事業所を移転する際の引越しには、さまざまな費用がかかります。引越し代を支払った際は、費用ごとに適切な勘定科目を使い分ける必要があります。

また、敷金が返還されたり、立退料としてお金を受け取ったりするケースもあるため、しっかりと理解しておかなくてはいけません。

本記事では、引越しにかかる各種費用の仕訳に使う勘定科目や仕訳例、注意点を解説します。

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• 引越しするときに発生する費用とは？
• 引越し代は経費に計上できる？
• 引越し代の仕訳に使う勘定科目
• 【雑費】
• 【支払手数料】
• 【地代家賃】
• 【長期前払費用】
• 【差入保証金】
• 【差入保証金】
• 【修繕費】
• 【福利厚生費】
• 【租税公課】
• 【売上・雑収入】
• 【事例で解説】引越し代の仕訳例
• 引越し作業のため業者へ料金を支払った場合
• 移転先物件の賃貸契約で仲介業者に料金を支払った場合
• 退居物件の原状回復費用を支払った場合
• 移転先物件に敷金・礼金、初月賃料を支払った場合
• 退居物件の貸主から敷金が返還された場合
• 引越しで本店移転したため移転登記した場合
• 自宅兼事業所を引越しした場合
• 従業員の引越し代を負担した場合
• 立退料を受け取った場合
• 引越し代の仕訳に関する注意点
• 過去に引越しがあれば同じ勘定科目を使う
• 自宅兼事業所の場合は家事按分する
• まとめ
• 経理を自動化し、日々の業務をもっとラクにする方法
• よくある質問

引越しをする際は、引越し業者へ支払う料金のほかに、さまざまな費用が発生します。

費用ごとに適した勘定科目は違うため、引越し時にかかった費用を一式で計上すべきではありません。

また、敷金の返還や退去時の家賃精算、立退料の受け取りなど、引越し時にお金を受け取る場合もあります。状況にあわせて勘定科目を選択し、正確に仕訳しましょう。

事業に関わる引越しなら、引越し時に発生した各種費用を経費に計上可能です。従業員の引越し代を会社が負担する場合も、経費に計上できます。

しかし、事業所と自宅を完全に分けている事業主が自宅の引越しをする場合は、引越し代を経費に計上できません。

自宅兼事業所の場合も、引越し代を全額計上ではなく、家事按分して適した金額を経費に計上します。

引越し代の仕訳に使う勘定科目は、費用によって異なります。

勘定科目ごとに、どの費用を仕訳するかを解説します。

引越し料金は頻繁に発生せず、事業上の重要度が低い性質から「雑費」で処理するケースが一般的です。引越し代で雑費に該当する費用には以下の例が挙げられます。

また、上記の費用は「支払手数料」や「荷造運賃」で処理しても構いません。

なお、自宅兼事務所の場合は不用品の処分費用も家事按分する必要があります。

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不動産事業者へ支払う仲介手数料は「支払手数料」の勘定科目を使います。

また、引越し時に発生した不用品の処分費用も、支払手数料で処理して構いません。

移転先の物件でかかる賃料は「地代家賃」の勘定科目を使います。

礼金も20万円未満の場合は、地代家賃に計上可能です。20万円以上の礼金は「長期前払費用」に該当します。

移転先物件の礼金が20万円以上の場合は「長期前払費用」の勘定科目を使い、5年で償却します。

物件が5年未満の契約で、更新時に再度を支払う場合は、賃借期間で礼金を償却しましょう。

敷金は担保として貸主へ渡すお金です。滞納や物件の損傷がなければ契約終了時に返還される性質から、「差入保証金」で仕訳します。

なお、会計用ソフトウェアのなかには「敷金」の勘定科目を最初から設定している場合もあります。

移転先物件の契約にあたり、火災保険や地震保険の加入を求められた場合、保険料は「損害保険料」の勘定科目を使いましょう。

なお、保険契約が2年以上の場合は、「前払費用」や「長期前払費用」を使います。

移転先物件の改装工事や、退居物件の原状回復工事にかかる費用は「修繕費」の勘定科目を使うケースが一般的です。

ただし、移転先物件を改装する際の工事内容次第では、「建物」や「建物付属設備」で資産計上し、耐用年数に応じた減価償却を行います。

事業所の引越しではなく、従業員が住居を移す際の引越し代を負担した場合に使う勘定科目は「福利厚生費」です。

入社や異動のため、転居が必要な従業員の引越し代を負担するケースが該当します。

登記している事業所の移転時には移転登記の手続きが必要となり、登録免許税や印紙税の勘定科目は「租税公課」を使います。

なお、司法書士に登記手続きを依頼する際の報酬は、「支払手数料」や「支払報酬料」を使いましょう。

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立退料の受け取りや日割りで賃料が返還された場合、法人なら事業所得の「売上」または「雑収入」に計上します。

