人事労務の基礎知識

雇用保険の加入条件は? 加入手続きの方法や必要書類について解説

雇用保険の加入条件は? 加入手続きの方法や必要書類について解説

雇用保険の加入条件は、31日間以上の雇用契約、週20時間以上の労働時間、学生でないことの3つです。

事業主は、雇用保険の加入要件を満たした従業員を雇用保険に加入させる義務があり、会社員だけでなくパートやアルバイトも加入の対象となります。

本記事では、事業主が理解しておく必要がある雇用保険の加入条件や、必要な手続きについて詳しく解説します。

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雇用保険被保険者証とは?再発行手続きやいつもらえるのかを解説

目次

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雇用保険とは

雇用保険とは、なんらかの理由で仕事がなくなったときや、仕事ができなくなったときのために備える公的保険です。

会社員やパート、アルバイトが失業したときに、経済的な心配をせずに再就職や起業などの準備ができるよう、約3ヵ月間〜1年間の範囲で、給与の代わりとなる「失業等給付」が支給されます。また、育児や介護などにより休業する際には、一定期間育児休業給付や介護休業給付が支給されます。

失業等給付を受けるには一定の条件を満たす必要がありますが、「特定受給資格者」および「特定理由資格者」に該当する場合、この条件が緩和されます。

「特定受給資格者」とは、所属していた企業の倒産やリストラ、解雇などで離職を余儀なくされた人のことをいいます。また、「特定理由離職者」とは期間を定めた労働契約の期間の満了後に更新されなかった人や、体力の問題、妊娠や育児、住所変更などによって働き続けることが困難になって離職した人のことをいいます。

雇用保険の加入条件

雇用保険の加入条件は、以下の3つです。

雇用保険の加入条件

  • 雇用契約が31日以上あること
  • 所定労働時間が週20時間以上あること
  • 学生ではないこと

出典:厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」

人を雇用する会社や個人事業主が「雇用保険に加入すること」は法的義務として定められています。1人でも労働者を雇用していれば雇用保険の適用事業とみなされますので、条件を満たす労働者は雇用保険に加入させなければなりません。

雇用契約が31日以上あること

雇用保険に入るには、初日から継続して31日以上の雇用契約が締結されていることが条件です。なお、雇用期間に定めがない人や31日以上の契約がある人だけでなく、初回契約が31日未満でも、更新の可能性がある人は加入対象となります。

また、更新の有無について雇用契約に明記されていなくても、過去同様の雇用契約で勤務していた人が、31日以上雇用された実績がある場合は更新の可能性があるとみなされます。

雇用契約書に契約更新がない旨が明記されているなど、31日以上の雇用が継続しないことが明確な場合のみ、雇用保険の加入対象外です。

所定労働時間が週20時間以上あること

所定労働時間とは、就業規則や雇用契約上の労働時間のことです。欠勤や遅刻、早退が多く、実労働時間が週20時間を満たしていない場合でも、所定労働時間が週20時間以上あれば条件を満たしているとみなされます。

所定労働時間に休日出勤や残業は含まれないため、実労働時間が20時間を超えていても所定労働時間が週20時間未満の人は雇用保険の対象ではありません。

学生ではないこと

ここで言う学生とは昼間学生を指しており、夜間部や通信制の学生は雇用保険の加入対象になります。

しかし、昼間学生であっても、休学中の場合や、卒業見込みがあり卒業後も同じ事業所で継続勤務する予定があれば、例外的に雇用保険の加入対象となります。


出典:厚生労働省「被保険者について」

雇用保険の被保険者の種類とその要件

雇用保険の被保険者は、雇用形態や対象の従業員の年齢によって「一般被保険者」「短期雇用特例被保険者」「日雇労働被保険者」「高年齢被保険者」の4つに分類されます。

一般被保険者

65歳未満の正社員やパートタイム、派遣社員など、雇用保険の加入条件を満たしており、以下3つの被保険者に該当しない場合は全て一般被保険者になります。

短期雇用特例被保険者

4ヶ月以上の期間を定めて雇用され、週の所定労働時間が30時間以上である季節的な雇用契約の場合は短期雇用特例被保険者となります。たとえば、海の家やスキー場で働く人などが該当します。

