監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士
昨今のDX推進の流れによって、経理業務においてもDXの必要性が説かれています。経理業務のDX推進には、クラウド化した会計ソフトの導入を検討する必要があります。現在、主流な会計ソフトの形態はインストール型からクラウド型へと変化を遂げており、ますます使いやすさを増しています。
本記事では、このような会計ソフトの進化が企業の経理業務に与える影響やクラウド化によって自動化される具体的な経理業務の内容、クラウド化のメリット・注意点などを解説します。
目次
- 経理業務のクラウド化が進む背景
- クラウド会計ソフトの普及
- 政府が用いる情報システムでもクラウドサービス導入を推進
- 経理業務のクラウド化によって自動化される業務
- 経理業務をクラウド化するメリット
- 人的ミスを削減できる
- さまざまなコストカットにつながる
- 経理業務兼任者などが主業務に注力する時間を確保できる
- 場所を問わずに経理業務に取り組める
- 経理業務をクラウド化する際の注意点
- ランニングコストがかかる
- インターネット環境が必要となる
- クラウド会計ソフトをスムーズに導入するポイント
- 十分なセキュリティ対策を講じる
- そのほか必要な準備
- まとめ
- 導入シェアNo.1のクラウド会計ソフト freee会計とは
- よくある質問
経理業務のクラウド化が進む背景
経理業のクラウド化の普及には、DX推進やあらゆる業務のIT化が進んだこと以外にもさまざまな要因が絡んでいます。その主な要因として、以下が挙げられます。
経理業務のクラウド化が進む背景
- クラウド会計ソフトの普及
- 政府が用いる情報システムでもクラウドサービス導入を推進
クラウド会計ソフトの普及
これまでインストール型の会計ソフトが主流でしたが、インターネットの普及に伴って、多くの企業でクラウド会計ソフトの使用環境が整備されました。実際にクラウド型の会計ソフトは、インストール型のものと比べて場所を選ばずに使用できたり、手作業でデータ入力する手間を省けたりするなどのメリットがあります。このように使い勝手が良いクラウド会計ソフトは、多くの企業で導入されるようになりました。
クラウド会計ソフトとインストール会計ソフトのそれぞれのメリット・デメリット、特徴について詳しく知りたい方は、別記事「クラウド型・インストール型の会計ソフトの比較と、経理作業におけるメリット」をご覧ください。
政府が用いる情報システムでもクラウドサービス導入を推進
クラウド会計ソフトを含むクラウドサービスの利用は、政府が用いる情報システムでも積極的に推進しています。その一環として、2018年6月に各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議が発表し、2023年9月にデジタル社会推進会議幹事会が改定した「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」があります。
この方針は、各府省が効果的なクラウドサービスを採用し、効果的に利用するための標準ガイドライン群のひとつです。
方針そのものは政府が用いる情報システムを対象としたものですが、なかで紹介されているクラウドサービスの利用検討プロセスは、民間企業がクラウドサービスを導入するうえでも参考になります。
出典:デジタル社会推進会議幹事会「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」
経理業務のクラウド化によって自動化される業務
経理業務のクラウド化によって自動化される業務は、作業フローに大きな変動がない「定型業務」です。具体的には、以下のような業務が該当します。
- 定型文書(請求書や領収書など)の作成
- 経費の精算
- 帳簿への仕訳入力と発行
たとえば、請求書などの定型文書の作成では、送付先などを登録しておけば、テンプレートを用いてすぐに必要な情報を引き出し文書を作成できます。経費の精算でも、交通系ICカードのデータを取得するなどして費用の手入力が不要になります。
また、日々の入出金情報の仕訳・記帳作業も、口座情報の取得や辞書機能を使った仕訳のパターン化などで、手作業による手間やミスを減らすことができます。
一方、上記で挙げたような「定型業務」に当てはまらないものは、業務ごとにツールやシステムを導入する必要が発生してしまうため、自動化には適していません。具体的には、会社の年間予算を策定して実際の業績と比較して管理する予算編成・予実管理や税務申告書の作成、資金繰りや投資戦略を策定するキャッシュフローの管理などが該当します。
