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外国人雇用で利用できる助成金ではいくらもらえる? 要件や支給額、注意点も解説

公開日:2023/07/31

監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

外国人雇用で利用できる助成金ではいくらもらえる? 要件や支給額、注意点も解説

雇用に関する助成金のうち、外国人を雇用する際にも利用できる制度があります。本記事では、外国人雇用で申請できる助成金に関して解説します。

外国人労働者を受け入れるには、外国人労働者が働くための環境の整備が必要です。そのため、新たな費用が発生する場合もあります。

外国人の雇用を検討している場合は、外国人雇用で利用できる助成金や支援制度を活用しましょう。

目次

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助成金と補助金の違い

助成金と補助金の大きな違いは、審査による採択の有無です。

一般的に、助成金は要件を満たせば受け取れる場合が多いです。一方で、補助金は採択件数や金額が決まっているため、審査で採択されなければ受給できません。

また助成金の主な管轄は厚生労働省で、補助金の主な管轄は経済産業省である点も異なります。

共通しているのは、助成金・補助金ともに「返済不要」「後払い」である点です。すぐに受け取れるわけではないため、申請は計画的に行いましょう。

外国人雇用で利用できる助成金

外国人を雇用した際に申請できる助成金を、5つ紹介します。

外国人雇用で利用できる助成金

● 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
● 雇用調整助成金
● キャリアアップ助成金(正社員化コース)
● トライアル雇用助成金
● 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
以下で、それぞれ詳しく解説します。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人雇用のために生じた経費の一部が支給されます。

対象となるのは、就労環境の整備や外国人労働者の職場定着に取り組むために生じた、以下の経費です。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) の支給対象経費

● 通訳費
● 翻訳機器導入費(上限10万円)
● 翻訳料
● 弁護士、社会保険労務士等への委託料(外国人労働者の就労環境整備措置に要する委託料に限る)
● 社内標識類の設置・改修費(多言語の標識類に限る)
なお助成金を受け取るためには、定められた取り組み内容を実施したうえで、目標を達成しなければなりません。

指定された取り組み内容は、下表の通りです。

取り組み内容条件
(1)雇用労務責任者の選定(1)・(2)は実施必須
(2)就業規則等の社内規定の多言語化
(3)苦情・相談体制の整備(3)・(4)・(5)のいずれかを実施
(4)一時帰国のための休暇制度の整備
(5)社内マニュアル・標識類等の多言語化


また、下記2点の目標を達成しなければなりません。

人材確保等支援助成金を受給するために達成すべき目標

● 計画期間の終了から1年経過するまでの間、外国人労働者の離職率が10%以下であること(※)
● 計画前の1年間と比較して、計画終了後1年間の日本人労働者の離職率が上昇していないこと
支給額は、賃金要件を満たすかどうかで異なります。

賃金要件支給額(上限額)
満たした場合支給対象経費×2/3(72万円)
満たしていない場合支給対象経費×1/2(57万円)


賃金要件とは、就労環境の整備措置を行った日の翌日から起算して1年以内に、外国人労働者に対する毎月の賃金が5%以上増加している場合、助成額が加算されるものです。

(※)外国人労働者数が2人以上10人以下の場合、1年経過後の外国人労働者の離職者数が1人以下であること

雇用調整助成金

雇用調整助成金は、経済上の理由で事業活動を縮小せざるを得なくなった事業主に支給される助成金です。一時的な休業や、教育訓練を実施した際の経費の一部が支給されます。

主な受給要件は、下記の通りです。

雇用調整助成金の主な支給要件

● 雇用保険の適用事業主である
● 最近3ヶ月の生産量・売上高などを示す指標が、前年同期より10%以上減少している
● 最近3ヶ月の月平均値の雇用指標が、前年同期より一定規模以上増えていない(※1)
● 実施する雇用調整(休業・教育訓練・出向など)が一定の基準を満たしている
● 過去に雇用調整助成金の支給を受けている場合、直前の対象期間の満了日の翌日から起算して1年を超えている(※2)
受給額は、事業主が負担した休業手当相当額、または賃金相当額に助成率を乗じて算出します。

区分支給額(対象労働者1人あたり上限8,355円)
中小企業休業手当相当額(賃金相当額)×2/3
中小企業以外休業手当相当額(賃金相当額)×1/2


さらに教育訓練を実施した場合は、1人1日あたり1,200円が加算されます。

(※1)中小企業の場合は10%超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%超えてかつ6人以上増えていないこと
(※2)新型コロナウイルス感染症の影響に伴う「雇用調整助成金(コロナ特例)」を受けた場合、当該特例にかかる対象期間内の最後の判定基礎期間末日(助成金が支給されたものに限る)の翌日から起算して1年を超えていること

