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カムバック制度とは? 導入するメリット・デメリットや手順を解説!

監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP

カムバック制度とは? 導入するメリット・デメリットや手順を解説!

カムバック制度とは、退職した従業員が復職を希望した場合に、再度自社で雇用する制度です。

働き方改革が推進されるなかで、カムバック制度を導入する企業が増えています。カムバック制度を導入すれば、コスト削減や即戦力の確保、企業イメージアップなどが期待できます。

本記事では、カムバック制度の概要や目的、メリットデメリットをまとめました。

また記事後半では、カムバック制度導入の流れもわかりやすく解説しています。カムバック制度について詳しく知りたい人事担当者は、ぜひ参考にしてください。

目次

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カムバック制度とは

カムバック制度とは、一度退職した従業員が復職を希望した場合に、再度自社で雇用する制度です。

近年、退職した従業員に戻ってきてもらい、経験や技能を活かすことを目的に、カムバック制度を導入する企業が増えています。

「ジョブリターン制度」や「キャリア・カムバック制度」「アルムナイ制度」と呼ばれる場合もあり、企業によって名称はさまざまです(※)。

(※)「アルムナイ」とは、「卒業生」や「OB/OG」を指す言葉です。

カムバック制度の目的と適用範囲

カムバック制度の目的は、やむを得ない事情で退職した従業員が復職できる状況を作り、再び経験や知識を活用できるようにすることです。

日本では、多様な働き方を選択できる社会を実現するために、政府主導のもと「働き方改革」が推進されています。しかし、育児や介護を理由に退職せざるを得ない人は少なくありません。

厚生労働省によると、第1子出産後の就業継続率は上昇を続けていますが、23.6%の人は出産を機に退職しています。また、介護・看護を理由に退職する人は年間約9.5万人です。

カムバック制度があれば、このようにやむを得ない事情で退職した従業員の活躍の場が、より増えていくでしょう。

カムバック制度の対象者や雇用条件は、企業によってさまざまです。一般的には、結婚・育児・介護・学業・キャリアアップを目的に退職した従業員が対象です。

ただし、近年は転職が珍しくなくなっていることや、デジタル化によって働き方が多様化しています。そのため退職理由を限定せず、意欲のある従業員を幅広く応募対象としている企業も増えています。

カムバック制度のメリット

カムバック制度の導入には、人材確保やコスト面などさまざまな効果が期待できます。企業がカムバック制度を導入する主なメリットは、以下の通りです。

カムバック制度を導入するメリット

● 即戦力のある人材を確保できる
● 採用や教育コストを削減できる
● 雇用後のミスマッチを防げる
● 企業のイメージアップにつながる

即戦力のある人材を確保できる

カムバック制度で再雇用した従業員には、早い段階での活躍が期待できます。

再雇用する従業員は一度自社で働いていたため、業界や業務への知識・経験を身に付けています。社風・社内ルール・システム・業務に用いるツールもある程度理解しているでしょう。

また、外部で培った経験やスキルを活かしてもらえば、新たなイノベーションにつながる可能性も期待できます。

厚生労働省の調査から、再雇用制度を設けている企業の多くが、さまざまな面で効果を感じていることがわかります。

再雇用制度のメリットや効果割合(複数回答)
退職前に培った業務経験を活かして働いてもらうことができる78.7%
不足した人材を確保することができる60.2%
会社への愛着を持った人を雇用することができる50.9%
教育コストを抑えることができる35.2%
退職前の人脈を活かして働いてもらうことができる25.0%
出典:厚生労働省「女性の再就職・再雇用」
(※)厚生労働省が出産や育児等で離職した女性を再雇用する制度を設けている企業を対象に行った調査です。

採用や教育コストを削減できる

カムバック制度では、自社で働いた経験のある従業員を再雇用するため、求人サイトに出稿する広告料などの採用コストを削減できます。採用プロセスが少なくなり、採用までの期間も短縮できるでしょう。

また、復職する従業員は社内ルール・システム・業務もある程度理解しているため、比較的教育・研修コストも抑えられます。

雇用後のミスマッチを防げる

カムバック制度を導入して一度自社で働いた経験のある従業員を再雇用すれば、雇用後のミスマッチも防げるでしょう。

厚生労働省と民間事業所の調査によると、転職経験者のうち転職後にギャップを感じた人は半数を超える結果でした。

区分(直前の状況)ギャップを感じた人の割合
正規61.2%
非正規58.0%
無業51.2%
出典:厚生労働省「中途採用を通じたマッチングを促進していくための企業の情報公表の在り方等、諸課題に関する調査研究」

また、ギャップを感じた人の約7割が満足度や意欲の低下、離転職のきっかけへの影響を受けています。

カムバック制度では、再雇用する従業員の人となりや適正がある程度把握できるため、ミスマッチが起きにくいと考えられます。慣れ親しんだ企業で働けるのは、復職する従業員にとっても安心感につながるでしょう。

企業のイメージアップにつながる

働き方改革が推進され、ワークライフバランスの実現に向けた取り組みが求められます。そのなかで、カムバック制度の導入は社外へのアピールにもなります。

企業のイメージアップにつながれば、人材確保力の強化や業績向上、企業の成長も期待できるでしょう。

カムバック制度のデメリット

一方、カムバック制度には注意点もあります。制度の導入を検討する際は、以下の点も考慮しましょう。

カムバック制度のデメリット

● 既存の従業員が不満を感じる可能性がある
● 復職した従業員間で不公平感が生まれる可能性がある
● 安易な退職につながる可能性がある

既存の従業員が不満を感じる可能性がある

カムバック制度によって一度退職した従業員が好待遇で再雇用されると、既存の従業員が不満を感じる可能性があります。

既存の従業員のモチベーションが下がれば、生産性が低下するだけでなく、離職にもつながりかねません。復職した従業員が既存従業員との間で良好な関係を構築できず、職場に居づらくなる可能性もあるでしょう。