個人事業主の場合、立退料の中身は事業所得・譲渡所得・一時所得の3種類に区分されます。事業所得に該当する部分を「売上」や「雑収入」に計上しましょう。

引越し時に発生する費用の仕訳を事例ごとに解説します。

引越し作業を依頼する業者へ、引越し料金20万円を普通預金から振り込んだ場合の仕訳は以下の通りです。

雑費の代わりに、支払手数料や荷造運賃の勘定科目を使っても構いません。

移転先物件の賃貸契約で、仲介業者へ仲介手数料10万円を現金で支払った場合の仕訳は以下の通りです。

敷金・礼金・賃料などを同時に支払う場合は、支払手数料にまとめて計上せず、費用にあわせた勘定科目を使い分けましょう。

退居物件の原状回復に15万円かかり、当座預金から振り込んだ場合は修繕費で仕訳します。

また、原状回復の費用は敷金と相殺するケースも存在します。

例えば敷金20万円のうち5万円が原状回復で差し引かれ、残りが普通預金口座へ返還された場合の仕訳は以下の通りです。

移転先物件の貸主へ敷金・礼金・初月賃料で30万円（内訳は各10万円）を普通預金から振り込んだ場合の仕訳は以下の通りです。

なお、礼金が20万円以上の場合は長期前払費用を使い、5年で償却します。

退居物件の貸主から敷金20万円が全額返還され、普通預金口座で受け取った場合の仕訳は以下の通りです。

また、敷金は退去時、原状回復費用と相殺するケースも存在します。

同一法務局が管轄する地域で本社を引越ししたため本店移転の登録免許税3万円を現金で支払った場合の仕訳は以下の通りです。

なお、登記手続きを司法書士に依頼した際の報酬は、支払手数料や支払報酬の勘定科目を使います。

個人事業主が自宅兼事務所を引越しした場合、事業所に該当する費用のみ雑費に計上できます。

たとえば自宅兼事業所の引越しで、引越し料金を10万円現金で支払った（自宅と事業所の面積から自宅7・事業所3で家事按分する）場合の仕訳は以下の通りです。

移転先の賃料が月に20万円で、普通預金口座から振り込む場合は以下の仕訳を行いましょう。

移転先の賃料も同じ割合で家事按分すると、割合の根拠が明確です。

他県の事業所へ異動する従業員に、転居時にかかる引越し代5万円を現金で渡した場合の仕訳は以下の通りです。

事業主自身が引越しする場合の引越し代は福利厚生費ではないため、注意しましょう。

貸主都合で事業所を移転するために普通預金口座へ立退料200万円が振り込まれた場合の仕訳は以下の通りです。

個人事業主の場合は、事業所得に該当する部分のみを売上または雑収入に計上します。

引越し代の仕訳では、以下の点に注意しましょう。

以下で注意点を詳しく解説します。

継続性の原則から勘定科目はむやみに変えず、過去に引越し代の仕訳があれば同じ勘定科目にあわせましょう。

同じ勘定科目で仕訳していれば、費用ごとに過去の金額と比較しやすい状態にできます。

個人事業主が自宅兼事業所の引越しをする場合は、費用を家事按分して計上しましょう。

家賃と引越し代の割合が違う場合、異なる根拠を問われる可能性があります。特別な理由がなければ、引越し代は家賃と同じ割合で家事按分しましょう。

引越し代のなかにはさまざまな費用が含まれるため、費用ごとに適した勘定科目を使って計上しましょう。

業者に支払う引越し料金は雑費または支払手数料、荷造運賃などの勘定科目を使います。

原状回復の工事費用や保険料を支払った場合など、内容ごとに適した勘定科目は異なるため注意が必要です。

引越し代に含まれる各種費用に適した勘定科目を理解し、正しく処理しましょう。

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引越し代のなかで、事業に関わりのある費用は経費に計上できます。

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