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幸齢社会とは?実現に向けた取り組みや推進される背景などをわかりやすく解説!

監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP

幸齢社会とは?実現に向けた取り組みや推進される背景などをわかりやすく解説!

幸齢社会とは、高齢化が進むなかで目指すべき社会をあらわす造語です。本記事では幸齢社会の概要推進される背景実際の取り組みなどを解説します。

2022年時点で日本の総人口に占める高齢者の割合は、29.1%と過去最高となりました。深刻な高齢化問題に対応し、より良くするために「幸齢社会」を目指す活動に注目が集まっています。

出典:総務省統計局「1.高齢者の人口」

目次

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幸齢社会とは?

幸齢社会とは、国民の高齢化が進むなか、目指すべき社会として作られた言葉です。具体的には、次のような社会を目標としています。

目指す社会像

● 高齢者が安心して年をとれる社会
● 年をとってからも幸せに暮らせる社会
日本は医療制度が充実していることや、和食中心の食生活文化などにより、世界でもトップクラスの長寿国です。

平均寿命の延伸に伴い、課題となるのは「健康寿命との差」です。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」をいいます。

2019年に実施されたWHO(世界保健機関)の調査によると、日本は平均寿命・健康寿命ともに世界1位の長さです。しかし、日本国民全体の平均寿命と健康寿命の間には、10.2歳の差が生じています。
出典:WHO「Global Health Observatory data repository」

平均寿命と健康寿命の差が広がると、介護が必要な期間が長くなります。医療費や介護給付費を消費する期間も長くなり、社会保障負担が大きくなるでしょう。

また個人の生活の質も低下するため、今後も高齢者が増えていく日本で健康寿命を延ばすことは「幸齢社会」の実現に欠かせない重要な課題です。

そして、高齢者が自分らしく年を重ねることに幸せを感じるには、次の取り組みが必要だと考えられています。

幸齢社会に必要な取り組み

● 身体および精神面の健康づくり
● 仲間づくり
● 活力のある生活づくり
身体や心の健康はもちろん、高齢者が孤立しないような地域のネットワークを構築することが大切です。国や地方自治体、NPO法人など、それぞれで「幸齢社会の実現」に向けた施策が実施されています。

幸齢社会に欠かせない「サクセスフル・エイジング」とは?

「サクセスフル・エイジング」とはアメリカの言葉であり、正確な日本語訳はありません。意味としては、「よい人生を送り、天寿をまっとうすること」です。

日本の言葉でいうと、「生きがい」や「幸福な老い」に近い意味をもち、老年学(ジェロントロジー)の研究テーマのひとつになっています。

どのように年を重ねていくことが理想なのか、幸せなのか(特に高齢期)、この問いへの研究こそがサクセスフル・エイジングの意味するところです。

「サクセスフル・エイジング」の主な構成要素は、次の3点です。

サクセスフル・エイジングの構成要素

● 長寿
● 生活の質(QOL)
● 社会貢献
3つの構成要素のうち、生活の質および社会貢献に関する詳細な構成要素を見てみましょう。

構成要素
生活の質(QOL)● 身体の健康
● 機能的な健康(ADL、IADLなど)
● 認知能力
● 時間の消費(レクリエーションなど)
● 社会的行為(独創的リーダーシップなど)
社会貢献 ● 有償労働
● 無償労働
● 相互扶助
● ボランティア活動
● 保健行動

なおサクセスフル・エイジングの構成要素に関しては、まだ研究が進められている段階です。構成要素のひとつである社会貢献は、日本人特有の「生涯現役」という活動理論や、日本人の労働への倫理観などによって追加されました。

社会学・医学・倫理学などさまざまな分野において、高齢者の加齢に関する研究者が、各専門性によって独自の「サクセスフル・エイジング」のモデルを作り上げています。

幸齢社会実現に向けたさまざまな取り組み

幸齢社会の実現に向けた政府や各団体の取り組みは、以下の内容です。

政府などによる取り組み

● 「幸齢社会」実現会議で話し合われる認知症施策
● 文科省による生涯学習
● NPO法人幸齢社会づくり協会によるサクセスフル・エイジング事業
それぞれの取り組み内容に関して説明します。

