株式会社好信は1950年創業の歴史ある企業で、繊維機械や工作機械で使われるネジやボルト、そして組立品などを取り扱う専門商社です。愛知県名古屋市に本社や倉庫を構えるほか、横浜と大分、そして海外にも子会社や拠点があります。
バックオフィスの課題は、アナログな作業が多く残っている点でした。それを解決するために、複数のfreee製品を導入し、DX化を推進してきました。そして、その成功体験を元に、他社向けにDXコンサルも始めようとしています。
freee導入前の課題や導入の経緯、導入後のメリット、そして複数のfreee製品を連携させたことによる効果などについて、常務取締役 大竹晋平さんにお話を伺いました。
昔からの業務フローが残るバックオフィス 「1日に何文字書くんだろう」
――まずは貴社の事業について概要を教えてください。
大竹晋平さん(以下、大竹): 創業時は、ネジやボルト、ナット、ワッシャーといった部品の専門商社として設立しました。その後、部品だけではなく、加工から組み立てまで行い、ユニットにすることで付加価値を高め、お客様に導入していただく事業も展開しています。
――続いて、大竹様のプロフィールについてもお聞かせください。
大竹: 私は特殊なキャリアだと思います。証券会社に勤務した後、テニスコーチを経て、公認会計士の勉強を始め、4年ほどかけて合格した後、当社に入社しました。ですから、会計の知識はあったものの、経理や監査の実務経験はないまま、当社に来たことになります。
現在は、常務取締役としてバックオフィス全般を担当するほか、海外法人の代表も務めています。そのため、3カ月に1回ほどは海外に出張して滞在しています。
――ここからはfreeeの導入についてお聞きします。導入前のバックオフィス業務には、どのような課題が ありましたか?
大竹: およそ10年前に入社した当時、伝票を手書きするなどアナログな作業が多く、「1日に何文字書くんだろう」と途方に暮れるほど大変でした。例えば、入金消し込みの作業では、インターネットバンキングを見て、その取引を全て手書きで起票し、それをさらに振替伝票に転記して……と同じ内容を何回も書く必要があり、面倒でしたね。
当時はまだクラウド会計ソフトが普及していなかった時期です。まずは手書きの作業をExcelに移行するなどして、少しずつ業務効率化を図っていましたが、限界がありました。
また、税理士と連携する業務フローが煩雑なのも課題でした。当時はオンプレミス型の会計ソフトを使っており入力は税理士に依頼していました。大量の手書き伝票や証憑を税理士に渡し、会計ソフトに入力してもらいます。二重、三重に同じ内容を書いたり入力したりしていたので、手間がかかり、ミスも起きやすくなっていました。
売上の検収時には、手書きの納品書を一つひとつ確認して、合っている・合っていないとチェックしていました。これも大きな手間で、経理担当者が家に持ち帰って検収のチェックをしていました。私が入社する前は、常に持ち帰りの仕事が発生していた状況だったと思います。
人事労務の作業でも、同様の状況がありました。紙に手書きで「何時に来て、何時に出た」と情報を書くんです。それを手作業で集計して、給与計算ソフトに打ち込んでいましたね。
中小企業では珍しくないですが、社長のご家族がバックオフィス業 務を担当していて、昔からのやり方を続けている状態でした。当時は取引先からPDFなどのデータで納品書や請求書をもらうのが難しい状況で、手書きにしていたのも致し方ない部分があったのだと思います。
複数のバックオフィス業務を、ひとつのソフトに集約したい
――freee製品を導入することになった経緯や決め手を教えてください。
大竹: 手書きしているのをExcelにするなどの業務効率化は進めていましたが、次の一手として、勤怠、人事労務、会計をクラウド化したいと考えていました。
そこで、勤怠のクラウド化を検討し始めたところ、勤怠からつながる給与計算や給与明細の発行も併せてやらなければ意味がないと考えました。また、会計まで連動させることで、より効率化できるとも。
正直に言うと、最初は勤怠、人事労務、会計と別々のソフトを導入することを検討していました。ただ、それぞれの作業で異なるソフトを使うとなると、ソフトごとに使用ユーザー分の費用がかかってしまいます。また、それらのソフトを立ち上げて、画面を遷移させながら操作するのが面倒とも考えました。そこで、バックオフィスの作業を網羅しつつ、同一の操作感で使用できるソフトを検討したところ、たどり着いたのがfreeeでした。
2020年12月より、freee会計とfreee人事労務の導入を始め、既存のソフトと並行稼働させつつテストを行い、2021年4月から本稼働しました。後にfreeeサインとfreeeカードも導入し、連携させて活用しています。
――導入時に苦労したことはありましたか? また、それをどのように乗り越えましたか?
