改正大綱には、iDeCoや企業型DCの見直しに関する内容も盛り込まれているため、以下で主な改正内容を紹介します。
出典:金融庁「令和7(2025)年度税制改正について」
掛金拠出限度額の引上げ
2025年度の税制改正により、iDeCoの掛金拠出限度額がさらに引き上げられます。現在と改正後の掛金拠出限度額の違いは以下の通りです。
<掛金拠出限度額の違い>
加入資格 | 現行の掛金拠出限度額 | 2025年度の税制改正後の掛金拠出限度額 |
---|---|---|
第1号被保険者 (フリーランスなど) | 月額6万8,000円 | 月額7万5,000円 |
第2号被保険者のうち、企業年金に加入している会社員 | 月額2万円 | 月額6万2,000円 (iDeCoと企業型DCの合計) |
第2号被保険者のうち、企業年金に加入していない会社員 | 月額2万3,000円 | 月額6万2,000円 |
また、企業型DCの掛金拠出限度額は、月額5万5,000円から月額6万2,000円(iDeCoと企業型DCの合計)に引き上げられます。
なお、第3号被保険者にあたる専業主婦(夫)の掛金拠出限度額には変更がありません。
出典:金融庁「令和7(2025)年度税制改正について」
iDeCoに加入できる年齢が65歳未満から70歳未満に
これまでiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できるのは、会社員や公務員などの厚生年金加入者なら「65歳未満」まで、フリーランスや専業主婦(夫)などは「60歳未満」までとされていました。
しかし、2025年度の税制改正によって、iDeCoに加入可能な年齢が70歳未満に引き上げられます。
これにより、60歳以上70歳未満でiDeCoに加入できなかった人のうち、「iDeCoの加入者・運用指図者だった人」または「私的年金の資産をiDeCoに移換できる人」は、70歳未満までiDeCoに加入できるようになります。
出典:iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」
出典:厚生労働省「令和7年度 税制改正の概要(厚生労働省関係)」
マッチング拠出の制限を撤廃
マッチング拠出とは、企業型DC(企業型確定拠出年金)の掛金に加えて、従業員自身が掛金を追加できる制度のことです。
従来は「従業員が追加できる掛金の額は、企業が拠出する掛金の額を超えられない」という制限がありました。
しかし、2025年度の税制改正により、この制限が撤廃されます。マッチング拠出を利用している場合、今よりも掛金を増額できる可能性があります。
出典:厚生労働省「令和7年度 税制改正の概要(厚生労働省関係)」
まとめ
2024年12月より、DCやDBなど他制度に加入している場合のiDeCoの掛金拠出限度額が2万円に引き上げられました。
この改正によって、企業年金とiDeCoを併用する人の公平化を図っています。DCやDBなどの掛金合計額によっては、iDeCoの掛金を拠出できなくなる場合もあるため注意が必要です。
企業型DCの掛金拠出限度額も見直されたため、iDeCo加入者だけでなく企業年金に加入している場合も拠出額を確認しておきましょう。
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よくある質問
【2025年度】税制改正大綱でiDeCoはどう変わる?
2025年度の税制改正により、iDeCoの拠出限度額や加入可能年齢が引き上げられます。
改正内容に関して詳しく知りたい方は、「【2025年度改正】iDeCo・企業型確定拠出年金(DC)の見直し内容」をご覧ください。
企業型確定拠出年金(DC)の限度額は?
2024年12月以降は、月額5万5,000円から他制度掛金相当額を控除した額が拠出限度額となっています。
企業型DCの拠出限度額に関して詳しく知りたい方は、「2024年12月以降の企業型確定拠出年金(DC)の掛金拠出限度額」をご覧ください。
【2024年12月】iDeCoの拠出限度額の変更に伴う注意点は?
企業型DCやDBなど企業年金の掛金合計額によっては、iDeCoの最低掛金額5,000円を下回り、iDeCoの掛金を拠出できなくなるケースがあります。
法改正に伴う注意点に関して知りたい方は、「【2024年12月改正】iDeCo掛金拠出限度額の変更に伴う注意点」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
