会社設立時に必ず作成する定款(ていかん)は、本社所在地の変更や事業目的の変更などが生じた際には、定款を変更する必要があります。
本記事では、定款の基礎知識から定款変更が必要となる代表的なケース、定款変更を行う際の手続き方法や注意点について解説します。
目次
定款変更とは
定款(ていかん)とは、会社の組織や活動についての基本的なルールを明文化した「会社の法律」といえる書類です。会社法に従い、会社設立時に作成が求められます。作成時には、発起人全員の署名または記名押印が必要です(会社法第26条第1項)。
「定款変更」は、定款に記載されている事項に何らかの変更を加えることを指します。
定款の記載事項は3種類
定款に記載する内容は会社法によって一定の基準が設けられており、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つの項目に分けられます。
絶対的記載事項
定款に必ず記載しなければならない事項で、記載されていない場合は定款自体が無効となります。
絶対的記載事項の主な項目
- 事業の目的
- 商号
- 本社所在地
- 資本金額(出資財産額)
- 発起人の氏名と住所
相対的記載事項
法的には記載しなくても問題ないものの、記載がないとその事項について効力が認められない事項がこれに当てはまります。
相対的記載事項の主な項目
- 変態設立事項
- 設立時取締役及び取締役選任についての累積投票廃除
- 株主名簿管理人 など
任意的記載事項
絶対的記載事項と相対的記載事項に該当せず、かつ違法性のない内容を記載する項目がこれに当てはまります。
任意的記載事項の主な項目
- 株主総会の開催規定
- 役員報酬に関する事項
- 配当金に関する事項 など
定款の記載内容や作成方法を知りたい方は、別記事「会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項などの要点を解説」をあわせてご確認ください。
定款変更が必要になる代表的なケース
定款を変更する代表的なパターンとして、以下の3つが挙げられます。
本店所在地の移転
本店所在地は、定款の絶対的記載事項です。本店所在地の移転があった場合には、必ず定款を変更しなければなりません。
なお、本店所在地を移転した場合、定款だけでなく登記の変更も必要です。登記を変更する際には、本店移転登記申請書に加えて、株主総会(設置されていない場合は取締役会)の議事録も必要になることを覚えておきましょう。
役員の変更
役員(取締役・監査役)の変更は、原則として定款内に記載された事項に基づいて行われるため、定款変更の必要はありません。ただし、定款に記載された役員数よりも増減する場合や、役員の任期を変える場合には、定款ならびに登記の変更が必要です。
事業の目的の変更
事業の目的も、定款の絶対的記載事項です。事業の目的を変更する際には、定款ならびに登記の変更が必要になります。
登記変更に関しては、別記事「変更登記とは?商業登記・法人登記の違いや手続きを解説」で解説していますので、そちらも合わせて参考にしてください。
定款変更の注意点
ここからは、定款変更をする際に注意しておきたい2つのポイントについて解説します。
原始定款に変更を加えてはならない
会社設立時に作成した定款を「原始定款」と呼びますが、この原始定款を直接変更することはできません。
定款を変更する際には、まずは株主総会等を開催し、定款変更に関する「特別決議」を行い、議事録を作成します。その上で、定款変更の内容に応じて、法務局へ登記申請を行います。新たな定款と原始定款との保管をもって、定款の変更となります。
再び定款を変更する際も、原始定款や現行の定款に直接変更を加えるのではなく、同じプロセスを辿り、新たな別紙(定款)が付け加えられていくこととなります。
特別決議とは?
特別決議とは、決議事項の中でも重要な事項を決定する際に用いられる決議です。ほかの決議との違いは、「決議に必要な定足数」「賛成数」の2点です。
定款変更のような特別決議が求められる議題では、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上の割合を定めることも可)を有する株主が出席します。出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成がなければ否決されます。
※定款で「3分の2以上」よりも厳しい変更条件を設定していれば、定款に記載の変更条件が有効となります。
株主総会の議事録の保存と提出が必要
株主総会では、出資額に応じて会社支配力を与えることが公平であるという考えから、1人1票ではなく「1株1議決権」です。
すなわち、その株式会社に最も出資している(最も経済的に貢献している)大株主が強い決定権を持ちます。その会社の社長や創業者が最大の株主であることが一般的です。
定款変更にあたって登記申請が必要な場合は、株主総会で変更点について決定が下されたという議事録を法務局に提出し、登記申請をする必要があります。そして、変更が受理された場合、定款とともに、株主総会の議事録を保存しなければなりません。
登記申請がいらない定款記載事項は、決算月の変更です。この場合は、税務署への「異動届出書」の提出に株主総会の議事録を添付する必要があります。
なお、議事録のフォーマットに特別な決まりはありませんが、株主総会が開催された日時・決議内容・決議件総数・賛成数などを記載するようにしましょう。また、作成した議事録は定款とともに保管することを忘れてはいけません。
法人登記の記載事項を変更した場合は変更登記が必要
定款変更には2つのパターンがあります。定款を変更する際に登記申請が必要なものと、定款変更の際に登記申請が不要なものです。定款の法人登記に関する記載事項を変更した場合には、登記申請が必要です。
以下は代表例ですので、定款に変更を加える場合は変更登記の手続きが必要か否かを事前に調べることをおすすめします。
記載事項 | 登記申請が必要な代表的なケース |
絶対的記載事項 |
・商号の変更(社名変更) ・新規事業の展開、事業からの撤退 ・発行可能株式総数の変更 ・本店、支店の所在地の変更 |
相対的記載事項 |
・株券の発行 ・取締役会の設置 ・監査役の設置 |
任意的記載事項 | ・資本金の額 |
変更登記の申請方法
申請方法には、書面申請とオンライン申請の2つがあります。
書面申請では、必要事項を記入した申請書および必要書類を、所轄の登記所(法務局)に持参、もしくは郵送で提出します。
オンライン申請では、法務局が提供する専用のソフト(申請用総合ソフト(無料))を使用して申請を行います。
【関連記事】
変更登記とは?商業登記・法人登記の違いや手続きを解説
法務局へ登記申請する場合は費用がかかる
法務局へ定款変更の登記申請をしなければならない場合、登録免許税として原則3万円の費用がかかります。
ただし、法務局の管轄外に本店を移転する場合や、支店を設置・移転する場合は、金額が異なる場合があります。変更内容によって書類も異なりますので、詳細は法務局のサイトからご確認ください。
また、司法書士へ登記申請手続きの代行を依頼する場合は、別に報酬が必要です。
まとめ
定款変更とは、定款に記載されている事項に何らかの変更を加えることです。たとえば、本店所在地の移転、役員の変更、事業目的の変更のような場合に定款変更が必要になります。
定款を変更する際には、株主総会での特別決議と、その議事録が必要です。
定款変更に際して変更登記が必要な場合、登録免許税など費用がかかることもあるため、会社設立をする際には定款の記載事項を十分に吟味し、当分のあいだは変更の必要がなくなるようにしておきましょう。
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- ・株主総会省略の提案書
- ・株主総会省略の同意書
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