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口座管理法とは? マイナンバーと口座を紐づける目的やメリット・注意点を解説

監修 松浦絢子 弁護士

口座管理法とは? マイナンバーと口座を紐づける目的やメリット・注意点を解説

マイナンバーと金融機関の預貯金口座を紐づける「口座管理法」が2024年4月に施行されました。マイナンバーと口座を紐づけていれば、相続時・災害時に口座を特定しやすくなるなどのメリットがあります。

本記事では、口座管理法の概要や口座登録法との違い、口座とマイナンバーを紐づけるメリット・注意点を解説します。

目次

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金融機関にマイナンバーを届け出る「口座管理法」とは

口座管理法とは、預貯金者の意思に基づき、マイナンバーを用いて預貯金口座を管理する制度(預貯金口座付番制度)について定めた法律です。正式には、「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」といいます。

口座管理法では、重要な取引(口座開設など)を行う際、預貯金者にマイナンバーと口座の紐づけを希望するかどうかを確認することが金融機関に義務付けられました。

また、災害時や相続時に預金保険機構が預貯金口座に関する情報を提供する仕組みについても定めています

なお、マイナンバーとは、日本国内に住民票をもつ全ての住民に割り当てられる「12桁の番号」です。法令や条例で定められた一定の手続き(社会保障制度・税制・災害対策など)で利用されます。

※預金保険機構とは、金融機関が破綻した場合に預金者の保護を図ることを目的に、政府・日本銀行・民間金融機関の出資によって設立された機構

出典:デジタル庁「口座管理法制度って知っていますか?」
出典:デジタル庁「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要」
出典:デジタル庁「マイナンバー制度とは」
出典:預金保険機構「組織の概要」

口座管理法の目的

口座管理法の主な目的は、以下の3つです。

口座管理法の目的

  • 行政運営の効率化
  • 行政分野におけるより公正な給付と負担の確保
  • 預貯金者の利益の保護

マイナンバーと口座の紐づけに関して、「政府に預貯金残高を把握されるのでは」などの不安の声も見られますが、国が住民の資産を把握するための制度ではありません。

口座管理法は、行政機関と預貯金者の双方の利便性を向上させるための法律です。また、相続時や災害時により適切な対応ができることも期待されています。

出典:デジタル庁「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要」

公金受取口座とマイナンバーを紐づける「口座登録法」とは

2024年4月、口座管理法と同時に「口座登録法」が施行されました。

口座管理法と口座登録法の違いは下記です。


項目概要
口座管理法による預貯金口座付番金融機関にマイナンバーを届け出る制度
口座登録法に基づく公金受取口座登録制度国に預貯金口座を届け出る制度

口座登録法とは、給付金などを受け取るための預貯金口座を国に任意で登録し、マイナンバーと紐づける「公金受取口座登録制度」について定めた法律です。

公金受取口座として登録できるのは、ご本人名義の預貯金口座で、1人1口座です。紐づけを希望する人は、マイナポータルから申請するか、または確定申告(還付申告)の際に登録できます。

なお、公金受取口座の登録は、金融機関の窓口でも可能となる予定です。

出典:デジタル庁「公金受取口座登録制度」
出典:e-Gov法令検索「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律(令和三年法律第三十八号)」

マイナンバーと預貯金口座を紐づけるメリット

マイナンバーと預貯金口座の紐づけは、主に複数の金融機関で預貯金口座を開設している人や相続に備えたい人、被災者にメリットがある制度です。

また、口座登録法に基づいて国に預貯金口座を登録すれば、給付金を円滑に受け取りやすくなります。

マイナンバーと預貯金口座を紐付けるメリット

  • 一度に複数の預貯金口座を管理できる
  • 相続手続きの負担が軽減される
  • 災害時に資金を確保しやすくなる
  • 給付金をスムーズに受け取れる

上記の4点を踏まえ、マイナンバーと預貯金口座の紐づけを検討しましょう。

一度に複数の預貯金口座を管理できる

第一のメリットは、マイナンバーとの紐づけによって、一度に複数の預貯金口座を管理できることです。

従来から、預貯金者の意思でマイナンバーと預貯金口座を紐づけることは可能でしたが、金融機関ごとに届け出が必要でした。

口座管理法による新たな制度では、預金保険機構を介し、一度に複数の金融機関とマイナンバーを紐づけられます。また、預貯金者がマイナポータルからご自身で紐づけられるようになる予定です(2024年度末ごろ)。