なお、導入するツールやシステムを増やすことは導入コストが増えるだけでなく、それらのツール・システムを連携させるための設定や管理が複雑になったり、複数ツール・システムにわたってデータが分散されるため情報の一元管理が難しくなったりするなど業務効率を低下させるリスクにつながります。
ツール・システムはなるべく少なく、一元化もしくはツール・システム同士を連携できるようにすることで、シームレスに業務ができるようになります。
経理業務をクラウド化するメリット
経理業務をクラウド化することにより、以下のようなメリットを得られます。
経理業務をクラウド化するメリット
- 人的ミスを削減できる
- さまざまなコストカットにつながる
- 主業務に注力する時間を確保できる
- 場所を問わずに経理業務に取り組める
人的ミスを削減できる
経理業務をクラウド化することで、定型文書の作成や仕訳入力などでの手作業がなくなるため、データの打ち間違えや計算ミスといった人的ミスを削減できるようになります。
お金が絡む経理業務で二重請求や支払い漏れなどのミスが発生することは、企業に対する信用を低下させかねないため、大きなメリットといえます。
さまざまなコストカットにつながる
経理業務のクラウド化が進み、経理関係の書類をデータで扱うようになると、ペーパーレス化により用紙代やトナー代、書類の郵送代などさまざまなコストを抑えられます。また、書類をデータとして保管すれば、物理的な保管スペースの確保も不要です。
そのほか、作業効率がアップすることや人的ミスの修正が減ることで、人件費の削減も期待できます。
経理業務兼任者などが主業務に注力する時間を確保できる
経理業務は、煩雑なうえにミスが許されない負担の大きい作業です。従来の手作業がメインのやり方では、担当者は膨大な時間を経理業務に費やさなければなりませんでした。
経理専任の担当者がおらず、総務や人事担当者が経理業務を兼任していたり、バックオフィス業務担当者が経理業務を一任していたりする場合は、クラウド化によってこれまでよりも短時間で経理業務を遂行でき、その分の時間を主業務に充てられるようになります。同じ企業が提供するシステムであれば、給与計算や経費精算などの経理業務サービスと連携することも可能です。
クラウド会計ソフトの特性を活かすことで担当者がこなせる主業務の量が増えるため、企業としての業務効率の向上にもつながります。
場所を問わずに経理業務に取り組める
経理業務がクラウド化されることで、インターネット環境と端末があれば、場所を問わずに経理業務に取り組めるようになります。
従来のインストール型の会計ソフトでは、ソフトが入っているPCでしか作業できなかったため、担当者は専用のPCを使うために出社する必要がありました。
しかし、クラウド型の会計ソフトであれば、出張先や自宅などでも作業できます。これにより、通勤時間を削減できたり、オフィス外の急な作業依頼にも柔軟に対応できたりといったメリットが得られます。
経理業務をクラウド化する際の注意点
経理業務をクラウド化するにあたって、まずはクラウド会計ソフトを導入する方法が挙げられます。クラウド会計ソフトの導入や使用の際には、以下の注意点を把握しておく必要があります。
クラウド会計ソフトを導入する際の注意点
- ランニングコストがかかる
- インターネット環境が必要
ランニングコストがかかる
クラウド型の会計ソフトは、クラウド上でサービスを提供しデータを管理・保存するという特性上、クラウドサービスの月額使用料が発生します。
ただし、クラウド会計ソフトには無料お試し期間が設けられているケースも多いため、ランニングコストに懸念があるのであれば、まずは試用期間を活用してソフトの使い勝手を知るという方法もあります。
また、クラウド会計ソフトはインストール型と比較すると初期費用(イニシャルコスト)を抑えられるのもメリットです。さらに、クラウド会計ソフトは常に最新のバージョンを使用できるため、長い目で見れば、購入型の会計ソフトよりもメリットがあると捉えられるでしょう。
インターネット環境が必要となる
クラウド型の会計ソフトを利用するためには、インターネット環境が必要不可欠です。そのため、停電などのトラブルでインターネット環境に障害が発生すると、会計ソフトが利用できなくなります。
また、障害とまではいかなくとも、インターネットの回線速度が低下することで、作業の進みが遅くなるケースもあります。
