監修 安田 亮 安田亮公認会計士・税理士事務所
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固定資産税は、固定資産を所有している人に対して課される税金です。基本的には経費として計上できますが、個人事業主の場合は注意が必要です。
個人事業主は、業務用とプライベート用の費用を区別しなければなりません。兼用している固定資産の場合は、合理的な計算に基づき費用を按分する必要があります。
本記事では、固定資産税の概要や種類をはじめ、個人事業主の費用の按分・使用する勘定科目や具体的な仕訳方法などを解説します。
また、経費計上する際のタイミングや、会計処理する際の注意点もあわせて紹介しているため、経理担当者はぜひご参考ください。
目次
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固定資産税とは?
固定資産税は、固定資産に対してかかる税金です。固定資産の所有者は、固定資産の所在地の市町村に市町村税として納税します。
徴収された固定資産税は、住民の日々の暮らしを支えるあらゆる目的のために、各市町村によって活用されます。具体的な活用先は、公共施設・道路・学校などの整備のほか、介護・福祉サービスなど多岐にわたります。
納税義務者は、1月1日時点で固定資産を所有している人です。納税通知書の送付は年1回です。税額は固定資産の評価額を基に計算されます。
原則として年4回の納期が設けられていますが、一括で納付しても問題ありません。ただし、費用として計上するタイミングは一定のルールに従い、適切に処理しましょう。
詳しくは「固定資産税とは?納付先や計算方法、地方税の特例措置について解説」で解説しています。
固定資産の種類
固定資産には大きく分けて「土地・家屋」「償却資産」の種類があります。それぞれ詳しく解説します。
土地・家屋
固定資産の「土地」とは、田畑・住宅地・池沼・山林・温泉などの鉱泉地や牧場、原野などの土地全般を指します。
「家屋」とは、住宅のほか、店舗・工場・倉庫などの建物全般を指し、発電所や変電所なども家屋に含まれます。
償却資産
土地・家屋以外で事業の用に供することが可能であり、耐用年数に応じて減価償却する固定資産が「償却資産」です。
具体的には、広告塔やフェンスなど事業者が所有する構築物・飛行機・船舶・自動車や、鉄道などの車両運搬具・パソコンや工具などの備品が該当します。
この場合の「事業の用」とは、商業的な営利目的に限りません。ある目的のために継続・反復して行う一定の行為を指すため、営利を目的としないボランティア団体による活動なども含まれます。
また、遊休地や停止中の工場設備など、現在は使用していない資産も注意が必要です。「使用していないため非課税」という扱いには必ずしもなりません。
使用を停止している場合であっても、事業用として所有し、必要に応じていつでも稼働できる状態であれば、償却資産として課税の対象です。
法人や個人は、償却資産の内容を記した「償却資産申告書」を自治体に提出し、各自治体は申告を基に、償却資産所有者に対し固定資産税を課します。
償却資産に課される固定資産税は、償却資産税と呼ばれる場合もあります。
固定資産税の勘定科目は「租税公課」
固定資産税を会計処理する際の勘定科目は、「租税公課」を使用します。
「租税公課」は、事業税や固定資産税など各種税金のほか、市役所で住民票などを取得する際に支払う手数料や賦課金の計上にも用いられる勘定科目です。
固定資産税の経費算入時期
固定資産税は1年分をまとめて納付も可能ですが、原則として年4回の納期が設けられています。
納期が分割されている税金の計上時期は、次のいずれかを選択します。
固定資産の経費算入時期
- 納期の開始日が属する年分
- 賦課決定のあった日(納税通知日)の属する年分
- 実際の納付日の属する年分
3種類の算入時期のうち、いずれのタイミングを選んでも間違いではありません。ただし、一度採用した会計方針は、原則継続して同一の処理を行います。
税務上適切な会計処理を行うため、安易な運用方針の変更は避けましょう。
【事例で解説】固定資産税の仕訳例
固定資産税の具体的な仕訳例を解説します。
固定資産税を「納期開始日」や「賦課決定日」に経費処理する場合の仕訳
固定資産税を計上するタイミングには、次の3パターンがあります。
固定資産の経費算入時期
- 納期の開始日が属する年分
- 賦課決定のあった日(納税通知日)の属する年分
- 実際の納付日の属する年分
固定資産税を、納期開始日や賦課決定日に費用計上する場合の仕訳例は次の通りです。
借方 | 貸方 | ||
租税公課 | 150,000円 | 未払金 | 150,000円 |
納付時には未払金を消し込みます。
借方 | 貸方 | ||
未払金 | 150,000円 | 現金 | 150,000円 |
固定資産税を納付した際に経費処理する場合の仕訳
納期開始日や賦課決定日(納税通知日)ではなく、固定資産税を実際に納付したタイミングで費用計上する場合の仕訳例は次の通りです。
借方 | 貸方 | ||
租税公課 | 150,000円 | 現金 | 150,000円 |
固定資産税は経費にできる! 個人事業主は家事按分に注意
固定資産税は、法人も個人事業主も経費として計上できますが、個人事業主は家事按分に注意が必要です。
個人事業主の場合、固定資産の用途がプライベート用と業務用で混在している場合があるためです。兼用している場合は業務上の費用のみ経費として認められます。
たとえば、自宅の一部を業務用の事務所としても使用している場合、業務で使用している割合を明確に求めなければなりません。
数字の算出には、業務で使用している面積の割合を求めて按分するなどの方法があります。使用実態にあわせて合理的に計算し、算出の根拠資料は残しておきましょう。数字の記録の保存は税務上大切なポイントです。
ただし、家事按分は、どのような場合にも適用できるわけではありません。青色申告と白色申告では、家事按分して費用計上できる条件に違いがある点を把握しておきましょう。
白色申告の場合、全体のうち50%を超える部分が業務用である場合のみ、按分して費用として計上できます。
反対に、青色申告には特段の制限はありません。業務上かかった経費は割合にかかわらず家事按分できる点は、青色申告のメリットといえます。
個人事業主による固定資産税の仕訳方法
個人事業主が経費を家事按分する場合、業務用の目的でない家事に関連する費用は「事業主貸」として処理します。
例:店舗兼住宅で敷地全体の70%を業務用として使用している場合(納付したタイミングで費用を計上するケースの仕訳)
借方 | 貸方 | ||
租税公課 | 70,000円 | 現金 | 100,000円 |
事業主貸 | 30,000円 |
納付時には全額租税公課で処理し、期末の決算整理で家事按分する方法もあります。
【決算時の仕訳例】
借方 | 貸方 | ||
事業主貸 | 30,000円 | 租税公課 | 30,000円 |
まとめ
固定資産税は、土地・家屋や償却資産の所有者に課される税金です。償却資産の所有者は、自治体に対して償却資産申告書を提出しなければなりません。
固定資産税は経費として計上でき、仕訳時の勘定科目は「租税公課」を使用します。現在は事業の用に供していない償却資産でも、いつでも稼働できる状態であれば課税の対象です。
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よくある質問
固定資産税は経費にできる?
固定資産税は経費として計上できます。ただし個人事業主で、固定資産を業務とプライベートの両方で兼用している場合は家事按分に注意しましょう。
固定資産税の経費計上を詳しく知りたい方は「固定資産税は経費にできる! 個人事業主は家事按分に注意」をご覧ください。
固定資産税の勘定科目は?
固定資産税を仕訳する際の勘定科目は「租税公課」を使用します。
固定資産税の勘定科目を詳しく知りたい方は「固定資産税の勘定科目は「租税公課」」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
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