同じ会社で引き続き1年以上雇用された場合、1年以上の雇用となった日以降は一般被保険者又は高年齢被保険者となります。短期雇用特例被保険者が失業すると「特例一時金」が支給されます。

日雇労働被保険者

日々雇用され、30日以内の期間を定めて雇用される人は日雇労働被保険者です。前2ヶ月のどちらとも18日以上同じ会社で雇用された場合は、その翌月の最初の日から、基本的に一般被保険者となります。日雇労働被保険者が失業すると「日雇労働求職者給付金」が支給されます。

高年齢被保険者

2017年の法改正により雇用保険の年齢制限が撤廃されたため、65歳以上の労働者でも、前述の加入条件を満たす場合は雇用保険の加入対象となります。65歳以上の労働者のうち、短期雇用特例労働者や日雇労働被保険者に該当しない人は高年齢被保険者となります。

雇用保険加入時は64歳未満だった人が65歳に達した後も雇用を続けた場合、特別な手続きは必要なく、自動的に高年齢被保険者に切り替わります。


出典:厚生労働省「雇用保険の適用拡大等について」

雇用保険の加入手続きに必要な書類

はじめて従業員を雇用する事業所は、雇用保険に加入するための手続きが必要です。この手続きは所轄の公共職業安定所(ハローワーク)および各都道府県の労働局または所轄の労働基準監督署で行います。

提出書類提出先
保険関係成立届所轄の労働基準監督署
概算保険料申告書 以下のうちいずれか
・所轄の労働基準監督署
・所轄の労働局
・日本銀行
雇用保険適用事業所設置届所轄の公共職業安定所
(ハローワーク)
雇用保険被保険者資格取得届
出典:厚生労働省「労働保険の成立手続」

また、すでに雇用保険に加入している事業者が、新たに雇用保険に加入する必要が生じた場合は、「雇用保険事業所各種変更届」とともに、雇用保険被保険者資格取得届を所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に提出して手続きを行います。

労働者の雇用保険加入手続きは、新たな従業員を雇用した翌月の10日までに、管轄の公共職業安定所(ハローワーク)で雇用保険の手続きを行います。出向などの人事異動がある際は、加入手続きの見落としがないか必ず確認しておきましょう。

上記の書類は電子での提出も可能です。詳しくは以下の厚生労働省のホームページをご確認ください。

厚生労働省「電子申請(申請・届出等の手続案内)

保険関係成立届の提出

保険関係成立届には、会社の概要や会社名、住所などを記入し、雇用保険への加入日、雇用者数を記入します。

1ヶ月のあいだに雇用者数の変動がある場合は「平均使用労働者数」でかまいません。なお、雇用保険被保険者数は、一般被保険者数と短期雇用特例被保険者数の合計と日雇労働者数をそれぞれ記入します。

また、保険関係成立届は電子での提出も可能です。


出典:厚生労働省「事業主のみなさまへ 労働保険の成立手続きはおすみですか」
出典:e-Gov電子申請「労働保険保険関係成立(継続)(グループ申請)」

概算保険料申告書の提出

概算保険料申告書は保険関係成立届を提出した後に渡される書類です。

労働保険番号は保険関係成立届の提出時にあてられた番号を記入し、従業員の人数は保険関係成立届に記載した人数を記入します。

労働保険料に係る賃金の総額や保険料率などを記入します。

また、概算保険料申告書は電子での提出も可能です。


出典:厚生労働省「事業主のみなさまへ 労働保険の成立手続きはおすみですか」
出典:厚生労働省「労働保険概算保険料の申告(継続) 電子操作マニュアル」

雇用保険適用事業所設置届の提出

雇用保険適用事業所設置届には、会社名や住所、被保険者を雇用した日、会社の概要、保険関係成立届に記載される労働保険番号などを記入します。


出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険適用事業所設置届」
出典:厚生労働省「事業主のみなさまへ 労働保険の成立手続きはおすみですか」