カムバック制度を導入する際は、要件や再雇用後の処遇を明確に決める、従業員の制度への理解を深めるなどの対策が必要です。

復職した従業員間で不公平感が生まれる可能性がある

復職後の処遇に差があると、カムバック制度を利用して復職した従業員同士で、不公平感が生じる可能性があります。

従業員が復職する際は、復職前に面談を設けて、従業員が納得できるまで説明することが重要です。また 復職後の配置は、職場の状況や退職前の業務経験に加え、本人の希望も配慮しながら検討しましょう。

安易な退職につながる可能性がある

カムバック制度は、一度退職した会社に戻れる仕組みであるため、従業員による安易な退職を招きかねません。

事業主には、従業員が安心して働き続けられるような職場環境づくりの整備が求められます。

働きやすい職場環境づくりの例

● 本人の希望に応じてスキルや知識を習得できる研修の実施
● 本人の希望を尊重した配置
● メンターによる相談
● 経営情報の開示
また「やむを得ない事情で退職した従業員のみを対象とする」「勤続年数を制限する」などの方法で、制度対象者の範囲を限定するのも手段のひとつです。

カムバック制度を導入する際の手順

カムバック制度を導入する際の一般的な流れは、以下の通りです。

カムバック制度の導入手順

1 対象者を決める
2 再雇用後の労働条件を決める
3 就業規則に明記する
4 制度を従業員に周知する
5 復職者への面談や情報提供を行う

1 対象者を決める

最初に、カムバック制度を利用できる従業員の範囲を定めます。

カムバック制度の対象者を決める基準

● 離職理由
● 離職時の勤続年数
● 離職時の雇用形態
● 退職後の経過年数
● 年齢
● 制度の利用回数 ほか
すべて設定する必要はありませんが、退職した元従業員や既存の従業員が安心して働けるよう具体的に定めましょう。

なお、カムバック制度は会社の任意制度のため、会社は離職理由ごとに対象者の範囲を自由に決定できます。

2 再雇用後の労働条件を決める

次に、再雇用後の労働条件を決めます。再雇用した従業員同士の不公平感や既存の従業員の不満をなくすためにも、明確に決めておきましょう。

再雇用後の労働条件の例

● 雇用形態(正社員、契約社員など)
● 職位
● 勤務形態(短時間勤務、短日勤務など)
● 試用期間の有無 ほか
応募要項には、面接・面談の流れや、選考の結果再雇用できない可能性がある旨も明記します。

特に、カムバック制度は再雇用を確約するものではありません。したがって、その時の経営状況や人員状況により、選考にすら至らない可能性があることに留意する必要があります。

3 就業規則に明記する

カムバック制度の内容を就業規則に明記します。

就業規則に明記する内容の例

● 応募要件
● 制度利用の手続き方法
● 再雇用後の処遇 ほか
就業規則を変更した際は、一定の従業員数を超えている事業所においては、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見書を添えて、提出しましょう。

4 制度を従業員に周知する

カムバック制度を効果的に運用するために、従業員への周知を行いましょう。

変更した就業規則は、各労働者への配布・各職場への提示などの方法で、従業員に周知しなければなりません(労働基準法第106条)。具体的には、以下のような方法で周知するとされています。

従業員への周知方法の例

● 従業員一人ひとりに配布する
● 従業員一人ひとりが必要なときに見られるような場所に提示する
● 従業員一人ひとりがモニター画面で常時確認できるようにする
すべての従業員へ周知することで、カムバック制度を使用しない従業員の理解も得られやすくなるでしょう。

5 復職者への面談や情報提供を行う

カムバック制度を利用する従業員が安心して復職できるように、復職前に面談や情報提供、研修も行います。

面談や研修の日時は、小さい子どもがいるなど従業員の状況を踏まえて検討しましょう。相談しやすい窓口を設置するなど、復職後のフォローも必要です。

また、制度を効果的に進めていくには、制度登録者の復職へのモチベーションを維持する取り組みも重要です。たとえば、登録者に社内報を送る、企業情報メールを送付するなどの方法が考えられます。

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まとめ

カムバック制度とは、一度退職した従業員を再度自社で雇用する制度です。企業によって異なりますが、育児・介護が理由で退職した従業員や、キャリアアップを目的に退職した従業員などが利用できます。

カムバック制度を導入するメリットは、採用・教育コストの削減や即戦力の確保が図れることです。社外へアピールできるため、企業のイメージアップにもつながるでしょう。

一方、既存の従業員から不満が出たり、制度を利用した従業員間で不公平感が生じたりする可能性があります。

制度の概要を正しく把握し、メリット・デメリットを踏まえて導入を検討しましょう。

よくある質問

カムバック制度とは?

カムバック制度とは、一度退職した従業員が復職を希望した場合に、自社に戻ってきてもらう制度です。カムバック制度の対象者や雇用条件は、企業によって異なります。

カムバック制度の概要を詳しく知りたい方は「カムバック制度とは」をご覧ください。

カムバック制度のメリットは?

カムバック制度を導入し、自社で働いた経験のある従業員を再雇用すれば、即戦力の確保や、採用・教育コスト削減が期待できます。

カムバック制度を導入するメリット

● 即戦力のある人材を確保できる
● 採用や教育コストを削減できる
● 雇用後のミスマッチを防げる
● 企業のイメージアップにつながる
カムバック制度のメリットを詳しく知りたい方は「カムバック制度のメリット」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史