「幸齢社会」実現会議で話し合われる認知症対策

政府は、2023年9月から「幸齢社会」実現会議を開始しました。高齢化の進行に伴い認知症患者が増加しているためです。

「幸齢社会」実現会議の主な目的は、認知症対策の強化です。初会合では、認知症患者本人や認知症患者を支える家族などが出席し、共生社会を目指すうえで解決すべき課題などについて話し合いが行われました。

また岸田内閣総理大臣は、初会合において「安心して歳を重ねることができる幸齢社会づくりを進め、課題解決に向けた省庁横断の体制を構築する」旨を述べました。

今後は、認知症の治療方法・薬などの開発や医療提供体制の整備を推進するほか、身寄りのない高齢者への対応など、総合的な対策について検討される見通しです。

文部科学省が推進する「生涯学習」

文部科学省は、「超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」を設置し、高齢者の学びをサポートしています。

生涯学習とは、「自己の充実や生活の向上のために、人生の各段階での課題や必要に応じて、あらゆる場所・時間・方法により学習者が自発的に行う自由で広範な学習」です。

学校や社会における意図的・組織的な学習を指すと誤認されることも多いですが、生涯学習にはスポーツ活動・文化活動・趣味・ボランティアなどさまざまな活動が含まれます。

また「学習」と意識していなくても、社会との関わりによって自分自身の生き方や考え方に変化があれば、「生涯学習をした」といえます。

生涯学習の意義として最たるものは、学びや活動によって「生きがいを創出する」ことです。高齢者にとって、生涯学習を通して生きがいを見つけることは、心と身体の健康の増進につながります。

NPO法人による幸齢社会づくり

NPO法人幸齢社会づくり協会は、退職後のライフステージを生き生きと過ごせるように次のプロジェクトに取り組んでいます。

NPO法人幸齢社会づくり協会の取り組み

● サクセスフル・エイジング・プロジェクト
● シニアゴルフ・ボランティア・プロジェクト
サクセスフル・エイジング・プロジェクトでは、加齢によって生じる変化やどのような対応が必要なのかを広く知ってもらうため、講演会やシンポジウムを開催しています。

またシニアゴルフ・ボランティア・プロジェクトとは、ゴルフに関するボランティア活動です。ボランティアとして、全国のゴルフ場で目土作業(芝生の隙間に土や砂を入れる作業)などを行います。

ボランティア活動という生きがいを見つけるだけでなく、同じ趣味をもつ仲間をつくることができます。

幸齢社会の実現が推進される背景

幸齢社会を目指す背景には、日本の大きな課題である「少子高齢化」があります。

2025年に団塊世代が75歳以上になり、2040年に高齢者人口がピークを迎え、高齢化とともに生産年齢(15〜64歳)の人口減少も進みます。避けられない高齢化社会において、いかに健康寿命や活動寿命を延ばせるかが重要です。

出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

高齢者の増加によって、「家族の介護」を理由に離職する人が増えている点も懸念されています。政府では認知症対策の強化を喫緊の課題とし、認知症患者が活躍できるような仕組みづくりや支援を進めています。

また地域包括ケアの構築によって、高齢者の居住環境を支えることも大切です。「住み慣れた地域で暮らしたい」という声は多く、年齢を重ねても安心して暮らせる街づくりは幸齢社会の実現に欠かせません。

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まとめ

「幸齢社会」という言葉は、進んでいく高齢化へ対応するために掲げられました。高齢者がより健康に、より幸せに年をとっていけるような社会を目指しています。

幸齢社会を実現するには、政府や自治体などにおいて多様な分野および機関が連携をとって取り組まなければなりません。

実施されている取り組みとして、政府の認知症対策や文科省の生涯学習の促進、NPO法人によるサクセスフル・エイジング事業などが挙げられます。

よくある質問

幸齢社会とは?

幸齢社会は、高齢者が安心して年を重ね、また年をとってからも幸せに暮らせる社会のことです。

幸齢社会について詳しく知りたい方は、「幸齢社会とは?」をご覧ください。

幸齢社会実現に向けた政府が行う取り組みとは?

政府では認知症対策の強化、文科省では生きがいづくりにつながる「生涯学習」の促進などが行われています。

幸齢社会に向けた取り組みについて知りたい方は、「幸齢社会実現に向けたさまざまな取り組み」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史