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や、処遇改善を行った事業主に支給される助成金です。

正社員化コースでは、就業規則などに基づいて、有期雇用労働者や無期雇用労働者の正社員化を実施した場合に対象となります。

受給するには、事業主が下記の5点の要件を満たさなければなりません。

キャリアアップ助成金の事業主要件

● 雇用保険適用事務所の事業主である
● 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている
● 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けている
● 対象労働者の労働条件・勤務状況・賃金の支払状況などを明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにできる
● 計画期間内にキャリアアップに取り組んでいる
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」

また、下記の要件をすべて満たす労働者が対象です。

キャリアアップ助成金の労働者要件

● 有期雇用労働者または無期雇用労働者である
● 正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた有期雇用労働者等でないこと
● 正社員化の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所または資本的・経済的・組織的関連性からみて密接な関係の事業主において、正規雇用労働者として雇用されたことがある者、請負もしくは委任の関係にあった者または取締役、社員、監査役、協同組合等の社団もしくは財団の役員であった者でないこと
● 正社員化を行った適用事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること
● 支給申請日において、正社員化後の雇用区分の状態が継続し、離職していない者であること
● 支給申請日において、有期雇用労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていない者であること
● 正社員化後の雇用形態に定年制が適用される場合、正社員化日から定年までの期間が1年以上である者であること
● 支給対象事業主または密接な関係の事業主の事業所において定年を迎えた者でないこと
● 障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律施行規則に規定する就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」

支給額は下表の通り、雇用契約期間の有無や企業規模によって決まります。

雇用形態中小企業大企業
有期雇用労働者57万円42万7,500円
無期雇用労働者28万5,000円21万3,750円


さらに派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合や、対象者が母子(父子)家庭である場合など、措置内容によって加算額が上乗せされます。

気をつけたいのは、外国人技能実習生は帰国することが前提の制度のため、正社員化コースでは対象外となる点です。

その他在留資格の内容によって対象可否が異なるため、申請前に確認しておきましょう。

詳しくは「キャリアアップ助成金とは? 対象者や申請手順、注意点を最新動向とともに解説!」で解説しています。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、職業経験の不足などから就職が難しい求職者などを、期間限定で試行雇用した事業主へ支給されます。試行雇用によって、労使間のミスマッチを防ぎ、かつ無期雇用へのきっかけとすることが目的です。

主な受給要件は、下記の通りです。

トライアル雇用助成金の主な支給要件

● 原則3ヶ月のトライアル雇用(有期雇用)を実施する
● 事前にトライアル雇用求人をハローワーク・紹介事業者等に提出し、これらの紹介により雇う
● 1週間の所定労働時間が、原則として通常の労働者と同程度(30時間以上)である
● 紹介日の時点で、労働者が安定した職業に就いていない者である
● 労働者が「紹介日前2年以内に2回以上離職している」など所定の条件に該当する
原則、支給対象者1人に対して月額最大4万円が支給されます。

支給対象者が、母子家庭の母または父子家庭の父である場合、支給額は月額最大5万円です。そのほか、所定のケースに該当する場合は、実際に就労した日数などに応じて算出されます。

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、職業訓練などを計画的に実施した事業主に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が支給される助成金です。業務に関する知識の習得や、専門的スキルの向上を目的としています。

人材育成支援コースでの訓練は、大きく分けて3種類あります。

人材育成支援コースの訓練

● 人材育成訓練:職務に関連したスキルを習得させるためのOFF-JTを10時間以上行った場合に助成
● 認定実習併用職業訓練:厚生労働大臣の認定を受けている、OJTとOFF-JTを組み合わせた実習併用職業訓練を実施した場合に助成
● 有期実習型訓練:有期契約労働者などに対し、正規雇用への転換を目指すOFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を行った場合に助成)
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」

OFF-JTとは、企業の事業活動と区別して、業務遂行の過程外で行われる訓練です。OJTは、適格な指導者による、企業内の事業活動のなかで行われる実務を通じた訓練を指します。

各訓練の助成率・助成額は下表の通りです(※)。

支給対象訓練経費助成賃金助成OJT
実施助成
人材育成訓練雇用保険被保険者の場合45%
(30%)
760円
(380円)
有期契約労働者等の場合60%
有期契約労働者等から正規雇用労働者等へ転換した場合70%
認定実習併用職業訓練45%
(30%)
20万円
(11万円)
有期実習訓練有期契約労働者等の場合60%10万円
(9万円)
有期契約労働者等から正規雇用労働者等へ転換した場合70%
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」

