公開日:2024/06/04
監修 松浦 絢子 弁護士
2024年3月、改正戸籍法が施行されました。戸籍に関する手続きを簡素化することで利用者の負担を軽減し、戸籍制度の利便性を向上させることが目的です。
戸籍に関わる手続きがより簡素化され、行政手続きや個人間コミュニケーションの正確性の向上が期待されます。
本記事では、戸籍法改正による変更点や改正の背景、目的を解説します。戸籍法が改正されたポイントを把握し、必要な対応を行いましょう。
目次
- 【2024年3月施行】戸籍法改正による変更点
- 【2024年3月〜】行政手続きに戸籍謄抄本の提出が省略可能に
- 【2024年3月〜】戸籍の届出に戸籍謄抄本の提出が省略可能に
- 【2024年3月〜】本籍地以外での戸籍謄本が発行可能に
- 【2024年3月施行】戸籍法改正の背景となった課題
- 【2024年3月施行】戸籍法改正の目的
- 2025年施行の改正戸籍法では戸籍の「ふりがな」が法制化される
- 【2025年5月頃〜】戸籍にふりがなの記載が必須となる
- 【2025年5月頃〜】ふりがなに一定の基準が設けられる
- 【2025年5月頃〜】ふりがなの変更の手続きは家庭裁判所の許可が原則必要になる
- マイナンバーカードのローマ字表記記載も検討されている
- まとめ
- 勤怠管理を効率化する方法
- よくある質問
- 2024年3月施行の戸籍法改正による変更点は?
- 戸籍のふりがなが法制化されるのはいつから?
【2024年3月施行】戸籍法改正による変更点
今回の改正は、既存の戸籍副本データ管理システムに基づく新システムやマイナンバー制度を活用し、利便性向上に重点を置いた内容です。
2024年3月施行の改正戸籍法による主な変更点は、以下の3点です。
2024年施行の戸籍法改正による主な変更点
- 行政手続きにおいて戸籍謄抄本の提出が不要となる
- 戸籍の届出において戸籍謄抄本の提出が不要となる
- 本籍地以外で戸籍謄本の発行が可能となる
【2024年3月〜】行政手続きに戸籍謄抄本の提出が省略可能に
下図のように、申請先の行政機関と法務省(新システム)の間で情報照会が行われ、親子関係や婚姻関係などのデータを確認できるようになります。
戸籍謄抄本の省略対象となる手続きの例は、次の通りです。
省略対象となる戸籍謄抄本の手続きの例
- 児童扶養手当の支給事務における続柄・死亡の事実・婚姻歴の確認
- 国民年金の第3号被保険者の資格取得事務における婚姻歴の確認
- 奨学金の返還免除事務における死亡の事実の確認
- 健康保険の被扶養者の認定事務における続柄の確認
【2024年3月〜】戸籍の届出に戸籍謄抄本の提出が省略可能に
法務省の新システムによって、本籍地ではない市区町村で戸籍の情報を確認できるようになったためです。たとえば新婚旅行など思い出の場所で婚姻届を提出する場合、戸籍証明証等を用意しなくても届出を受理してもらえます。
【2024年3月〜】本籍地以外での戸籍謄本が発行可能に
広域交付で戸籍証明書等を取得できる範囲は、以下の通りです。
広域交付で戸籍証明書等を取得できる範囲
- 本人
- 配偶者
- 父母・祖父母など(直系尊属)
- 子・孫など(直系卑属)
広域交付を利用すれば、本籍地が遠方にあっても居住場所や勤務先の最寄りの窓口で請求手続きが可能です。また転籍や婚姻によって本籍地を変更している場合でも、1ヶ所の窓口でまとめて証明書を取得できます。
ただし請求から交付まで時間がかかる場合があり、即日の交付ができないケースも考えられるため、余裕をもって請求するとよいでしょう。
【2024年3月施行】戸籍法改正の背景となった課題
既存のシステムやネットワークなどを活用した取り組みでデジタル化を促進するなか、戸籍に関しては、次のような課題があります。
戸籍に関する課題
- 市区町村ごとにシステム構築しているため相互連携ができない
- 戸籍証明書等を請求する場合、本籍地の市区町村へ個別に申請する必要がある
【2024年3月施行】戸籍法改正の目的