雇用保険被保険者資格取得届の提出

雇用保険被保険者資格取得届には、被保険者番号や個人番号、事業所番号などを記入します。被保険者番号は再取得の場合に記入するものです。最後に被保険者でなくなってから7年以上経過している場合は、新規取得として扱います。

事業所番号は、雇用保険適用事業所設置届の提出の際に交付される番号です。被保険者となったことの原因には、中途採用者や新卒者、出向によるものといった理由を番号で記入し、賃金、専門職や事務職など雇用形態、職種も併せて記載します。さらに、契約期間と1週間の労働時間などを記入して提出します。

ちなみに、従業員の雇い入れ日には試用期間も含まれます。雇用保険の加入手続きをすると、「雇用保険適用事業所設置届事業主控」と「雇用保険被保険者証」「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」が交付されるため、雇用保険被保険者証を本人(従業員)に渡します。

雇用保険適用事業所設置届事業主控には、その事業所に割り当てられた雇用保険の加入番号が印字されています。「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」といっしょに、事業所で大切に保管しましょう。


出典:厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き」

雇用保険の加入手続きにおける注意点

雇用保険の加入対象に該当する従業員を雇用している場合、加入手続きを行うのは会社の義務です。これらの手続きがされていない場合にはすぐに手続きをしなければなりません。

また、従業員の労働条件が変わり、新たに加入対象または加入対象外になる場合には別途手続きが必要になるため、注意が必要です。

雇用保険の加入対象者が加入していない場合

雇用した従業員が加入対象にもかかわらず加入ができていない場合は、罰則があります。

加入漏れが発覚してすぐに適用されるわけではありませんが、労働局からの是正勧告を繰り返し受け、悪質と判断された場合には、事業主は懲役6カ月以下あるいは罰金30万円の罰則を課せられます。

雇用保険においては、労働者を雇用する事業は、その業種、規模等を問わずすべて適用事業のため、事業主や労働者の意思に関係なく加入手続きが必要です。罰則を受けないためにも、適用条件を満たす労働者を雇った場合は速やかに雇用保険の加入手続をしましょう。

途中で雇用形態や就業条件が変動する場合

雇用形態や就業条件が変動する際は注意が必要です。たとえば、フルタイムのパート従業員が途中で勤務日数や勤務時間を減らし、週20時間未満の就業条件で働くことになれば、雇用保険の加入対象から外れてしまいます。

途中で雇用保険の加入要件を満たさなくなった場合は、就業条件変更日の前日に離職したものとして資格喪失手続きを行います。

逆に、今まで雇用保険の加入条件を満たしていない従業員がフルタイムになることで雇用保険の加入対象となることもあります。この場合は、雇用保険の加入条件を満たす働き方に変更した日から雇用保険の加入手続きを行います。

特定法人の電子申請の義務化

前述したように、雇用保険の手続きは電子申請で行うことができます。しかし、「雇用保険被保険者資格取得届」の手続きについて以下の特定法人は電子申請が2020年より義務化されています。

  • 資本金、出資金又は銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
  • 相互会社
  • 投資法人
  • 特定目的会社
出典:厚生労働省「2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます」

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まとめ

雇用保険の加入条件は、雇用保険の加入条件は、31日間以上の雇用契約、週20時間以上の労働時間、学生でないことの3つです。従業員一人ひとりの状況によって加入対象であるかが変わります。そのため、さまざまな雇用形態の従業員がいる会社や、入退職が多い会社は特に管理を徹底する必要があります。

従業員の入退社や雇用形態、就業条件の変更があった際は雇用保険の加入条件について改めて確認し、加入漏れや喪失手続き忘れが無いよう注意しましょう。

よくある質問

雇用保険に入らなければならない条件は?

「31日間以上の雇用契約がある」「所定労働時間が週20時間以上」「学生でない」の3つの条件を満たす人は雇用保険の加入対象です。

詳しくは記事内「雇用保険の加入条件」をご覧ください。

週に何時間働いたら雇用保険に入る?

就業規則や雇用契約上の労働時間が週20時間以上の場合は雇用保険の加入対象になります。

詳しくは記事内「所定労働時間が週20時間以上あること」をご覧ください。

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