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【令和5年版】業務改善助成金とは?要件や最新の拡充内容をわかりやすく解説

監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP

【令和5年版】業務改善助成金とは?要件や最新の拡充内容をわかりやすく解説

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内最低賃金を引き上げるための助成制度です。

生産性向上に関する設備投資と最低賃金の引き上げを実施した場合に、設備投資にかかった費用の一部を助成してもらえます。

令和5年8月には業務改善助成金が拡充され、より利用しやすくなりました。

本記事では、業務改善補助金の要件助成額最新の拡充内容を詳しく解説します。

目次

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業務改善助成金とは?

業務改善助成金とは?

出典:厚生労働省「業務改善助成金」

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援するための助成制度です。「生産性向上に資する設備投資等」とあわせて「事業場内最低賃金の引き上げ」を行った際、費用の一部を助成してもらえます。

なお、業務改善助成金制度では新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者を対象とした「特例コース」も実施されていました。ただし、特例コースは令和5年1月31日で受付を終了しています。

業務改善助成金の対象要件

業務改善助成金の対象要件

出典:厚生労働省「業務改善助成金」

助成の対象となるのは、以下3つの要件を満たす事業所です。

業務改善助成金の対象要件

1 中小企業・小規模事業者である
2 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内である(※)
3 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がない
(※)事業場内最低賃金は「事業場でもっとも低い時間給」、地域別最低賃金は「国が毎年10月頃に改定する都道府県単位の最低賃金額」を指します。

「中小企業・小規模事業者」とは、資本金または出資額、もしくは常時使用する労働者数の要件を満たす以下の事業所を指します。

業種A 資本金または出資額B 常時使用する労働者
小売業小売業、飲食店など5,000万円以下50人以下
サービス業物品賃貸業、宿泊業、医療、福祉、複合サービス事業など5,000万円以下100人以下
卸売業卸売業1億円以下100人以下
その他農業、林業、漁業、建設業、製造業、運輸業、金融業など3億円以下300人以下
出典:厚生労働省「業務改善助成金」

助成の対象となる設備投資等は、「生産性向上に資する設備投資等」です。

生産性向上に資する設備投資等の例

● 機器・設備の導入
● 経営コンサルティング
● 人材育成・教育訓練
個人事業主が利用できるほかの助成金・補助金を知りたい方は、「個人事業主が活用できる給付金や助成金・補助金を紹介!申請時のポイントも解説」をご覧ください。

特例事業者の要件

業務改善助成金制度では、「特例事業者」として認定される条件があります。「賃金」「生産量」「物価高騰等」の3つの要件を満たすと、特例事業者として助成上限額・助成対象経費の拡大が受けられます。

区分要件
1 賃金要件事業場内最低賃金が950円未満である
2 生産量要件新型コロナウイルス感染症の影響で、売上高や生産量等の直近3ヶ月間の月平均値が、前年~3年前同期に比べて15%以上減少している
3 物価高騰等要件社会的・経済的慣行の変化等(原材料費の高騰など)が理由で、申請前3ヶ月間のうち任意の1ヶ月の利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が、前年同期に比べて3%ポイント以上低下している
出典:厚生労働省「業務改善助成金」

要件①を満たす場合は「助成上限額の拡大」、要件②・③を満たす場合は「助成上限額の拡大」に加えて「助成対象経費の拡大」の対象となります。

「助成対象経費の拡大」の要件を満たす場合は、通常助成対象の経費として認められないパソコンや一部の自動車も助成の対象です。

また、生産性向上のための設備投資等に「関連する経費」に関しても、設備投資等の額を上回らない範囲で助成が受けられます。

区分内容一般事業者特例事業者(生産量要件と物価高騰等要件を満たす場合)
生産性向上のための設備投資等● 機器・設備の導入
● 経営コンサルティング
● 人材育成・教育訓練など
パソコンや一部の自動車● 定員7人以上または車両本体価格200万円以下の乗用自動車や貨物自動車
● PC、スマホ、タブレットなどの端末と周辺機器の新規導入
×
生産性向上のための設備投資等に「関連する経費」● 広告宣伝費
● 改築費
● 汎用事務機器や什器備品の購入など
×
出典:厚生労働省「令和5年度業務改善助成金のご案内」

