公開日:2023/10/19
監修 志塚 洋介 行政書士・1級FP技能士・CFP
外国人が日本で起業するには、さまざまな手続きが必要です。本記事では、外国人が日本で起業する際に必要な手続きや注意点、支援策などを解説します。
外国人にとって、在留資格を得るためのハードルが高いなど、日本での起業は容易ではないと考えられています。
しかし近年、外国人の起業を促す制度や支援策が登場しており、今後は日本で会社を設立する外国人起業家も増えていくでしょう。
目次
- 外国人が日本で起業するために必要な在留資格
- 「経営・管理」の在留資格
- 外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)の活用でより起業しやすく
- 外国人が日本で起業する流れ・方法
- ①事業計画書と定款を作成する
- ②「経営・管理」の在留資格の取得する
- ③出資金を払い込む
- ④会社の設立登記を行う
- 外国人が日本で起業する際の注意点
- 必要書類はすべて日本語での作成が必要
- 出資金は500万円以上の用意が必要
- 銀行口座を開くには住民票の取得が必要
- 日本で起業したい外国人が受けられる支援
- まとめ
- 開業届はツールで簡単・正確に!
- よくある質問
- 外国人が日本で起業するために必要な在留資格とは?
- 外国人が日本で起業する際の注意点とは?
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外国人が日本で起業するために必要な在留資格
外国人が日本で起業する場合、日本人が会社を設立するときとは異なる、いくつかの条件をクリアしなければなりません。なかでも、外国人特有の条件が在留資格(ビザ)です。
在留資格は、日本に滞在する目的に応じていくつかの種類に分かれています。永住者や永住者となった人の配偶者などを除き、外国人の日本での活動範囲は在留資格により制限されます。そのため、外国人が日本で起業するには、それを許可するビザを取得しなければなりません。
まずは、外国人が日本で起業するのに必要となる在留資格を解説します。
「経営・管理」の在留資格
外国人が日本で起業するためには、「経営・管理」の在留資格の認定を受けなければなりません。在留資格には「留学」や「家族滞在」など、目的に応じてさまざまな種類があります。すでに別の就業ビザを取得していても、起業する場合には「経営・管理」のビザへの変更が必要です。
外国人が「経営・管理」の在留資格の認定を受けるためには、以下の要件を満たさなければなりません。
「経営・管理」の在留資格の認定を受けるための要件
● 国内での事務所の開設● 2名以上の常勤職員の雇用または500万円以上の出資(投資)
● 事業計画書による入国管理局への説明(事業の安定性の証明)
外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)の活用でより起業しやすく
近年、「経営・管理」の在留資格の発行数が鈍化している状況を受け、「外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)」が始まっています。外国人起業家の呼び込みと起業促進を目的とし、2018年に始まりました。
スタートアップビザとは、地方自治体の管理するプログラムを経済産業省が認定し、地方出入国在留管理局が「特定活動」ビザを付与する仕組みです。
1年以内に起業する計画を前提として、起業までの準備期間として最長1年の「特定活動」ビザを認められます。2023年8月現在、福岡市や大阪市、渋谷区など全国で14自治体がこの事業に対応しています。
出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「2.12 外国人材の受け入れ促進」
スタートアップビザを利用するには、自治体への起業計画書の提出と、地方入国在留管理局による審査の2段階の手続きが必要です。しかし「経営・管理」ビザのような厳しい要件をクリアしなくても、日本で起業する準備期間を得られます。
また「特定活動」ビザの在留期間中に「経営・管理」へ在留資格を変更すれば、そのまま日本で起業できます。
外国人が日本で起業する流れ・方法
外国人が日本で会社を設立するまでの流れ・方法は、以下の通りです。
外国人が日本で会社を設立するまでの流れ・方法
1. 事業計画書と定款を作成する2. 「経営・管理」の在留資格の取得する
3. 出資金を払い込む
4. 会社の設立登記を行う
①事業計画書と定款を作成する
日本での起業に必要な「経営・管理」の在留資格には、資本金の金額や事業所の設置など、事業に関する制限があります。
さらに取得に際しては、どのような事業を行うのか明記した事業計画書(Business Plan)の提出が義務づけられています。
また国籍を問わず、日本で会社を作るには定款の作成が必要です。定款は、商号や事業の目的など会社の基本的な事項をもとに作成されるものです。いわば会社の法律で、株式会社の場合には公証人からの認証を設けなければなりません。
これらの書類には事業所の所在地を記載するため、作成開始と同時に所在地の確保を始めましょう。
②「経営・管理」の在留資格の取得する
事業計画書や定款など必要書類の作成を進めると同時に、「経営・管理」の在留資格の取得申請を行います。
起業の準備を終えてからの申請でも問題ありませんが、ビザの審査期間には時間がかかるため、早めに動いておくといいでしょう。
2021年時点の東京入国管理局での「経営・管理」ビザの審査期間は、新規申請で約50~80日、ビザの変更申請で約40日となっています。
現在のビザの在留期間を利用して起業準備を進めるつもりが、審査期間が長引き、事業開始までにビザを更新できない恐れもあります。
③出資金を払い込む
「経営・管理」の在留資格の取得要件でもあり、会社設立に必要な出資金を払い込みます。また払い込んだ事実を証明するために、払込証明書を作成しておきましょう。