クラウド会計ソフトを問題なく利用するには安定したインターネット回線、そして社内で複数ユーザーがクラウド会計ソフトを利用する場合は十分な帯域幅が必要です。クラウド会計ソフトでは社内の経理に関する情報を取り扱うため、セキュリティ対策が整っているソフトを選ぶことも重要となります。
クラウド会計ソフトをスムーズに導入するポイント
クラウド会計ソフトを導入するメリットや注意点を把握できたら、実際にソフトを導入します。導入するにあたっては、以下のフローで進めていきます。
クラウド会計ソフトを導入する手順
- 導入目的の決定
- クラウド会計ソフトの比較・検討
- 導入スケジュールの設定
- 導入・初期設定
クラウド会計ソフトを導入する前に決めたいのは、自社にクラウド会計ソフトを導入する目的です。具体的には、自社が抱える経理業務の悩みや不安を洗い出し、それらの課題を解決する優先順位を決めながら導入目的を明確化させていきます。そうすることで、自社に最適なソフトを選択するのに役立ちます。
導入目的の例としては、「経理を兼任しており、経理業務の負担が大きく本来の業務に割けない」「手作業でデータを入力することで手間がかかり、できるだけ業務効率化したい」などです。
次いで、導入目的にあったクラウド会計ソフトを比較・検討し、決定します。
次に、クラウド会計ソフトを導入するまでのスケジュールを立てます。従来使用していた会計ソフトから次に導入するクラウド会計ソフトにこれまでのデータを移行したい場合は、その分の期間なども考慮しましょう。
スケジュールに則りクラウド会計ソフトを導入し、使用できるように初期設定を実施します。
【関連記事】
会計ソフトの比較ポイントを解説!法人(中小企業)が導入時に確認すべきこととは?
法人におすすめの会計ソフトは?機能や導入するメリット・デメリットを解説
十分なセキュリティ対策を講じる
クラウド型会計ソフトはインストール型とは違い、インターネット上のサーバーにデータを保存することになります。そのため、不正アクセスや情報漏洩といったリスクを考慮しなければなりません。
ユーザー側では、以下のようなセキュリティ対策を講じておく必要があります。
セキュリティ対策の方法
- PCにウイルス対策ソフトを入れておく
- クラウド会計ソフトのアカウント名やパスワードは厳重に管理する
- 複数ユーザーで利用する場合は、アカウントの使い回しをせずにユーザーごとに権限付与やアカウント発行を行う
特に、ウイルス対策ソフトのインストールは必須です。また、IDとパスワードが流出すれば、どんなセキュリティ対策も意味をなさなくなるため、人目に触れない場所に保管したり、パスワード管理ツールを導入したりといった対策を講じましょう。
そのほか必要な準備
セキュリティ対策以外にも、下記のような準備をしておく必要があります。
- データ移行の方法の確認
- 連携できる銀行口座やクレジットカードの確認
- 仕訳によく用いる勘定科目の決定
- (顧問税理士に委託している場合)税理士に会計ソフトへの対応可否の確認
細かな内容が多いですが、スムーズなクラウド会計ソフトの導入にはどれも必要な項目です。導入するソフトの内容に合わせて確認するようにしましょう。
【関連記事】
クラウド会計とは?メリットや導入方法、従来の会計ソフトとの違いを解説
まとめ
昨今のIT化や政府によるクラウドサービスの利用促進政策などにより、経理業務のクラウド化はどんどん進んでいます。
実際、クラウド化によって自動化される経理業務は多く、担当者の負担軽減につながることは間違いありません。さらに、人的ミスの削減やコストカットというメリットもあるため、経理業務のクラウド化は有益です。
とはいえ、ランニングコストがかかることやインターネット環境が必要になるといった注意点もあります。そうしたメリット・デメリットを把握したうえで、セキュリティ対策や事前準備を済ませてから、経理業務のクラウド化のための会計ソフトを導入するようにしてください。
導入シェアNo.1のクラウド会計ソフト freee会計とは
シェアNo.1のクラウド会計ソフト*1「freee会計」とは、面倒な入力作業や仕訳を自動化し、見積書や請求書も簡単に作成できるクラウド会計ソフトです。簿記の経験がなくても使いやすく、経理業務にかかる時間を半分以下*2に削減します。
※1リードプラス「キーワードからひも解く業界分析シリーズ:クラウド会計ソフト編」(2022年8月)
※2 自社調べ。回答数1097法人。業務時間が1/2以上削減された法人数
数ある会計ソフトの中でも、freee会計が選ばれる理由は大きく3つ。
- 一度の入力で複数の業務が完了。重複作業や転記作業はほぼ発生なし!