業務改善助成金の助成額

業務改善助成金の助成額は、生産性向上のための設備投資等にかかった費用に、一定の助成率をかけた金額です。

助成額=設備投資等に要した費用×助成率
助成率は、事業場内最低賃金額に応じて決まります。

事業場内最低賃金額助成率
900円未満9/10
900円以上950円未満4/5
生産性要件を満たした事業場は9/10(※1)
950円以上3/4
生産性要件を満たした事業場は4/5(※1)
出典:厚生労働省「令和5年度業務改善助成金のご案内」

ただし、事業場内最低賃金の引き上げ額や引き上げる労働者数、事業場規模に応じて、助成額に上限が設けられています。

コース区分事業場内最低賃金の引き上げ額引き上げる労働者数助成上限額
右記以外の事業者事業場規模30人未満の事業者
30円コース30円以上1人30万円60万円
2~3人50万円90万円
4~6人70万円100万円
7人以上100万円120万円
10人以上(※2)120万円130万円
45円コース45円以上1人45万円80万円
2~3人70万円110万円
4~6人100万円140万円
7人以上150万円160万円
10人以上(※2)180万円180万円
60円コース60円以上1人60万円110万円
2~3人90万円160万円
4~6人150万円190万円
7人以上230万円230万円
10人以上(※2)300万円300万円
90円コース90円以上1人90万円170万円
2~3人150万円240万円
4~6人270万円290万円
7人以上450万円450万円
10人以上(※2)600万円600万円
出典:厚生労働省「令和5年度業務改善助成金のご案内」
(※1)特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合が対象です。
(※2)「生産性要件算定シート」を用いて計算された生産性の伸び率が一定以上の事業所は、助成の割増が適用されます。なお、生産性要件算定シートは、厚生労働省ホームページにてダウンロードできます。

以下のケースを例に、助成額を計算してみましょう。

助成額計算の一例

● 設備投資にかかった費用:500万円
● 事業場内最低賃金:898円
● 事業場内最低賃金の引き上げ:7人の労働者を958円まで引き上げ
上記例の場合、助成上限額は230万円です。助成額を計算してみると、500万円×9/10=450万円となります。助成額>助成上限額となるので、支給金額は230万円です。

ただし、最低賃金を無闇に引き上げると、後で思わぬ財務影響を受けかねないため、注意が必要です。最低賃金の引上げを検討する際は、全体の職位と時給を考慮し、一部の従業員に不利益が生じないよう慎重に進めましょう。

【令和5年度】業務改善助成金の拡充ポイント

令和5年8月31日に業務改善助成金が拡充され、従来よりも利用しやすくなりました。拡充ポイントは大きく3つです。

業務改善助成金の3つの拡充ポイント

1 対象事業所が拡大された
2 賃金引き上げ後の申請が可能になった
3 助成率区分が見直された
従来は、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が「30円以内」の事業所が助成対象でした。しかし「50円以内」の事業所に対象が拡大され、差額が30円超50円以内の事業所も含まれるようになりました。これにより多くの事業所が助成対象となり得ます。

また、事業場規模50人未満の事業者は、賃金引き上げ後の申請ができるようになりました。本来は、事前に「賃金引き上げ計画」と「事業実施計画(設備投資等の計画)」を提出して審査を受けなくてはなりません。

しかし、拡充対象の事業者は、対象期間に賃上げを実施していれば、事前に賃金引き上げ計画を提出する必要がありません。ただし、「賃金引き上げ結果」と「事業実施計画」の提出は必要です。

【令和5年度】業務改善助成金の拡充ポイント

出典:厚生労働省「業務改善助成金」

さらに、拡充によって事業場内最低賃金に応じた助成率の区分が30円引き上げとなりました。

業務改善助成金を利用する際の注意点

業務改善助成金の利用に際して、知っておきたい注意点を解説します。

業務改善助成金を利用する際の注意点

● 申告期限より前に募集が終了する可能性がある
● 交付決定前の設備投資は助成の対象にならない
● 賃金引き上げは地域別最低賃金の発効日の前日までに行う

申請期限より前に募集が終了する可能性がある

業務改善助成金制度による助成は予算の範囲で行われるため、申請期限より前に募集が終了する可能性があります。

なお、令和5年交付分の申請期限・事業完了期限はそれぞれ以下の通りです。

申請期限令和6年1月31日
事業完了期限令和6年2月28日
出典:厚生労働省「業務改善助成金」

以下3つのうちいずれか遅い日が「事業完了日」となります。

事業完了日

● 導入機器等の納品日
● 導入機器等の支払完了日
● 賃金引上げ日(就業規則等の改正日)
つまり、令和6年2月28日までに納品・支払完了・賃金引上げのすべてを実施しなくてはなりません。

