会社設立の基礎知識

電子定款とは? 作成方法や認証手続きの流れからメリット・デメリットまで解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

電子定款とは? 作成方法や認証手続きの流れからメリット・デメリットまで解説

電子定款とは、会社の基本情報や規則などが記載された書類(定款)を電子ファイル化したもののことです。

電子定款であれば、認証時に必要な収入印紙代4万円が不要になります。ただし、電子定款を作成するために専用の機器やソフトをそろえなければならず、費用がかかる可能性があるため注意が必要です。

本記事では、電子定款の作成に必要なものや作成方法、電子定款で作成するメリットとデメリットについて詳しく解説します。

定款の概要や紙定款の作成方法について知りたい方は、別記事「会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項について詳しく解説」をご覧ください。

目次

電子定款とは

定款(ていかん)とは、会社の基本情報や規則などが記載された「会社のルールブック」であり、会社設立においてもっとも重要な書類のひとつです。

この定款を電子ファイル形式(PDF)で作成したものが電子定款です。

電子定款は2002年からはじまり、2019年3月にはテレビ電話による認証手続きも開始されました。

出典:日本公証人連合会「公証制度の年表」

電子定款の作成に必要なもの

電子定款を作成するためには、以下の専用の機器・ソフトが必要です。

電子定款を作成するために必要な機器・ソフト

  • 電子証明書付きのマイナンバーカード
  • 電子署名ソフト
  • ICカードリーダライタ
  • 電子署名プラグインソフト

電子証明書付きのマイナンバーカード

マイナンバーカードは、事前に郵送されるマイナンバーが書かれた紙(通知カード)ではなく、プラスチック製のICカードが必要です。

マイナンバーカードは郵便やパソコン・スマートフォンから交付申請が可能ですが、発行には時間がかかる可能性があるため、電子定款の申請を考えている場合は早めに手続きを行いましょう。

出典:マイナンバーカード総合サイト「申請・受取方法/申請状況確認」

電子署名ソフト

電子署名とは「その電子文書が正式なものであり、かつ改ざんされていないことを証明するもの」で、紙の文書における押印やサインと同等の役割を果たすものです。

作成した定款をPDFに変換して電子署名を挿入するためには、対応するソフトが必要になります。代表的なソフトは「Adobe Acrobat」です。

Adobe Acrobatの利用料金はプランによって異なり、個人向けプランでは月額1,500~2,000円程度の費用がかかり、法人向けプランでは月額1,800〜2,400円程度の費用がかかります。

ICカードリーダライタ

マイナンバーカードを読み込むためには、ICカードリーダライタが必要です。購入の際は、マイナンバーカードに対応しているICカードリーダライタか確認しましょう。

マイナンバーカードに対応したICカードリーダライタには、接触型と非接触型の2種類があり、1,000〜4,000円程度と機能により値段は異なります。

出典:地方公共団体情報システム機構「マイナンバーに対応したICカードリーダライタの一覧表」

電子署名プラグインソフト

電子署名プラグインソフトとは、PDF化した定款に電子署名を付与するためのソフトウェアです。上述のAdobe Acrobatを利用している場合は、登記・供託オンライン申請システムが提供するPDF署名プラグインソフトを使ってPDFに電子署名を付与できます。

出典:登記・供託オンライン申請システム「PDF署名プラグインについて」

紙定款と違って電子定款であれば認証時の収入印紙代がかかりませんが、電子定款を作成するために必要な上記の機器・ソフトを一からそろえると、逆にコストがかかる可能性があります。

会社設立後、機器やソフトを使用する予定がない場合にはfreee会社設立を活用して電子定款を作成するのがおすすめです。freee会社設立を活用すれば、自分で機器やソフトを準備する必要はなく、電子定款の作成・認証手続きをすることができます。

電子定款の作成手順

電子定款は以下の手順で作成していきます。

電子定款の作成手順

  1. 定款を電子データで作成する
  2. 定款を電子化する
  3. ICカードリーダライタで電子証明書を読み込む
  4. PDF署名プラグインソフトを使って電子署名を付与する

①定款を電子データで作成する

紙定款を作成するときと同じ流れで、定款文章をパソコンなどで作成します。定款の作り方について知りたい方は、別記事「定款の作り方とは?起業時に作成する際の記載事項や注意点を解説」をご覧ください。