たとえば相続手続きで出生から死亡までの戸籍証明書が必要なとき、従来の戸籍法では本籍地ごとに取得申請しなければなりませんでした。戸籍に関するルールは、手間や制約が多く、利用者にとって負担の大きい手続きでした。
本改正法の施行により戸籍証明書等の広域交付が導入されたことで、本籍地が遠方であっても複数であっても最寄りの窓口でまとめて手続きを完了できます。
2025年施行の改正戸籍法では戸籍の「ふりがな」が法制化される
2025年施行の改正戸籍法の主なポイントは、以下の通りです。
【2025年施行】改正戸籍法のポイント
- 戸籍にふりがなの記載が必須となる
- ふりがなに一定の基準が設けられる
- ふりがなの変更の手続きは家庭裁判所の許可が原則必要になる
- マイナンバーカードのローマ字表記記載も検討されている
【2025年5月頃〜】戸籍にふりがなの記載が必須となる
新生児の場合は、出生届に記載されたふりがなが戸籍にも反映されます。一方、すでに戸籍に氏名が記載されている方の場合は、以下の経過措置にしたがって記載する方針です。
すでに戸籍に記載されている方の場合
- 改正の施行日から1年以内に限り、戸籍の筆頭者は氏名、それ以外は名前のふりがなを届け出られる
- 戸籍の筆頭者が除籍されている場合は、第二順位の配偶者や第三順位の子が届け出られる
- 本籍地の市町村長は、施行日以後に住民基本台帳などで把握しているふりがなを通知する
- 届け出がない場合、本籍地の市町村長は把握しているふりがなを職権で戸籍に記載する
もし届け出をしなければ、現在、住民基本台帳などに記載されているふりがなが戸籍に記載されます。
【2025年5月頃〜】ふりがなに一定の基準が設けられる
氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない基準の詳細は今後法務省から通達される予定です。なお、法務省はすでに使っている氏名のふりがなは認める方針をとっています。
注意点は、新しく生まれてくる子どもの名前のふりがなをどこまで許容するかです。戸籍法の改正が可決された2023年6月時点では、以下のふりがなは許容しない方向が示されています。
許容しない方向のふりがな
- 漢字の意味と反対のふりがな
- 読み違いかどうか判断できないふりがな
- 漢字の意味や読み方から連想できないふりがな
なお、ふりがなは常用漢字表や辞書に掲載されていない読み方でも、届け出た方の説明を受けたうえで判断するとされています。これまでの日本の命名文化を踏まえた運用となる予定です。
【2025年5月頃〜】ふりがなの変更の手続きは家庭裁判所の許可が原則必要になる
なおすでに戸籍に記載されている方の経過措置として、一度のみ、家庭裁判所の許可がなくても届け出だけで変更が可能です。ただし、変更できるふりがなは、一般に認められる範囲内である点に注意してください。
マイナンバーカードのローマ字表記記載も検討されている
まとめ
また2025年に施行される改正戸籍法では、これまで記載されていなかった戸籍のふりがなの記載が必須となります。既存のふりがなは認められる方針ですが、新生児などの新たなふりがながどこまで認められるかは、今後の通達を待つ必要があります。
一方で、戸籍にふりがなが記載され、統一したふりがなが法制化されれば、行政のデジタル化にプラスの影響を与えるでしょう。戸籍法の改正は行政サービスの向上につながるメリットもある法改正です。
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よくある質問
2024年3月施行の戸籍法改正による変更点は?
戸籍法の改正内容を詳しく知りたい方は、「【2024年3月施行】戸籍法改正による変更点」をご覧ください。
戸籍のふりがなが法制化されるのはいつから?
戸籍のふりがなに関して詳しく知りたい方は「2025年施行の改正戸籍法では戸籍の「ふりがな」が法制化される」をご覧ください。
監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。