さらに、賃金や資格手当の支払日翌日から5ヶ月以内に割増申請を行った場合、上記の助成率・助成額に上乗せ加算があります。

(※)()内は、中小企業以外の助成率および助成額

外国人雇用の支援制度

外国人雇用で利用できる支援制度を3つ紹介します。

外国人雇用で利用できる支援制度

● 外国人雇用管理アドバイザー制度
● 製造業外国人従業員受入事業
● 国際化促進インターンシップ事業
以下で、それぞれ詳しく解説します。

外国人雇用管理アドバイザー制度

外国人雇用管理アドバイザー制度は、厚生労働省が実施している制度です。

労働契約や職務配置、職場教育などの外国人雇用に関するさまざまな問題に対し、専門的知識を有するアドバイザーから指導を受けられます。

各都道府県労働局及びハローワークで相談申し込みを受け付けており、無料で利用できます。

製造業外国人従業員受入事業

製造業外国人従業員受入事業は、経済産業省が実施しています。国際競争力の強化と、国内製造業の工場が人件費の安い海外へ移転してしまうのを食い止めるために始まった制度です。

国内生産拠点と海外生産拠点の役割分担を図り、幅広い知識やノウハウを要する特定の専門技術を円滑に移転することを目指します。

製造業外国人従業員受入事業では、定められた期間のなかで、特定外国従業員(外国の事業所の職員)が日本の事業所で知識やノウハウを学ぶことが条件です。

国際化促進インターンシップ事業

国際化促進インターンシップ事業も、経済産業省が実施しています。中堅・中小企業で外国人財インターンを受け入れ、外国人材の活用を後押しする制度です。

国内留学生の対面参加型や、海外在住の人も対象となるオンライン参加型など、さまざまなインターンシップ方法があります。

ネットワークが不足しがちな中堅・中小企業が、外国人労働者と働く経験を得られ、外国人を雇うイメージができる機会を設けられます。

外国人雇用で助成金を利用する際の注意点

助成金の申請にあたって、外国人労働者の採用時に気をつけておくべき2つのポイントを解説します。

外国人雇用で助成金を利用する際の注意点

● 外国人労働者を雇う際、在留資格が就労可能か確認する
● ハローワークに外国人雇用状況の届出を行う
それぞれ、以下で詳しく解説します。

外国人労働者を雇う際、就労可能か確認する

外国人を雇用する際、雇おうとしている外国人が「就労可能か否か」という点は、必ず確認しましょう。

外国人は、入管法(出入国管理及び難民認定法)により、在留資格の範囲での就労が認められています。就労の可否は、在留カードやパスポートなどで確認できます。

外国人の在留資格は、全部で29種類です。キャリアアップ助成金などは、在留資格の種類によっては対象労働者に該当しない場合もあります。

確認を怠ると、不法就労に該当する外国人を雇ってしまう場合があるため注意が必要です。

外国人雇用状況の届出を行う

外国人労働者を雇ったら、外国人雇用状況の届出を忘れず提出しましょう。

労働施策総合推進法に基づき、外国人を雇用した事業主は、労働者の氏名や在留資格などをハローワークへ届け出なければなりません。

雇入れ時だけでなく、外国人労働者が離職する際にも手続きを行わなければなりません。

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まとめ

雇用関係助成金のなかには、外国人を雇用する際に申請できる制度があります。制度によって目的や要件が異なるため、申請を検討する場合は制度内容や支給要件の確認が必要です。

また、外国人労働者を雇うには、在留資格の確認や届出義務など、通常の雇用とは異なる注意点があります。外国人雇用に関して困った際は、政府の支援制度などを上手く活用しましょう。

よくある質問

外国人雇用で利用できる助成金は? いくらもらえる?

外国人雇用で利用できる助成金の代表的なものは、以下の通りです。

外国人雇用で利用できる助成金

● 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
● 雇用調整助成金
● キャリアアップ助成金(正社員化コース)
たとえば、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)で受け取れる金額は、以下の通りです。

人材確保等支援助成金で受け取れる金額

● 賃金要件を満たした場合:支給対象経費×2/3(上限額72万円)
● 賃金要件を満たしていない場合:支給対象経費の1/2(上限額57万円)
外国人雇用に関して支給される助成金を詳しく知りたい方は、「外国人雇用で利用できる助成金」をご覧ください。

外国人雇用で助成金を利用する際の注意点は?

外国人を雇う場合、雇用する外国人が就労可能であるかを確認しなければなりません。また実際に雇用、離職した際には、雇用状況の届出を行う義務があります。

外国人を雇う際に気をつけるべきポイントを詳しく知りたい方は、「外国人雇用で助成金を利用する際の注意点」をご覧ください。

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修者 羽場康高