定款の項目は、必ず記載しなければいけない「絶対的記載事項」と、定款に記載することで効力を発揮する「相対的記載事項」、また、それらに該当せず違法性がない事柄の「任意的記載事項」に分けられます。

絶対的記載事項の項目が書かれていないと定款自体が無効になります。株式会社の定款では、絶対的記載事項として以下の項目の記載が必要です。

定款の絶対的記載事項

  • 事業の目的
  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 資本金額(出資財産額)
  • 発起人の氏名と住所

出典:日本公証人連合会「定款認証」

また、定款には会社法によって一定の基準が設けられており、法に準じていないものは無効となります。事前に公証役場へメールやFAXなどでデータを送ると内容を確認してもらえるので、作成したらチェックしてもらいましょう。

②定款を電子化する

公証役場で定款の中身を確認してもらったあと、PDF変換ソフトを使って電子化します。

③ICカードリーダライタで電子証明書を読み込む

PDF化した定款に電子署名をつけるための電子証明書はマイナンバーカードのICチップの中に保管されているため、ICカードリーダライタを使用して電子証明書を読み込みます。

④PDF署名プラグインソフトを使って電子署名を付与する

ICカードリーダライタで電子証明書を読み込んだら、署名プラグインソフトを使って電子定款のPDFデータに挿入します。これで電子定款の完成です。

電子定款を作成するために必要なソフトや機器を一からそろえるのが面倒な方や簡単に作成したい方は、電子定款にも対応しているfreee会社設立を活用しましょう。

株式会社は電子定款の認証が必要

定款の認証とは、正当な手続きにより定款が作成されたことを公証人が証明することです。株式会社を設立する場合、作成した定款を公証役場で認証してもらう必要があります。

電子定款の認証手続きは以下の流れで進めます。

電子定款の認証手続きの流れ

  1. 法務省のオンライン申請システムに利用者情報を登録する
  2. 法務省のサイトから申請用のソフトをダウンロードして定款を送信する
  3. 定款のデータを公証役場にて受け取る *電話による事前予約必須

電子定款の認証に必要なもの

電子定款の認証には以下のものが必要です。公証役場へ出向く際に忘れずに持参しましょう。

  • USBメモリなどの記録媒体
  • 電子定款をプリントアウトしたもの
  • 発起人の印鑑証明書
  • 電子署名した発起人以外の委任状
  • 認証手数料:1万5,000円〜5万円
  • *資本金額や条件によって異なる
  • 本人確認書類
  • 印鑑

なお、株式会社や一般社団法人などでは定款の認証が必要ですが、合同会社など持分会社を設立する場合は不要です。

【関連記事】
定款認証とは?認証に必要な書類や手続きの流れについて解説

電子定款で作成するメリット

電子定款で作成する主なメリットは以下の2つです。

電子定款で作成するメリット

  • 紙の定款よりも早く作成できる
  • 紙の定款よりも低いコストで作成できる

紙の定款よりも早く作成できる

メールや申請フォームによるオンラインでやり取りを行うため、公証役場に直接出向く必要がありません。また、紙の定款のように書類を用意する必要もないことから、よりスピーディーに定款を作成・認証することができます。

ただし、認証をもらった電子定款のデータは、メールなどインターネット経由で受け取ることはできません。公証役場に出向いて直接受け取る必要があります。

紙の定款よりも低いコストで作成できる

電子定款は電子情報であり印紙税法の対象外となるため、印紙代4万円がかかりません。

会社設立時の法定費用を抑えることができます。

電子定款で作成するデメリット

電子定款で作成する主なデメリットは以下の2つです。

電子定款で作成するデメリット

  • 機器やソフトの準備費用がかかる
  • 申請後はデータの修正ができない

機器やソフトの準備費用がかかる

電子定款の作成は、文書を作成してPDF化したファイルに電子署名を入れることで有効とされます。そのため、Microsoft WordやAdobe Acrobatのようなソフトウェア・ICカードリーダライタなどの周辺機器が必要です。

ソフトウェアやICカードリーダライタをすでに持っている場合は、電子定款で作成すると印紙代がかからず費用を抑えられますが、持っていない場合は紙提出をすることとなり、印紙代4万円がかかります。

紙定款と電子定款、どちらが費用をより安く抑えられそうか、あらかじめ確認したうえで定款の作成方法を判断しましょう。

申請後はデータの修正ができない

紙(書面)による定款とは異なり、電子定款の場合は一度オンライン申請すると定款内容の修正・変更はできません。修正が必要な場合は再申請することとなり、定款認証手数料1万5,000~5万円、保存手数料300円が再度発生してしまいます。

余計な手間や費用をかけないためにも、電子定款の認証を申請する前に定款を公証役場に送ってチェックを受けるようにしてください。

電子定款の作成は自分でやる・専門家に依頼すべき?