ただし、やむを得ない理由がある場合あらかじめ申請すれば、事業完了期限が令和6年3月31日に延長される場合があります。

交付決定前の設備投資は助成の対象にならない

交付が決定される前に助成対象となる設備投資を実施した場合、助成は受けられません。

助成を受けるには、事前に「事業実施計画」を提出のうえ申請し、交付決定の通知を受けてから設備投資を実施する必要があります。必ず最新の制度内容や要件を確認し、手続きを進めましょう。

なお、過去に業務改善助成金を利用した事業者も、要件を満たせば助成が受けられます。

賃金引き上げは地域別最低賃金の発効日の前日までに行う

地域別最低賃金の改定にあわせて事業場内最低賃金を引き上げる場合は、発効日の前日までに引き上げを実施する必要があります。

つまり、最低賃金の発行年月日が10月1日の場合は、9月30日までに賃金引き上げを行うということです。

地域別最低賃金の発効日当日に事業場内最低賃金の引き上げを実施した場合、助成の対象にはなりません。

交付申請から交付決定を受けるまでには、1ヶ月程度の期間がかかります。業務改善助成金の申請は計画的に行いましょう。

業務改善助成金の利用方法・流れ

業務改善助成金の利用方法・流れ

出典:厚生労働省「業務改善助成金」

業務改善助成金を利用するには、都道府県労働局への申請が必要です。以下の流れで手続きを進めましょう。

業務改善助成金の利用方法・流れ

1 交付申請
2 審査・交付決定
3 事業の実施
4 事業実績報告
5 交付額決定と助成金の振込

1 交付申請

「交付申請交付申請書」を作成し、「事業実施計画書」などの必要書類を貼付して申請しましょう。申請書は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。提出先は、事業所所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境均等部(室)です。

詳しくは、業務改善助成金の「申請マニュアル」を参考にしましょう。申請マニュアルの「交付申請チェックリスト」で必要書類が確認可能です。

2 審査・交付決定

申請後、労働局による審査が実施され、交付決定通知または不交付決定通知が届きます。なお、申請から交付決定までは1ヶ月程度かかります。

3 事業の実施

事業実施計画にもとづき、設備投資等と事業場内最低賃金の引き上げを実施します。

事業実施期間中に事業計画に変更や中止、遅れる見込みが生じた場合は、それぞれ以下の書類提出が必要です。

区分提出する書類
事業計画に変更が生じた場合事業計画変更申請書
事業計画を中止する場合事業廃止承認申請書
事業完了が遅れる見込みの場合事業完了予定期日変更報告書

4 事業実績報告

事業実施後、「事業実績報告書」「支給申請書」を作成し、都道府県労働局に提出します。提出期限は、事業完了日から起算して1ヶ月を経過する日または翌年度4月10日のいずれか早い日です。

事業実績報告書業務改善計画の実施結果と賃金の引き上げ状況を記載した報告書
支給申請書助成金支払いのための申請書

5 交付額決定と助成金の振込

都道府県労働局が原則20日以内に、助成額の確定と支給決定通知を行います。後日、「支給申請書」にもとづいて助成金が振り込まれます。

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まとめ

働き方改革が進むなか、生産性の向上は企業にとって重要な課題のひとつとなっています。業務改善助成金制度を利用すれば、生産性向上のための設備投資等とあわせて事業場内最低賃金を引き上げた場合に、助成が受けられます。

申請する際は、申請期限までに募集が終了する可能性がある点や、交付決定前の設備投資は助成対象とならない点に注意が必要です。事前に要件や助成額などを確認し、正しく手続きを進めましょう。

よくある質問

業務改善助成金とは?

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援するための助成制度です。

業務改善助成金の概要を詳しく知りたい方は「業務改善助成金とは?」をご覧ください。

業務改善助成金の拡充ポイントは?

令和5年度の業務改善助成金の拡充ポイントは、大きく3つです。

業務改善助成金の3つの拡充ポイント

1 対象事業所が拡大された
2 賃金引き上げ後の申請が可能になった
3 助成率区分が見直された
業務改善助成金の拡充内容を詳しく知りたい方は「【令和5年度】業務改善助成金の拡充ポイント」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史