勘定科目の基礎知識

国民健康保険料に使う勘定科目は?経費計上の可否や仕訳例を解説

監修 北田 悠策 株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所

国民健康保険料に使う勘定科目は?経費計上の可否や仕訳例を解説

国民健康保険料は個人事業主・フリーランス・無職の人が個人的に支払う私的な支出として扱われるため、原則として帳簿付けは必要ありません。しかし、国民健康保険料を払うと仕訳が必要になり、帳簿への記載が必要なケースもあるので注意が必要です。

どのようなケースで仕訳が必要になるのかを確認し、使用する勘定科目と仕訳内容を把握しておきましょう。本記事では、国民健康保険の概要や実際の仕分け例を解説します。

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目次

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国民健康保険とは?健康保険の種類と違い

健康保険制度には「国民健康保険」「健康保険」「後期高齢者医療制度」の3種類の制度があります。

日本の健康保険制度は、すべての人が何らかの健康保険制度に加入する国民皆保険制度です。3種類ある健康保険制度のいずれかに加入して普段から保険料を納めることで、怪我や病気など万が一の場合に必要な保障を受けられる仕組みです。

いずれの健康保険制度に加入するかは、職業や年齢などによって変わります。各健康保険制度の概要を解説します。

個人事業主やフリーランスは国民健康保険に加入する

国民健康保険は、ほかの健康保険制度(健康保険と後期高齢者医療制度)の加入条件に該当しない人が加入します。

国民健康保険に加入するのは、個人事業主やフリーランス、無職の人などです。一般的に健康保険には会社員や公務員が加入し、後期高齢者医療制度には原則75歳以上の人が加入するので、この条件に該当しなければ国民健康保険に加入します。

会社員が加入する健康保険では、一定の条件を満たすと扶養家族も健康保険の対象になりますが、国民健康保険には扶養の概念はないため、家族が被扶養者として後期高齢者医療制度に加入することはできません。

国民健康保険制度には2種類あり、自治体が運営する国民健康保険と職業に応じて加入できる国民健康保険組合があります。医業や建設業などでは国民健康保険組合があり、一定の条件を満たすと加入できる場合があります。

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会社員や公務員は職場の健康保険に加入する

会社員や公務員は原則としてお勤め先で健康保険に加入します。健康保険の主な種類は健康保険組合(組合けんぽ)・協会けんぽ・共済組合の3つです。

一般的に民間企業の従業員は、健康保険組合と協会けんぽのいずれかに加入し、公務員は共済組合に加入します。健康保険組合は、主に大企業が設立して従業員が加入する健康保険制度で、協会けんぽは多くの中小企業の従業員が加入している健康保険制度です。

ただし、フルタイム労働者よりも勤務時間が短い人に関しては、労働時間・労働日数がフルタイム労働者の4分の3未満など、一定の条件に該当すると健康保険の加入対象外です。

健康保険や後期高齢者医療制度の加入条件を満たさない場合は、国民健康保険に加入します。

会社員がお勤め先を退職して個人事業主・フリーランス・無職になる場合も、健康保険の被保険者でなくなるため、国民健康保険に加入します。ただし、健康保険には任意継続制度があるので、退職後もお勤め先の健康保険制度に加入し続けることが可能です。

資格喪失日の前日までに健康保険の被保険者期間が継続して2ヶ月以上あるなど、一定の条件を満たせば退職した後でも最大2年間、健康保険に加入できます。

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高齢者は後期高齢者医療制度に加入する

75歳以上(一定の障害のある人は65歳以上)の人は後期高齢者医療制度に加入します。後期高齢者医療制度は、従来の老人保健制度に代わって2018年4月から開始された制度です。

個人事業主で国民健康保険に加入している人や会社員で健康保険に加入している人でも、75歳(一定の障害のある人は65歳)になると、加入する健康保険制度が後期高齢者医療制度に変わります。

後期高齢者医療制度は国民健康保険と同様に、扶養の概念がないので、家族が被扶養者として後期高齢者医療制度に加入することはできません。

そのため、お勤め先の健康保険に加入していた会社員が後期高齢者医療制度に加入する場合、被扶養者として健康保険に加入していた家族は健康保険の被扶養者でなくなり、国民健康保険への加入手続きが必要になる場合があります。

