公開日:2023/09/25
監修 大柴 良史 社会保険労務士・CFP
老齢基礎年金で受け取れる額は毎年改定され、一定ではありません。令和5年4月からの年金額は新規裁定者と既裁定者で額が異なります。
年金額の改定ルールが見直されて以来、初めて年金額が2パターン存在する状況になりました。
本記事では令和5年度の年金額はいくらなのか、年金額はどのようにして決まるのか、なぜ令和5年度は2パターン存在するのかを解説します。
目次
令和5年度の年金額改定で年金額はいくらになった?
年金額は賃金・物価の変動で増減し、年度ごとに調整された金額を受け取ります。基本的に、賃金や物価が前年度より上昇すれば年金額も増額、下落すれば減額です。
令和5年度は新規裁定者と既裁定者で、年金額が異なります。
国民年金の老齢基礎年金(満額) | 令和4年度(月額) | 令和5年度(月額) | 前年度との増減 |
新規裁定者(67歳以下の人) | 64,816円 | 66,250円 | +1,434円(2.2%引き上げ) |
既裁定者(68歳以上の人) | 64,816円 | 66,050円 | +1,234円(1.9%引き上げ) |
新規裁定者が令和5年度に受け取る年金額は、満額の場合で月額66,250円です。前年度と比較して2.2%引き上げられました。
また、既裁定者が令和5年度に受け取る年金額は、満額の場合で月額66,050円です。こちらは前年度と比較して1.9%引き上げられました。
令和5年度は新規裁定者・既裁定者ともに、前年度より年金額が引き上げられています。
老齢基礎年金で受け取れる年金額の基本的な計算式
老齢基礎年金で受け取れる年金額は、平成16年度の年金額780,900円をベースに求めます。
改定率は賃金や物価の変動から年度ごとに決定し、毎年同じではありません。また、新規裁定者は賃金の変動、既裁定者は物価の変動で改定率が決まります。
ただし、物価の変動が賃金の変動より高い場合は物価の変動を用いません。既裁定者の改定率は、物価の変動を賃金の変動に置き換えて求めます。
新規裁定者・既裁定者に分け、年金額の計算方法を解説します。
新規裁定者の年金額は賃金の変動で改定率が決まる
新規裁定者とは、68歳到達年度前の年金受給権者(新しく年金を受け取る人)です。新規裁定者に適用する改定率は、賃金の変動から求めます。
名目手取り賃金変動率は、前年の物価変動率に以下の指標を乗じた指標です。
前年の物価変動率に乗じる指標
● 2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率● 可処分所得割合変化率
新規裁定者に適用する令和5年度の改定率を求める際は、以下の指標が用いられました。
新規裁定者に適用する改定率を求める際の指標
● 前年度改定率…マイナス0.4%(0.996)● 名目手取り賃金変動率…プラス2.8%(1.028)
● マクロ経済スライド調整率…マイナス0.3%(0.997)
● 前年度までのマクロ経済スライドによる未調整分…マイナス0.3%(0.997)
既裁定者の年金額は物価の変動で改定率が決まる
既裁定者とは、68歳到達年度以降の年金受給権者(すでに年金を受給している人)です。既裁定者に適用する改定率は、物価の変動から求めます。
令和5年度の改定率を求める際、以下の指標が使われました。
改定率を求める際に使われた指標
● 前年度改定率…マイナス0.4%(0.996)● 物価変動率…プラス2.5%(1.025)
● マクロ経済スライド調整率…マイナス0.3%(0.997)
● 前年度までのマクロ経済スライドによる未調整分…マイナス0.3%(0.997)
既裁定者の改定率を賃金の変動に置き換えるケース
既裁定者の年金額を求める際に使われる改定率は、物価の変動がベースです。しかし、物価と賃金の変動次第では、賃金の変動に置き換えるケースが3つ存在します。
既裁定者の改定率を賃金の変動に置き換える3つのケース
● 賃金・物価ともにプラスだが、賃金が物価ほど伸びていない(物価>賃金>0)● 物価はプラスだが賃金がマイナスの場合(物価>0>賃金)
● 物価も賃金もマイナスだが、賃金のマイナスのほうが大きい場合(0>物価>賃金)
賃金上昇の施策も行われていますが、長期的かつ安定的に運用する仕組みも必要です。そのため、状況にあわせた改定率を適用する方法を採用しています。
令和5年度の年金額が2パターン存在する理由
平成28年に年金改革法が成立し、年金額の改定ルールは見直されています。それ以降、年金額が2パターンとなる可能性はありましたが、今までは当てはまる状況になりませんでした。
賃金が物価よりも上昇しない状況下(物価>賃金>0)では、既裁定者の改定率も賃金の変動から求めます。
令和4年度までは賃金が物価よりも上昇することがなかったため、新規裁定者・既裁定者ともに賃金の変動で改定率が決まり、年金額が実質1種類のみの状況が長く続いていました。
しかし、令和5年度は名目手取り賃金変動率がプラス2.8%、物価変動率がプラス2.5%と賃金変動率のほうが高くなったことで、新規裁定者と既裁定者とで異なる改定率を適用する状況を初めて迎えます。
結果、令和5年度は年金額が2パターン存在することになりました。
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まとめ
令和5年度の年金額は、新規裁定者が66,250円、既裁定者が66,050円と決まりました。いずれも満額受け取れる場合の月額です。
新規裁定者は賃金、既裁定者は物価の変動にあわせた改定率を適用するため、2つの年金額が存在します。
しかし、今まで賃金の上昇率が物価の上昇率を上回ることがなかったため、結果的に1つの年金額しかありませんでした。
そのような状況下で、令和5年度は初めて年金額が2パターン存在する状況を迎えました。
年金制度は複雑な部分もありますが、今後も維持するために内容を見直しながら運用している制度です。
よくある質問
令和5年度の年金額改定で年金額はいくらになった?
令和5年度の年金額改定により、年金額は新規裁定者が月額66,250円、既裁定者が月額66,050円受け取れます。いずれも、満額受け取れる場合の金額です。
令和5年度の年金額改定で年金額がいくらになったかをくわしく知りたい方は、「令和5年度の年金額改定で年金額はいくらになった?」をご覧ください。
令和5年度の年金額はなぜ2パターンある?
新規裁定者と既裁定者で異なる改定率を適用する状況に初めて該当したため、令和5年度の年金額は2パターン存在します。
令和5年度の年金額がなぜ2パターン存在するかをくわしく知りたい方は、「令和5年度の年金額が2パターン存在する理由」をご覧ください。
監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。