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企業版ふるさと納税とは? 企業として活用するメリットや事例を紹介

監修 西村 真衣 税理士

企業版ふるさと納税とは? 企業として活用するメリットや事例を紹介

企業版ふるさと納税は、国が認定した地方公共団体に企業が寄付をすると、税負担の軽減が受けられる制度です。

損金算入と税額控除を合わせると、最大で寄付額の約9割の金額の税負担の軽減が可能です。税負担の軽減のほか、企業価値の向上、地方公共団体との関係構築などのメリットも期待でき、近年は年々寄付件数が増加しています。

本記事では、企業版ふるさと納税のメリットや事例を紹介します。企業版ふるさと納税を理解して、企業としての制度活用の検討に役立てましょう。

目次

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企業版ふるさと納税とは

企業版ふるさと納税は、国が認定した地方公共団体(自治体)に企業が寄付をすると、法人関係税から税額控除が受けられる制度です。

企業版ふるさと納税で寄付をすると、法人関係税の企業負担は約1割まで圧縮されます。損金算入による軽減効果(寄付額の約3割)に加えて、2020年4月の税制改正で拡充された税額控除(寄付額の最大6割)を合わせると、最大で寄付額の約9割が軽減される形です。

令和2年度税制改正で企業版ふるさと納税の期限は5年間延長されていて、2024年度末を期限とする特別措置となっています。


出典:内閣府「企業版ふるさと納税をぜひご活用ください!(広報・報道)」
出典:内閣官房・内閣府 総合サイト地方創生「企業版ふるさと納税の拡充・延長」

年度別の寄付実績の推移

内閣府の資料によると、企業版ふるさと納税の年度別の寄付実績は次の通りです。2023年度 で14,022 件の寄付実績があり、2019年度以降は年々件数・寄付額が増加しています。

(単位:件、百万円、社、団体)

年度寄付件数寄付額寄付企業数寄付活用団体数
単年度累計
2016年度 517件747万円459社118団体118団体
2017年度 1,254件2,355万円1,112社253団体268団体
2018年度 1,359件3,475万円1,138社287団体339団体
2019年度 1,327件3,380万円1,117社293団体399団体
2020年度 2,249件11,011万円1,640社533団体641団体
2021年度 4,922件22,575万円3,098社956団体1,028団体
2022年度 8,390件34,107万円4,663社1,276団体1,361団体
2023年度 14,022件46,999万円7,680社1,462団体1,536団体
合計 34,040件124,648万円20,907社
出典:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 内閣府地方創生推進事務局「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の令和5年度寄附実績について(概要)」

企業版ふるさと納税(人材派遣型)もある

企業版ふるさと納税
出典:内閣官房・内閣府 総合サイト地方創生「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」

企業版ふるさと納税(人材派遣型)とは、企業版ふるさと納税による寄付をした年度に、企業の人材が以下のように任命・採用される場合のことをいいます。

企業版ふるさと納税(人材派遣型)に該当するケース

  • 寄付活用事業に従事する地方公共団体の職員として任用される
  • 地域活性化事業を行う団体などで、寄付活用事業に関与するものに採用される

これにより、企業側は最大約9割の税の軽減ができ、企業のノウハウの活用による地域貢献ができます。人材育成の機会になる点もメリットのひとつです。

地方公共団体側は、専門的知識・ノウハウを有する人材を実質的に人件費を負担することなく受け入れることができ、プロジェクトの取り組みをより一層強化できます。


出典:内閣官房・内閣府 総合サイト地方創生「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」

企業版ふるさと納税のメリット

企業版ふるさと納税で寄付をすることで、税負担が軽減できるだけでなく、企業価値の向上、地方公共団体との信頼関係の構築など幅広いメリットがあります。

企業版ふるさと納税のメリット

  • 社会貢献を通じた企業価値の向上
  • 地方公共団体との信頼関係の構築
  • 地域資源の活用による事業機会の創出

出典:内閣官房 デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 内閣府 地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)について」

社会貢献を通じた企業価値の向上

被災地の復興支援や、地域への恩返しなど、企業として地域課題への貢献が可能です。社会的責任(CSR)を果たす姿勢は、顧客や取引先からの信頼獲得や、企業価値を高めることにつながります。

また、従業員としても、社会課題の解決に取り組む企業に所属することが、自社への誇りやモチベーションアップにつながると考えられます。

地方公共団体との信頼関係の構築

寄付を通じてコミュニケーションの機会が生まれることで、地方公共団体との信頼関係が構築でき、事業に関わる相談もしやすくなります。また、寄付活用事業によっては、学校法人やNPO法人などとの関係構築ができる場合もあります。

地域資源の活用による事業機会の創出

寄付活用事業によっては、以下のように企業版ふるさと納税を通じた地域への貢献を、自社の利益につなげることが可能です。地域に根差した事業活動を、より一層強化できます。

以下は地域資源の活用によって事業機会を創出する例です。

地域資源の活用による事業機会の創出例

  • 原材料の生産を促進して原材料確保につなげる
  • 地方公共団体の観光事業を後押しして自社の観光業の利益につなげる
  • 人材育成事業を推進することで将来的な人材確保につなげる

企業版ふるさと納税の活用事例

内閣府地方創生推進事務局による「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰」受賞事例の紹介資料をもとに、企業版ふるさと納税の活用事例をいくつか解説します。