- 決算業務は正しく、確実に対応できる!
- インボイス制度・電子帳簿保存法に完全対応!
それぞれの特徴についてご紹介していきます。
一度の入力で複数の業務が完了。重複作業や転記作業はほぼ発生なし!
見積書・請求書をfreee会計で発行すると、書類へ入力した金額をもとに、自動で入金管理・売上仕訳まで完了。銀行口座やクレジットカード、POSレジなどと同期すれば、自動で利用明細を取り込み、勘定科目の登録はもちろん、売掛金や買掛金の消し込み、入金仕訳などの記帳も簡単に行えます。
さらに、領収書・受取請求書などをスマホのカメラで撮影しfreee会計に取り込むだけで、取引先名や金額などをAI解析し、自動で入力。支払管理・仕訳も自動で作成できます。
freee会計は一度の入力で複数の業務が完了するうえ、自動入力・自動仕訳によって手作業の少ない経理を実現します。
決算業務は正しく、確実に対応できる!
freee会計には、正しい決算書を作るためのチェック機能も充実。預金残高との一致や会計ルールとの整合性をfreeeが自動判定し、修正が必要そうなリストを自動作成します。修正後は、ボタンクリックひとつで貸借対照表・損益計算書などの決算書が作成可能です。
<作成可能な書類例>
- 貸借対照表・損益計算書
- 仕訳帳・総勘定元帳
- 固定資産台帳
- 試算表
- 現金出納帳 など
PDFやCSVファイルへの出力も可能なため、士業の方への共有や、社内での資料作成にも活用できます。また、領収書1枚・仕訳1件単位でコメント機能を使ってやりとりできるため、士業の方ともスムーズにコミュニケーションがとれます。
インボイス制度・電子帳簿保存法に完全対応!
freee会計では、取引先の登録番号が国税庁データに存在するかを自動照合し、適格請求書が適切かを判断するなど、インボイス制度に対応した機能をご利用いただけます。
また、紙書類はスキャンしてfreeeのファイルボックスに保管すれば、電子保存も可能。完全ペーパーレスな経理体制を実現できます。
機能更新にインストールが不要なクラウド型だからこそ、今後の法改正にも自動対応でき、常に最新の状態でソフトをご利用いただけます。
よくある質問
経理業務をクラウド化するとどのようなメリットがある?
経理業務のクラウド化には、「人的ミスを削減できる」「さまざまなコストカットにつながる」「主業務に注力する時間を確保できる」「場所を問わずに経理業務に取り組める」というメリットがあります。
詳しくは記事内「経理業務をクラウド化するメリット」をご覧ください。
経理業務をスムーズにクラウド化するポイントは?
経理業務をスムーズにクラウド化するためには、「十分なセキュリティ対策を講じる」「データ移行の方法の確認などの事前準備」が必要です。
詳しくは記事内「クラウド会計ソフトをスムーズに導入するポイント」をご覧ください。
監修 前田 昂平(まえだ こうへい)
2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。