大竹: 税理士の方との連携に苦労しました。消費税区分が異なるため、それほど多くはなかったものの、個別に確認する作業が発生していました。また、freeeの使い方を覚えるのも最初は大変だったと記憶しています。
後者については、freeeの営業担当にたくさん質問をすることで、疑問を解消していくことができました。freeeは視覚的にわかりやすいのも良いですね。
そのほか、freee人事労務は会計と比べて苦労しませんでしたし、初期設定も迷うことはありませんでした。
freeeでまとめることによって、何十時間の業務時間削減を実現
――freeeの導入で、どのようなメリットがありましたか?
大竹: まず、紙のタイムカードがなくなったのは、現場の社員たちにとって大きなインパクトがあったと思います。
また、入金や出金が集中する月末の最終営業日には、以前のやり方だと、100件以上の仕訳を切るだけで1日がかりの仕事になっていました。そうすると、その時期には他の業務をする時間がありません。今では、数時間で終えることができるようになり、とても楽になりました。
支払い処理も楽になりましたね。取引先の登録を しておけば、振り込みにほとんど時間がかかりません。以前は、1件ずつ打ち込んで振り込み処理をしていたので、時間がかかり、ミスも起きていましたが、作業が早くなり、ミスが大幅に減りました。給与計算も同様で、月に何十時間の業務時間削減ができているのだろう、というレベルで効率化できました。
もちろん持ち帰りの仕事はなくなりました。残業はゼロではありませんが、ほとんどなくなっています。
業務時間以外のメリットとしては、どこからでもバックオフィスの仕事ができるようになりました。例えば、新型コロナウイルスの濃厚接触者になって出社できなくなったときにも、パソコンさえあれば仕事ができるようになりました。また、海外出張時にもfreeeにログインして仕事ができます。これは私にとって大きなメリットでした。
――複数のfreee製品を導入したり、他のツールと連携させて利用したりすることのメリットを教えてください。
大竹: まず、使う側の社員からすると、ひとつのソフトだけ覚えればいいので、わかりやすいです。会計、人事労務、勤怠が別々のソフトだと、それぞれの使い方を覚えなければなりませんし、ログイン情報も変わってしまうので面倒です。しかし、それらの作業をfreeeに集約していれば、負担が減ります。
私たちバックオフィス側からすると、メリットはより大きいです。例え ば、社員がfreee会計で立替払いの経費精算をすると、そのままfreee人事労務にデータが流れて、給与振り込みに反映されます。
また、もしfreeeのなかの連携だけでは完結できなかったとしても、API連携できるサービスが多いのも良いと思います。API連携ができる限りは、複数のサービスがあっても、それほど苦にはなりません。今後、freeeさんがどれだけ取り込んでいけるのか、期待しています。
中小企業にとってDX化は必須の社会環境
――freeeを導入して業務効率化を実現したことで、新たに取り組めるようになったことはありますか?
大竹: 他社向けに、DXコンサルのサービスを提供し始めようとしています。私たち自身も試行錯誤しながらfreeeを中心にDXを推進してきたので、その知見を生かそうと考えています。
中小企業にとって、DXは必須の課題です。しかし、クラウド型ソフトになじめる人材がいなかったり、税理士の方に対応してもらえなかったり、既存のやり方の踏襲が続いてしまっていたり……。実際にDXを進めるとなると、さまざまな障壁があることを、私たち自身が体験してきました。
freee導入によってバックオフィス業務の負担が減ったこともあり、取引先なども含めた他社様に知見を提供できればと考え、取り組んでいます。
――freee導入を検討している企業の方々に向けてメッセージをお願いします。
大竹: これからの社会では、少子化も進み、採用で きる人材が減っていくことが予想されます。特に中小企業は、人材の確保が非常に大変になっていくのは間違いないでしょう。
そして、人材を確保したとしても、賃上げが必要な流れになっていくので、人件費はどんどん膨れていきます。さらに、長時間労働を強いていた昔のやり方は通用しません。そして、インボイス制度や電帳法への対応も欠かせないところです。つまり、DXはどの企業も必須です。
DXについて詳しく知らない方がその言葉を聞くと、非常に難しいことのように聞こえますが、実際にはfreeeのようにUIがわかりやすく、パソコンやスマホで操作できるソフトを導入すれば、難しくはありません。一歩踏み出してみれば、専門的なことがわからなくてもDXを実現できるので、勇気を出して前に進んでみてほしいですね。
(取材・執筆:遠藤光太 編集:ノオト)