国民健康保険の加入方法

国民健康保険の加入手続きが必要になるケースとしては、たとえば次のようなケースが挙げられます。

国民健康保険の加入手続きが必要になるケース

  • 会社員や公務員が退職して個人事業主・フリーランス・無職になったとき
  • 家族の扶養から外れたとき
  • 違う自治体に引越したとき(転居先の自治体で加入の手続きが必要)

会社員や公務員が退職すれば、(任意継続制度によって健康保険に加入し続ける場合を除いて)お勤め先の健康保険の加入資格を失うため、国民健康保険の加入手続きが必要です。加入手続きは、お勤め先の健康保険の加入資格を喪失してから14日以内に行います。

家族の扶養から外れて国民健康保険に加入するケースとしては、配偶者が会社をやめたり後期高齢者医療制度に加入したりして、配偶者がお勤め先の健康保険の被保険者でなくなる場合が挙げられます。

また、子どもが会社員である親の扶養に入っていたものの、独立して個人事業主やフリーランスになって親の扶養から抜けるケースでも国民健康保険の加入手続きが必要です。

加入に必要な書類

国民健康保険の加入手続きで必要になる書類は、ケースによって異なります。

会社を辞めてお勤め先の健康保険の加入資格を喪失し国民健康保険に加入するケースであれば、国民健康保険の加入手続きをする際、一般的に本人確認書類や健康保険の資格喪失証明書などが必要です。

加入の手続きをする場合は、自治体のサイトなどで手続きの方法や必要書類を事前に確認しておくとよいでしょう。

国民健康保険料は経費にできる?

経費にできるのは事業に関係する支出です。国民健康保険料は個人的に支払う保険料であって事業に関係ない支出なので、経費にできません。

個人事業主が支払う保険料にはさまざまなものがあり、経費にできる保険料と経費にできない保険料があります。帳簿付けの際には混同しないように注意が必要です。

経費にできる保険料・経費にできない保険料

  • 経費にできる保険料:事業に関係する火災保険料・地震保険料・自動車保険料など
  • 経費にできない保険料:事業主が個人的に支払う国民年金保険料・国民健康保険料・生命保険料など

経費にできないものは誤って経費として計上しないように注意し、経費として処理できる場合は適切な勘定科目を設定して記帳する必要があります。

国民健康保険料の仕訳が必要なケースと勘定科目

国民健康保険料はあくまで個人的に支払うものなので、経費にならず支払っても帳簿に記載したり仕訳したりする必要は原則としてありません。

ただし、事業用資金を使って国民健康保険料を支払うと帳簿への記載が必要になります。

【事業主貸】

事業主貸とは、事業とは関係ない個人的な支出のために事業用資金を使った場合に使う勘定科目です。

事業用資金を管理している銀行口座から生活費を引き出したり、事業とは関係ない支出が引き落とされたりした場合には、勘定科目「事業主貸」を使って帳簿付けします。

国民健康保険料も私的な支出にあたるので、事業用口座の資金で払った場合は事業主貸を使って仕訳します。

【事例で解説】国民健康保険料の仕訳例

個人事業主の事業用口座から国民健康保険料16,000円が引き落とされた場合、以下のように仕訳します。


借方貸方
事業主貸16,000円普通預金16,000円

事業用資金から個人的な支出があった場合、借方に用いる勘定科目は事業主貸です。摘要欄がある場合は、国民健康保険料の支払いであることがわかるように記載しておきましょう。

まとめ

国民健康保険料は私的な支出であり、事業とは関係がないため経費にできません。経費にできる支出とは事業に関係がある支出です。国民健康保険料を支払っても経費にあたらないので、原則として帳簿に記載する必要はありません。

ただし、事業用の資金で国民健康保険料を支払った場合は、帳簿上の残高と実際の残高を一致させる必要があるので、帳簿に記載する必要があります。仕訳の際に使う勘定科目は事業主貸です。

帳簿への記載が必要な場合は漏らさず記載し、支出や収入、残高などの管理を適切に行うようにしてください。

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個人事業主は国民健康保険料を経費にできる?

国民健康保険料は私的な支出であり、事業とは関係がないため経費にできません。

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国民健康保険料の仕訳に使う勘定科目は?

国民健康保険料の仕訳で使う勘定科目は事業主貸です。

国民健康保険料の仕訳に使う勘定科目について詳しく知りたい方は「国民健康保険料の仕訳が必要なケースと勘定科目」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策