作業内容やプロジェクトごとの収支を細かく分析し、自動で工数集計や分析をしてくれる「freee工数管理」は、財務・管理会計はもちろんのこと、IPO準備にも役立つツール。サービスを提供しているフリー社自身が上場をする際の経験をもとに誕生したという経緯もあり、ユーザー目線に立った使いやすいUI・UXや、きめ細やかな機能が魅力となっています。
今回の導入事例では、フリー株式会社の経理部長である池嶋氏に話を伺い、工数管理の運用の仕方と、「freee工数管理」の導入メリットについて教えてもらいまし た。
自社のIPO準備の苦労から誕生した「freee工数管理」
ーーフリー株式会社での池嶋氏の業務内容を教えてください。
私は経理部長として働いており、財務会計や税務業務等を担当する一般的な「経理」、そして売上回りのオペレーション企画をする「Revenue Ops」という2つのチームを統括しています。
私たちの会社のように自社でソフトウェアを開発しているIT企業や請負業務を行う会社では、工数管理をもとに財務会計での計上をしています。そのため、弊社では経理チームが工数入力を締めるオーナーを担当しており、その管理も私たちの仕事となっています。
ーー「freee工数管理」の設計には池嶋氏のバックオフィスからの視点も反映されているとか。
そうなんです。弊社は2019年に東証マザーズ市場に上場したのですが、そのIPO(新規公開株式)の準備をする中で工数管理の重要性に気がつき、2020年に「freee工数管理」をローンチしたという経緯があります。
私は上場の1年半ほど前にIPO準備室の経理の一員として参加することになったのですが、上場するためには会計基準に従った自社開発ソフトウェアの資産計上プロセスを構築する必要がありました。私のミッションとしては、工数管理に向き合い、プロジェクトやソフトウェアごとに収支などを計上することだったんです。
IPOを経験した経理部長・池嶋氏の実体験
ーー具体的にIPOの準備ではどんなことを担当しましたか?
IPO準備はやることがたくさんあったのですが、私が携わったのは経理のなかでも決算早期化に向けた取り組みや、稟議フローの設計などです。平たく言えば、上場していない会社は数字を締めるスピードや精度などは株主や社内で問題なければOKなのですが、上場するということは四半期に一度開示書類を提出する義務があります。そのためIPO準備中の経理には決算の正確さとスピードを向上させることが求められます。
またバックオフィス全体としては、同時に勤怠管理や稟議申請などについても、IPO準備前に比べて正確さとスピードを向上させる必要がありました。IPO準備はバックオフィス業務全般に関して社内のレベルをあげていくことが必要で、証券会社の方やIPOコンサルの方にアドバイスを受けながら行いました。
ーーIPO準備をしていた当時「freee工数管理」はありませんでしたが、どのように進めたのでしょうか?
当時はスプレッドシートにとても詳しい人がいて、なんとかスプレッドシート上で最低限の工数管理や数字の統計がとれるようにしていました。しかし、この表の使い方を社員に共有するという時点から大変でしたし、スプレッドシート間での整合性を担保することもできなかったので、今になって思えばかなり使いづらかったですね。
また、表計算ソフトでは管理者権限みたいなのも細かく設定できないので、データ を集計しているうちに上席者の承認済の工数が変わっていたりしてとても大変でした。そのため、工数を収集したりエラーチェックをするために人員を割く必要があり、さらに経理でもレビューをしていたので、全体的にはかなりの作業量になってしまっていました。
フリー社として、IPO準備はもちろん、上場してからも何百人といる社員の工数管理を表計算ソフトで行うのは大変だと身をもって感じたことが、「freee工数管理」の開発に繋がっています。
ーーそうした経験を踏まえ開発された「freee工数管理」。このサービスを作るうえで大切にしたこととは?
IPOを目指すとなると、発注までに必ず稟議の承認を取らなければならないとか、毎日工数を入力しなければならないとか、今までやらなくてよかったことをたくさん求められます。これって従業員にとってはすごいストレスになるんですよね。
各種申請や工数のデータを元に、最終的に決算書にまとめるのは経理なのですが、その元の入力をするのは一人一人の従業員なので、各従業員がなるべくストレスなく入力できるようになっていることが、もっとも大事だと思っています。
自社製品のリアルなユーザーだからこそ、改善も先手を打てる
ーー自社で見えてきた課題を解消するために設計したというのは説得力がありますね。
プロダクトを送り出す側として、ユーザー目線に立つのは常に気にしているところです。「freee工数管理」は今と比べるとローンチ時点ではベーシックな機能しかなかったのですが、従業員が簡単に工数を入力できることを特に重視して様々な機能をリリースしています。Googleカレンダーと連携して直感的に工数を入力したり、「freee人事労務」と連携して勤怠を同時に管理したりすることができます。
また、工数を入力するチームの管理者目線でも、細かく情報を扱えるということがメリットになることもあります。プロジェクトのタームごとに工数を把握できるので、自チームの生産性改善のためにfreee工数管理を活用しているチームもあります。フリー社もいちユーザーとしてパワーアップに期待する領域もまだありますが、そういった要望も開発チームに随時フィードバックして開発に活かしてもらっています。
ーー会計や人事労務と同様に、工数管理も自社でfreee製品を使うことによって精度や使いやすさが向上しているんですね。
そうですね。弊社ではすべてのエンジニアが「freee工数管理」を使っているのですが、同製品ユーザーの中でも最大規模です。一般のユーザー様より何倍も触れているので、将来他のユーザーが直面するであろう使いづらい部分を先回りして見つけることができます。
エンジニアも工数管理に割く時間を減らして、その分をそれぞれの作業時間に当てたいという思いがあるので、「ここをもっとスムーズにできないか」「こういう使い方ができるのではないか」といったフィードバックが頻繁に上がってきますし、開発者目線からその解決方法が提案されたりもするので、とてもよい循環が生まれていると思います。
起業から上場、その先まで。freeeはユーザーとともに歩む
ーーIPOを目指している企業の経理担当者の方に対して、池嶋氏ならどんなアドバイスをしますか?
なるべく早いタイミングで「freee工数管理」を導入して従業員に慣れていてもらい、ストレスがない状態で工数入力してもらえる環境を整えるのがオススメです。工数管理のように、従業員の協力が必要不可欠な領域を優先的に取り組むことが、最終的には経理のミッションである決算早期化や精度向上にも繋がると思います。経験してみるとわかるのですが、バックオフィスメンバーで構成される、IPO準備のチームだけでは終わらないタスクがたくさんあります。従業員を巻き込みながら進めなければいけないタスクも多く、とりわけ工数管理は大きな課題になります。
特に自社でソフトウェアを開発しているIT企業や請負業務を行う会社だと工数をもとに会計処理しなければなりません。なるべくストレスなく工数入力してもらえる状態にしておき、タイムリーにデータが集まる状況にしておかないと、その後の会計処理も正しくできないため、工数入力を催促したり、入力結果のバグ出しをしたりすることに時間 を使わねばならず、決算書全体の完成が遅れてしまいます。
工数管理というのは定着してからも永続的に発生する一大プロジェクトです。だからこそ、導入していただける企業様によりよいユーザー体験が届けられるよう、私たちも今なお挑戦し続けています。