監修 松浦絢子 弁護士
政府は、紙媒体で通知している書類の電子化を進めています。本記事では、「処分通知等の電子化」の概要や電子化を進める背景を解説します。
e-GovやjGrantsなど、すでに政府が運営する電子申請システムはありますが、馴染みがない人も多いのではないでしょうか。
デジタル庁は、行政手続きのデジタル完結を推進するなかで、デジタル手続法に定めている「処分通知等のデジタル化」に関する基本的な考え方を取りまとめました。
本記事では、処分通知等の電子化によってどのような影響があるのかも説明します。
目次
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処分通知等の電子化とは?
「処分通知等の電子化」とは、行政機関から出される許認可などに関する通知を、オンライン上で完結する仕組みです。
民間企業が、官公庁や自治体などの公共団体で発行される紙書類の電子化を支援するサービスを開始した例もあります。紙書類の電子化だけでなく、既設システムとの連携やマニュアル整備など、電子化に必要な過程全体をサポートするものです。
デジタル庁は短期的に取り得る手段として、具体的に次の手法を検討することを示しています。
処分通知等を電子化するための手法
● 既存の情報システムの利用● オンラインストレージの利用
● 電子メールの利用
電子署名が担うのは、文書作成者の証明や発行された通知処分などの完全性を担保する役割です。
また一概にすべてを電子化するのではなく、処分通知の件数や業務の効率性、コストなどのバランスを考慮することが必要だと考えられています。
既存の情報システムの利用
「申請などに基づく処分通知等」であり、すでに電子申請や通知機能をもつ情報システムがある場合、既存のシステムを利用して電子化を進めることを検討しています。
政府が運営する既存システムとして、代表的なものは以下の通りです。
政府が運営する既存情報システム
● e-Gov● jGrants(補助金の電子申請システム)
● マイナポータルの「お知らせ機能」
マイナポータルには「お知らせ機能」があり、年金関係や確定申告など行政機関からの通知をパソコンやスマートフォンで確認できます。
オンラインストレージの利用
手作業での対応が可能な規模の処理件数であり、かつ処分通知の内容が要機密情報である場合は、オンラインストレージを活用します。
処分通知等を電子ファイル化し、オンラインストレージ上から閲覧またはダウンロードできる仕組みです。ID・パスワードの認証により、機密性の保持が可能になります。
電子メールの利用
手作業での対応が可能な規模で、要機密情報でない場合には、電子メールの利用が可能です。要機密情報の場合は、利便性や事務処理負担を考慮したうえで許容できるかどうかを判断します。
なお、申請時などに処分通知等を受ける人の同意を得なければなりません。同意があれば、到達可能なメールアドレスを取得し、電子メールでの処分通知等を行います。
さらに電子メールの盗聴リスクを踏まえ、場合によっては暗号化といった情報漏えい対策を実施します。
そもそも行政の「処分通知等」とは?
処分通知とは、行政機関から発出される許認可などの書面です。
行政の「処分」とは「役所の行為によって、国民に義務を課したり権利を付与したりするような、国民の権利や義務に直接的に影響を及ぼすことが法律的に認められているもの」をさします。
処分通知は、大きく分けると以下の2種類です。
処分通知の種類
● 申請等に基づく処分通知など(道路占用許可申請に対する許可・不許可など)● 申請等に基づかない処分通知など(許認可の取り消しや業務停止命令等など)
一方、申請に基づかない処分通知等は、不利益処分に該当するものや、デジタルデバイド(情報格差)が想定される個人へ送付されるものが含まれます。
多くの人の生活にパソコンやスマートフォンが浸透しているとはいえ、すべてを即時に電子化するのは困難でしょう。
処分通知等の電子化が進められた背景
政府は1990年代後半のIT革命以降、長い年月をかけて電子政府・電子自治体を推進してきました。
しかし、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大では、定額給付金申請などに関して、電子化の仕組みが十分でないことが顕在化しました。
そしてコロナ禍以降、IT基本法の全面的な見直しや、社会全体の電子化に向けてさまざまな取り組みがスタートしています。
デジタル手続法では、行政手続きのオンライン実施が原則となりましたが、実際は実施率がなかなか伸びていない点が課題です。
デジタル庁は、処分通知などの電子化にかかる「デジタル改革に向けたマルチステークホルダーモデル(MSM)」を運用し、「処分通知等のデジタル化に向けた提言書」の提出を受けました。
提言書などをもとに、処分通知などのデジタル化に関する基本的な考え方を整理し、さらなる電子化の推進に力を入れています。
各府省庁で原則として、すべての申請などを2025年末までに電子化することを目指しています。
処分通知等の電子化の影響
処分通知等の電子化によって個人や企業に対して考えられる影響は、主に次の通りです。
処分通知等の電子化によるメリット
● 利便性や生産性の向上● 社会全体の効率化
● コスト抑制
メリット例
● 書類の郵送にかかる手間やコストを減らせる(ペーパー・印鑑レス)● 受け取りに出向くための時間的な制約がなくなる
上記のメリット以外に、窓口まで足を運ばないことで「自動車などの利用によるCO2の削減」にも寄与すると考えられます。
まとめ
政府は、処分通知等の電子化を推進しています。デジタル手続法で、行政手続きのオンライン実施が原則となりましたが、実際の実施率は低水準です。
政府によると、提言書などをもとに基本的な考え方を整理し、2025年を目処に原則すべての申請などに関して電子化を目指しています。
処分通知等が電子化されれば、個人や法人にとって生産性の向上につながるでしょう。
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よくある質問
処分通知等の電子化とは?
行政機関による許認可などに関する通知を、オンライン上で完結する仕組みです。
処分通知書の電子化を詳しく知りたい方は、「処分通知等の電子化とは?」をご覧ください。
処分通知等の電子化が進められた背景とは?
新型コロナウイルス感染症拡大によって、電子化の課題が顕在化しました。そして、コロナ禍以降、IT基本法の全面的な見直しや、社会全体の電子化に向けてさまざまな取り組みがスタートしています。
電子化が進む背景を知りたい方は、「処分通知等の電子化が進められた背景」をご覧ください。
監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。