マイナポータルとは、行政機関からのお知らせの確認や行政手続きの検索・申請が行える、政府が運営するオンラインサービスのことです。

なお、あくまでも預貯金者の意思によって届け出るもので、強制ではありません。

出典:デジタル庁「口座管理法制度って知っていますか?」
出典:マイナポータル「マイナポータルとは何ですか。」

相続手続きの負担が軽減される

マイナンバーと預貯金口座を紐づけると、相続が発生した際に預金保険機構が当該預貯金者名義の預貯金口座を特定し、口座に関する情報を相続人に提供してくれます。

つまり、相続人が被相続人の口座情報を迅速に、かつ正確に把握できます。

相続発生時、被相続人が口座を開設していた金融機関を相続人が把握していないケースは少なくありません。従来は、各金融機関に問い合わせるなどして把握しなければならず、手間や時間がかかっていました。

マイナンバーと預貯金口座を紐づければ、相続財産の把握が円滑になるだけでなく、口座の把握漏れも防げます。

出典:デジタル庁「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要」

災害時に資金を確保しやすくなる

災害時に資金を確保しやすくなることもメリットのひとつです。預貯金者が避難先の金融機関で申し出ると、自身の口座に関する情報提供を受けられます。

普段取引している金融機関の支店がない地域で被災すると、すぐに現金を引き出せずに困ったり、キャッシュカードを紛失する、あるいは自宅に残して避難したりするケースもあるかもしれません。

マイナンバーと預貯金口座をあらかじめ紐づけていれば、自身の口座をスムーズに特定でき、被災地で必要な費用や生活を立て直すための資金を確保しやすくなります。

出典:デジタル庁「口座管理法制度って知っていますか?」

給付金をスムーズに受け取れる

口座登録法に基づいて公金受取口座を国に登録していれば、給付金を申請する際、申請書への口座情報の記載や通帳の写しなどの添付が不要です。

また、行政機関による口座確認の作業が不要となるため、より迅速に給付を受けられるほか、振込不能も防止できます。

公金受取口座登録制度に対応している給付金は、2024年11月時点で160種類を超えています。

公金受取口座登録制度に対応している給付金の例

  • 厚生年金
  • 国民年金
  • 所得税の確定申告による還付
  • 児童手当
  • 給付奨学金
  • 貸与奨学金(日本学生支援機構)
  • 失業給付
  • 育児休業給付
  • 職業訓練受講給付金
  • 高額療養費など

出典:デジタル庁「公金受取口座登録制度」
出典:デジタル庁「公金受取口座を利用して受け取ることができる給付金等」
出典:デジタル庁「よくある質問:公金受取口座登録制度について(総論)」

マイナンバーと預貯金口座を紐づける際の注意点

マイナンバーは法律で規定されている範囲でのみ利用されますが、紐づけの手続きをする際には、以下の2点に注意する必要があります。

マイナンバーと預貯金口座を紐付ける際の注意点

  • 住所変更していない口座は紐づけられない
  • 公金受取口座を登録しても自動的に預貯金口座への付番は行われない

出典:デジタル庁「よくある質問:預貯金口座付番制度について」

住所変更していない口座は紐づけられない

預貯金口座とマイナンバーは、氏名や住所などをもとに紐づけられます。

そのため、金融機関に登録している住所が最新のものでないと、本人の口座だと認識されず、紐づけができません。最新の住所でない人は、住所変更の手続きをしたうえで紐づけの手続きを行いましょう。