この時点では会社設立前のため、払込先は個人の銀行口座で問題ありませんが、会社設立の発起人が定める銀行口座とします。
ただし、海外在住の外国人だと日本で銀行口座を持てないため、在留資格のある外国人あるいは日本人を発起人に加えておかなければなりません。
ビザの申請では出資金の送金元などを確認される場合もあるため、関係する書面や資料はできるだけ残しておきましょう。
④会社の設立登記を行う
必要書類の作成や資本金の払込みなどの準備が整ったら、事業所を管轄する法務局で、会社の設立登記を行いましょう。1週間から10日ほどで登記が完了すれば、法律上、会社の設立が成立したことになります。
登記が終わったら、同じ法務局で「履歴事項全部証明書」を取得します。履歴全部事項証明書は、銀行口座の開設や「経営・管理」の在留資格の申請で必要です。
外国人が日本で起業する際の注意点
外国人が日本で起業するには、在留資格を取得するハードルを含め、いくつか気をつけておきたい注意点があります。
外国人が日本で起業する際の注意点
● 必要書類はすべて日本語での作成が必要● 出資金は500万円以上の用意が必要
● 銀行口座を開くには本人確認書類が必要
必要書類はすべて日本語での作成が必要
会社の設立に必要となる事業計画書や定款などの書類は、すべて日本語で表記します。そもそも「経営・管理」の在留資格の申請書も日本語での記入となっており、また母国語の添付書類がある場合には日本語への翻訳が必要です。
日本語による書類の準備がむずかしい場合は、日本語に精通した人を発起人に加える、翻訳機関に仕事を依頼するなどの対応を検討しましょう。
出資金は500万円以上の用意が必要
「経営・管理」の在留資格の取得要件のひとつに、500万円以上の出資(投資)があります。
出資金は、全額をそのまま資本金としなくても問題ありません。しかし資本金を少なくするなら、500万円を事業に出資した事実の証明が必要です。またビザの審査では、事業の安定性や継続性を確認されるため、少額の資本金で事業を始めるのはあまりおすすめできません。
現在、日本の会社法では資本金1円でも株式会社を作れますが、適用されるのは日本人や永住者としての資格がある外国人に限られる点にも注意が必要です。
銀行口座を開くには本人確認書類が必要
外国人が日本の金融機関で口座を開設する際には、氏名・現住所・生年月日を確認できる本人確認書類の提示を求められます。また金融機関により対応が異なる場合もありますが、日本での3ヶ月以上の在留期間がなければ、口座開設の申込みはできません。
金融機関に確認のうえ、在留カードや住民票など、対応する本人確認書類を事前に準備しておきましょう。
資本金(出資金)の払込みには銀行口座が欠かせません。いざというとき会社の発起人で条件を満たす人の確保も重要です
日本で起業したい外国人が受けられる支援
日本は欧米に比べると起業家が少なく、外国人起業家にとっては魅力ある市場だとされています。一方で、起業までのハードルの高さから敬遠されたり、せっかく起業してもすぐに廃業してしまったりなどのケースも多いようです。
こうした現状を受けて、現在、外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)のほかにも、外国人による起業を促進するためのさまざまな支援が行われています。以下はその一例です。
支援策 | 管轄 | 内容 |
国家戦略特区を活用した外国人の起業促進 | 国 | 大阪市など一部自治体での在留資格(ビザ)の認定要件の緩和 |
外国人起業家の資金調達支援事業 | 東京都 | 金融機関による融資と経営支援を合わせた取り組みで、1,500万円を上限に支援 |
外国人在留支援センター | 出入国在留管理庁 | 在留資格の相談や法的支援の提供 |
こうした支援を活用すれば、効率的に日本での起業を進められる可能性が高まります。自治体によって支援の有無や内容が異なる場合もあるので、事前にリサーチしておくと安心です。
まとめ
外国人が起業するには、「経営・管理」の在留資格(ビザ)の認定を受けたうえで、日本人と同じように会社設立の手続きを踏まなければなりません。
ビザの取得条件を満たし、日本語を使った書類を作成するなど、外国人にとってはハードルの高いものとなっています。
ただし近年は、外国人起業家を後押しする支援制度が増えており、起業を促す環境が整い始めています。
まずは「経営・管理」の在留資格の取得に向けて、要件を満たして審査を通過できるように、しっかりと準備を進めましょう。
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よくある質問
外国人が日本で起業するために必要な在留資格とは
外国人が日本で起業するためには、「経営・管理」の在留資格(ビザ)が必要です。「経営・管理」ビザの取得にはいくつかの要件が定められおり、審査には一定の時間がかかります。
外国人の起業に欠かせない「経営・管理」の在留資格を詳しく知りたい方は「「経営・管理」の在留資格」をご覧ください。
外国人が日本で起業する際の注意点とは?
母国語が異なる外国人であっても、必要書類や手続きはすべて日本語で行わなければなりません。また、500万円以上のまとまった出資金の用意が必要です。
外国人が日本で起業する際の注意点を詳しく知りたい方は、「外国人が日本で起業する際の注意策」をご覧ください。
監修 志塚 洋介(しづか ようすけ) 行政書士・1級FP技能士・CFP
大学在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。証券会社で資産運用コンサルティングに従事したのち、不動産会社で保有不動産の収支計算や資産管理、収支改善業務などに従事し、独立開業。行政書士とファイナンシャルプランナーというお金と法律の2つの側面から会社設立、相続、遺言、運用、不動産などに関する幅広い業務を展開中。雑誌やwebでの執筆や株式や投資のセミナーなどの講師も行い、YouTubeでの投資に関する動画も好評。