埼玉県深谷市|郷土の偉人渋沢栄一顕彰×継承プロジェクト

項目内容
総事業費 833,079千円
事業期間 2019年7月~2023年3月
本事業への寄付累計額 55,400千円
寄附企業 関東総合輸送㈱、㈱特殊衣料、湯本内装㈱、㈱LIXIL ほか9社(※五十音順)

深谷市出身の渋沢栄一ゆかりの施設を整備し、観光資源として活用して、観光振興・地域の活性化を図ったプロジェクトです。

渋沢栄一が設立に尽力した企業・産業の企画展、ゆかりの地を巡るツアー・スタンプラリーなどを実施する「渋沢栄一顕彰事業」や、渋沢栄一ゆかりの施設である「中の家」主屋の耐震改修工事をして見学可能にする「旧渋沢邸「中の家」整備事業」が実施されました。

結果として、企画展には10万人以上が来場し、「中の家」は実際に見学可能な状態に整備されました。今後は観光資源の磨き上げや企業とのさらなる連携が継続して実施される展望となっています。


出典:内閣府 地方創生推進事務局「令和2年度企業版ふるさと納税に係る大臣表彰 制度の概要と表彰事例のご紹介」

茨城県境町|「河岸のまちさかい」復興プロジェクト

項目内容
総事業費97万5,000千円
事業期間2016年11月~2020年3月
寄付額2016年度: 7万7,000千円、2017年度: 13万2,600千円、2018年度: 30万4,900千円、2019年度: 32万9,100千円
合計額: 84万3,600千円
2017年度: 13万2,600千円㈱アーキビジョン21、㈱アーネストワン、小松マテーレ㈱、㈱THパートナーズ、㈱山崎煙火製造所、ロイヤル化粧品㈱ など(※五十音順)

茨城県境町は、将来負担比率184.1%と県内でもっとも厳しい財政状況に加え、人口も減少の一途をたどるなど地域活力の低下が課題となっていました。

地域活性化に向けて、「文化村」各施設のリノベーション事業、寄付企業と関係の深いホノルル市との友好都市協定による観光推進事業、空き家・空き店舗の再生活用事業などに、寄付金・交付金が活用されました。

プロジェクトにより、ホノルル市との民間交流、町をPRするワイキキビーチでの花火大会や「境町ウィーク」の継続開催による交流人口の増加などが実現されています。

企業と緊密な関係をもとに官民共同で取り組みが進められ、2017年度には前年度比で人口が増加、財政状況も改善傾向が見られるなど成果が現れています。


出典:内閣府 地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰式~制度の概要と表彰事例のご紹介~」

鹿児島県大崎町|大崎町SDGs推進事業

項目内容
総事業費100万0,000千円
事業期間2020年度~2023年度
本事業への寄付累計額32万9,490千円
寄付企業コーユーレンティア㈱、㈱東条設計、㈱日橋コンサルタント、㈱久永、ヤフー㈱、㈱リック ほか4社(※五十音順)

大崎町は、日本一のリサイクル率を誇る実績を基に、SDGs達成と地域課題解決を目指して「大崎町SDGs推進協議会」を設立しました。研究・開発、人材育成、情報発信を柱に、企業や研究機関と連携し、環境負荷低減や教育活動を展開しています。

寄付を活用した事業では、「リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ」のスローガンに基づくビジョンを掲げ、官民連携の体制を構築しました。

また、200以上の企業・研究機関と連携を開始し、共同プロジェクトや中学生向けSDGs授業を実施し、寄付企業とのオンライントークイベントも開催されています。

以降は国内外への取組展開や脱炭素化促進に注力し、商品や仕組みの開発を通じて農業・製造業・物流業・研究者と協力した活動を推進する展望です。


出典:内閣府 地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰式 ~制度の概要と表彰事例のご紹介~(令和3年度)」

まとめ

企業版ふるさと納税は、国が認定した地方公共団体の地方創生事業に対し、企業が寄付をした場合、法人税などから最大で約9割の税額を軽減する制度です。2019年度以降は年々件数・寄付額が増加しています。

企業にとっては、税負担の軽減のほか、企業価値の向上、地方公共団体との信頼構築、地域資源の活用による事業機会の創出などもメリットです。

全国でも地方創生を実現する取り組みが多数出てきています。ぜひ、企業版ふるさと納税のメリットや具体的な事例のイメージを知って、制度の活用を検討しましょう。

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よくある質問

企業版ふるさと納税を行うとどんな還元を受けられる?

企業版ふるさと納税を行うと、寄付をした地域への貢献を果たしながら、寄付金額の最大9割にあたる税負担の軽減が受けられます。

詳しくは「企業版ふるさと納税とは」をご覧ください。

企業版ふるさと納税をするメリットは?

社会貢献を通じた企業価値の向上、地方公共団体との信頼関係の構築、地域資源の活用による事業機会の創出などが企業版ふるさと納税のメリットとして挙げられます。

詳しくは「企業版ふるさと納税のメリット」をご覧ください。

監修 西村 真衣(にしむら まい) 税理士

父も祖父も税理士という家系に長女として生まれる。実家は60年続く税理士事務所。学生結婚し、子供を授かるも、母、妻、娘の役割以外に、自分の人生も生きていきたいと2人の子供を育てながら税理士試験に合格する。自身も経営者の立場を経験しない事には、お客様の気持ちに真に寄り添うことはできないと感じ、実家の税理士事務所とは別に2021年に西村税理士事務所を開業。現在は、女性起業支援を中心に活動している。

監修者 西村 真衣