出典:デジタル庁「口座管理法制度って知っていますか?」

公金受取口座を登録しても自動的に預貯金口座への付番は行われない

国に公金受取口座を登録しても、預貯金口座へのマイナンバーの付番が自動的に行われるわけではありません。

金融機関にマイナンバーを届け出る「預貯金口座付番制度」と、公金受取口座を登録する「公金受取口座登録制度」は、異なる制度です。

マイナンバーカードを用いて預貯金口座を管理したい人は、公金受取口座の登録とは別に、金融機関にマイナンバーを届け出る必要があります。

出典:デジタル庁「よくある質問:預貯金口座付番制度について」

マイナンバーと預貯金口座を紐づける方法・必要なもの

マイナンバーと預貯金口座を紐づける届け出は、金融機関の窓口で手続きができます。また、2024年度末頃からは、マイナポータルでも手続きができるようになる予定です。

紐づけに必要なものは、それぞれ以下の通りです。


手続き方法必要なもの
金融機関の窓口・本人確認書類
・マイナンバーが確認できる書類
マイナポータル・マイナポータルにアクセスできる端末(スマートフォンなど)
・マイナンバーカード
出典:デジタル庁「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要」
出典:デジタル庁「よくある質問:預貯金口座付番制度について」

ひとつの預貯金口座を紐づけると全ての口座が紐づけられる?

ひとつの預貯金口座とマイナンバーを紐づけたら、全ての預貯金口座が自動で紐づけられるわけではありません。

預貯金者は、ひとつの預貯金口座を紐づける際、ほかの金融機関で開設している預貯金口座もまとめて紐づけるかどうかを自身で選択できます。

出典:デジタル庁「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要」

マイナンバーカードを紛失すると口座が悪用される?

マイナンバーと預貯金口座を紐づけていても、マイナンバーカードの紛失・盗難にあった際に口座情報が悪用される心配はありません。マイナンバーカードには、口座情報が登録されないためです。

また、マイナンバーを知られても、それだけで預貯金の引き出しはできません。

ただし、マイナンバーカードの紛失・盗難にあった際は、速やかに警察に届け出ましょう。あわせて、「マイナンバー総合フリーダイヤル」に連絡し、一時機能停止の手続きが必要です。

出典:デジタル庁「口座管理法制度って知っていますか?」
出典:デジタル庁「よくある質問:公金受取口座登録制度について(総論)」

マイナンバーと預貯金口座を紐づけると政府に資産を全て把握される?

口座登録法に基づいてマイナンバーと預貯金口座を紐づけると、口座の情報が国に登録されますが、預貯金残高や取引履歴を国が自由に把握できるようにはなりません。国が口座情報を利用できるのは、社会保障の資力調査や税務調査などを行う場合に限られます。

税務調査の際には、預貯金残高や取引履歴が調査されますが、これはマイナンバーと預貯金口座を紐づけていなくても実施されるものです。

出典:デジタル庁「よくある質問:公金受取口座登録制度について(総論)」
出典:デジタル庁「よくある質問:預貯金口座付番制度について」

まとめ

2024年4月、銀行にマイナンバーを届け出る「口座管理法」が施行されました。

口座管理法の施行により、マイナンバーを用いて一度に複数の預貯金口座を管理できるようになるほか、相続時や災害時の手続きが容易になります。

マイナンバーと預貯金口座の紐づけは、あくまでも任意です。また、紐づけを行っても、国に資産を全て把握されるわけではありません。

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よくある質問

口座管理法とは?

口座管理法は、預貯金者の意思に基づき、マイナンバーを用いて預貯金口座を管理する制度を定めた法律です。

口座管理法の概要を詳しく知りたい方は「金融機関にマイナンバーを届け出る「口座管理法」とは」をご覧ください。

マイナンバーと預貯金口座を紐づけるメリットは?

マイナンバーと預貯金口座を紐づける主なメリットは、以下の通りです。

マイナンバーと預貯金口座を紐づけるメリット

  • 一度に複数の預貯金口座を管理できる
  • 相続手続きの負担が軽減される
  • 災害時に資金を確保しやすくなる
  • 給付金をスムーズに受け取れる

マイナンバーと預貯金口座を紐づけるメリットについて詳しく知りたい方は、「マイナンバーと預貯金口座を紐づけるメリット」をご覧ください。

監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

監修者 松浦絢子