司法書士や行政書士などの専門家に定款の作成を依頼すれば、費用はかかるものの作成手続きをスムーズに進められます。専門家に依頼するときにかかる費用の目安は数万円程度です。ただし、定款作成以外に会社の設立登記なども依頼する場合は費用が高くなります。

一方で、専門家に依頼せず自分で定款を作成すれば、専門家への依頼料はかかりませんが、定款の作成や認証の手続きを全て自分で行わなければいけません。

会社の設立時にはさまざまな手続きが必要になるため、定款の作成に手間や時間をかけたくない場合は専門家へ依頼しましょう。

また、自分で定款を作成するとミスをする場合や手続きに時間がかかるため、正しく定款を作成する自信がない場合は専門家に相談・依頼してください。

まとめ

企業の基本情報や根本原則が記載された定款(ていかん)を、電子ファイル形式(PDF)で作成したものが電子定款です。

紙定款と比べた場合、作成にかかる手間やコストを削減できる点が電子定款のメリットではあるものの、文書作成ソフトや周辺機器購入などの準備費用がかかるため、紙定款よりもコストがかかる可能性があります。

定款を作成する際は、どちらの作成方法が自分にあっているか、メリットとデメリットを理解したうえで作成するようにしましょう。

【関連記事】
会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について
会社設立に必要な書類は全部で10種類! 書き方や提出方法についてわかりやすく解説

定款(ていかん)を簡単に作成する方法

定款とは、会社のルールブックであり、会社設立時に必ず必要な書類の一つです。

テンプレートはほぼ決まっていますが、事業目的などの記載内容は会社によって異なるため、自分で作成すると時間がかかってしまいます。また、ほかにも設立時には約10種類の書類を準備しなければなりません。

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freee会社設立 入力画面

会社名や資本金額など必要項目を入力すると、定款(ていかん)をはじめ、会社設立に必要な約10種類の書類を自動で作成します。

<freee会社設立で作成できる書類の一例>

  • ・定款(ていかん)
  • ・登記申請書
  • ・印鑑届出書 など
ほかにも、会社設立後に役所へ提出が必要な「法人設立届出書」の作成や法人口座の開設、法人用クレジットカードの申請にも対応しています。

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さらに設立費用を削減したい方には電子定款がおすすめです。紙の定款では収入印紙代40,000円がかかりますが、電子定款ではこれが不要となります。freee会社設立は電子定款にも対応しており、電子定款作成に必要な機器やソフトの準備なども必要がないため、自分で作成するよりもコストを抑えることができます。

<設立にかかる費用の比較例>

freee会社設立を利用した場合の費用例

(1)後述のキャンペーンを利用すると、0.5万円が無料になります。
(2)紙定款の印紙代4万円が発生します。

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よくある質問

電子定款とは?

電子定款とは、会社の基本情報や規則などが記載された書類(定款)を電子ファイル化したもののことです。

詳しくは記事内「電子定款とは」をご覧ください。

紙定款と電子定款の違いは?

紙定款は紙で印刷したものに捺印をして作成・保存したものです。一方、電子定款は電子ファイル形式(PDF)に電子署名をし、保存もデータ上で行うものです。

また、紙定款は役場の認証を受ける際に収入印紙代4万円がかかりますが、電子定款ではこの収入印紙代がかかりません。

詳しくは記事内「電子定款で作成するメリット」をご覧ください。

電子定款はどうやって作るの?

電子定款の作成手順は以下の通りです。

  1. 定款を電子データで作成する
  2. 定款を電子化する
  3. ICカードリーダライタで電子証明書を読み込む
  4. PDF署名プラグインソフトを使って電子署名を付与する

詳しくは記事内「電子定款の作成手順」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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